Dear My Friends!ルカの受難 第15話 ミクの受難 |
<第14話末文より>
(アフス城内・開発武器試験場・バトルアリーナ)
ミク「そ・・・・・・・・・そ・・・・・・・・そんな・・・・・・・・・」
ルカコピー「申し遅れました、私はルカコピーと申します。親愛なるミクさん、さぁ、楽しみましょ?」
<Dear My Friends! ルカの受難 第15話 ミクの受難>
ザシュ!
ルカコピーは剣士の姿で、ミク達の方向へ更に1歩踏み込んできた。
ミク「ひっ!」
ミクはまだこの状況を飲み込めも受け入れもできない、更に泣き出す事も混乱する事もできない心理状態だったので、ただ反射的に1歩後ずさりすることしか出来なかった。
しかし、助け船はすぐにやってきた。テルである。
テル「ちょっと待て! こっちは今の今言われたばかりで、ミクさんの準備が出来てない! 時間を頂きたい!」
ユキ「・・・いいだろう。用意が出来たらミクを闘技スペースに連れてきてくれ。ルカコピー、すまんがこっちの待機スペースで待っていてくれ」
ルカコピー「解ったわ。ミク、もう私と楽しむのは決定事項だから、くれぐれも逃げないでよね♪」
こういうとルカコピーはユキ側の待機スペースにサクサクと移動し、座ってミクの方をニコニコしながら見ていたのだった。
(アフス城内・開発武器試験場・テル側待機スペース)
ミク「ガクガク・・・・・ブルブル・・・・・」
学歩「大丈夫でござるか?」
テル「・・・・気持ちは分かる。実はさっきの試合中、私は事前にミキから知らされていて、そして、ミキと決めてしまったんだ。前の試合で私が勝って、君とルカコピーを戦わせて、先の道を開く事を・・・・こうでもしないと完成魔法陣は奴らに渡り、君達の世界も危険な状態になってしm」
ミク「もういいです・・・・わかってます、テルさんが勝ってイーブンにして、なんらかの試合が執り行われて、それにも勝って私たちがトータルで勝たないといけないって事くらい・・・ただ・・・その選手が私で・・・相手がルカのコピーだ、って事を・・・まだ受け入れられないんです・・・・ごめんなさい・・・・」
テル「いや、それが“普通”の反応だよ。私ですら、珍しくミキに激昂してしまったよ、“それでも人間か!”と」
学歩「拙者なら、ミキを斬り裂き、ユキ達を斬りつけに行くと思う。危なかった」
ミク「・・・・・ごめんなさい・・・・私・・・・・弱くて・・・・」
テル「今は自分を責めるな。時間は制限無しで貰っている。気が落ち着いたら、これからの事を決めないと行けない。残念なことだが、君がルカコピーと戦うのは避けられない。私の魔力で、君の武器や装備もそれなりに強化しないといかん」
学歩「テル! まだそういう事を話す段階ではないでござる! 自分の大親友の姿をした敵と戦うミクさんの事をもっと考えるでござる!!」
テル「しかし、“どうやっても避けられない未来”から目を背けてばかりでは行けない! 冷静に戦略を立て、絶対に勝てる方法を見出し、装備も心も準備しておかないと!」
学歩「だから、まだその段階では!」
ミク「もういいです、言い合いはやめて下さい。多分、二人とも正しいです・・・」
テル、学歩「・・・」
ミク「学歩さん、テルさん、うん、もう大丈夫、そろそろ歩き出さないと! 私、戦います、“ルカの偽物”と。多分、最初は一発も銃弾を当てられないで、逃げ回るだけだと思います。ごめんなさい、でも、逃げている間に、もしかすると、“当てる決意”、が生まれるかも知れないんです。もしそれが最後の最後でも生まれなかったら・・・・私はルカコピーに殺されると思います」
テル「・・・そうだな、ヤツはルカさんの純正コピー品ではない。向こうの屈強な戦士のパーツをミックスされている。間違いなく、君を殺しに来るだろう」
学歩「くっ・・・・なんたる卑劣な・・・・・」
ミク「・・・もし、私が殺されたら・・・・ルカには悪いけど・・・・」
