北斗の艦これ イチゴ風味
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【 秘書艦の任務 の件 】

 

? 場所不明、名称不詳の某鎮守府内 にて ?

 

新しい艦娘が着任して、その翌日。

 

俺が執務室の扉を開けて中に入ると、秘書艦である『吹雪型 1番艦 駆逐艦 吹雪』が、既に作業を開始していた。

 

そして、新しく着任した艦娘?も…………吹雪と共に作業をしている。

 

最初は、あの存在感に圧倒されて、言葉遣いが敬語になってしまったが、本人より上に立つ者の言葉を指摘され、普段と同じ言葉遣いに改めている。

 

だが、やはり───あの容姿ゆえ、敬語になるのはやむを得ないな。

 

 

吹雪「あっ………おはようございます!  司令官!!」

 

提督「あ………うん、おはようさん………」

 

??「………提督よ。 その様子では、朝食を抜いて来たようだな?」

 

提督「あ、ああ………ちょっと寝坊を……してしまいまして…………」

 

??「ふっ………やはり吹雪に言われ、朝食を用意したのは正解だったか。 見事な慧眼だ、褒めてやろう………吹雪よ」

 

吹雪「あ、ありがとうございます! で、でも、それは──ほんの数年ですけど………専属で秘書艦に付かせて貰ってますから。 何時も一緒にいれば、司令官の好みや下着の色とか、色々分かっちゃいますから───きゃ(///∇///)」

 

??「ぬうぅ………これが絆か。 前の世で、『ケンシロウ』が見せた……あの強さの源、垣間見えた気がする。 ならば、このラオウも………提督に天を握って貰うよう、すきんしっぷに邁進しようぞ!」

 

提督「───か、勘弁して下さい………じゃなかった──勘弁してくれ!!」

 

ーー

 

巨大な体躯、盛り上がる鋼の筋肉、全然似合わない割烹着を身に付け、俺の机を整理してくれている艦娘?が、吹雪と顔を見合わせ会話している。

 

その姿を見ていたら、敬語にするのが馬鹿らしくなったから、普段通りにした。 俺の緊張感を返せっ!!

 

★☆☆

 

───『北斗型 正規戦艦 ネームシップ ラオウ』と名乗る艦娘。

 

俺の鎮守府に何故か降り立った───世紀末覇王様。

 

確か───吹雪の愛読書『北○の拳』に出てくる、最凶のラスボスみたいな方だが、何故か艦娘?の扱いで建造された。

 

しかも、俺に『この世の覇権を握れ』と言ってきたという──厨二っぽい設定。 果たして目的は何なのか…………見当が付かない。

 

確かに、世界の海が『深海棲艦』と言う怪物に、海を支配されてシーレーンを断たれ、その上空の空中回廊までもが脅かされている始末。 

 

そのため、国家としての情報網、交通網も限界になり、各国の貿易にも大打撃を与え、まさに死活問題となり弱り果てている状態。

 

それでも、この近年……俺達人間側でも味方に付き、深海棲艦達と対峙する『艦娘』達の御蔭により、最小限の生存範囲を死守できるようになったのだ。 

 

それならば………もし、その両方を力を捩じ伏せれる者が出現したら、世界はどうなる? 難なく世界を救えれば、確かにソイツは『救世主』だ!

 

邪魔する者は、誰も居ない。 意見する者さえも居ない。 完全なる独裁政治が出来上がる。 ───覇権など、容易く握れるだろう。

 

ーー 

 

提督「………………馬鹿馬鹿しい。 幾らなんでも、世界の深海棲艦を相手取り、全滅させるような真似が───」

 

ーー

 

そんな思考を頭で整理した後、提督の所在場所である席に座れば───かの覇王様が朝食を机に置き、軽く睨まれた。

 

ーー

 

ラオウ「聞き捨てならんな………提督。 うぬは我が拳を……信じぬのか?」

 

提督「い、いや…………信じるも信じないも、実際に見てないんだから………」

 

ラオウ「───ふむ、論より証拠か。 ならば、この拳王の活躍……次の出撃で見るがいい! 我が拳は、神にも挑み、天も握り締めた覇者の拳! 深海棲艦など、所詮……芥に等しき者だと思い知らせてやろう!!」

 

ーー

 

俺は、ラオウから放たれる闘気に怯えながら、机に置かれた朝食を取る。

 

いつもは、書類が散らばり、他の事をやる度に片付けしなきゃならない机だが、ラオウが片付けてくれた為、綺麗になっている。

 

俺は、後の仕事もあるので、用意してもらった朝食を急いで掻き込んだ! 

 

───おっ? う〜む………おおっ!?

