艦隊 真・恋姫無双 95話目 |
【 立食ぱーてぃー の件 】
? 司隷 洛陽 都城 予備室 にて ?
私達が中に入ると、丈の高い円卓が幾つも並べられており、その上に数々の料理が、所狭しと配置されていた。
華琳「(場所を間違えた………いえ、加賀が中に入り確認していたよ! 場所は此処で間違いない! でも、この状況は………いったい何だと言うの!?)」
一瞬驚いたものの、直ぐに頭を切り返して冷静になり、辺りの様子を確認した。 そこには、間違いなく美味しいそうな湯気を立て、香ばしい薫り、甘く疲れを癒してくれる品が、私達を饗す(もてなす)ように準備されている!
『ネギと肉の酢漬け(マリネ)』
『鮓(なれずし)』
『串焼き』………と日常的な料理。
だけど───これは何?
私が見た事も聞いた事の無い、調理方法で出来た料理に……視線が奪われる!
そんな私の思惑を余所に、後ろで春蘭達が騒ぎ立てる!
ーー
春蘭「か、『唐揚げ』か!? 季衣、流琉……見てみろ! 久しぶりに見る唐揚げだぞ!! まさか、また……味わえるとは日々が来るとは………この夏侯元譲──感激に堪えない!!」
季衣「春蘭様、ど、どこに───わあっ! やったーっ!! 『アレ』から食べる機会無かったんだ!! 流琉──ほら、ほらぁ! 唐揚げだよ!」
流琉「こ、これは──あの時の『立食ぱーてぃー』に出てきた品! やっぱり──兄様が!!」
ーー
季衣と春蘭は、目の前の料理を指差しては喜び、流琉は……泪を流して顔を覆う。 秋蘭が、春蘭達に不作法だと指摘するが、あの興奮の仕方じゃ……収まるのは当分掛かりそうだわ…………ふぅ。
でも、何で………私でさえ知らない料理名を……知っているのかしら。 ああ、そうだわ……桂花が居たわね。 あの娘が春蘭達に伝えたのでしょう。 この部屋の秘密も知っているのだから、当然よね。
それにしても、北郷は何を考えているのか………姿を現したら、問い詰めなければならないわ。 私に隠していた理由をハッキリさせないと………!!
────『立食ぱーてぃー』
………どこかで………聞いた覚えが…………………
◆◇◆
【 桂花の走馬燈 の件 】
? 洛陽 都城 予備室 にて ?
私は……華琳様の側を離れて、一人で部屋の中を廻る。
丸い『てーぶる』の上には、前の世以来………食べた事の無い料理が並んでいる。 唐揚げ、おにぎり、野菜炒め等……この時代に無い調理で出来た品。
ーー
華琳「な、何よ………これっ!」
秋蘭「……………こ、これは!?」
ーー
少し離れた場所では、華琳様や秋蘭が驚き声を挙げる。 二人の記憶は、まだ甦っていない。 この懐かしの料理を見ても……初めて見たように驚愕する顔を眺め、つい頬が緩んで微笑んでしまい……心が暖かくなる。
『可愛い』──など思ってしまうのは秘密だ。
私の精神年齢的な物か分からないけど、こんな事をウッカリ華琳様の眼前で呟けば、記憶を甦った後が怖いわよ……。 昔のように、華琳様に罵倒され喜ぶ女じゃないのだから。
★☆☆
まさか………一刀が、このように開催してくれるなんて…………私は信じられなかった。 まるで、当時の『立食ぱーてぃー』が再現されているようだ。
私達の知る調理方法は……『煮る、焼く、生食、蒸す』が主な物。 当時は『揚げる』調理が無かった。 殆どの物が一刀より教えてくれた御蔭で、私達の食生活は豊かで楽しい物に変わったのよ。
『立食ぱーてぃー』………確か、一刀が大陸から消え去り……華琳様が覇王として桃香達と雪蓮達を招待して開いた催物。 季衣と鈴々が食べ比べを始めたりし、春蘭が酒に酔い明命が目を輝かせて介抱したり、流琉と雛里と朱里で仲良く料理していた事を………昨日のように覚えている。
★☆★ ☆★☆
あの時、私は………一刀を辛く当たった事を思い出し、『酔ったから戻る』と理由を付けて……皆が楽しむ中……一人で部屋に戻った。
部屋の窓から見た空は、満天の星空。 そして、大きく光輝く満月が、皆を優しく包み込むように、月光を照らしている。
まるで、一刀が消えた日を再現している───そんな風に思えたのだ。
私は………華琳様が語った一刀の最後の状景を……目を瞑り思い浮かばせる。
華琳様に拾われ、数々の献策、身分を問わない献身、身命を賭して運命を転換させた男───『北郷一刀』
彼は──己が消えるという信じがたい事実を受け入れ、愛する華琳様を最後の最後まで気に掛け、自分の意識が消え去るまで、精神を乱さず淡々に会話をして──その数奇な運命を終えた『天の御遣い』
私が散々に彼を罵倒して毛嫌いしたのに、そんな彼は……魏の国で最大の功績を挙げ、華琳様や私達を支え、そして愛し……遂には世界の運命の流れまで変えた!
