艦隊 真・恋姫無双 97話目 |
【 蠢動する一航戦 の件 】
? 司隷 洛陽 内城 通路 にて ?
厨房より逃げ出した赤城は──獅子奮迅の動きを見せた!
ーー
磯風「しまったっ! こんなところでぇ──っ!!」
ー
島風「───ああっ! ……あ、ああ……あうあうあうぅぅぅぅ」
ー
高雄「──きゃっ! な、何よ……それで勝ったつもり!?」
愛宕「いやーん! んも〜失礼しちゃうっ!!」
ー
陸奥「………………やるじゃない!」
ーー
磯風の制止を振り切り、島風の追撃を易々と突き放す!
騒ぎを聞き付けた高雄、愛宕の挟撃を見事な切り返しで躱し、前に立ちはだかる陸奥の防壁を難なく突破!
過度の空腹に因り『妖怪 食っちゃ寝』化した赤城にとっては、回避、索敵、速力、耐久、運が軒並みに上がり、空母とは思えぬ機動力、推進力を得て、自分を拿捕しようとする僚艦から逃れ出る!
正に………『無敵艦隊』と呼ばれた一航戦赤城の活躍ぶり?だった!
《 (作者注 妖怪食っちゃ寝化の事は、第五話目を参照に…… 》
しかし、その赤城にも──遂に最後?が訪れた。
ーー
明命「どうしたんですかっ!? 赤城さんが暴れているって聞いて、慌てて此方に来たんです! い、いったい何がぁ───っ!?」
「「「「「 ──────!! 」」」」」
ーー
騒ぎを聞いて駆けつけた明命が、途方に暮れている磯風達の前に現れたのだ。
その姿を見て、喜んだのは磯風──では無く、愛宕だった!
ーー
愛宕「あらっ、貴女が周幼平ちゃんね〜? 聞いていた以上に勇ましくって可愛いわ〜、うふふふっ!」
明命「えっ? ────ウプッ!?!?」ギュウゥゥゥゥ??
ーー
愛宕からの急な抱擁で、明命は逃れる事が出来ず、象徴的な胸部装甲へと顔を強制的に埋めさせた。 驚いた明命は、直ぐに脱出しようと試みるが、まるで拘束器具のようにガッチリして抜け出す事ができない!
しかも、柔らかく温かい無駄な肉(明命談)が、鼻や口を覆い呼吸が出来ない状態! 後、どれくらい持つのか分からないのだ!
任務とかであれば、呼吸を調節して長く息を止める事も出来るだろう。 だが、準備も出来ていない、急いで来たから呼吸が乱れている。 そんな状態で息を止められたら………どうなるかは想像に難なくない。
ーー
愛宕「やあ〜ん、お人形さんみたいで可愛いぃぃぃぃっ♪」
明命「ーーー ヾ(;≧皿≦)ゝ」ジタバタジタバタ?
ーー
まるで、自分を窒息させるような行動!
なぜ、こんな事をするのか困惑する明命!!
