ポケットモンスター トライメモリーズ 第6話 |
第6話 頭脳の少年
「これでよし・・・と」
ミシロタウンのオダマキ研究所にて少年が荷物をまとめていた。
「うーん、必要な荷物はこれくらいかな?」
オダマキ博士の息子であるリクガだ。
慌しかった父の研究がようやく落ち着いてきたため念願のトレーナー修行の旅に出れるのだ。
傍らにはもちろんといわんばかりに相棒のキモリがいて、腰のホルダーには以前ゲットしたドクケイルの入ったモンスターボールがあった。
リュックを整えているとこんこん、と扉をノックする音が鳴る。
「だれ?」
「リクガおにーちゃん!アリカだよ!」
「なんだ、アリカか。入っていいよ」
扉が開き入ってきたのは彼の妹、アリカ。
腕には可愛らしいプラスルのぬいぐるみが抱かれていた。
「プラスルのぬいぐるみ?
お前が持っていたのはマイナンじゃなかったか?」
「おにいちゃんがアリカにプレゼントしてくれたの!」
「え?兄さんが帰ってきているのかい?」
なかなか会えない兄がいると知り少し喜ぶ。
「うん、さっき!
でもまたでていっちゃったの・・・」
「あの人も忙しいんだ、仕方ないさ」
「あ!おにいちゃんおみやげいっぱいもってきた!
リクガおにいちゃんにもあるって!」
「わかった、あとでいくね」
そう伝えるとアリカは自室へ戻った。
準備が整ったのでリュックをせおいキモリを肩に乗せると一階へ降りる。
#
リビングに入ると土産を目の前に話を盛り上がらせる両親がいた。
「おお、リクガ! さっきジンキが帰ってきてたぞ」
「アリカから聞いたよ。」
「これ、あの子からあなたにって置いていったわ」
「ありがとう。どれどれ?」
箱を開けて出てきたのは真っ赤なバッジケースだった。
「うわぁ・・・かっこいい!」
「あなたが旅に出ると聞いて真剣に選んでいたらしいわよ」
「うん、兄さんに会ったら礼を言わなきゃね!」
数時間後、夕食の席で明日の早朝家を出て行くと話すリクガ。
「お兄ちゃんもいなくなっちゃうんだ・・・」
「ごめんな、アリカ。」
「いいよ、アリカ強いからだいじょーぶ!」
「・・・そうか」
一番上の兄がいない間面倒見てきただけあり少し不安だが自分の気持ちにうそもつきたくないため旅に出ることを選んだリクガ。
相棒のポケモンがきゃも、と鳴く。
「父さん、母さん。
ボク絶対に一人前のポケモントレーナーになるよ!」
「ああ、お前なら大丈夫だろう!
なんせ私達の自慢の子だからな!」
「賑やかだった食卓が少し寂しくもなるけれどね」
近所の人が誰でもうらやむほどにこの家族は仲がいい。
今いない兄だけでなく、リクガやアリカも将来が期待されておりかげりというのが見当たらないのだ。
翌朝、リクガはミシロタウンの人々に見守られながら旅に出ようとしていた。
「とうとうリクガの坊主が旅立つんだなー!」
「皆さん大袈裟すぎですよ・・・僕の旅立ちはここまで派手にしなくてもいいのに」
「なにを言ってるのよ!」
リクガの肩をバンバン叩くのは八百屋のおばちゃんだ。
よく母の手伝いでお使いにいっていたためよく会うので親しみ深い人物だ。
「私らミシロの人達にとっちゃあんたは期待の星なのよ!
いつかお父さんすら越えちゃう可能性にもかけてるんだからここは堂々としちゃいなさい!」
「・・・は、はい」
博士に呼ばれ図鑑を受け取ると人々の方へ向きなおり深く頭を下げる。
「じゃあ、行ってきます・・・!」
リクガはミシロタウンから101番道路へ足を踏み出し振り返ることなく自分の生まれ育った町を出ていった。
「行ってしまいましたね」
「まぁ子どもはみんな、自分の道を見つけて成長するものだ。
甘い考えだと思われるかもしれないが、夢だけを見せて現実とは無縁でいてもらいたいんだよ。
夢こそが人を導くから、現実を教えてしまえば若い芽をつんでしまうからね。
少なくとも若く将来がある今だけは・・・」
旅立つ息子の背を見送って、一人の父親がそう言った。
「聞こえてるよ、もう」
帽子を深くかぶり照れ隠しをする。
「必ず帰ってくるよ・・・またな、ミシロタウン」
どんな色にも、染まらない町。
ミシロタウンを旅立ち、101番道路を通り今いるのはコトキタウンだ。
「101番道路とコトキタウン、103番道路は見慣れてるから本格的に104番道路を抜けてそのまま森へいくか」
肩にのるキモリもリクガに同意した。
トウカシティには昨日ポケモンと図鑑を父とともにある女の子の元に届けにいったのだ。
ジムもあることは知っているがリーダー・センリの強さを知っているため挑戦はまだ先延ばしにしようとしていた。
「まだボクたちははっきりいって弱い。
だからほかの町のジムで鍛えていこうね」
「きぁ〜も」
「まずはカナズミシティのジムを目指そうか」
ポケナビのマップを閉じた時、上空からなにかが突っ込んできた。
「おっ!スバメだ!」
ラッキー、と言いキモリを繰り出しでんこうせっかを食らわせる。
反撃で同じ技でつっこんできたスバメを回避し真上からタネマシンガンで攻撃し体力を奪い弱らせる。
ふらついてるところを狙いモンスターボールを投げスバメをそのまま捕獲した。
「よし、好調なスタートだ!」
図鑑を確認してみればしっかりとスバメのデータが載っていた。
研究者の息子としてはポケモンのデータも集めていきたいのだろう。
「とにっかく!