 

───これは…………美味しい!!

 

目の前の朝食は──『ご飯、味噌汁、焼肴』──吹雪の何時も用意してくれる朝食より、少し豪華。 しかも、味噌汁の味が少し濃いめで俺好み。 

 

ハッキリと言えば、いつもより旨い!

 

朝食として出された物を、全部平らげた後、用意してくれた吹雪に、お礼と料理の賛辞を述べると………何故か涙目になったぁ! ──なんだ、どうしたんだぁ?

 

ーー

 

吹雪「こ、今回は………ラオウ様が、全部調理してくれたんですぅ!」

 

ラオウ「このラオウ──吹雪の功を横取りするような卑怯な真似などせん! 調理の下拵えは吹雪が用意していたのだ。 味付けと多少調理を任されただけに過ぎん。 我の料理など、吹雪の足下にも及ばぬわ!」

 

提督「………………………………」

 

ラオウ「我と共に覇権を握るには、身体こそ資本。 朝食こそは一日の活力、慢心で朝食を抜いて不覚を取り、病などに…………倒れぬ事だ。 俺の北斗神拳でも………治せぬものはあるのだからな!」

 

ーー

 

どこか………寂しそうな表情を見せたラオウに違和感を感じる。

 

そんなラオウの様子を黙って見ていた吹雪が、涙を拭き終わった後、俺の食器を片付け、帰りに三人分のお茶を用意してくれたんだ。

 

吹雪は、そのお茶を机の上に置き、俺に密かに耳打ちする。 

 

ーー

 

吹雪「(ラオウ様………トキ様を思い出しているんですよ。 きっと……)」

 

提督「(トキ…………?)」

 

ーー

 

実は俺………北○の拳を読んだ事が無い。 前々から吹雪より熱心に勧められいたんだが、どうも絵的に好みじゃ無いんだよ。 

 

ただ、ラオウの強さだけは知っていた。 だって、吹雪の憧れていたのが、ラオウだったからだ。 

 

だけど………その生き方、強さに痺れる憧れるぅと………目をキラキラさせて、何度も俺に語るから内容は全部覚えたが…………………正直面白く無ねぇ。 

 

嫁艦が、他の提督の話なんかしだしたら、嫉妬の一つや二つ、憎悪の三つや四つ浮かび上がっても、おかしくあるまい。 俺だって男なんだし……………… 

 

ーー

 

吹雪「ラオウ様の弟さんですよ! 昨日、あれだけ説明したのに、もう忘れちゃったんですか、司令官!?」

 

提督「い、いや…………吹雪の迫力に圧されてぇ…………」

 

吹雪「もぉおお──今度は覚えて下さいっっ!!」

 

ーー

 

そんな吹雪のやり取りを見ていたラオウは、軽く笑って此方を見据えた。 あれほど険しかった顔が、緊張が解けたように優しい顔になっている。

 

ーー

 

ラオウ「それくらいにしておけ……吹雪。 人には語りたくない思いもあるのだ。 提督の事………察してワザと知らぬ振りをしてくれている………かも知れぬぞ? 俺も似たような真似をしたが………慣れぬ事は、やらない方が良いな」

 

吹雪「ラオウ様……………」

 

ラオウ「……………………フッ、それに、夫婦喧嘩は戌も食わぬと言う。 俺の事で喧嘩などするな。 それに、あの物語は総てが過去、過ぎ去りし物は………追えぬ。 今は、この天命に導かれた道を進むのが、我の役目よ!」

 

吹雪「───えっ? い、いや………あのその………お嫁さん……ですか? も、もうっ、ラオウ様ったら!!」

 

提督「は、ははっ、はははは………………」

 

ーー

 

世紀末覇者、拳王、北斗の長兄…………色々な呼称を持つラオウ。

 

総じて見れば、『悪』寄りの印象が多い者だが、今見る限りは………その不安は無い。 取りあえず、覇権を握るのは横に置いて、仲間として付き合ってみようと思った。 同じ、仲間として…………

 

ーー

 

提督「…………だが、その割烹着姿──似合わないから止めぇ!」

 

ラオウ「…………な、何だとぉ!? 俺は気に入っているのだ!」

 

吹雪「(…………だから、部下に女装させたんだ………)」

 

 

◆◇◆

 

【 更なる艦娘? の件 】

 

? 某鎮守府内 建造場所 にて ?