そんな彼を………私は───っ!!
悔しくて悲しくて、自分自身が憎くて………どうしようもなかった。
…………何が『王佐の才』よ!
──何が魏の筆頭軍師よ!!
愛した男に対して素直になれず、結局……その帰還を防ぐ事も、別れの言葉も交わす事も、引き留める事も出来なかったのにっ!!
私は……この日を待っていた。
一刀の下に旅立つ時を。
仕事の引継ぎも……極秘で終わらせている。 私が居なくなっても執務に影響は無い。
寧ろ、こんな女……居なくなった方が、仕事がはかどるでしょうね。
『一刀……ごめんなさい。 私も……貴方の傍に行くわ。 許して貰えるか解らないけど、今までの事、全部謝罪するから……』
私は、そう呟いた後───机の引き出しに入れて用意していた自決用の剣を抜き、寝台の上に腰掛け───喉を一気に貫こうとした。
??『────馬鹿な真似は止めなさい! 桂花っ!!』
その時、急に部屋の扉が開き、私を止めてくれたのが………華琳様だった。
私の様子が変だと気付いた華琳様は、桃香達と別れて、私の様子を窺っていたのだという。 そんな華琳様に、私は何時もと違い、反抗的な態度を取った。
桂花『離して下さい! 北郷が消えたのは……私の力不足、決意の足りなさです! 私が、私がぁぁ………北郷を信じ、素直に策を準備、もしくは動いていれば………北郷は………一刀は───消えなかったんですっ!』
華琳『桂花──貴女は死んで……何をする気なの! 一刀が消えたのは……一刀の役割り『私の大陸統一』で──全てが終わったからなのよ!!』
桂花『ですが、一刀は今の華琳様の想いは知らない筈! 毎夜、夜空を眺め星が地に降る事を待っている事、私達の誰が……必ず毎日一人が思い出して、泣いている事を知らない筈です!』
華琳『─────!?』
桂花『だから………私が死して魂だけとなれば、天の国へ行けます! そうして一刀に出逢い想いを伝えれば、一刀は必ず動きます! あの馬鹿で女誑しで……底抜けに優しい《天の御遣い》なら───』
華琳『桂花………そこまで思い詰めてくれて、私は嬉しいわ。 だけど……ね、貴女の自己満足を一刀が受け止めてくれるなんて、本当に思ってるの!?』
桂花『……………!』
華琳「あの馬鹿はね──自分自身が傷付く事、消滅する事に……悲しがる表情を見せたわ! だけど、私達に助けを求めなかった! 何故だか解る!? 私達を傷付けるのが嫌だった! 哀しませるのが……心底──嫌だったからよっ!!」
桂花『─────!!』
華琳『もし、桂花の言う通り──事が済んでも、一刀は喜ばない。 貴女と同じように後悔して、苦しむわよ! そして、貴女を犠牲にした私達もね!』
桂花『………………………………』
華琳『だから………待ちましょう。 一刀が無事なら、必ず魏に戻る方法を探し出し、この大陸に降りてくるわ。 だって、一刀は───この大陸が必要とする《私達の天の御遣い》なのだから!!』
★☆★ ★☆★
華琳様から説得された私は、それから華琳様と共に………一刀を待った。
そして、数十年待ち続け………春蘭を皮切りに……一人また一人去り………遂に華琳様まで。 ……………私に、皆の想いを託されて逝かれたわ。
結局………私も逢えず仕舞いで生涯を閉じてしまったけど──今、直ぐ近くに、一刀が居る!