明命が必死に両手をバタつかせて、周囲へ自分の危機を伝えると、姉である高雄が気付き愛宕に注意して解放させた。
ーー
高雄「ちょ、ちょっと──愛宕!」
愛宕「───あらっ、ごめんなさいね〜?」
明命「─── (# ◎□◎)」ハァハァ ハァハァ
ーー
………涙目の明命が、魚のように口をパクパクさせて空気を取り込み、愛宕を睨みつけるのだった。
★☆☆
愛宕「ごめんなさいねぇ〜、あんまり貴女が可愛いから、ついつい強く抱き締めちゃったの。 身体は大丈夫? どこか痛いとこは無い〜?」
明命「……………………心が………痛いです………」
愛宕「───ほんとぅに、ごめんなさぁい〜!!」
ーー
愛宕から解放された後、明命は機嫌を悪くして顔を横にする。 愛宕が謝罪するが、冷たい返事が返ってくるだけ。 どうやら明命は、怒りを解いてはくれないようだ。
ーー
磯風「申し訳ない明命! この磯風から詫びを入れさせて貰う! それに、この件は提督に申告し、それなりに処置を頼むようにする! この磯風の名において誓おう! だから、機嫌を直してくれ!」
高雄「先程は妹の不始末で失礼しました。 愛宕の姉『高雄型 1番艦 重巡洋艦 高雄』と申します。 どうぞ、高雄と御呼び下さい」
島風「ふーん、あなたって……駆けっこ速そうだね? 私? 私は『島風型 1番艦 駆逐艦 島風』だよ。 『速きこと、島風の如し』って言われる島風と勝負してみない? 約束してくれるなら『島風』の名前、呼んでいいからね!」
陸奥「あらあら、よく長門が我慢……あっ、此方の話よ。 気を悪くしないでね? 私は『長門型 2番艦 戦艦 陸奥』──長門の妹になるのよ。 陸奥と呼んでくれれば嬉しいわ。 姉の長門共々……よろしくね?」
愛宕「え〜と、私………ああっ! ごめんなさい、顔を横にしないでぇ〜! 私は『高雄型 2番艦 重巡洋艦 愛宕』よ、愛宕と呼んでね〜」
明命「…………わかりました。 私の名前は───」
ーー
こうして、明命と艦娘達は名前を名乗り(真名も全員に預けた)、呼ぶ事を許可した。
そして、その直後──愛宕達より依頼をされる。
───『乱心した赤城を捕縛する事に、力を貸して貰いたい!』と。
◆◇◆
【 赤城 捕縛 の件 】
? 司隷 洛陽 内城 通路 にて ?
磯風「だから──明命! 頼むっ!! お前の力を、我々に貸して貰いたいのだ!!」
明命「あ、あの〜事情は解りましたが………磯風さん達が無理だったのに、私が敵うわけ………」
高雄「それは……勿論承知してるわ。 私達が期待してるのは、明命さんの『敵を捕縛する知恵』を示唆して頂きたいんです!」
愛宕「そうなの〜。 金剛さんから、ニンジャみたいなスゴい子が居るって、聞いていたから明命ちゃんの事は知ってたわ。 だから〜、その力を見込んで私達を助けて貰いたいなぁ〜って思ってたの──ねぇ?」
島風「島風より速いんだよっ! 明命が、赤城さんより速い訳ないじゃない! べ、別に………明命が赤城さんを追い抜くの………怖がっている訳じゃ──ないもんっ!!」
磯風「ああ……本来ならば、赤城の監視を怠った磯風の責ゆえ、我々だけで……解決したかったのだが……! 頼む! 司令にも多大の迷惑を掛けている! 何とか……力を貸して貰えないだろうか!!」
陸奥「捕らえた後の事は、心配しないで大丈夫! 私達が総掛かりで押さえるわ。 もし、危なくなったら……明命は逃げて頂戴。 これ以上、巻き込む訳には行かないわ!」
明命「………………分かりました! 私の力が及ぶ範囲ですが、出来る限り頑張ります! そ、それに……私を頼って下さるなんて、嬉しいですから……。 必ず、赤城さんの暴走を止めるようにしますっ!!」
ーー
そんな訳で、赤城捕縛対策委員会(仮)が急遽結成され、各々準備を始めた。
★☆☆
高雄「これ………ですか?」
島風「えぇ〜!? 幾ら何でもぉ…………」
明命「はいっ! 皆さんからの情報を集めますと、これで間違いなく──引っ掛かると思いますっ!」
磯風「確かに異論はあるかも知れないが、磯風達には打つ手は無い。 如何なる奇抜な手でも、明命を信じるしかないのだ!」