 

ラオウ「…………吹雪よ、準備は良いか?」

 

吹雪「はいっ! 何時でも資材投入準備───完了です!」

 

ラオウ「───うむ、行くぞぉ! どりゃあああっ!!」

 

ーー

 

皆さん、ごきげんよう………司令官の秘書艦を承っています、吹雪です。

 

本日は、『建造』を行いたいと、ラオウ様が申されますので、司令官から許可を頂き、大型艦の建造を開始しているんですよ。

 

ーー

ーー

 

ラオウ『俺一人居れば、数多の深海棲艦など物の数では無い。 だが、戦力は多い方が望ましい。 俺と同じような力を持つ者が、無事に建造されれば上々。 最低でも、大和、武蔵は居て貰わんとな?』

 

吹雪『ですが、駆逐艦も大事なんですよ? 小回りが出来る駆逐艦の私達は、名脇役なんですよ?』 

 

ラオウ『………………………………』

 

ーー

ーー

 

大事な事ですので言いました! 勿論ですよ! 

 

世界中を驚愕させ、クラスを超えた特型駆逐艦の1番艦、それが私こと吹雪なんですから! 

 

………………ラオウ様が資材確認している背後で、距離をおいて聞こえないよう小さい声で、そお〜と。 だがら、ラオウ様に言ったのは、間違いなく事実なんです! 嘘なんかじゃありません(キッパリ

 

そうしたら………………

 

ーー

 

ラオウ『そうか…………失言だったな。 確かに俺も、配下の先発隊を行かせていたわ。 許せ、吹雪!』

 

吹雪『あわわわわっ! い、いいんです、気にしてませんからぁ!!』

 

ーー

 

ふぅ〜、まさか……聞こえていたなんてぇ。 赤城さんじゃないけど、慢心、絶対これ駄目………と思いましたよ。 ええ………

 

でも、確か狂気に満ちていた、凶暴星みたいに言われていた方なのに、なんでこんなに気遣ってくれるんだろ…………………

 

ーー

 

ラオウ「吹雪───どうした! 手が止まっているぞっ!?」

 

吹雪「ひゃ、ひゃぁい!! 今すぐにぃぃぃぃ!!!」

 

ーー

 

ラオウ様より催促された私は、次々に投入したんですよ! そこに置いてあった物を確認せずに、ポイポイと。 

 

別に………夕立ちゃんの語尾じゃ無いんですけどね。

 

だって、あの迫力ある声で促されたら………怖いじゃないですか!!

 

で、ですので………はい………また、やっちゃたのですぅ。

 

…………私の『第二の愛読書』……『イチゴ味』を………投入してしまいましたぁ。

 

ああ………また全巻、買ってこなくちゃ………

 

★☆☆

 

翌日、吹雪とラオウの報告で、俺も立ち会いの為に倉庫へ向かった。

 

ーー

 

提督「───それで、今度の建造時間も『24時間』になったのか?」

 

吹雪「……………うぅぅぅぅっ………………はい…………」

 

提督「………………まいったな……」

 

ラオウ「良いではないか、提督よ!」

 

提督「──ラオウ?」

 

ーー

 

思い悩む俺、俺の目の前で気落ちする吹雪、そして………後ろから腕を組みながら、俺に意見を述べる、ラオウ。 

 

うんうん、流石に暗殺拳だけあって、俺の背後取るのが上手いわ。 顔とかに出てないけど………心臓がドッキドキしてる! うん、このラオウと闘う人達を心底尊敬する。 俺には真似もしたくねぇ!!  

 

ーー

 

ラオウ「……俺の時と同じなら……期待が高まるな。 トキかケンシロウが出てくれれば戦力増加は間違い無い。 話せば分かる者達だ、提督に交渉は任せる! 俺が信用するうぬなら、間違いなど起こる事など無かろう!」

 

提督「いや………心配してんのは、そこじゃないんだ………」

 

ラオウ「何だと………? この俺が、他の奴らに遅れを取るとでも──!!」 

 

吹雪「きゃぁ───ラオウ様から闘気がっ! す、凄い、私にも見えるぅぅぅ────っ!?」

 

提督「待て待て待てぇ、待てぇえええっ! 最後まで話を聞けぇーーーって言うか、お願いします聞いて下さいぃいいい! その闘気を高めるのはマジ止めてぇ! ふ、風圧でぇ、鎮守府内の建物が全壊されちゃうんだよぉぉぉ!!」

 

ーー

 

ラオウが気合いを入れると、周囲の空気が集まる! それも急速にだ!

 

空気が移動すれば、当然風が生まれ、その風に速さと強さを足せば、暴風となる! 体重の軽い吹雪は、俺に掴まりながらも嬉しそうに、ラオウの闘気が見えたと叫び、俺は被害を心配して大声でラオウに呼掛けた!

