真・恋姫無双〜魏・外史伝 22.5
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第十一章〜青き龍は正義の一刃に討たれん・前置き〜

 

 

 

  日はとうに沈み・・・、空は闇へと染め、星達が地上を照らす。

 

  その地上にて、赤く染まっている所があった・・・。

 

  その赤は、星達の光をかき消し、その暗く染まる闇夜さえも赤く染め上げる・・・。

 

  俺はその日、母さんのつかいで少し離れた町の方まで出かけていた。

 でもその日は、町に行く時にいつも通る道で雨に降られたせいで途中で雨宿り、町に着いた時は

 昼をとうに過ぎていた。町で母さんに頼まれた物を買い終えた時にはすでに夕刻、空と山は赤く染まっていた。

 村に帰る時にはもう日が沈んで、俺は暗い林道の中を歩く羽目になった・・・。

  「・・・あれ?」

  ふと、村の方角を見る・・・。村の方の空が赤くなっていた。夕焼け空かな・・・と思ったが、方角的に

 それは無かった。じゃあ、何だろう・・・?・・・次第に、不安な気持ちが膨らんでいった。  

  「・・・っ!!」

  不安でたまらなくなった俺は暗い林道を走り出した。その赤い空の下を目指して・・・。

  

  誰かの悲鳴が夜の澄んだ空気を切り・・・。

 

  誰かの泣き声が山々にまで届き、響く・・・。

 

  虚しくも、誰にも届くことなく・・・。

 

  次第に聞こえなくなっていく・・・。

 

  「なぁ・・・・・・っ!?!?」

  手に持っていた荷物を落とす。荷物は地面に落ちると袋から飛び出し、割れたり、土にまみれた。

  急ぎ村に着いた俺の目に映ったのは、村が・・・俺の村が・・・!!

 数刻ほど前は、あんなに平和でのどかだった村が・・・、今家々から火が上がり、火の海と化している現実を

 俺は受け止められずにいた。

  受け入れ難い現実に呆然とする俺・・・。

  「はっ・・・!父さん、母さん・・・静奈!!」

  我に返った俺は、家族が無事かどうかを確かめるために俺は燃え盛るの村の中へと行く。

 その炎の熱さに体から汗が流れ落ち、息をするたびに熱くなった空気が、俺の喉を焼く様な感覚を覚える。

  「父さーん、・・・母さーん」

  必死になって、家族の名前を叫ぶ。叫ぶたびに熱くなった空気が俺の喉を焼く。

  「静な・・・ッ!?」

  俺の目に疑いたくなるような光景が映る。

  「お、おじさん、おじさん・・・!!」

  いつも俺と静奈に良くしてくれる隣家のおじさんが道の真中に倒れていた。

 俺はおじさんの傍に駆け寄り、何度も呼びかけ、背中を揺する。でもおじさんはうんとすんともしない。

 そして背中を揺すった俺の手は血に濡れていた。よく見ると、おじさんの背中には大きな切傷があった。

  「おじさん・・・、そんなおじさん!おじさん!!一体・・・どうしっ・・・!?!?!?」

  俺はようやく気が付いた・・・。おじさんだけじゃなかった。辺りにはおじさんの様に大きな傷を負って

 倒れている村の皆の姿が至る所に見られた・・・男、女、子供関係なく。皆、俺が良く知る人達、いや

 この村で俺が知らない人なんていない!この村が・・・一つの家族を形成していたのだから・・・。

  俺は倒れている一人一人に駆け寄る・・・が、誰一人起きなかった・・・。

  「うぎゃあああっ・・・!!!」

  ドサッ!!!

  家の角から血を流しながら、倒れる人が見えた。

 そしてもう一人、家角から出てくる。

  「ん・・・?おい、こっちにまだ生きている奴がいんぞ!」

  俺の知らない人間だった・・・。この村の人間じゃない奴が血を滴り落ちる剣をその手に握っていた。

  「まだ生きて残っていやがったのか・・・。さっさと殺すぞ!!」

  また一人、この村の人間じゃない奴が出てくる。殺すって・・・、俺を?