愛宕「私も賛成〜!」
陸奥「──しっ! どうやら来たわ。 重要な場所に向かう通路は、全て閉鎖して貰ってあるから、此処に来るのは赤城だけよ。 それに、餌には提督手作りの『スイート』を仕掛けてあるもの。 ───必ず、掛かるわ」
「「「「「 ………………ゴクッ 」」」」」
明命達が集めた材料を使い、遂に完成させた『対赤城専用捕獲罠』を通路に設置し、曲がり角で身を潜め、様子を窺う関係者達。
明命作の出来上がった罠を見て、余りの奇抜さに『これで大丈夫か?』との心配の声も上がった。
しかし、委員長格の磯風が黙らせ、この罠を実行を決断! 昨日の夜戦で白波賊を次々捕縛する手腕、仲間の金剛より聞いた活躍を信じての行動である。
どうなるかと思案する間もなく、設置して直ぐに………対する相手は、既に罠へと刻一刻……近付いていた。
ーーー
ーー
ーーーー
赤城「………………………」ヨロ…ヨロ…
普段の赤城と変わらないが、目は虚ろで視線は彷徨うばかり。
幽鬼のような、酔っぱらいのような千鳥足で歩き、これが磯風達を翻弄した赤城とは、到底信じらない。
赤城「お腹が…………空き……ました……」
───赤城から半開きの口から、そんな言葉が漏れ聞こえた。
ーー
愛宕「(あらぁ………もしかして、空腹で動きが冴えないのかしらねぇ?)」
高雄「(可能性は、ありそう……)」
島風「(今なら赤城さんを──ひゃああ……ウググググッ!)」
陸奥「(────大声出しちゃだめぇ!)」
磯風「─────!?」
ーー
赤城「………提督……ごは…………………(ρ゜!!」
ーー
そんな彼女の目が、急に飢えた狼のように鋭くなり、とある料理を捉えた。
赤城「ご、ごごご…………御馳走!」
赤城の目が大きく見開き……半開きに開いた口から、一筋の涎が流れ落ちる。
そこにあるのは………一刀が作った料理。
大豆を擂り潰して砂糖をまぶした白玉団子が、皿に乗る。 モチモチした状態が実に食欲を誘う。 まるで、『私を食べてぇ〜』と言わんばかりに。
そして………すぐ傍には、大きな籠が斜めに立ててあり、一本の棒が籠を支える。 棒の根元には紐が結ばれており、その紐の末端を辿れば………明命が緊張した顔で、赤城の一挙一動を注視している。
もう、お分かりであろう。
赤城が食べ物に食い付けば、明命が棒に付いている紐を引き、籠が被さる。
………よくある鳥を捕まえる『あの』仕掛けだ。
ー
赤城「……………………(゜ρ ̄;」
愛宕「(あ、後………少し…………)」
赤城「…………? …………??」
高雄「(あっ………! でも、さすがに一航戦ね、警戒して後ろに下がったわ!)」
赤城「──── ( ̄皿 ̄;」ジリジリジリジリ
島風「(でもでも、見てっ! 何か葛藤しているけど、食い気に勝てないみたい! 今にも飛び掛かろうとしているよぉ───!?)」
赤城「──── 〔 ∞ ⊂(▼Д▼; 」
明命「────今ですっ!!」グイッ!
ーーーーーーーバタン!!
赤城「──── /⊂(゜皿 ̄;」
磯風「───掛かったぞ! いくぞ、赤城を取り押さえろっ!!!」
ーー
こうして………赤城は、とうとう捕らわれてしまった。 ちなみに皿の白玉は……綺麗に無くなっていたそうだ。
後に、この罠で捕まったと聞いた関係者は、一様に唖然としたという。
★★☆
現在、赤城は────厨房の外に正座中。
勿論………そのままにしておけば、赤城が乱入する可能性があるので、赤城の額に『大食艦赤城絶対碇泊急急如律令』と書かれた……長30aの符が張り付く。
隼鷹が認めた(したためた)赤城専用呪縛符であり、これを付けられると、身体が動けなくなるという。 逆に『赤城の動きが3倍速くなる』札も存在するらしいが……見た者は居ない。
それは、さておき………何故、厨房の外で正座しているかと言うと………
ー
赤城「ああっ……天麩羅蕎の香ばしい匂いが! はうぅぅっ、こっちからは甘く煮詰める香りがぁ〜! て、提督ぅっ! もう、赦して下さいっっっ!!」
ー