テル「・・・ああ、すまないが、戦力と今の状況から、ルカさんの帰還は諦め、私は速攻で逃げさせて貰う。こんな条件を突き付けた向こうの考えにはつき合いきれないからな。学歩達、インタネ共和国とクリプトン王国の面々は、完成魔法陣の譲渡と引き替えだろうが、安全に帰還させてくれるだろう。そちらは向こうに任せることにする。だが・・・」
ミク「だが?」
テル「それは考えない方向でこれから戦略を立てる」
学歩「そうだな」
ミク「!」
テル「我々は絶対に勝つのだ! 負けられない戦いなのだよ、これは! 我々にとっても! ミクさんにとっても! ルカさんにとっても!」
学歩「無論だ」
ミキ戦の時からそうだったが、実に珍しい光景だった。冷静沈着で、かなり冷酷な“彼”が、こんな熱い決意を示したのは。ミク、学歩、アペンド達、そして協力してくれたミキ達などの造反組が、彼をこんな熱い人間に変えていったのだろう。だが、ただ熱いだけの熱血漢に変わったわけではない。その裏にちゃんと“勝つストラテジー”を組み立てる“冷静さ”を伴っていたのだ。
テル「これから、“勝つ方法”、の戦略設計と武器防具の改造を行う事にする!」
ガタン!
その時、外部回廊からバトルアリーナのテル側待機スペースに入れるドアが開き、医務室にいるはずの、ソニカ、リン、レン、アペンドが入ってきた。レンに付き添っているリン以外の負傷者は、それぞれ各所に包帯を巻いていたが、通常生活するには問題ない状態まで回復していた。
リン「皆さんには、私の治癒魔法もかけてあるのでご安心下さい」
レン「テル、そういう事には俺達も混ぜてくれよ? 相手は剣術使いらしいしな」
ソニカ「よりにもよって“そっくりさん”が出てきたらしいな。それなら、私の出番だ!」
アペンド「相手はルカコピー、こちらは魔弾銃。それなら、銃の製作者の私が改良しないと話にならんだろ!」
学歩「皆さん、大丈夫でござるか?」
テル「というか、何で来れたのだ? それと、何で今の今起こった対戦カードの情報を知っているんだ?」
アペンド「医務室のベッドで寝ていた“ミキ”がこっそり私たちの所に移動して、コソコソ話で全部教えてくれたのだ」
レン「そりゃ最初は警戒したけど、話を聞いたら、怪しんでいる状況でないと判断してね」
リン「医務室の酒瓶持ったおじさん先生に、“心配だから”、“私の治癒魔法をかける”って口説き倒したの。様態も安定してきて緊急でもないから、戦わない条件付きで、許してくれたの」
ソニカ「さすがに戦闘や激しい動きは無理だが、作戦会議くらいには参加できるぞ?」
アペンド「こんな状況下で、医務室で寝てられるか!」
テル「…すまない。私も“確実な策”があった上で“やろう”と言っていたわけでは無かった故、大変助かる。有り難う」
アペンド「テル・・・・・変わったな」
テル「おかげさまでね」
剣術指南の、学歩とレン
フィジカル&メンタルヒーリングのリン
偽物攻略のソニカ
魔弾銃のアペンド
統括のテル
そして戦うミク、相手のルカコピー
役者は揃った。もう、後戻りはできない。
(アフス城内・開発武器試験場・医務室)
さて、ミク達のルカコピー戦の戦略会議が始まる頃、レン達に情報をリークした“ミキ”自身も、ある大事なことを行動に移していた。重傷で倒れているフォーリナーの戦士達は、治療のため睡眠薬で眠っていたが、他の邪魔な“ミキの付き添い兵”を全員ユキの所に帰した上で、酒瓶を持った先生と対峙していたのである。
先生「…」
ミキ「説得がいいですか? 強引がいいですか?」
先生「…ベッドのマイクで聞いとったよ、全部」
ミキ「…で、先生の答えは?」
先生「わしはこれでも医学で飯を食っている身だ。医師として、上層部の“そんな”恐ろしい事を見過ごすわけには行かん。だが、わしではどうにもできん。出来るのは、戦って勝って貰いたいミクさんと…、会議に出席していたミキ、おまえだけだ」
ミキ「行かせてくれるんですね?」