 

ーー

 

ラオウ「────カァッ!!」

 

提督「おお───おぉぉ……………おっ?」

 

吹雪「───ふにゃあ!!」

 

ーー

 

早々と気付いたラオウは、俺達の現状を知ると……直ぐに闘気を霧散させて、突風を止めたくれたので、二人して地面に倒れ込んだ!

 

ーー

 

ラオウ「………すまぬ………」

 

提督「……………ふぅ、大丈夫だ。 そ、それよりも───吹雪は!?」

 

吹雪「あは、はははぁ……………しぃれぇかぁぁん〜? 私、まともにぃ体験しちゃいましたぁぁぁ〜! もぉう、我が生涯に〜悔いなぁ〜しぃて感じでぇ〜す!」

 

ラオウ「………………」

 

提督「………まあ、気にしないでいいよ。 破壊も免れたし……気持ちも分からない訳じゃないから。 それに、俺も吹雪も……皆、無事なんだからさ?」

 

ラオウ「…………しかし」

 

提督「俺が心配してるのは、あの建造から出てくる奴が、頼りになるのか心配なんだよ。 ラオウ、お前は掛値無しで任せられるが、今度の艦は、ハッキリと言って分からん。 かなり……変わった艦が建造され───!?」

 

吹雪「建造の倉庫から………扉が開きます! あっ、新しい仲間が来たみたいですよ!? ほらぁ────」

 

ーー

 

吹雪が、観音開きで開く扉を見て、声高らかに新艦の着任を知らせた!

 

俺達は、吹雪が示した場所を望むと───片手で顔を覆いながら、愉快そうに笑う一隻の『艦娘?』が………歩を進めて向かって来た。

 

ーー

 

??「フハハハハ──ッ! 出迎え、御苦労様だな……下郎の皆さん! 俺が、南斗型最強の艦『南斗鳳凰型 1番艦  航空戦艦 サウザー』だ!!」

 

ーー

 

吹雪「きゃ──っ! サウザー様!!」

 

サウザー「………ふっ、ふははは………ふぐぅ。 お、おかしいぞ? 何故………若き小娘から、黄色い声援を向けられただけで……枯れ果てた筈の涙が流れ落ちるのだ………? 俺に向けられる配下のダミ声と……どこが違うのだっ!?」

 

ーー

 

提督「…………よりによって………めんどうなのが……」

 

サウザー「…………んっ? この聖帝サウザーが、着任したと言うのに、此処の提督は、この俺に挨拶もないのか? そんな事では、上に立つ者として示しが付くのかぁ〜? うぅ〜ん、フハハ………どうなのだぁ?」

 

提督「………………」

 

ーー

 

サウザー「それにだ、この俺の着任祝いで歓迎会を………その………開くのだろう? も、勿論、断るような野暮な真似などせん! 俺は如何なる歓迎会でも………受けてやる! カレーがあれば……尚更だぞ!?」

 

ラオウ「…………なるほど、厄介な相手だ……」

 

サウザー「な、何ぃいいいっ! 幾ら……ドッキリを期待していたとはゆえ、まさか──ラオウ! 貴様が既に着任していたのかっ!? ────ま、まさかぁ………これは、あの──リハクの罠なのかぁ!?」

 

ラオウ「ふっ…………貴様に語る言葉など無い。 サウザーよ、貴様も南斗の艦なら、自分の拳で………この拳王に語るがいいっ!」

 

ーーーー

ーーーー

 

聖帝サウザーの登場で、テンションが上がる吹雪。

 

その様子に不機嫌になる提督。

 

まさかの強敵の登場により、不敵に笑う拳王。

 

そして──歓迎会が無い事に気付くと同時に、とある軍師の策に嵌まったと、盛大な勘違いをする聖帝さま。

 

『南斗鳳凰型 1番艦  航空戦艦 サウザー』の着任により、早くも鎮守府が……壊滅の危機を迎えてしまった。

 

 

◆◇◆

 

【 無手勝流 の件 】

 

? 某鎮守府内 建造場所 にて ?

 

そんな一触即発の状態を迎えた鎮守府に、一隻の救世主が舞い降りた!

