英雄伝説〜運命が改変された少年の行く道〜 戦争回避成功ルート
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〜トールズ士官学院・1年Z組〜

 

「それにしてもパント臨時宰相はどうしてオーレリア将軍に対してだけあれ程の厳しい処罰方法をユーゲント陛下達に提案されたのでしょうね……?わざわざ”戦争回避条約の救済条約”の第5項―――『アルフィン・ライゼ・アルノール皇女がリィン・シュバルツァーに降嫁した際、メンフィル帝国は”クロスベル帝国”とエレボニア帝国との国交回復に協力する』を使って、メンフィルを介してオーレリア将軍の引き渡しをクロスベルに要請しましたし……」

「多分内戦の元凶であり、エレボニアが衰退する羽目になった元凶でもある”アルバレア公爵家”は実質エレボニアじゃなくてメンフィルに裁かれたようなものだし、”カイエン公爵家”は長女のユーディット・カイエンがクロスベル皇帝の一人に嫁いだ事で手が出せなくなった上”主宰”のカイエン公もメンフィルに処刑されたから、その”代役”として”黄金の羅刹”を他の人達より厳しい処罰を与える事で”貴族派”に対する”見せしめ”をする為とエレボニアの民達の溜飲を下げさせる為だと思うよ〜?しかも都合の良い事に”黄金の羅刹”が貴族連合に加担した理由も普通に考えたらあまりにもバカバカしい理由だったし。」

「確かシルフィアの生まれ変わりに勝つ為だっけ?」

「はい。より正確に言えばリアンヌ様――――”槍の聖女”を超える足がかりですよ、エヴリーヌお姉様。」

エマの疑問にミリアムは自身の推測を答え、首を傾げているエヴリーヌにプリネは助言した。

「まさかサンドロッド卿が関係しているなんて夢にも思わなかったけど……」

「そんな理由の為だけにエレボニアが滅茶苦茶になった原因である貴族連合に加担したのかと思うとあんな厳しい処罰方法が降されてもおかしくないような気がするよな……」

「最初に知った時は怒りを通り越して呆れ果てたな。そんな下らない理由の為だけに反逆者に成り下がったのだからな。」

「……サンドロッド卿を超えたいという気持ちは私も武人の一人として理解できるが、幾ら何でもその方法が人道から外れ過ぎている。父上も機を見て、”師”の一人としてオーレリア将軍を更生させると仰っていた。―――そう言えばプリネ。サンドロッド卿はオーレリア将軍の件を知り、何か仰っていたか?」

エリオットとマキアスは複雑そうな表情をし、ユーシスは呆れた表情で呟き、ラウラは重々しい様子を纏って呟いた後プリネに視線を向けた。

 

「申し訳ありませんが復学してからリアンヌ様と会う機会はまだなくて、その事については答えようがありません。来月からは会う機会は幾らでもありますからその時に聞こうと思っています。」

「そうか……もしサンドロッド卿から何か答えがもらえたら、是非レグラムの屋敷に便りを頼む。」

「わかりました。」

「……あ。”黄金の羅刹”と言えば確かリィンの実家に”黄金の羅刹”も謝罪しに来たんだっけ?」

「そう言えば……ユーゲント陛下達が謝罪しに来た時同様その日の為に学院をわざわざ休んでユミルに帰省したんだったな。」

ラウラとプリネの会話を聞いてある事を思い出したフィーはリィンに視線を向けて尋ね、フィーの質問を聞いてある事を思い出したガイウスもリィンに視線を向けた。

 

「ああ……他にはウォレス准将とユーディットさん、ログナー侯爵とハイアームズ侯爵もわざわざユミルまで足を運んで父さんや俺達に内戦に巻き込んだ事をユーゲント陛下達の時同様土下座の謝罪をしてそれぞれ”詫び”として多額の謝罪金や家宝、それに屋敷や別荘まで贈与してくれたんだ。」

「ええっ!?ウォレス准将やカイエン公の長女に加えて元”四大名門”の残りの当主の二人も謝罪しに来たの!?」

「まあ、”戦争回避条約”通りユーゲント国王がプリシラ王妃と一緒にわざわざユミルまで行ってリィン達―――”シュバルツァー家”に土下座までする謝罪をして、賠償である皇家が所有していた国宝や保養所の所有権の贈与もしたんだからユミル襲撃の”元凶”の貴族連合の上層部だった自分達も謝罪して賠償しなければならないと駄目だと思ったんだと思うよ〜?ちなみに”黄金の羅刹”達からは何を貰ったの?」