私達が待ち続けた………《天の御遣いの精神》を継承する《北郷一刀》が!
華琳様………貴女への恩と忠義!
そして、一刀への皆の想い!
必ず………届けさせて見せます!!
そして、私の心も…………一緒に!!
◆◇◆
【 艦娘の舞台裏 の件 】
? 洛陽 都城 大厨房 にて ?
───華琳達が、休んでいる時間帯に話は遡る。
艦娘達は、今──都城内の厨房に居る。
この場所では───毎日毎日、数百人規模の調理人が集り──皇帝陛下、その一族、高官達の為に食事を作る部屋である。
ここは、本来……『関係者以外立ち入り禁止』の場所。 衛生面と暗殺を防ぐ為の処置の為だが、北郷一刀の願いにより──本人と配下の者が入り、諸侯に味わって貰う料理を調理しようと試行錯誤しているのだ。
ーー
瑞穂「日本古来の食事は、一汁三菜(吸い物、鱠、焼き物、煮物)が基本ですが、ここは大陸です。 此方の事情も考慮しなければ、私達が持て成しを強制しているだけの堅苦しい物になりますね………」
鳳翔「それに、手間が掛かり過ぎれば………空腹と苛立ちで喧嘩になる可能性も秘めています。 手早く作れて、楽しんで頂くようにしなければ………」
ーー
山城「流石は良い材料、調味料が置いてありますが……これは、国の税金で賄われた物。 私達は、材料を自分で揃え、器具だけ借用しましょう」
山城「姉さま、調理器具を運びますっ!」
扶桑「───山城、怪我は大丈夫なの? 無理しなくても………」
山城「………姉さま……今回の戦闘での負傷には、正直……感謝しているんです。 確かに、艤装を破壊されたのはショックでしたけど、その御蔭で……姉さまに反撃の機会を差し上げ、提督も守れて………幸せな時でした」
扶桑「山城…………」
山城「それに、私が攻撃を受けて──姉さまが、私を大切に思ってくれる事を分かり………とても幸せだったんですっ!! だから、愛しい姉さまの為に、もっと頑張ります! て、提督は………姉さまのついでに守りますから!」
扶桑「………でも、無理は許さないわよ?」
山城「───はいっ!!」
ーー
艦娘の中でも……料理のスキルが高い鳳翔、料理と作法に詳しい瑞穂が先頭になり、簡単かつ諸侯の口にあう天の料理を思案。
調理器材を確認する扶桑、運ぶ姉さまの手伝いをする山城、
同時に、天の料理が気に入らない場合を考慮して、紫苑と雛里が大陸の料理を数十人分……調理を行っている。
そして、手伝う事が無く、手持ちぶさたになっている二隻が……厨房の隅で任務を待っていた。 しかし、軽い食事を明け方にして……昼前に厨房へと入り込んだゆえ、必然的に………お腹が空く。
ーー
夕立「くんくん………美味しいそうな匂いだっぽい………」
不知火「そうですね……」
夕立「不知火は、お腹……空かない?」
不知火「ええ…………私としては、馴染みが薄い匂いなので………」
夕立「そうなの? だけどぉ夕立………とっても、とってもぉぉぉ──空いたぽいっ! 我慢出来ないの!! ────お腹空いたぁ、お腹空いたぁ、お腹空いたっぽい!!」
不知火「ふう…………仕方ないですね。 それなら、ここに戦闘配食が『いただくぽいっ!』あるのですが………いそ………」