 

ーー

 

吹雪「あ、あなたは────」

 

提督「───!?」

 

ラオウ「───うぬは!?」

 

サウザー「………ま、まさか………ターバンの──」

 

ーー

 

??「HEY、提督ぅー! Newfaceが登場したと聞いてぇ歓迎しに来たヨー!」

 

サウザー「────!?」

 

ーー

 

現れたのは『金剛型 1番艦 戦艦 金剛』だった。

 

金剛は、始めはキョロキョロ辺りを確認していたが、声が聞こえたらしく、駆け足で、提督達に向かって来る。

 

しかも、提督達に片手を振りながら、にこやかな笑顔で近付く。

 

ーー

 

提督「こ、金剛──来るなぁ!」

 

吹雪「あ、危ないです! 早く立ち去ってぇ………」

 

金剛「Oh……Newfaceを迎えるにぃ、提督や吹雪は、私を除け者にする気ですカ!? そんなのCunning(狡い)デース!」

 

ーー 

 

提督と吹雪が必死に説得するのだが、まるで話を聞く様子が無い、金剛。

 

それどころか、提督が吹雪とイチャイチャしたいだけど思ったのか、反論した挙げ句、ラオウとサウザーが対峙する所にまで動いた。

 

ーー

 

ラオウ「金剛………うぬの実力では、頭上に死兆星が落ちるのみ! 早く去ねば間に合わぬぞ!」

 

金剛「ラオウがDifficult(難しい)喋り方しマース! 提督、通訳して下サ〜イ!! ───Wow! 貴方がNewfaceデスネ!?」

 

サウザー「……………!?!?」

 

金剛「It’s a pleasure to meet you!(御会い出来て嬉しいネ!) 英国で産まれた帰国子女の金剛デース! ヨロシクオネガイシマース!」

 

ーー

 

二人が殺気を出して対峙する中、堂々と二人の間に入り込む。

 

そして、ラオウに文句を言ったと思うと、今度はサウザーの手を持ち、鎮守府の着任を無邪気に喜び、握った手をブンブンと上下に振る。

 

すると、サウザーは……顔を真っ赤にしながら例の高笑いを行った後、『英語』で金剛に語った。

 

ーー

 

サウザー「フッ、フハハ…………フハハハハッ!」

 

金剛「………………?」

 

サウザー「でぃすいずざ……ぺん!!」

 

「「「「 ────!? 」」」」

 

金剛「───What does that mean?(それは、どう意味デスカ?)」

 

サウザー「でぃすいずぅざぁぁ──ぺぇん!!!」

 

ーー

 

サウザー様の、この行為に……不安を持たれる方もいらっしゃるでしょう。

 

僭越ながら、私めが説明させて頂きます。

 

ご存知の方はいらっしゃると思わますが、サウザー様は幼少の砌(みぎり)より、『お師さん』と呼ばれている先代様と御二人で、山中で暮らしておいででした。 当然………学校など義務教育さえも、受けられていらっしゃいません。

 

しかし、サウザーさまは──如何なる事態になろうとも、己の生き方を貫く方! 聖帝サウザーでございます!!

 

英語が理解できなくても──『媚びぬ! 退かぬ! 省みぬ!』の三原則をモットーに、英語を流暢に喋る異邦人にも、対等に接する事が出来るのですよ。 

 

そんな……サウザー様ですが、哀しいですかな……帝王としての高慢ち………い、いえ、プライドの高さがあります。 

 

『英語をぐらい使える事を、下郎の皆様に見せ付けねばならない! 決して勉学に関して無知である自分を、秘密にしておきたい!!』 

 

そのため、唯一知ってる英語『 This is a pen!  』を連発して、教養のあるところも披露してなさっているのです。

 

まさに……愛深きゆえの行動!

 

誠にいじらしい態度だと、私めは……壁に隠れて様子を窺いながら………涙を拭っておりまする。 そして、自分の無知を、決して先代様のせいになされないサウザー様に、私めは……生涯お仕えしたいと思います。

 

あのような方ですが……皆様には生暖かい目で、どうか見守って頂ければ幸いでございますよ。

 

───サウザー親衛隊 ヒゲの副官 談

 

ーー

 

ラオウ「Leave it at that(それくらいにしておけ)……金剛。 からかうと後が怖い奴だ。 Praise a fool, and you may make him useful(愚か者も褒めれば役に立つ)と言うだろう。 ……………それと同じだ」

 

サウザー「ラ、ラオウがぁ───宇宙語を語るだとぉ…………」

 

ラオウ「………英語だ。 何も不思議な事でもあるまい。 俺の故郷は修羅の国、また帰る先も同じだ。 その国の民が使う言語を使用せず、意思疎通を図るなど………統治者として、覚悟が足らんのでないのか?」

 

サウザー「ぬう──くう…………!?」

 

ラオウ「俺の目は、世紀末覇者として………あの神が捨てた地と修羅の国を恐怖による統治を目指していた。 …………実の兄と対峙してでも、だ!」

 

サウザー「─────!」

 