赤城に料理の匂いが漂い迫るごとに、身体の中から悲鳴が上がる。 調理中の音、食材を切る音が赤城の後ろから響き、赤城の精神を苛(さいな)む。
具体的には『グゥ〜』とかの擬音が連続して鳴り響き、赤城の頭には、様々な食材の調理音により、その料理の完成予想図が的確に浮かび上がる。 だが、それらは──赤城の口には一切合切入らない物ばかり。
全部が運ばれて、諸侯や他の艦娘の口に入る料理だから。
しかも念のため、首から胸に掛けてある板には、『餌をやらないで下さい! 駄目、絶対!』と看板まで付けてある徹底振りである。
それが、一刀からの罰なのであった。
ーー
「「「「 ……………………… 」」」」
赤城「グッ、グスン………一航戦の誇り、こんな事で………失うわけには………」
ーー
明命「あ、あの───赤城さんは、どうなされたんですか!? あの鬼気迫る妖のような者が、あの時の優しく頼もしかった赤城さんと……同じだなんて、信じられませんっ!!」
磯風「………まあ………発作というか……なんというか……な?」
明命「あぁ──成る程……『お酒を呑まれた春蘭さん』みたいなものですか。 分かりました、人には話したくない事情があると思います。 赤城さん………くれぐれも飲み過ぎには………注意して下さいね?」キラキラキラ
赤城「…………純真な目に見詰められてぇ………痛いぃ、痛過ぎますぅぅぅっ!」
ーー
陸奥「前の世で………あれほど輝いていた………一航戦『赤城』って、どこに行ってしまったのかしらね………」
愛宕「うふふっ、此処に居るじゃない〜!」
高雄「…………不定はしませんけど………」
島風「なんで………私の時ばっかり………」
ーー
磯風達は、様々な想いを抱きつつ赤城を見詰めた後──大厨房の横の控室に入って行く。
明命も用が済んだ後、雪蓮達の下へ戻る予定だったのだが、磯風達より一刀に会ってくれと頼まれ、招待を受けたからであった。
◆◇◆
【 禍福は糾える縄の如し の件 】
? 洛陽 都城 大厨房外 にて ?
北上「──さてと、この料理を部屋に運ぼうかねぇ……大井っち?」
大井「はいっ、北上さん! 何処までも付いて行きますわ! 例え、萌える地の果て、暁に映える水平線の彼方でも、北上さんとならぁぁぁ!!」
北上「あはははっ……大袈裟だよ、大井っち。 この料理を持って行くだけだからさ? あっ、そうだ──場所と行き方は分かる? 場所が分かんないと、持って行っても無駄だし、提督や駆逐艦達に聞くのも…………何だかね……」
大井「大丈夫です! この厨房からの行き方、目的の部屋、北上さんの下着の色も──全部把握していますから!」ムフゥ!
北上「なら、安心できるよ。 それにさ、大井っちが頼りになるから……つい頼ったゃうんだ。 駄目だよな………あたしは……」
大井「もう──北上さんったら、可愛い!! もっと頼っても………あら、こんな所に大食艦が。 北上さん、早く料理を持って行きましょう? せっかくの料理が不味くなってしまいますわ───」
ーー
漣「うひょー! 料理の神キタコレ!! これってマジに超絶品! ご主人様も気に入るよぉ、曙ちゃ〜ん!!」
曙「う、五月蝿い! あたしはね、ちょっと助言と手助いをしただけ。 料理を実際に行ったのは、潮の努力の賜物なんだから。 そもそも誰が、あんな……くそ提督なんかに、料理を作ってやらなきゃなんないのよ!!」
潮「ううん……曙ちゃんが調理方法を詳しく教えてくれたり、材料も揃えてくれた御蔭だよ! 普通に『秋刀魚の塩焼き』を行うつもりだったの。 曙ちゃんが、手助けしてくれなきゃ……こんな美味しい物できなかった!」
曙「自分の実力を認めなさいよ、潮。 いくら、あたしが横から指図したり材料用意したとしても、思っていた物を作らせるなんて出来ないわ。 だいたい漣なんか、あたしが全部教えても、絶対に変な料理を作るわよ!?」
漣「解ってねぇな……裏切りは女のアクセサリーだぜぇ。 なあ、とっつあん? にひひひひひ………」
朧「───えっ? 朧のこと?」
曙「ちょっと、何が『とっつあん』よっ!! そもそも、あんた──似てもしてないのに、『世界一の大泥棒』みたいな口真似してるの!? 料理は、普通に美味しく食べれるなら、それで良いじゃない!!」