複雑そうな表情で答えたリィンの話を聞いたアリサが驚いている中、ミリアムは静かな表情で推測した後リィンを見つめて尋ねた。

「ユーディットさんやログナー侯爵、それとハイアームズ侯爵からはそれぞれ莫大な金額の謝罪金とそれぞれの家に伝わっていた家宝や保有していたいくつかの別荘の所有権、ウォレス准将からは”バルディアス男爵家”が代々受け継いできた実家の屋敷とウォレス准将の愛馬であったノルド高原で育てられた軍馬を贈与された。」

「ええっ!?じゃあウォレス准将は実家の屋敷を手放されたのですか!?」

リィンの答えを聞いて驚いたエマは信じられない表情で尋ねた。

 

「ああ。『ドライケルス大帝と共にエレボニアの平和の為に戦った子孫でありながら”第二の獅子戦役”である今回の内戦に加担した愚か者であり、ドライケルス大帝から授かった爵位を剥奪され、先祖の顔に泥を塗った自分には所有する権利はない』と仰って実家の屋敷の所有権の権利書等を父さんに贈与して、エリスには”軍人でありながら、自軍の勝利の為に戦とは無縁の中立国の貴族の令嬢の誘拐を黙認した事に対する償い”という事でウォレス准将が大切になさっていた愛馬を贈与したんだ。」

「フン、そんな殊勝な反省ができるくらいなら最初から内戦に加担しなければいいものを……」

「というか馬なんてあげて償いになるの?」

リィンの説明を聞いたユーシスは鼻を鳴らし、エヴリーヌは首を傾げ

「……ノルドの民にとって愛馬は”家族”同然のかけがえのない存在だ。ノルドの民の血を引くウォレス准将は断腸の思いで愛馬を手放す事が”償い”だと思って、誘拐されて家族と離れ離れにされたエリスに渡したのだと思う。」

「”家族”を失う事が家族と離れ離れにされたエリス君に対する”償い”か……」

「………………」

ガイウスの推測を聞いたマキアスは重々しい様子を纏って呟き、リィンは複雑そうな表情で黙り込んでいた。

 

「……オーレリア将軍は何をシュバルツァー卿達に贈与する事で”詫び”をしたのだ?」

「父さんにはウォレス准将同様実家である”ルグィン伯爵家”の屋敷の所有権、そしてエリスには”ルグィン伯爵家”に代々伝わっていたという長剣―――”名剣ヴェインスレイ”だ。」

「な――――”名剣ヴェインスレイ”だと!?本当にオーレリア将軍はあの名剣を手放されたのか……!?」

「ああ。」

「ラウラさんはその贈与された剣についてご存知なのですか?」

「随分と驚いているようですけど……そんなに凄い剣なんでしょうか?」

リィンの答えを聞いて驚いているラウラにプリネとツーヤは不思議そうな表情で尋ねた。

「ああ……アルゼイド家に代々伝わっている”宝剣ガランシャール”程ではないがこの世に一振りしかない名剣で、確か”ルグィン家”が当時のエレボニア皇帝より”伯爵”の爵位と共に餞別として授かった名剣であると”アルゼイド流”の門下であった頃のオーレリア将軍から聞いた事がある。」

「ええっ!?」

「という事は元々はエレボニア皇家所有の剣だったのですか……」

ラウラの答えを聞いたエリオットは驚き、セレーネは目を丸くした。

 

「そう言えば……オーレリア将軍って剣士よね?もしかしてレグラムに現れた際に身に着けていた剣がそうなのかしら?」

「ああ。オーレリア将軍が家督を受け継いだ際に、自身の愛剣として常に身に着けていらっしゃった。……どうやらさすがのオーレリア将軍もエレボニアを衰退させてしまった事に関しては責任を感じていらっしゃったようだな……」

アリサの疑問に答えたラウラは重々しい様子を纏って呟き

「それってどういう事なの?」

「剣士にとって常に自分の命を預けて来た愛剣が不本意な形で他人の手に渡るなんて、剣士にとっては最も屈辱的な事だからなんだ。」

「そ、そうなのか!?」

フィーの疑問に答えたリィンの答えを聞いたマキアスは驚きの表情で声を上げた。

 