ラオウ「………サウザーよ! うぬが如く……死者を華美に飾り立て、生者を弄ぶような統治! この拳王の野望が一緒にされては、片腹痛いわ!! ………あの世で、先代伝承者も嘆き悲しんでいよう!!」

 

サウザー「おのれぇ………我が師に対する想いまでも……侮辱するとは──っ!!」

 

ーー

 

そんな険悪さが更に増す二人。

 

しかし、提督は………知らぬ顔で金剛と話を交わす。

 

ーー

 

提督「………金剛、準備は出来たか?」

 

金剛「二隻の着任した歓迎会、準備……OKネ!」

 

ーー

 

サウザー「───!」ピクッ

 

ラオウ「………………!」

 

ーー

 

吹雪「あ、あれっ? 歓迎会はやらないって…………」

 

金剛「………………Sorry It cheats!(騙してごめんね!) 二人の着任祝いの準備が出来たから、呼びに来たんダヨ! さあ……Let's go!(さあ、行きまショウ!)」

 

ーー

 

吹雪は驚いて金剛に詰め寄ると、片目をウインクして、ニッコリと笑う。

 

ラオウと交戦一歩手前だったサウザーも、歓迎会と聞いて……急にソワソワとしだした。 ラオウから見れば、かなり隙だらけだが、何故か攻撃を仕掛けない。 しかも、構えさえも解いて、提督を注視している。

 

ーー

 

サウザー「だ、誰が………このような奴と───」ソワソワ ソワソワ

 

金剛「今日は歓迎会だから、金剛カレーと比叡カレー、食べ放題ネ!」

 

サウザー「───フッ、この帝王に、カレー食べ放題で着任を祝うと企てるか。 仕方あるまい、折角の好意を受け取らなければ、帝王としての矜恃を汚す事になろう! 良かろう、我を導く事を許可しようではないか!!」

  

金剛「Oh...!! さすがぁ、サウザーさんネ! 提督の次にGood attitude(立派な態度)ダヨ! 早くぅー、コッチおいでヤスゥ!」

 

吹雪「………………やす? 金剛さん………語尾が………」

 

サウザー「フハハハハッ! こ、この帝王の……寛大な心を感謝するがよい! ラ、ラオウよ、一時休戦だ! まずは、そのカレーを食べ尽くしてから、再戦してやる!! 首を洗って待っているがいいっ!!」

 

ラオウ「………この命、奪いたくば……いつでも来るがいい! しかし、天が望むは、このラオウのみと知れぇ!!」

 

サウザー「フハッ、フハハハハハハハ────ッ!!」

 

ーー

 

金剛「………………提督ぅ、You owe me one!(一つ貸しだからネ!)」

 

提督「…………まぁ、仕方ねえ…………」

 

ーー

 

こうして、サウザーは金剛に連れられ、建造の倉庫には提督、吹雪、ラオウの三人?が残った。

 

ーー

 

ラオウ「……………提督よ、うぬの策か?」

 

提督「───何がだ?」

 

ラオウ「サウザーとの決闘を止めた事……だ」

 

提督「ふん──仲間同士で争う真似なんて、馬鹿がやるだけで充分! 双方が演習以外に大破なんかされたら、俺が大損じゃねえか……ったく!」

 

ラオウ「…………言われてみれば、確かに軽率かも知れぬ。 ………だか頭を下げぬぞ、提督よ。 媚など……このラオウには不要! たとえサウザーに敗れて、命を拾おうなどと思わぬわっ!!」

 

提督「まあ、そんな風に考えるじゃないか………って、予想もしていたんだよ………一応な?」 

 

ラオウ「───ぬうぅ!?」

 

吹雪「私、『北○の拳の究極版』も持ってます! 保存用、観賞用、布教用と三冊揃えてるんですよ! だから、泣けるエピソードも、恥ずかしい話も、爆笑的な逸話とかも、全部知ってるんですからっ!!」

 

ラオウ「───バ……バカな!  俺が……… このラオウが、震えるだと……」

 

提督「それじゃ、双方が……遺恨も怪我も無いように、収めるしかない。 だから、得意の無手勝流を一手ね、仕込んだのさ。 まあ、金剛の奴へ、でっかい借りが………出来ちまったがね………」 

 

吹雪「え〜とですねぇ………この『イチゴ味』にも、サウザー様のカレー好きとか、若い女性が苦手とか………いろいろ書いてあったんですよね!」

 

ーーー

 

提督が仕掛けたのは、鎮守府に前から着任している『金剛』『比叡』の両艦娘を主催に歓迎会を開かせた事である。 

 

しかも、それだけではなく………一番重要な事は、歓迎会の開催を新たに建造された艦娘?に、『わざと知らせなかった』ことだ。

 

今度の建造で『サウザー』が出て来た場合、ラオウと会えば………必ず騒動が起こる。 互いに実力を認める強者同士、対決などされれば……鎮守府の建物は粉々に砕かれ、更地と化してしまう!