朧「それにしても、潮……よく『カレー粉』や『秋刀魚』とかあったね?」
曙「────!」
潮「うん、びっくりしちゃた。 簡易式冷凍庫に入って、適切に保存してあったんの。 海まで遠征に出かけるなんて……今は滅多にやらないのに。 それにカレー粉は、曙ちゃんが…………」
曙「ほ、ほらっ! アンタ達、早く料理を持って行くわよ! 冷めたら美味しくなくなるじゃない! さっさと行きなさい!!」
潮「お、押さないでぇよぉぉ!? 料理が落ちちゃうぅぅ!」
朧「潮は、もう少し料理を顔近くまで上げきゃ! 御自慢の胸で当たっちゃうんでしょ? まあ………朧達は関係ないんだけど…………」
曙「───憐れんだ目で見るなぁあああっ!! こ、こんな胸、胸ぇ!!」
潮「ひやぁあああっ! 曙ちゃーん! やめてぇ、やめてぇえええっ!!」
ーー
漣「もう………曙ったら相変わらずツンツンですか。 生を楽しむコツは、どれだけバカなことを考えられるか………なんだけど? でも、漣達もそうかなぁ……本心を隠してバカするの、男じゃなくても辛いのよね………」
ーー
厨房から足早に料理を運ぶ艦娘達。
その厨房には、まだ残っている者が居るようで、物音や話し声が聞こえてくる。
中に居るのは、鳳翔、紫苑、雛里、数名の艦娘達。
菊月が雛里の指導で菓子を作り、鳳翔の方法を見ながら紫苑が手伝う。 扶桑や山城が準備に駆け回る。 こうして、最後の準備に取り掛かっていた。
そんな、料理の追い込みに入る厨房内から、一刀達は邪魔しないように外へ出て、隣の部屋で磯風達から話を受けていた。
ーー
一刀「よく捕らえてくれた! このまま被害が王朝にまで広がると、王允から責を問われ、俺達や力を貸してくれた皆にも被害が及ぶところだったよ!」
磯風「いや、監視を頼まれながら失念していたのは磯風の責。 功は協力してくれた愛宕達、罠を仕掛けてくれた明命へ。 罰は、今度こそ慎んで磯風が受けよう………司令!」
一刀「ならば、今回……赤城捕縛の指揮を取り、見事に成功させた勲功も引かせて貰えば、丁度いいかな? 赤城は、まだ反省させなきゃならないけど」
磯風「あ、甘いぞ……提督、それでは皆が納得───」
一刀「…………と言うが、どうかな? この裁きは?」
天津風「信賞必罰……それで良いじゃない?」
磯風「───しかし!」
天津風「………そもそも、磯風みたいに生真面目な艦娘か居なきゃ、仕事が捗らない(はかどらない)わ。 確かに甘いかもしれないけど……赤城みたいな罰を受けて止まられるより、働いて償って貰う方が遥かに良いわよ!」
如月「そうね……『結果良ければ全て良し』って言うものねぇ。 それに、何も罰だけが償いじゃないわ。 司令官の為に功績を挙げるのも、如月達……艦娘としての償い方じゃないかしら……」
「「「「「 ─────コクッ 」」」」」
ーー
集まった者が皆が皆、一刀の裁きに賛同の意見を上げるが、一隻が別の意味の言葉を投げ掛け、波紋が広がる。
ーー
イク「イクも賛成なのぉ! イクも此処に来たのは、まだ間もないから、事情がよく分からないなのね。 だからー頼りになる磯風が居てくれば、安心して提督に甘えられるのねぇ!」
如月「なによ………この娘。 ちょっと如月より大きいからって……」
イク「…………提督は渡さないなの!」
天津風「あ、あんた達、こんな所で止めなさいよ!!」
一刀「天津風の言う通りだ。 如月もイクも五月蝿くするなら部屋を退出しろ。 これは磯風にとっては大事な話なんだぞ?」
如月「…………し、失礼しました………」
イク「ごめんなさい……なの」
天津風「……………ふん……」
磯風「…………司令………」
ーー
提督として司令官として、決然たる態度を示して矜持を正した。
流石に、このような態度を見せられば…………二隻は黙るしかない。 周りの艦娘達や明命も押し黙り、一刀の様子を窺う。
ーー
一刀「さて───他の皆からも許可を得た。 この件は保留で置いておくよ。 更なる活躍を示して雪辱を果たすように!」