夕立「うまっ! うまっ!! 旨いっぽい!!」
不知火「………風の作った──もう食べていますか。 これで、不知火に落度はありませんね?」
夕立「うま────うっ!? ぐぅうううっっ!!?」ボトッ
不知火「人の話は、最後まで聞く事ですよ……。 それは、不知火が作った戦闘配食ではありません。 磯風の作った戦闘配食の残りです。 幾ら……味が変でも……食べ物を粗末にする事はできませんので」
夕立「ぉぉお腹が──痛いぃいいいっっ!!」
不知火「不知火は説明をしていました。 その説明を聞かずに、口にしたのは夕立の落度です。 不知火に責任は………ありません」
夕立「し、不知火に………た、謀れた………ぽいっ!」
不知火「貴女の行動は、皆の……そして司令官の足を、引っ張り兼ねない行為になりますので………少しの間、此処を離れて貰います。 それから、命に別状は、全くありませんので。 赤城さんで既に実証されていますから……」
夕立「うぅぅぅ〜〜〜〜〜痛い痛い痛い、痛ぁあああいっぽい!!!」
不知火「さて、不知火は夕立を連れて、部屋で休ませましょうか。 このままにして置くと、皆が心配して任務の支障になります。 さて、夕立……行きますよ? 後で、薬と食事を持って行きますので………」
夕立「し、不知火の馬鹿! 夕立や不知火が抜ければ、手伝う人数が足りなくなるじゃない! そうなったらどうするのよっ!? 痛たたたたっぽい!!」
不知火「この不知火に、手抜かりなどありません。 司令官が先程、電文を入れていましたから……直に『応援の艦隊』が来てくれますよ。 不知火達が居なくても、任務は必ず達成されるでしょう」
夕立「うぅううう…………痛い痛いっっ!!」
ーー
夕立は、他にも文句を言いたかったが……原因は自分にあるし、腹痛が酷いわ、これ以上文句を言って、不知火の機嫌を損ねたら……何をされるか分からない。 …………どうしようも無いため、抵抗する事を諦めた。
ーー
不知火「では……行きましょう?」
夕立「……………………っぽい」
ーー
こうして───夕立は、大人しく不知火に連れて行かれたのだった。
◆◇◆
【 一刀との指令 の件 】
? 洛陽 都城 出入り口 にて ?
★☆★
──さて、話に入る前に説明を。
この時代の洛陽都城は、城が二重構造になっており、皇帝の居住区、漢王朝の執務拠点と重大な場所となる城を『内城』といい、洛陽の民達の居住区を、囲むように高い城壁が聳え立つ場所を『外城』と呼称する。
もちろん、厳密には外城を『羅城』と言ったりする場合もあるが、此処では……このような呼称で呼ばせて頂くので、ご承知して頂きたい。
★☆★
その内城の庭は、広大な庭園になっており……様々な名木、珍妙な草が植えられ、太湖石等の奇抜な形した物を配置。 観賞する者、思索する者を飽きさせない作りをして、日々の変化を楽しませる仕組みである。
また、洛陽の南を流れる『洛水』より河川の水を引き、巨大な池を作り出して舟遊びに興じたり、大量の荷物を運搬する水路として利用したりするのだ。
その場所で、艦娘達を指揮する『北郷一刀』は、池の水面上に浮かぶ艦娘達に命令を下す!