先生「ちょっと待ってろ、渡したいものがある」
そういうと、先生は酒瓶を机の横に置き、引き出しから何かの“紙”を取り出し、羽ペンで何かを書き込み、サインをした“書類”をミキに手渡した。
ミキ「医師連絡書?」
先生「ワシが“カノジョの健康診断”を急遽行いたい、と書いて置いた。このような件での“健康診断”は、ワシに一任されている。衛兵に見せれば、ユキ達の確認を取らずに、カノジョを連れ出せる。ましてや、おまえがカノジョを受け取りに来ているのだ。問題は起こらんだろう」
ミキ「…感謝します」
先生「ワシに出来ることはここまでだ。まだ重傷の兵士の世話もあるし、色々フォローもあるだろう…皆を助けてやってくれ」
ミキ「…はい」
ミキは書類を丸めて握ると、急いで医務室を出ていった。
行く先は、“魔導研究棟 新規兵士造成室”。本物のルカが幽閉されている部屋だ。
(アフス城内・魔導研究棟 新規兵士造成室)
そこは、“魔導研究“より更に不可思議な装置が林立しており、青く光るドームベッド、沢山のカプセルが置かれた棚、まさに、マッドでサイエンスな部屋と言うべきだろう。
その奥、3つの椅子が置かれた場所に、左右の衛兵二人に挟まれて、本物のルカは黙って座っていた。あれだけ“大事な方だ”と言って来賓扱いしていた上層部なのに、今のルカの扱いは、その見る影も無かった。上層部が、ルカを丁重に扱ってブレインとして迎えようという考えから、強引や強制のような態度でブレインに引き入れるつもりに変わったのか、実際の所はわからないが、ルカコピーを作る事を決定してからのユキとアルの行動は、誰が見ても“おかしい”方向に向かっていた。そして“向かってしまった”。
そんな状況でも、ルカは黙って椅子に座っていた。綺麗に手の爪切りがされていた所を見ると、どうやらルカコピーを作るときの細胞摂取は、ルカの爪で行われたようだった。そう言う意味では、“外傷無し“、と判断できるだけ、幸運だったとも言える。
そんな“異質な部屋”のドアがバタンと開き、ミキが駆け込んできた。
ミキ「衛兵! 伝達事項だ! 医師がルカの健康診断をするそうだから、私がルカを受け取りに来た! 書類はこれだ!」
そういうとミキは右の衛兵に握っていた書類を渡した。
右の衛兵「ふむ。解った。この件は医師に一任している」
ミキ「そうか! ではルカを医務室に連れて行くぞ!」
左の衛兵「だが…こっちの用件の方が、先に“頼まれた”事なので、それは後回しにさせて貰う」
ミキ「何!?」
バタン!
イロハ「ルカさんには、私の方の“用件”を先に頼んでいる。医師の健康診断は後にして貰おう」
ミキはついてなかった。まさかルカに“追加の頼み”が先に付け加えられていたとは思わなかったのだ。
ミキ「イ…イロハ皇帝…なぜ…」
イロハ「重傷に見えたお前が、ピンピンしてこんな事をしている所を見ると、どうやら先の試合や会議の後に謀った疑いがあるが、まぁいい。どちらにしろ、お前はルカさんを連れては行けない。そして謀った上に暴力で私からルカさんを取り返そうとすれば、この城の全防衛装置を使って、お前を殺して、ルカさんを取り戻す。テル側にも重いペナルティをかすことにもなる」
ミキ「くっ・・・・・・」
イロハ「どちらにも面白くない話であるし、私とてルカさんに暴力を働くつもりは更々ない。ユキやアルがどういう考えかわからんが、私はルカさんに、この最後の試合の結果を、自分の目で見て確認して欲しいと頼んだだけだ」
ミキ「!? ル、ルカさん! こいつが言っている事の“内容”は知っているんですか!?」
ルカはゆっくりと話し出した。
ルカ「ええ。私の爪の細胞と兵士から作った私のコピー兵士と、ミクが戦う試合ですよね」
ミキ「!? な、なんでそこまでわかっているなら、“断らなかった”、のですか!! あなたの姿をした兵士と、あなたの大親友のミクさんが“戦う”んですよ!? 素人のミクさんに分が悪い事くらい、解りますよね!」