磯風「…………了解した。 ならば磯風は、粉骨砕身して働かせて貰うぞ。 以後も皆、改めてお願いする!」
ーー
磯風は、そう言って腰を曲げ綺麗な一礼をし、皆に感謝と誓いを行う。 そして、愛宕達に改めて赤城捕縛の礼を述べた。
ーー
磯風「赤城には………本当に手間を掛けさせてくれた。 一航戦の肩書きは伊達ではなかったよ。 貴艦達──陸奥や愛宕、高雄、島風が居てくれて助かった。 協力の礼を言わせてくれ! ………ありがとう!!」
ー
高雄「力になれて良かったです。 私達は、会場の準備が出来たので、提督にお知らせしようと出てきただけですよ。 でも、私も初めて拝見しましたわ。 赤城さんの『妖怪食っちゃ寝化』っというものを…………」
愛宕「あの島風ちゃんが負ける速さ、私達数隻で捕手に回っても衰えない回避運動、正しく怪物化ですね〜」
陸奥「まるで、大和みたいな迫力があったわ。 信じられないけど………」
島風「…………タービン周りを整備すれば………今度こそ勝てるのかな………?」
ーー
磯風が礼を述べてる間に、一刀は愛宕達より少し離れた場所に居る、明命に声を掛ける。 赤城捕縛の最大の功労者に、礼を述べる為だった。
★☆☆
磯風が礼を述べてる間に、一刀が明命に礼を述べる。
今の一刀には明命の記憶は……残念ながら無い。 しかし、先の戦いや今回の捕縛の件でも活躍して貰っている。 漢中鎮守府の長としても、一人の男としても、何かしら御礼を考えるのが当然の事だ。
ーー
一刀「……………明命、何度も俺達の危機に駆け付けて、必ず助けてくれてありがとう! 借りを返すための催しが、このようになるとは──」
明命「そ、そんな! わ、私は──皆さんが困っている様子でしたので、助っ人に駆け付けたまでですっ! それに、この事は雪蓮様や冥琳様にも関わりがありますので、私が動くのは当然! け、決して……お気にする事など!!」
一刀「いや、結果的には助かったが、一歩間違えていたら………更に酷い派閥争いに巻き込む可能があった。 だから………救ってくれた君に借りが増えた。 俺のできる範囲での願い事があれば、叶えさせて貰うよ。 必ず…………」
明命「───か、かかか、必ず──ですかぁぁぁっ?」
一刀「ああ……………」
明命「そ、それなら────」
ーー
明命は一刀に『数日間でいいから、孫呉に来て貰いたい』と願いたかった。
今の一刀を連れて、自分達の地に戻すのは無理かも知れない。 だけど、天の技術講習を受けるとかで、数日止まって貰えれば………と。
『………雪蓮様、穏様なら好奇心で賛同。 蓮華様、シャオ様も大丈夫、思春殿は蓮華様を認めれば否は言えませんし、祭様も雪蓮様を信用されていますから頷いてくれます。 他の反対意見は、冥琳様が押さえてくれますから……』
瞬時に、王と重臣達の説得方法を算出し──考え出された結果である。
───しかし、そうは上手く行かなかった。
ーー
磯風「──すまんが明命、至急聞きたい事が出来た。 分かる範囲で教えて貰いたいのだ!」
明命「は、はいっ! 私に分かる範囲ならば!」
ーー
磯風より問われ、驚きながらも応える。
磯風としては、天津風達より聞いた事実のが衝撃的であり、一縷の望みを賭けて明命に教えて貰いたかったのだ。
ーー
磯風「実は、赤城の食べた被害は予想より大きかった。 用意していた調理の十人分が食べられていたのだ。 そのため、今は五十人分の準備しかないのだが、この量で足りるのか───心配なのだ!」
明命「────に、人数は大丈夫ですが、五十人分じゃ少な過ぎます!! 私の仕える国は大丈夫ですが、他の国の配下の方に何十人分を平らげる猛者がいらっしゃいます!!」
磯風「ああ………天は、この磯風を見放したぁあああっ!!!」
高雄「…………それでは、私達はボーキを食べて我慢しましょう。 主賓である諸侯の方々を持て成す事が主旨。 陪席して主賓を飢えさせるなど、私達の誠意が疑われる事になりますよ?」
明命「そ、それでは困ります! 呼んでくれた方が質素な食事をされ、客の私達が豪華な食事など──皆さんが心配しますし喜ぶ事などありませんっ!」