ーー
《 艦娘達が厨房に入っている同時刻 》
一刀「川内、神通、那珂……君達に任務を命じる。 漢中鎮守府から洛水を通り抜けて、洛陽附近に艦隊が直に接岸する。 その時に──目の前の水路を利用して、洛陽内に入って貰うよう誘導して貰いたいんだ!」
川内「了解! でも、提督……私達が、水面での移動可能だって事、この世界で知られちゃてもいいの?」
神通「出来れば………知られない方が……良いと思います。 無知が切札になる事もありますので………」
那珂「那珂ちゃんは、華やかな水上パフォーマンスも出来ちゃうとぉ、ファンの皆が喜ぶから………いいよ!」
一刀「うん……『皆』が知らないなら、最大の切札として秘密にしたい。 だけど……深海棲艦が、白波賊に手を貸している状況から考えれば、既に情報は漏れている可能性が高い。 そうなれば………隠す意味は無くなる!」
「「 ──────!? 」」
那珂「うん、その通りだと思う! でも、アイドルは隠し事するから、ファンの子達も余計に知りたがってぇ、その秘密に迫ろうと躍起になるんだよ? それを上手く利用するのが、人気者の条件だと思うけどなぁ?」
一刀「………那珂らしいな。 だけど、深海棲艦が知っている事を、わざわざ隠すのは、どのみち無駄骨じゃないか? それに、俺達に味方する者にまで、秘密を隠して、不信感を懐かせる結果じゃ……詰まらないだろう?」
那珂「そっか………そうだよね。 ファンの裏切るのは………アイドル失格だもん。 那珂ちゃん──反省☆」テヘッ
川内「…………それで、逆に大公開しちゃて、私達の凄さを知らしめるんだね? 暴露されて悪く言われるより、こっちで都合良く演出した方が、好感触得そうだもんねぇ? さすがぁ提督! 相変わらず悪知恵が働くぅ〜!」
神通「ね、姉さん! 失礼しました、提督! 提督の考え………理解致しました。 ならば、この神通──必ず任務を達成してみせます!」
那珂「はぁい、任してぇ! 皆の熱い視線、那珂ちゃんに釘付け──だよっ☆!!」
川内「よし、提督の考えも理解したし───じゃあ……提督、行ってくるね?」
一刀「───頼む! 事故だけは………起こすなよ?」
川内「りょーかい! さあ──水雷戦隊、出撃するよ!」
「「 ────はいっ! 」」
ーー
こうして───川内達は抜錨して、洛水に向かって行った。
◆◇◆
【 洛水での出来事 の件 】
? 洛陽 洛水 にて ?
洛水………洛陽の南側を流れる河川であり、水上交通にも使用される黄河の支流の一つ。 そんな河の上を、小さな二人乗りの舟が進む。
自由自在に舟を操り、漁を生業(なりわい)とする者達で、今日も風が少なく天気が晴れ。 昨夜の急な大雨で、今日の漁を心配していたのだが、無事に太陽も見れて、水量も上々。
────この上も無い釣り日和だった。
ーー
漁師1「昨日から、不思議な天気じゃわい。 あれだけ快晴だったのが、一晩だけ大雨になるなんてな。 しかも、何の予兆もなかったとはの…………」
漁師2「まあ──これも河伯(河の神)様の御蔭だよ。 儂等が漁が出来るのは………な。 そう言えば、洛水の河伯様は………ものすごい美しい方だと聞いているが……今まで見たことが無い。 これを生業にして四十年経つが………」
漁師1「気長に待つしかなかろうな。 儂も毎日拝んでいるが、姿を見たことは無い。 だが、古人曰く『諦めたら終わり』と言葉がある。 信心が篤ければ、いつか………いつか──いつかぁあああ──あいうえおぉぉぉ!?」
漁師2「な、なんだよぉ………あ、あれはっっっ!?」
ーー
小舟の前方に、十数人の麗しき美少女達が───二列の隊列『複縦陣』で、手に荷物を持ちながら、河川を滑るように下ってくる!
漁師二人は驚愕の表情を現すしかなかった!
そもそも洛水の真ん中で、女の子達に衝突しそうになる舟とは───普通は無い!! それに、向こうの早さも流れに添って突き進んで来るのだ。
その間───僅か二引(約50b)しかない!!
漁師1、2「「 ーーーーーーー!!! 」」
衝突を覚悟した漁師達は、船底に掴まり衝撃に耐えようと備えた!
ーー
??「前方に民間船発見! 右舷に回頭してぇ!」
??「ウチらは左舷にや! 右舷に通すでぇぇぇ!!」
ーー
そんな声が聞こえたと思えば、小舟が大波に揺られて大きく上下に動く!
生きた心地はしなかったが、来るべき衝突も無く、不思議に思い顔を上げれば、前に女の姿は見えない!