「うむ……リィン、オーレリア将軍は実家であるオルディスの屋敷まで手放されたとの事だが、まさかオルディスがクロスベル領になったからか?」

「ああ。『エレボニアを衰退させた元凶の一人が他国の領地となったオルディスに居座り続けると言った生き恥を晒す真似はしない』と仰って、父さんに屋敷の権利書等を贈与したんだ。」

「そうか……」

リィンの答えを聞いたラウラは重々しい様子を纏い

「フン、幾ら伝説の”英雄”とは言え個人の功績を超える為だけに内戦に加担した時点で十分生き恥を晒しているというのに、何を今更な事を。」

「というかエリスの得物って細剣(レイピア)だよね?長剣(ロングソード)なんて貰ってもエリスには使えないからエリスにとっては意味ないんじゃないかな〜?」

「それにそんな剣、ウィルがその気になれば作れるから全然珍しくもないじゃん。」

「そう言う問題ではありませんよ、ミリアムちゃん……」

「それとエヴリーヌお姉様も洒落にならない事を言わないで下さいよ………」

「ウィルさんでしたら、本当に先程話に出たオーレリア将軍が大切にしていた名剣を作れるでしょうから洒落にならないですよね……」

ユーシスは鼻を鳴らし、ミリアムとエヴリーヌにエマとプリネはそれぞれ疲れた表情で指摘し、ツーヤは苦笑していた。

 

「そう言えば……貴族連合の上層部からシュバルツァー家に贈与された賠償の話を聞いて少し気になっていたが、贈与された屋敷や別荘はやはり売却したのか?」

「へ……ど、どういう事だ?」

リィンに質問するラウラの疑問を聞いたマキアスは不思議そうな表情で首を傾げ

「……今までユミルの領主であり続けたシュバルツァー家の資産ではログナー侯爵達から贈与された別荘や屋敷の維持費は厳しい為、売却したかどうかを訊ねているのですわ。屋敷や別荘の維持費には当然人件費も必要ですから。」

「あ………そっか。幾ら将来クロイツェン州の統括領主になる事が決定しているとはいえ、シュバルツァー家が元々納めていた領地はユミルだけだもんね。」

セレーネの指摘を聞いたエリオットは目を丸くした。

 

「その点は大丈夫だ。さっきも説明したようにログナー侯爵達から莫大な金額の謝罪金も頂いたし、ログナー侯爵達が謝罪しに来る少し前にリフィア殿下がわざわざユミルにいらっしゃってユミル襲撃の件で謝罪されて、その時にもメンフィル皇家から見舞金兼謝罪金としてとてつもない金額のミラをシュバルツァー家の口座に振り込んだと仰っていたそうだから、そのお金を維持費に当てているって父さんは言ってたよ。」

「ええっ!?メ、メンフィル皇家からも謝罪金が支払われたの!?」

「まあ、貴族連合を嵌める為とは言え貴族連合による2度目のユミル襲撃をさせてリィンを”パンダグリュエル”に向かわせたから、その謝罪なんじゃないかな。ちなみにメンフィル皇家は幾らシュバルツァー家に渡したの?」

「フィ、フィーちゃん。」

リィンの説明を聞いたアリサが驚いている中、フィーは静かな表情で推測してプリネを見つめて尋ね、その様子を見たエマは冷や汗をかいた。

 

「確か……28兆ミラだったと聞いています。」

「に、28兆ミラ!?」

「とてつもない金額だな……」

「確かエレボニアが帝国だった頃の1年の国家予算が約10兆ミラだったはずだからその2,8倍という事になるぞ!?」

プリネの話を聞いたエリオットは驚き、ガイウスは呆け、マキアスは信じられない表情で声を上げた。

「ほえええ〜……それじゃあシュバルツァー家って凄いお金持ちになったんだね〜。」

「”凄い”というレベルもとっくに超えているだろうが、阿呆。確かアルバレア公爵家の総資産が約4兆ミラだと記憶しているからその7倍だな。」

「そ、そっちもそっちであり過ぎよ……”ラインフォルトグループ”の総資産は確か約2兆ミラだし。」

「えっと……アリサさんも人の事は言えないと思いますよ?」

呆けているミリアムにユーシスは呆れた表情で指摘した後真剣な表情で答え、ユーシスの答えを聞いて疲れた表情で指摘するアリサにツーヤは苦笑しながら指摘した。

 

