真 恋姫無双 もう一人の大剣 4話 |
利き手の右手を剣に握るように添え、前に踏み出す。
・・・・は?重。
「(・・・・待て待て。勢いで調子のいいこと言ったけどよく考えたら俺最近は戦いどころか剣すら満足に触れてないぞ)」
冷静になり、今の自分と甘寧の力量を比べてみる。
久々に触れた剣は重かった。
感覚がどこまで鈍っているかわからないこの状態で、この剣を扱えるか?
この女は相当な手練れだ。
兵の顔に恐怖が浮かぶことに納得がいく。
さっきの奇襲での剣速を考えると甘寧は速い、あれだけ速いならばかなりの手数となる。。
予想以上に重く感じたこの剣であの速度に対応できるとは思えない。
「(只でさえ通常の剣より重くしてある物だ。無茶して振り回して誤って大怪我なんてされられない)」
添えていた右手を剣から離し、握り拳を作り構える。
「・・・・何の真似だ。貴様の背負ってる物は飾りか?」
手を二、三度握っては開く。
素手で戦うのは、剣を用いるよりもずっと久しい。
「人の心配してる余裕があるのか?目の前の敵に集中しろ」
「・・・・後悔するぞ」
甘寧は構えた状態から動かない。
炎の出方を伺ってるんだろう。
有難い。
ゆっくり気持ちの準備が出来る。
「さて、どうかな?」
まだ気持ちが落ち着かない。
手を忙しなく握っては開く。
口から長く息を吸う。
目を閉じる。
・・・大丈夫、大丈夫。
気負うな。
目を見開くと同時に吸った息を短く吐く。
前足を上げ、力の限り地面を踏む。
大きな音と共に地震のように揺れる。
付近にいた兵が、甘寧さえもが、体勢を崩す。
「おらぁ!」
大きな隙を見せた。
炎は甘寧の横腹を狙い、拳を打つ。
避けられないと思い、甘寧は曲刀をたて炎の拳を防ぐ。
「(これを受け、ガラ空きの喉を切り落とす!)」
そんな考えの甘寧に対し、炎は。
「(この刀ぶっ壊して、腹に風穴あける!)」
大怪我をさせないという目的も見失い。
自分本位の考えを頭に描く。
拳と刀が当たる。
「(重い!)」
「(軟い!)」
刀が割れる。
「(いけ!)」
拳が甘寧の横腹にめり込み、甘寧の表情が歪む。
炎の拳には骨が折れる感触。
「よし!」
「うっ、くっ・・・あっ・・」
あまりの痛みに横腹を手で押さえ蹲る。
「あ、やばい。怪我させちまった」
「なんという・・力だ。一突きで骨を・・・そして・・・・地響きだと?」
炎が踏みつけた床は足跡が付き、そこを中心にヒビが広がってる。
「貴様、化け物か・・・人間の筋力ではない」
「お前の剣速も普通の人間のものじゃないとおもうがな。さて・・・俺は逃げる。じゃあな」
炎の後ろからは甘寧を心配する兵の声が聞こえる。
自分の行動の軽薄さを反省し、城内を走り抜ける。
最初からこうすれば良かったんだ。
内心でそう後悔する。
庭の中央で両手を上げ、降参の意思を示す。
こうすれば自ずと兵に囲まれるなり、捕まるなりで、主要な人物が集まるはずだ。
炎の友人にわけを話せば、すぐに拘束は解かれるだろう。
そう思っていたが。
「い・・・意外と見つけてくれないもんだな」
広い庭に逃げ込むなんて思ってもいないのだろう。
庭を挟んでいる通路を通る人間は少なくない。
侵入者を捕らえるために皆必死になり炎を探している。
そもそも炎が侵入者だということを、その侵入者の顔を知ってる者がこの城にどれほどいるか。
甘寧や、最初に追い掛けていた兵を除けば侵入者の正体を知る者はいない。
近くにある木に背を預け座る。
「しょうがない、見つかるまで待つか。・・・・そんなことより・・」
左を向くとうつ伏せに倒れている女性。
「し、死んでるのか?」
慎重に女性の身体に触れようとすると。
「・・・・はっ!」
「うわっ!」
「ん??!よく寝たぁ!・・・あれ?あんた誰?」
「・・・お前こそ誰だよ?」
互いに自己紹介。
侵入したことも話した。
「ふーん。あの噂に名高い"曹操の盾"がコソ泥だったなんてね」
「違う。警備の薄そうな場所を通ったらコソ泥にされただけだ」
「普通の人はそんな風に入ったりはしないわよ」