 

だから……『寂しがり屋』『カレーが大好き!』のサウザーならば………必ず引っ掛かる策を構築。 『争いが起こりそうになったら誘え』と、金剛に言い含めて待機させていたのだ。

 

ーー

 

ラオウ「ほう………弱点を見抜いて仕掛けたか。 だが、サウザーでなければ、うぬの策は無駄になったのだぞ? その場合………どうする気だ?」

 

提督「…………世紀末覇者のラオウが、サウザー以外に負ける事って………あんの?」

 

ラオウ「………愚問………と言いたいが、ケンシロウ……奴が居る」

 

提督「そんな怖い顔で惚(とぼ)けんな。 それこそ話し合えば済む相手じゃないのかい? そうなったら、俺が頼んで開いて貰った歓迎会に、ラオウとケンシロウの着任を祝って、盛代に持て成してやるさ!!」

 

吹雪「はいはぁーい! 私もでぇ〜す!!」

 

ラオウ「………………なんとも退屈させぬ世界よ。 提督………うぬと天を握るのは、このラオウの野望の一つ!」

 

提督「………俺みたいな平凡な奴に、何でそんなに入れ込みのかね…………?」

 

吹雪「……………さあ〜?」

 

ラオウ「──フッ、万人には分からぬ。 提督、吹雪よ──世紀末覇者ラオウの生き様……しかと見せつけようぞ!  この俺を、対等の地に立たせる男など……提督、うぬだけだ! うぬしか──おらぬのだからな!!」

 

ーー

 

提督と吹雪は、顔を見合わせ不思議がるが、ラオウだけは満足げに頷くだけであった。 

 

 

◆◇◆

 

【 余談 の件 】

 

? 某鎮守府内 歓迎会 にて ?

 

ーー

 

比叡「お代わり、沢山ありますからねぇ〜?」

 

サウザー「ひ……………引かぬ、媚びぬぅ……省みぬぅうう! て、帝王に……帝王に……………逃走など……………」

 

金剛「HEY! 英国式金剛カレーが出来上がったヨー! 召し上がれ♪ 」

 

サウザー「…………フッ、フハハハハハハ──ッ!」

 

「「──────?」」

 

サウザー「も、もう───かんにんして……つかぁさいっっっ!!」

 

ーー

 

聖帝サウザー、この時より『引かぬ媚びぬ省みぬ』の三原則を放棄し、帝王たる矜恃を失う。 そして、鎮守府へ正式に着任して、この騒動は終わりを告げるのであった。

 

 

 

ーーーーーーー

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あとがき

 

最後まで読んで頂き、ありがとうございます。

 

2週間ぐらい休みつもりだったんですが…………ネタが浮かぶ、こんな『艦これ』も無さそうでしたので、オマケで書いた物の続編を作品にしてみました。

 

勿論、義輝記の完結させなきゃいけないし、今掲載中の物もありますので、連載する気は…………………………無い……かな。 

 

続きも考えてありますが、どうなるかは………状況次第です。 

 

 

 

それから、前作で投稿した小説も、下に掲載しました。

 

まだ、読まれて居ない方は、こちらもどうぞ。

 

 

 

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【 とある艦娘?が着任しました の件 】

? 場所不明名称不詳の某鎮守府内 にて ?

 

 

とある鎮守府では、大型建造を行う為、秘書艦である吹雪に資材を預けた。

吹雪は、この鎮守府に俺が着任してから、秘書艦を務めてくれる優秀な艦娘。

今までも、多くの装備を開発、新しい仲間を迎えさせてくれた。 だから、今回も吹雪を信じ、なけなしの資材をかき集めて、建造に臨んだのさ。

ーー 

提督「………吹雪、建造時間はどれくらいだ?」

吹雪「そ、それが───」

提督「どうしたんだ? 何かあったのか?」

吹雪「は、はいっ! ──司令官、申し訳ありません!!」

ーー

吹雪の話では、何でも資材投入の時に、側に置いてあった『愛読書』まで投入してしまったそうだ。 

建造は、時間が掛かる……大型建造なら尚更。

そのため、他の業務を終わらせた後に駆けつけ、時間が30分ぐらいの余裕があれば、好きな本を読んで時間を潰していたそうだ。

そうしたら、資材を一生懸命投入していたら、うっかり投げ込んでしまったとの事。 回収なんて不可能……どうしようもない。

因みに俺が頼んだのは、『大和』か『武蔵』を目指して命じたのだが………?

