英雄伝説〜運命が改変された少年の行く道〜 戦争回避成功ルート |
その後再び学院内を周り始めたリィンは生徒会室を訊ねた。
〜トールズ士官学院・学生会館・生徒会室〜
(トワ会長……こっちにいるはずだよな。ちょうど今日、生徒会の引継ぎが終わるって聞いたけど……)
部屋に為にリィンは扉をノックしたが、返事は返って来なかった。
「(……?気配はあるみたいだけど……あ……ひょっとして。)……失礼します。」
以前にも似たような経験をしたリィンは返事が返って来なかった理由を察し、念の為に一言断ってから扉を開けて部屋に入室した。
「……すーっ……すーっ……」
部屋に入るとトワが机にうつぶせになって、居眠りをしていた。
(やっぱりか……引継ぎとか、春からの準備で忙しくしてたんだろうな。はは……端末室の事を思い出すな。)
トワの寝顔を見つめていたリィンはふとかつて学院祭の出し物について悩んでいた事をトワに相談した出来事を思い出した。
(……っと、あんまり寝顔を見たら怒られるか。)
「……ん………アンちゃん……ジョルジュ君に……クロウ君も……」
「トワ会長……」
トワの寝言を聞いたリィンは複雑そうな表情で呟いた。
「ン……?」
「あ……」
するとリィンの声に反応したトワが起き上がり、リィンに気付くと慌て始めた。
「わわっ、リィン君っ!?ふええええっ!?どうしてわたしの部屋にいるのっ!?エッチなのは卒業してからだよ!って……生徒会室……そっか……寝ちゃってたんだ……」
「……はは……すみません。ノックはしたんですけど。」
我に返ったトワの様子をリィンは苦笑しながら見守り、声を掛けた。
「あ、あはは……わたしが悪いんだし気にしないで。ああもう、何でリィン君にはこんな所ばっかり……ううっ……また寝顔見られちゃったし……」
「えっと……なるべく見ないようにしましたから。」
「うう……それならいいけど。取りあえず、立ったまんまもなんだし、ソファーに座ってお話しようか。」
「はい。」
そしてリィンはトワと共にソファーに座った。
「……引継ぎ、一通り完了したんですね?」
ソファーに座り、トワのデスクを見つめて書類が無い事を確認したリィンはトワに訊ねた。
「うん、これでわたしも晴れて生徒会長退任、かな。次の子達も優秀だから教える事も無かったんだけど。」
「……お疲れ様でした。卒業したらNGO―――”非政府組織”巡りでしたか。」
「うん、政治・経済・技術・医療とか幾つかの分野があるんだけど一年間は勉強させてもらうつもり。その後……軍か省庁に入るかはちょっとわからないけど。」
「どちらからもしつこいくらい熱心に勧誘されていましたよね。それで一年の猶予付きで何とか引きさがってもらって……カレイジャスを率いてあれだけの指揮を取っていたら当然な気もしますけど。」
「う、うーん……ただ必死だっただけなんだけど。でも、これからの事を考えると色々な視点は持っておきたいから。軍に入るにしても省庁に入るにしても自分の考えは持っておきたいんだ。何よりもエレボニアの未来の為に―――って、えへへ、ちょっと大げさかな?」
リィンの話を聞いて恥ずかしがった後決意の表情で答えたがすぐに苦笑した。
「いえ……会長がそういう道を選んでくれて、本当に心強いです。頑張りすぎて無茶だけはしないで欲しいですけど……応援、しています。」
「えへへ……ありがとう。そう言えば、どうしたの?来てくれて嬉しいけど用事があったんでしょう?」
リィンの応援の言葉に恥ずかしそうに笑ったトワだったがリィンの訪問の理由が気になり、不思議そうな表情で訊ねた。
「っと、そうでした。明日は自由行動日ですから何かお手伝いすることはないか聞きに来たんです。」
「え、でも……明日は君達最後の――――」
「……だからこそ、今まで通りに過ごしたいんです。俺達”Z組”の”最後の自由行動日”を――――」
「…………そっか…………」
リィンの話を聞いたトワは静かな表情でリィンを見つめて黙り込んだ後やがて答えを口にした。
