外れ者シリーズ外伝 |
「((現象|ヌケガラ))と((人間|コロシヤ))」
【それ】は存在してはいるが、現象としてカウントされている。
【それ】は生きてはいるが、生物としてはカウントされていない。
【それ】はかつて生きていた者の抜け殻、強すぎた力が還らず遺り、持ち主が人に生まれ変わった後に生まれてしまった存在。
【それ】は生前在り続けて来たが、只の一瞬も【生きられなかった】。
生き物でないが故に、生きてはいないが故に、【((現象|それ))】が起こした、成した、しでかした物事は全てそれと同じく現象となる。
【それ】には打ち消す者…ディスペルという名があった。
その名はかつて、元となった者が生まれ変わるその時まで名乗った名だった…故に【それ】は空虚だった
【それ】がよく現れるのはとある世界だった。
ゲイムギョウ界…元となった男は生前、その世界と関わりが深かったからだとある者は言う。
【それ】はただ虚しかった……【中身】がない限り、己に生も死も無い。
その身ですら【抹消】と言う概念種の現象で在る限り、【それ】に心はない…あるにはあるが、そんなものは仮初でしかない。
他者が思われてる通りの印象に沿って振る舞った所で、中身があるわけじゃない。
元の存在の通りに我を張ろうとするが、その我は所詮受け売りでしかない。
犯し、侵し、冒し、汚し、穢し、壊し、消し、滅して来たとしても、そこから元通りに戻したとしても、虚しさは埋まらない。
例え生きられても罵られ、例え死ねても蔑まされる。
消えたとしても【抹消】そのものであるが故に消える事も出来ず、直ぐ現れる。
あらゆる意味で害でしかない意志を持つ概念現象……そんな((存在|モノ))であった【それ】は何時しか【理不神】と呼ばれるようになった。
そんな【理不神】はある時、ある次元のゲイムギョウ界に訪れた時、白い仮面で顔を覆っている人間の男と出会った
【それ】は何を思ったのか、仕事帰りだったその男の前に立った。
「君は何者だ」いきなり【それ】に立ちふさがれた人間の男は言った。
「ディスペル…」と【それ】は言った。
「ディスペル…はて、お伽噺の【理不神】に出ていた登場人物だったような…」と男は言った
「こんな所にも流れているのか…お前は何者だ?お前」と【それ】はほそぼそと呟いた。
「私はリンク・ワーカー…暗殺者をやっている。」と男は言った。
「殺し屋か…なら依頼がある」と【それ】は言い、続けて【それ】は男に言った。
「俺を…【殺してみてくれ】」【それ】が言ったのは無理難題だった…神々でさえ不可能だったことだった。
それをましてや人間に言うなど最早無茶苦茶であったが、男はなんとそれを引き受けた。
「前払いとして、お前に様々な知識をやるよ…準備が出来たらここに来い」と、【それ】は次元の狭間にしまい込んでいた書物や道具、武器などを取り出した。
目の前にこれまで見た事もなかった物ばかりが現れ、男は若干、気分が高揚した……これをきっかけに、この男は珍しい物の収集と読書が趣味となった。
それから男は受け取った物を持ち帰り、様々なものを読み学んだ。
魔法や言語、詠唱や戦術、戦略、国政、多世界の歴史や地理等…見知らぬ世界の様々な知識は、男の心を一時少年の頃に戻した。
そうして仕事がてらに色々学んで数か月……男はあの時【それ】とであったあの場所に訪れた。
【それ】は驚く事に、あの場所から一歩も動いておらず、にも拘らず平然としていた。
再び男と出会った【それ】は「場所を移そう」と言って、次元の穴を用いてここではない何処かの平原へと男を連れて行った。
その平原には何もおらず、その平原には草木しかない。
「さあ始めよう」【それ】の一言を合図に、【男】は挑みだした。
こうして「神々が駄目なら人で試してみよう」という【それ】の気紛れと、「世の中は奪うか奪われるか…ならどちらに転んでも構わない」という男の思考によって、人と((理|それ))の戦いは始まったのだった。
【それ】が青い炎の剣を振るうと、男はその攻撃を見切り、後ろに退きつつ【それ】に投剣を投げる。
【それ】が青い炎の壁を産み出して投剣を消して防げば、男は防いだ瞬間に【それ】の足元に投剣を投げ刺す。
気付いてない【それ】が男に向かって突っ込むと、男は手を合わせ、投げ刺した投剣で魔法陣を作り、【それ】の足元から太い光線を放った。
概念存在であるが故に霊体に近かった【それ】には、光の属性を持つ光線が普通よりもよく効いた…((も|・))((し|・))【((そ|・))((れ|・))】((が|・))((青|・))((い|・))((炎|・))((を|・))((纏|・))((っ|・))((て|・))((な|・))((か|・))((っ|・))((た|・))((ら|・))
【それ】は((己|・))((自|・))((身|・))でもある青い炎を咄嗟に身に纏い、直撃を免れていた。
それでも【それ】にはダメージが入っているのだが、意を介さず速度を変えずに剣で切りかかる。
男は光線にも意を介さず迫って来た【それ】に驚愕したからか、一瞬だけ反応が遅れ、服が切れてしまった。
その後男はすぐさま自分の服の一部を切り裂き、切れ跡から燃え出す青い炎が燃え移らないようにする。