ーー

吹雪「実は………建造時間────『24時間』なんです!」

提督「な、なんだそりゃっ!?」

ーー

普通………大和型は8時間。 

それ以上に時間が掛かる艦なんて………俺は知らねぞぉ!?

ーー

吹雪「や、やっぱり司令官は………許してくれませんよね。 これじゃ………秘書艦、失格です……………」

提督「お、おい───」

ーー

俺の反応、吹雪は自分の責任だと落ち込んで涙を流す。 そんな姿を見せられたら、俺も心が痛むぜ。 将来の嫁艦候補の吹雪を泣かれるのは、正直辛い。

提督「吹雪、まだ………失敗と決まっていない。 待とう、待てば海路の日和ありって言うじゃないか。 失敗したら、また資材集めてやり直そう。 ──なっ?」

吹雪「し、司令官────!!」

ーー

そんな訳で、その日は黙々と他の仕事を片付けて、次の日を待った。

期待が3分の1、落胆が3分の2だったけど。

 

★☆☆

翌日

俺達は、建造する倉庫に来ていた。

ーー

吹雪「司令官……………………完了しましたよ?」

提督「う、うん。 無事に成功したようだが……………」

ーー

建造は何と成功! この頑丈な鉄の扉の向こうに、その艦娘が居るということだが………

ーー

吹雪「司令官…………お、音が聞こえますが、何でしょうか?」

提督「ま、まるで象か………何かが、歩いているような」

ーー

小さい地震のような響き、そして近寄る足音?

そんな巨大な艦娘なんて、居ない───えっ!?

鉄の扉が開き、中から現れたのは………光る4つの目、象のように太い4つの脚、高さも五メートル以上の『怪物』!!

ーー

吹雪「し、司令官! 貴方の身は、この私が身を挺して守ります! 早く逃げて下さい!」

提督「ば、馬鹿野郎! お前こそ艤装を外したまんまだろうが! ここは、俺が時間を稼ぐ。 早く行って艤装を付けてこい!」

吹雪「い、嫌です! 私は建造されれば、新しい私が司令官の下に着任します! だけど、大好きな司令官は貴方一人です! だから、ここは私が!」

提督「分からない奴だ! 幾ら新しい吹雪が俺の下に来ても、俺と共に過ごした吹雪は居ないんじゃ話しにならん! それに、こいつに抵抗できるのは、お前しかいない! ならば、どちらが残るか決まっているだろう!」

吹雪「それでも嫌です! 司令官を残して行くなんて───」

提督「これは強制命令だ! 吹雪、逃げろぉ………お!?」

ーー

ここで、俺は──ふと気が付いた。 

こいつ、俺と吹雪の会話している最中………まるで攻撃してこない。

じゃあ…………こいつは?

ーー

??「……………うぬが………提督か?」

提督「………………………………は、はいっ!」

ーー!

野太い声が聞こえて、慌てて上を見上げれば………怪物と思ったのは、巨大な馬に乗る巨人? 

刺々しい兜を被り、鍛え込んだ筋肉、鋭い眼光、身体に巨大な覇気纏う───世紀末覇者が………俺に問い掛けたんだと分かったのに、少し時間が掛かった。

ーー

ラオウ「俺の名はラオウ。 『北斗型 正規戦艦 ネームシップ ラオウ』だ。 どういう意味か解らぬが、この鎮守府に着任したからには、提督よ! うぬを世界の覇者にするのが、我が天命! 共に覇権を握ろうぞ!!」

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────『北斗型 1番艦 正規戦艦 ラオウ』が鎮守府に着任しました。

これより、提督に世界の覇権を取らすため、動き始めます。

 

 

説明
独自設定、独自解釈の『北斗(イチゴ味)』と『艦これ』のクロス小説です。 

この話の最初は、『艦隊 真・恋姫無双 98話』のオマケの話で入っていますが、読まれて居ない方もいますので、この本編の下にも転記いたしました。

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コメント
スネーク提督 コメントありがとうございます! この後、一晩中うなされたと言う話です。 その後の話は次回ですが……また、オマケで付けようかな……と。(いた)
サウザーの胃は鉄製だろうからきっと金剛カレーも大丈夫…なはず…w(スネーク)
ひっとー提督 コメントありがとうございます! もし、連載になれば……何隻か出しますw 剛掌波等を使えますので射程は『長』、黒王号に乗り海上を疾走して深海棲艦を駆逐する話となります。 他にも南斗六聖拳、五車星達も動きますが……次回は何時になるのやら。(いた)
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