「―――うん、わかったよ。幾つか心当たりもあるし、寮の郵便受けに入れておくから。よろしくお願いね、リィン君。」
その後生徒会室から退出し、寮に戻ろうとすると誰かが声を掛けて来た。
〜校門〜
「リィン!」
声に気付いたリィンが振り返ると”Z組”の面々がリィンに近づいてきた。
「エリオット……なんだ、みんな勢ぞろいか。」
「あはは……すごい偶然だよね。」
「ふふ……リィンも帰るのよね?」
「ああ、もちろん。」
「じゃあ、行くとしようか。」
そしてリィンは”Z組”の面々と残り少ない全員での下校を始めた。
〜トリスタ〜
「………………」
仲間達と共に下校しているリィンは”ライノの花”が咲く木を見つめ
「もうちょっと、かな。」
「ああ、今月末くらいに満開になるんだったか。」
「?一体何が満開になるの??」
「フフ、”ライノの花”ですよ、エヴリーヌお姉様。」
フィーとガイウスの会話の意味がわからないエヴリーヌにプリネは微笑みながら答えた。
「3月末……ちょうど入学式と同じか。我らが初めて出会った日と。」
「そうですね……」
ラウラの言葉にエマは頷いた後仲間達と共に昔を思い出していた。
「みんな、入学式の日に初めて会ったんだよね?」
「ああ、そうだな。正直あの時はどうなるかと思ったもんだけど。」
「えへへ、そうだよね。マキアスとユーシスなんか出会っていきなりだったし。」
ミリアムの疑問に答えた後呟いたリィンの言葉に同意したエリオットは入学式でのオリエンテーションでいきなり喧噪な空気になったマキアスとユーシスを思い出していた。
「あれは……その、僕も悪かったというか。」
「まあ、気にするな。未熟さゆえの過ちは誰にもあるだろうからな。」
「ありがとう―――って、自分は悪くないような顔をしてるんじゃないっ!散々上から目線でこき下ろしてきたくせに!」
「だから誰にもと言っているだろうが?」
「あはは……」
いつものように口喧嘩を始めたマキアスとユーシスを見たエマは苦笑し
「フフッ、入学式の時と比べたら本当に天と地の差ですよ……最初の”特別実習”の時点で今のお二人の関係の10分の1でもあったら、あたしも少しは楽ができたのですけどね……」
「お、お姉様?どうしてそんなにも疲れた顔をなさっているのですか??」
疲れた表情で肩を落として呟いたツーヤの言葉を聞いたリィン達が冷や汗をかいている中、セレーネは戸惑いの表情でツーヤに声をかけていた。
「ふふ……今となっては懐かしいわね。」
「ふむ……懐かしいと言えばアリサとリィンのあれもあったか。」
懐かしそうな表情をしていたアリサだったがラウラの言葉を聞くとリィンと共に表情を引き攣らせた。
「ちょ、ラウラ!?」
(誰か言うと思った……)
アリサが慌てている中、リィンは疲れた表情をしながら入学式のオリエンテーションの際、落とし穴によって落下するアリサを助けた時にアリサの胸が自分の顔に当たっていた出来事を思い出した。
「なになに、面白そう!?」
「どうせリィンの事だから、何かの拍子でアリサの胸でも触ったんじゃないの?みんなの話だと内戦の時にアリサ達が露店風呂に入っていた時も突入した事があるくらいだし。」
「エ、エヴリーヌお姉様!」
(び、微妙に当たっていますから反論できませんね……)
「えっと……その……違いますわよね、お兄様?」
一方事情を知らないミリアムが興味深そうな様子をしている中、エヴリーヌが呟いた言葉を聞いたプリネは慌て、ツーヤは苦笑し、セレーネは表情を引き攣らせながらリィンを見つめ
「ん、エヴリーヌの推測、微妙に正解。実は――――」
「わ、わざわざ言わなくってもいいのっ!」
フィーが答えようとするとアリサが声をあげて制止した。その後リィン達は町の広場のベンチに集まって談笑を始めた。
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第150話 | ||
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