風に乗って飛ばされていきながら、切り離された服の一片は、青い炎によって跡を残さず燃え消えてしまった。
もし切れ跡を切り離してなかったら、服どころか男もろとも燃え消えてしまってただろう。
これまで【それ】を亡き者にしようとした神々も、それによって問答無用で抹消されてしまった。
世界やその理が一冊の本であるならば、【それ】そのものでもあるその炎はその世界や理を焼き消す炎である。
男は書物を以てそれを知っている為、手際よく対処出来た。
男は【それ】が本気でない事を見抜いていた…故に本気にならない内に、戦いに熱が入らない内に済ませようとしていた。
【それ】の思惑を男は分かっていた…故に男は依頼を遂行する為に、【それ】が乗り気にならない内に殺そうとしていた。
だが【それ】に対する決定打が今の男にはなく、模索しながら戦っている為に長引いてしまっていた。
男が【それ】の攻撃をかわしながら、己の持つ((術|スベ))を只々考え無しな【それ】に叩き込んではいるものの一向に通じず、とうとう((その時|・・・))が起きてしまった。
「そろそろお前を把握した…中々やる方だったけど残念だ」【それ】がそう呟いた直後、男の目の前に現れたと同時に男を手刀で貫いていた……((筈だった|・・・・))
【それ】が突いた筈の男はその場所におらず、男は【それ】のすぐ横にいた。
「どういう事だ?」と【それ】は目を丸くしていた。
「君が【過程】を消して直ぐに【結果】を出す事は推測していた……だがその力は君自身の任意によるものであるならば、対応出来ないことは無い」
「理屈は分からないけどやるな……」
【それ】と男が何を言っているのかと言うと、こう言う事である。
【それ】がやったのは、【出来事や行動の過程】を消す事で【出来事や行動の結果】だけを残した。(例:「ブッ殺す」と心の中で思えばその時に行動は終わる)
対して男がやったのは、相手が「攻撃する」事を読んで予め「回避する」という意志を持つ事で【攻撃を回避した】という【結果にした】。
そしてこれによって、男は【それ】に対する攻略法を見出した。
それから男は【それ】による概念攻撃を意志によって回避しつつ、詠唱を編み出しながら唱え始めた。
何を仕掛けるのかと【それ】は気になっていたが、過程の抹消のし過ぎであまり聞き取れなかった。
詠唱とは大抵が心象風景を現す物の為、読み取る事でそれがどういう術なのかなんとなくながらも読み取ることが出来る為、読み取れないという事が致命的なミスになる事もある。
準備終えた男が立っている所を見た【それ】は、男が何かを出すその前に仕留めようと魔法で男の背後に廻った…だが男はそれを読んでいたのか、【それ】の胸に投剣を突き刺した。
すると【それ】の身体が急激に青い炎が漏れだし、自身に何が起きているのか分からぬままその身は光だし、【それ】は爆発した。
男はその爆発によって生じた青い炎に呑まれた瞬間、意識を失った。
気が付いた時、男は【それ】と初めて会ったあの場所にいた。
しかも会った【その時】に時間が巻き戻っていた…と言うか記憶がぼやけていた
「お伽噺の人物と戦うなんてありえないな」と、男はさっきまでの事を奇妙な夢だったと思った。
そして何故か身体に疲れが残っていた為、今日の仕事はここまでと早々に帰ることにした。
……自分の住処に付いたその時、パッと見るとベッドとデスクしか置かれてない筈の自分の部屋に、大量に積まれている段ボールを見た。
男がその中身を確認すると、前払いとして【それ】に貰った物と、一通の手紙が入っていた。
手紙を開いて読んだ後、男はクスリと笑って「勘弁してくれ」とつぶやきながら手紙をデスクの上に置き、ベッドに飛び込み冬眠する動物のようにぐっすりと眠った
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リンク・ワーカーへ
まさか人間が成し遂げるとは思わんかったよ〜!お蔭で俺は生まれることが出来たZE!
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こーゆーのは可笑しーと思うけどさ、殺してくれてありがとな!!
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もしまた会う事があったら色々と愚痴り合お〜ゼ〜
ってか寧ろまた殺り合お〜ぜ!!楽しかったしお前伸びしろあるし楽しみ!!
ディスペルより
P.S.
多分俺死んじゃったせーでさっきまでの事殆ど覚えてねーだろーから、次やりあう時の為に資料を渡しとく…よく読んで復習すること!
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それと整理整頓はしっかりな、部屋とか見るからにお前、ぜってー片づけるの苦手だろ?
そんじゃまたなー!!
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大晦日か元旦に終わらせたかった…… | ||
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