ルカ「あなたは私の所に来てなかったから知らないと思いますが、コピー兵士の事は、これまでの“来賓”的な扱いから一転して、“脅迫”でした。このイロハ皇帝だけが、まだ味方に付いてくれた方でした」
ミキ「アル達め・・・・・・」
ルカ「そうしてルカコピーが作られました。私は検体の関係から、ここに衛兵付きで幽閉されました。その時、イロハ皇帝が最後に退室する前に、私に先の件を“頼んだ”のです」
ミキ「そこが一番わからない! なんでこんな、ミクさんにもあなたにも“酷”な事を引き受けたんですか!」
ルカ「あなたは、私がミクから見える所に出てくることが、“ミクが不利になる事”、だと思いますか?」
ミキ「え!?」
ルカ「むしろ、“ミクの追い風”、になると思いませんか?」
ミキ「な!? なんで!?」
イロハ「私もルカさんが頼みを承諾してくれた時に聞かされて、改めて、彼女の賢明さ、を思い知らされたのだ。テル側の敵の将である私がだぞ? そして、その理由が私の不利になる事を知った上で、改めて私の方から、コピーを作る事を承諾してしまった事をわびて、試合を確認して欲しいと頼んだのだ」
ミキ「ど、どういうことですか!? 私にはさっぱり…」
ルカ「これからお話しします」
そして、ミキはこれから、自分の思考レベルが、ルカには遠く及ばないことを、痛感する事になるのだった。
(続く)
CAST
ルカ姫、巡音ルカ(ルカ):巡音ルカ
初音ミク(ミク):初音ミク
<クリプトン(Cripton)王国サイド>
魔導師アペンド:初音ミクAppend
僧侶リン(リン):鏡音リン
勇者レン(レン):鏡音レン
<インタネ(Interne)共和国サイド>
異国の剣士 神威学歩:神威がくぽ
<アフス(A-Hu-Su)帝国サイド>
魔導師テル:氷山キヨテル
皇帝イロハ:猫村いろは
神官ユキ:歌愛ユキ
クグツロボット(コードネーム)“ミキ”の外観:miki
(ミキの中身=ミリアム:Miliam)
ルカコピー:巡音ルカ
<フォーリナー(Foriner)軍政国家サイド>
変身兵士 ソニカ:SONiKA
皇帝アル:Big-AL
重機動兵器アン:Sweet Ann
剣士レオン:Leon
圧殺兵士ローラ:Lola
導士オリバー:Oliver
拳闘士シユ:SeeU
その他:エキストラの皆さん
***
<バトルアリーナの対戦カードまとめ>
第1回戦 : ×ソニカ vs ○拳闘士シユ
第2回戦 : ×レン vs ○圧殺兵士ローラ
第3回戦 : ○学歩 vs ×剣士レオン
第4回戦 : △アペンド vs △重機動兵器アン
最終戦 : ○テル vs ×ミキ(ミリアム)
EX最終戦 : ミク vs ルカコピー
回復担当 : リン & 導士オリバー (非戦闘員)
説明 | ||
☆当方のピアプロユーザーネーム“enarin”名義で書いていました、ボーカロイド小説シリーズです。第15作目の第14話です。 ☆今回は1話分を短めにした、ファンタジーRPG風味の長編です。 ☆当時は2期を意識してなかったのですが、本作は最新シリーズ“Dear My Friends!第2期”の第1期という作品になり、第2期のシナリオやカラクリに、第1期となる“本作”の話も出てきますので、これから長い長いお話になりますが、長編“Dear My Friends!”として、お楽しみくださいませ。 ☆この作品はナンバリング的には“第1期”となります。 ☆主役はルカさんなんですが…。 ☆今回は第14話では長くなると判断して、中断した部分を再考して書いた物の、最初の方です。 ☆これからちょっと話数のある“EX最終戦”が始まるのですが、その戦闘の準備段階のお話になります。 ☆比較的ルカに協力的なイロハ皇帝すら“感心”してしまった、ルカの“理由”は、次回で。 |
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