磯風「くっ………それにだ。 此方には、赤城以上に食べる加賀が居たな。 あいつも桁が違うから……………」
愛宕「あら、大変! 提督、早く追加の準備しないとぉ!」
一刀「確かに不味い! 天津風……北上達を急いで呼んで来てくれ!」
天津風「───直ぐに向かうわ!」
ー
陸奥「………皆、手伝って! 残りの材料を全部出して、取りあえず調理して貰わなきゃ!」
「「「 ─────了解! 」」」
如月「だけど、食材はどうするの〜?」
愛宕「買ってくるしかないわよねぇ〜」
明命「わ、私も! お手伝いします!! お店の場所も、幾つか知っていますから!」
高雄「そんな、主賓の方に手を煩わせるなんて───」
島風「そ、その前に………食材を用意する……『お金』はあるのぉ?」
「「「「「 ──────!? 」」」」」
ーー
島風の一言で、その場に居た者達の足が止まり、一刀は……頭を抱え込む。
一刀の財布の中に、そんな大金は──持ち合せていない。
何故なら、一刀達にとって、交通費は財政に負担にならないのだ。
普通の官職持ちの者なら、国元から洛陽に出る場合、多くの兵を率いて遠方より出向する。 当然、日数が掛かるので、食事代や宿泊費やら金を準備しなければならない。 無論、別に糧食等も準備してだが。
だが、一刀達は……最初こそは益州の険しい山河を越えて、一週間も掛けて洛陽に向かった。 しかし、今は漢中に集まった後、夜に河を利用して洛陽へ向かうため、一日も掛からず洛陽に到着できる。
それに、基本的に『贅沢は敵』との考えもあり、普段の生活も質素にしている。 だから、高価な物を買う予定も無かったので、余分な金を用意する必要もなかったのだ。
では、金を用意するには『借りる』しか無い。
しかし、誰かに借りると言っても………無闇に借りる事も出来ない。 高位の官職による借財は、賄賂の始り、失脚の種であるだ。
しかも、一刀達の名前は洛陽では多くの者に知られている。 請えば貸してくれる者は数多だが、逆に言えば災いの種を自ら撒き散らすもの。
この借財を諸侯に頼むのは本末転倒、何進達に願うのは言語道断、陛下に頼むなど畏れ多い。 文字通り四面楚歌……である。
その時……………部屋の入り口より声を上げる者が居た。
ーー
??「えぇ〜と、益州州牧の北郷さんは、此方にいらっしゃいますかぁ〜?」
一刀「───お……わ、私が北郷ですが───!?」
??「………………ぬ、主様………」
一刀「…………はい?」
ーー
あまりに慌てていたため、扉が開いていたようで、一刀達は慌ててその場所を凝視した。 そこには──にこやかに笑う女性、金髪の髪を棚引かせ顔を下に向ける女の子が立っている。
ーー
??「はいはぁーい、事情は御聞きしましたぁ! 是非、私達にも手助けさせてもらいませんか? 御返しなんかいりません、私達も前の『北郷一刀』さんより………お世話になった者ですから。 そうですよねぇ……お嬢様?」
??「………………………」コクッ
一刀「えーと、失礼ですけど…………」
明命「あ、貴女は───!?」
ーー
そこに居た者は、明命の主『孫伯符』、その更に上の主となる『袁公路』主徒が、入り口で立っていたのだった。
ーーーーーーーー
ーーーーーーーー
あとがき
最後まで読んで頂き、ありがとうございます!
ネタが浮かばず、書き直していたために、結構過ぎてしまいました。
黄巾の本格的な戦いは、二話後辺りから始めますので。
もう暫く、お付き合い下さい。
説明 | ||
赤城の話が、なぜか続いてしまいました。 | ||
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コメント | ||
天龍焔提督 コメントありがとうございます! やるときは……やる娘なんですっ! 作者は艦これ……未だにやってませんけどね。(いた) スネーク提督 コメントありがとうございます! 結果は予想通り………?(いた) 金持ち到来!?w(スネーク) |
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