 まさか・・・、こいつらが皆を・・・?この熱い中にいながらも、全身に寒気が走る。殺されるという恐怖が

 寒気として体を駆け巡る。

  二人の男が俺に近づいてくる。逃げなきゃ殺される・・・!逃げようと体を動かそうとするが、恐怖あまり

 腰が抜けてしまったせいで立つことができない・・・。

  「あ・・・、あああ・・・。」

  体が震えを上げる。そんな俺に構う事無く、男達が俺の前にまで来た。

  「悪いなぁ、坊主・・・。でも、俺達の顔を見ちまった以上生かしておくわけにはいかないんだよ・・・。」

  そう言って、一人の男がその血に濡れた剣を振り上げる。

 や、やばい・・・殺される。殺される、殺される、殺される、殺される、殺される・・・!!!

  「ぎゃあああっ!!!」

  突然後ろにいたもう一人の男が、悲鳴と共に倒れる。目の前の男も、後ろを振り返る。そこには、別の男が一人立っていた。

 その人は・・・、まるで一匹狼の様な気高さを持った人だった。

  「な、何だてめぇは!?」

  男がその人に尋ねる。

  「・・・外道に名乗る名など・・・、持ち合わせてなどいない。」

  ザシュッ!!!

  「ぶぎゃああっ!!!」

  男の質問に答えると同時にその人は、男を右手に持つ蛮刀で切り捨てた。

 俺は・・・助かったのか・・・?

  「大丈夫か、少年?立てるか・・・?」

  「は、はい・・・。」

 そう言ってその人は俺に手を差し伸べる。

 その人の優しい言葉に、俺を支配していた恐怖が消える。俺は助かったんだと、ようやく確信した。

  俺はその手を取る。

  「君はこの村の人間か・・・?」

  俺を立ちあがらせると、その人は俺に問いただした。俺はその質問に首を縦に振る事で答えた。

  「そうか・・・、実はたまたま近くを通りかかったのだが・・・。」

  その人が何かを話す・・・。その時、俺は忘れていた事を思いだす。

 

  父さん・・・!母さん・・・!静奈・・・!!

  

  俺は皆の元に向かう。

  「お、おい何処に行くのだ?!」

  その人の言葉を聞かず、俺は・・・自分の家に向かう。

  「父さん!!母さん!!静奈ぁ!!」

  皆の名前を叫び続ける・・・。

 でも、誰も答えてくれない・・・。

 俺は自分の家の前に着く。家の戸は乱暴にこじ開けられたいた。

 俺はそこから家の中を見る・・・。その光景に、俺は・・・。

  「なっ・・・あ、あぁ・・・!!」

  家の中が、家具や床、天井・・・あらゆるものが赤く染まっていた。

 床には・・・人であったであろう、亡骸が三つ転がっていた・・・。

 何もかも遅すぎた・・・、父さん達は・・・、無惨にも殺されていた・・・。

 体から力抜ける・・・、俺はその場に座り込む。そのまま三人の亡骸を見つめたまま・・・。

  俺は何を思ったのか・・・、足を引きずるように上半身だけで静奈の・・・、年が少し離れた小さい妹の傍に寄る。

 その手には、この間・・・一緒に山に遊びに行った時に摘んできた・・・一本の綺麗な花を握っていた。が、それも

 血によって赤く染まっていた・・・。

  「・・・・・・っ!!!」

  俺は思わず、静奈を抱きしめる。温もりを確かめようと力一杯に静奈の体を抱きしめた・・・。

 でも、それでも温もりは感じなかった・・・あったのは、人間のものとは思えぬほどに、悲しくなるほどの冷たさだけあった。

  「あ・・・、あぁ・・・、あああああ・・・・・・!!」

  俺の体は再び、震え出す。どうしようもない感情が・・・俺を支配した。そしてその感情が、俺の中から溢れ出した。

  「あああああああ・・・っ、あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ

   ああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああ

   ぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」

  

  そして残るは、絶望・・・。

 

  その絶望は、いつしか憎しみへと変わっていった・・・。

説明
 こんにちわ、アンドレカンドレです。
第十一章本編の前に前置きとしてこれを投稿しました。そろそろ魏、呉の人達を出したいのですが・・・、もう少しの辛抱なので頑張って書きます。
 前回、伏義を見事追い払った一刀君しかし、露仁がいなくなり一人で陳留に向かいます。さて・・・今回は、再び蜀・正和党をメインに話が進みます。
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コメント
・・・・・ここから・・・どうなるんだ・・・。(Poussiere)
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