漁師2「───お、おいっ! あれを見ろぉおおおっ!」
もう一人の漁師が叫ぶのを聞き、後ろを振り向くと──真ん中を大きく開けた女の子の列が、その動きを停止して、此方を心配そうに見ている。
そして、自分達の乗ってる舟の側には──二人の少女。
ーー
潮「えーと、ご、御迷惑を掛けて……ご免なさい! こ、これ……御詫びの印で置いておきますね? わ、私は……特型駆逐艦……綾波型の『潮』と言います。 もし、何かありましたら……『北郷一刀』を………お訪ね下さい!」
朧「綾波型駆逐艦の『朧』って言います。 お怪我が無いですか? そうですか……良かった。 驚かせて申し訳ないですね? 朧達は洛陽に向かいますが、何かありましたら……お知らせ下さい! 必ず、報いに参りますから!」
ーー
二人は一礼をして、距離から離れた艦隊に戻る。
そして、大きく手を振りながら……速度を上げて去っていった。
漁師1「…………な、なんだっ………これは? さ、酒!?」
二人の漁師が………人心地ついた後で確認すると───小舟の上に………未開封の酒瓶が一本、置いてあったという。
★☆☆
艦隊の洛水進行は───当然、洛陽は元より洛水流域では大騒ぎ。
普通の人では………絶対に出来ない事である。
こんな事が出来るのは聖人、仙人、神と人智を超えた力を持つ者のみの筈。
見馴れぬ衣服、理解が出来ない鎧のような装飾(艤装)、人目を引く笑顔と涼やかな笑い声。
しかも、十人以上が……前方を見据えて、舟やら岩やらを綺麗に回避。
たまに疲れたのか、岸の岩場で腰を下ろし、お喋りを始める姿も見れた。
そして……洛水を行き渡る舟、両岸の集落からも………良く見える。
ーー
民1「な、なんだぁ───ありゃっ!」
??「何、見てんのよ! 気持ち悪いわねぇ!!」
??「ご、ごめんなさい! ごめんなさい!!」
民1「…………………………!?」
ーー
民2「ば、化け物………にしちゃ………」
??「はぁ〜い! うふふふっ………」
民2「はぁーい! …………うん、可愛すぎる────痛ぅううう!!」
民3「アンタ………鼻の下伸ばしてんじゃないよっ!」
ーー
老人「おおぉぉぉ…………あ、あれこそは、伝説で伝わる河伯であろう! ありがたや、ありがたや…………」
??「新時代(゜∀゜)キタコレ!」
??「………時代が時代だから仕方ないよ。 だけど、こうも期待されると──絶対に守りたい! この人達や皆、そして──提督も!!」
??「もう………??は真面目なんだから〜( ´∀`)σ 気を張らずに頑張りましょ! 無理っぽいなら、第七駆逐隊のメンバーで助けるからね!」
??「───うん!」
ーー
民達の戸惑い、驚き、崇敬など──反応はいろいろ。
後に、行き先が洛陽だった事、河川を通過した一行は『天の御遣い』だったと風の噂を聞き及び、洛水に向かい伏し拝んだという。
そして、朧達より酒を貰った漁師達は、酒を洛水の河伯から貰ったと伝え、関係者で飲んだ後、酒瓶を祀ったそうだ。
───その感動と畏敬の念は長く続き、詩才のある者が洛水に止まった折、当時の話を聞いて甚く(いたく)感動し、とある詩文を作り上げた。
『黄初三年、余朝京師、還濟洛川……(黄初三年、都に参内し洛水を渡る……)』
『其形也、翩若驚鴻、婉若遊寵……(その姿……コウノトリのように軽やかに、飛翔する龍のように美しくしなやか………)』
これが──かの有名な『洛神賦』であったそうだ。
ーーーーーーー
ーーーーーーー
あとがき
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
これで、今年最後の投稿になります………もっと早く投稿したかったのですが、休みが遅かったので、やっとできました。
次回も、どうかよろしくお願いします。
説明 | ||
今度こそ、今年最後の話です。 1/1 桂花の話を修正しました。 | ||
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コメント | ||
mokiti1976-2010提督 コメントありがとうございます! 本年も宜しくお願いします! 若い女の子が団体さんで、水上走ってくれば……それはもう。 まあ……向こうの河にはイルカやワニが『居た』そうですので、水面走る女の子が居てもおかしく…… (いた) 気付くのが遅れて年が明けてしまった…とりあえず明けましておめでとうございます!そして…確かに女の子が水に浮いた状態で走っていたら、神様かその御遣いにしか見えないでしょうね。(mokiti1976-2010) |
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