このホウエンを旅して体験できることは全部体験しよう」
「きゃもきゃもきゃ!」
元々好奇心が強い彼は父の研究を手伝いながらもさまざまな情報を集めていた。
まだまだホウエン地方にはたくさんの楽しみがあり彼の興味は知るだけでなく体験したいという気持ちにもあふれていた。
ガサガサ・・・
「ん?」
草むらから音がした。
野生のポケモンか、と思いキモリをスタンバイさせ自身も身構えるリクガだったがそこから姿を見せたのは赤い服の男だった。
「・・・」
「ひ、人・・・?」
見たことない格好をしているな、と思い警戒しつつ気づかれないようにそこを去ろうとしていた。
直後。
「グラエナ、とっしんだ」
「! キモリ、でんこうせっか!」
男がグラエナを繰り出し攻撃をしてきた。
「スカッたか・・・」
「な、何者なんですか貴方は・・・!?
いきなり攻撃してくるなんて・・・」
「お前のそのポケモンをいただこうと思っただけだ。
珍しいから我々の新勢力になると思ってな」
「・・・悪人には敬語を使う必要なんてないな。
そんなこと、お断りだね! キモリ」
主人の声とともに戦闘態勢に入るキモリ。
「グラエナ、かみつけ!」
「タネマシンガンでむかえうて!」
かみつこうと向かってきたグラエナにタネマシンガンをうちこみその攻撃を打ち消す。
その攻撃に耐えたグラエナはシャドーボールでキモリに反撃してきた。
「なんてパワーだ」
相手のグラエナのレベルが高いことを知りリクガはキモリを戻し相性のいいドクケイルと交代させようとする。
しかし・・・
「戻れキモリ!」
「キャモ!!」
「えっ・・・」
キモリがそれを激しく拒絶した。
どうやら自分はまだ戦えるといいたいようだ。
一瞬、交代させるべきか迷うがキモリの目を見てそのまま戦うことを決めた。
「ここはおまえのその負けん気に賭けてみてもいいな。」
再び向かってきたグラエナにもう一度タネマシンガンをうちこみ、リクガはにやりと口角をあげる。
「グラエナ、シャドーボール!」
「こうそくいどうでかわすんだ!」
こうそくいどうのスピードを利用しグラエナの攻撃を次から次へとかわしていくキモリ。
相手が軽くばててきてるのを見てタネマシンガンをうつ。
「ちょこまかと小賢しい真似を・・・。
グラエナ、とっととかみついて始末してしまえ!」
「木の上に飛び乗れ!」
リクガの指示と同時に木に飛び乗るキモリ。
グラエナと男もこの行動は予想できていなかったため戸惑っているところにリクガは次の指示を出す。
「そこからたたきつける攻撃!」
「なっ・・・」
「さらに、ブレイククロー!」
落下速度を利用したたたきつける攻撃から追加攻撃としてブレイククローを食らわせてグラエナを戦闘不能にした。
「よしっ」
「・・・っち、戻れグラエナ!」
男はグラエナを下げ、リクガを睨みつける。
リクガの方も負けじと睨み返す。
「覚えてろよ小僧! 次に会ったときお前をしとめてやる!!」
「今回喧嘩をふっかけてきたのはお前だろ、それってただの逆ギレでしかないんじゃないのか?」
「うるさい!」
男はそのまま走り去っていった。
「・・・なんだったんだ?」
「キャーモ」
「まぁいいか。
そんなことよりもキモリお疲れさま、疲れたかい?
・・・って聞くまでもなさそうだね。」
キモリの表情を見て、ボールを構える。
「お疲れキモリ、しばらくボールで休むといいよ。」
「キャモ」
連戦を勝ち抜いたパートナーをボールに戻し少年は次の町を目指しもう一度歩き出す。
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