「うっ。まあいい。それより、よくもまあそんな話を信じるな」
「だってあなた物を盗るほどお金に困ってるように見えないもの。その幅の広くない大剣、相当手が込んでるはずよ。物をなんて盗まなくてもその大剣を売れば一生遊んで生きていけるわ。それを重いのに売らずに背負ってるだもの。そんな人がコソ泥な訳ないでしょう?」
「はあ?、納得だ。若いのによく見てる」
「若さと能力は必ずしも一致しないのよ」
その言葉を聞き、華琳の顔を思い出す。
「確かに」
「後は勘よ、勘」
「勘?」
「私の勘は当たるのよ」
顔は嘘を言っていなかった。
「そうかよ」
「それに"曹操の盾"がコソ泥なんかに成り下がったらそれこそ笑い話よ」
「さっきも言ってたが、その"曹操の盾"ってのはなんだ?」
「あら、しらないの?知らないのは本人ばかりね」
炎は華琳を幼子の頃から面倒をみてきた。
だが曹騰の孫ということもあり、曹騰に恨みをもつものはこぞって幼い華琳に狙いを定めた。
炎は人の感情を読み取ることに長けていた。
華琳に近付く悪意をもつ者達を殺してきた。
それと同時に華琳の護衛も行っていた。
華琳から決して離れない炎は華琳を殺そうとする者達も殺してきた。
華琳の為に。
全ての悪意から華琳を守ってきた炎を大陸では"盾"と見立てた。
「なるほど。確かに俺のいままでの人生は華琳を守ることが常だったからな。そのまま生涯を終えるつもりでいたんだがな。まいったよ」
「・・・・・ねえねえ!なんで盾なのか知ってる?」
「身を守る武具だからだろ?」
「それなら鎧でもいいじゃない。いい?盾は前しか防げない。つまり。後ろや横からの攻撃は防ぎきれないの。曹螢の武力に敵うものはいない。でも知力ならば攻めようがある。その隙があることが由来になってるのよ。本当上手く言ったものね」
「バカで悪かったな。それにしても、小覇王がこんなお転婆娘とは」
「あなたが仕えるに相応しいと認めた君主を探しに来たんでしょう?その候補に選ばれるなんて光栄よ」
「違う。俺が一緒にいたいと思う奴だ。それにその言い方まるで孫策、お前が呉王のように聞こえるぞ」
「あら、とっくに知っている者だと思ったけど」
「・・・・あっはっはっは!孫策、つくならもっとうまい嘘を付けよ。王になるべき奴ってのは見るだけで分かるんだ。本当の王ってのは・・・普通じゃない」
「お姉さま!」
孫策、炎は声のする方へ顔を向ける。
「あら、蓮華」
「あれは?」
「蓮華、私の妹よ。うるさい娘でごめんね」
「おいお前ら、どけ」
大勢の兵が道を開ける。
そこを堂々と歩くのは孫堅。
「あれが蓮華の下着を盗ったコソ泥か」
「盗られてません!」
「ん?あれは・・・・おーい!炎蓮!俺だー!炎だー!」
「な、なんであなたが母さんの真名を知ってるのよ!?」
炎は炎蓮にむかい手を振りながら、存在を主張する。
「・・・・・・・・ああ?炎?誰だそりゃ」
「え・・・」
「ああ・・・確か昔ちっこい坊主にそんな名前の奴がいたような」
「お、おお!それだ!その坊主が俺だ!」
「さあどうだろうな」
「え?」
「その坊主がお前という保証がどこにある?」
「は?」
「ただ一つ・・・・その坊主は若いながらも、小さな大剣を振り回し確かな実力を示していた。その坊主に俺はこう教えたはずだがな」
炎蓮は南海覇王をゆっくり抜く。
「そんなにてめえの主張を通したいなら、武官らしく力ずくで通しな!炎!」
庭全体に殺気を撒き散らす。
「マジかよ・・・イかれてるぜ、このクソババア」
炎は久々に剣を抜く。
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チェンジです。 | ||
総閲覧数 | 閲覧ユーザー | 支援 |
2207 | 2016 | 12 |
コメント | ||
marunoさん<ご指摘ありがとうございます。(チェンジ) 怪我させられない、では?(marumo ) |
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