「というか何で28兆ミラなんていう中途半端な金額なの?」

「エリスさんが誘拐されてカレル離宮に軟禁されていた日数が約14日間でしたから、その事に対する見舞金が1日1兆ミラですから合計14兆ミラ。そして貴族連合による2度目のユミル襲撃を把握していながら、貴族連合を罠にかける為にユミルを襲撃させた事に対する謝罪金がエリスさんが幽閉されていた期間の見舞金と同額の14兆ミラとして計上されましたから総合計28兆ミラがシュバルツァー家に贈与されたとの事です。」

フィーの疑問に答えたプリネの話を聞いたリィン達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせ

「い、一日一兆ミラってどんな計算よ……」

「ですがそんな大金を支払う程メンフィル皇家はシュバルツァー家の存在を重視している証拠という事にもなりますよね……」

「以前から疑問に思っていたのですがメンフィルの国庫には一体どれ程の莫大な財産が貯められているのでしょうか?」

我に返ったアリサは呆れた表情で呟き、エマは静かな表情で呟き、セレーネは苦笑しながらでプリネを見つめて問いかけ

「さ、さあ……?私は国の財務には携わっていませんから、詳細な金額まではわからないんです。」

プリネは冷や汗をかいて苦笑しながら答えた。

 

「ちなみにプリネの毎月のお小遣いは5億ルドラだよ。」

そしてエヴリーヌが呟いた言葉を聞いたリィン達は再び冷や汗をかいて表情を引き攣らせ

「エ、エヴリーヌお姉様!どうしてその事をご存知なのですか!?」

プリネは慌てた様子でエヴリーヌに尋ね

「エヴリーヌはプリネのお姉ちゃんなんだからプリネの事なら何でも知っていて当たり前だから、それを知る為に前にリウイお兄ちゃんに聞いた事があるの。妹のお小遣いを把握して無駄遣いしないようにするのもお姉ちゃんの役目だし。」

「もう、お父様ったら……」

「それ以前に姉のお前の方が無駄遣いをしそうに見えるがな。」

胸を張って自慢げに話すエヴリーヌの答えを聞くと疲れた表情で頭を抱え、ユーシスはジト目でエヴリーヌを見つめた。

 

「ま、毎月5億って……」

「中小企業の平均総資産をとっくに超えているわよ……」

エリオットは表情を引き攣らせ、アリサは疲れた表情になり

「いいな、いいな〜!毎月そんなにお小遣いがあったら贅沢し放題じゃない〜!せめてその100分の1でいいからボクに分けてよ〜!」

「みっともない真似は止めろ、阿呆。」

「というか100分の1でも500万だから、100分の1でもとんでもない金額である事をわかっていて言っているのか?」

プリネを羨ましがるミリアムにユーシスとマキアスは呆れた表情で指摘した。

「え、えっと……確かにエヴリーヌさんの言う通り、メンフィルの皇族の人達は皆さん毎月莫大な金額のお金をそれぞれ自由に使えますけどそのほとんどを国庫に回していますから実際はそんなに使っていないはずですよ。」

「なるほどな……メンフィルに莫大な金額の資産があるのはその事も関係しているのであろうな。」

苦笑しながらエヴリーヌの説明を捕捉したツーヤの話を聞いたラウラは静かな表情で呟いた。

 

「ま、まあ、その件は置いておいてアンゼリカ先輩は全然気にしていないというかむしろ、『”四大名門”という肩書がなくなったお蔭で父からは”四大名門”の息女だからという理由での小言は言われなくなるだろうし、内戦に加担した父にも良い薬になった』って言ってたくらいだものね。」

「そ、そうだな。ログナー侯達にとっては気の毒だけど統括領主権限を剥奪されても、新たな統括領主になった人達にも重用されているんだから、パント臨時宰相は決して理不尽な処罰方法は提案していないと思う。」

そして話を逸らせる為に口にしたアリサの別の話題にリィンは苦笑しながら頷き

「新たな統括領主……内戦の功績によって爵位が上がったラウラの実家―――”アルゼイド侯爵家”とエーデル先輩の実家である”ブルーメ伯爵家”だな。」

リィンの言葉に続くように呟いたガイウスは仲間達と共にラウラに視線を向けた。

 

 

説明
第145話
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