リリカルなのはZ
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 使徒と応龍皇の激闘から数日後の日曜日。その日は学校も企業も基本的にも休みだが、グランツ研究所はそれに当てはまらない。ゲームの新時代を切り開くアミューズメントパークはいつしかガンレオンとD・エクストラクターの二つの希望が安置されている世界で一番の要塞と知られている。グランツ研究所は本来子ども達に夢を与える場所なのに。

 ディズニーランドが戦時中の基地施設みたいな取り上げ方をされているのは俺も納得がいかない。まあ、その原因を作ったのも俺達だからな・・・。ガンレオンは修理用という言い訳も、D・エクストラクターも航行動力という言い訳も消えて戦闘兵器と世界からみられている。

 グランツさんには本当に悪いと思っている。だからこそ彼等フローリアン親子と紫天シスターズにはスフィアの事を話してもいい。というか、話さないといけない。間違っても彼等にスティグマを刻まない為にも・・・。

 

 「で、ここにいる皆が俺達の事を知りたいと・・・」

 

 NERV。エヴァのパイロットのシンジ。レイ。アスカ。その保護者のミサトにエヴァ開発の最高責任者のリツコ。

 管理局からはハラオウン親子3人とアルフ。けがから復帰したばかりの八神はやてとその守護騎士達。そして、高町なのはとその家族。あとはその幼馴染兼最大出資者のアリサとすずかとそのメイドたち。。

 マスコミや国家の重鎮達もいたがそれは適当な理由を並べて帰した。とりあえずスティグマを刻む可能性とスフィアを知らず知らずのうちに持っていそうな人、もしくは将来持つかもしれない人間だけに絞ったのだが・・・。

 

 「NERV。とハラオウン親子に八神家。ああ、もうとにかくお前等全員帰れ」

 

 グランツ研究所に入る前に行った持ち物検査でほとんど全員が引っ掛かった。なんなのお前等、こっちは重要案件を話そうとしているのに盗聴器とかもって来るって何?守護騎士達はある意味アンドロイド。しかも主であるはやてを通して秘密が漏れるかもしれないのでアウト。それはアリサやすずかもだ。特に月村家。彼女達の持ち物検査をしたプレシア曰く女にしか隠せない場所に隠していたとか徹底的過ぎるわ。

 

 「そこをなんとかっ」

 

 「出来るかボケ!」

 

 「うう、頑張っていれてきたのに・・・」

 

 「頑張る方向が違うでしょ、月村さん」

 

 出禁を喰らったはやてはごねて何とか入ろうとして粘るがこいつだけは絶対にいれん!何気にサーチャーを潜りこませようとかしてくるし、いつからこんなにハラグロになったんだか・・・。そしてちょっと涙目に成しながらお腹の下を押さえるすずか。こいつら大人しそうな顔して一番えげつない奴等だ。

 

 「そこまで徹底していたなんて・・・」

 

 「・・・」

 

 「レイ。その人形そんなに気にいったの?」

 

 かくいうNERVもシンジの制服のボタンの中に盗聴器をつけていた。本人も知らされていなかったらしく見つかった時はたいそう驚いていた。まあ、シンジに腹芸は無理だろう。俺以上に顔に出るからな、こいつ。というか、これ以上信頼値を下げるとシンジもエヴァに乗らなくなるんじゃね?そして無表情少女のレイはチビレオンとチヴィの二頭身フィギュアをモフモフしている。彼女が持ってきたお小遣いではこの二体だけしか買えないそうだ。まあ、たしかにグランツ研究所のアイドル。アミタやキリエ、紫天シスターズにアリシアとガンレオンのフィギュアはゲーム発表と同時に爆発的な売り上げを叩きだしているが、使徒の襲来と共にガンレオンの名前も売れて既にプラモデルやカードも出ている。まあ、ガンレオン関係の商品登録・特許は取っているから文句はない。ただ、俺のフィギュアはあんまり売れてない。まあ、自分のフィギュアが売れても、ねえ?買ったとしても周りに美女や美少女がいる俺に対しての呪いの人形に使われそうな気が・・・。事情を知らない俺だったらそうする。

 

 「ねえ、映画はまだ見れないの〜」

 

 「う〜ん、一応極秘中の秘だからね。知る人が知れば私達は殺されるかもしれないし・・・。もうちょっと待っててね」

 

 「・・・あれ。お姉様はどこ?」

 

 「リニスさんとお母さんは内密にあちこちへ出向いているんで不在なんです」

 

 「そう、なんだ・・・」

 

 「というか普通にバルディッシュとか情報媒体を持ってきている時点でお前もアウトだぞフェイト」

 

 リニスがいないと知ると興味を無くしたアスカと気落ちするフェイトとアルフ。この世界でも子犬モード。もしかして探りを入れに来たのかこいつも?

 

 「管理局でも魔法がある世界と無い世界では共有していい情報と悪い情報がありますけど・・・。ガンレオンとD・エクストラクターという存在が世間の目にさらされているというのにまだ何かあるのかしら」

 

 「・・・そうね。たとえ世界を救えるとしても、たとえ世界が滅ぶとしても知られたくない。少なくても内密の意味を知らない人達にはね」

 

 リンディの軽い探りの言葉にトゲ(有毒)のある言葉で返すプレシア。パネェわ、さすがは俺等のブレイン。よっ、大魔導師、娘の為なら次元崩壊をいとわない肝っ玉母ちゃん!って、何気にジ・エーデルに似ていない?目的は違えど世界の存亡をかけた実験とかしている辺り・・・。気のせいだよね。そうだよね。

 

 「・・・はあ、そんなにしてまで私達の事が知りたいわけね」

 

 「そりゃあ、もちろん」

 

 「なら、タカ。今ここで脱ぎなさい」

 

 「どうして俺がここで脱がなきゃいかんの?!」

 

 会話が成り立っていない気がするんだがっ。スフィアを教えて欲しい。俺が脱ぐ。この話の脈絡が分からんっ。

 

 「私達の事が知りたいというのなら貴方が今まで体験してきたことを文字通り体で教えれば済むことだもの。私達に関係したいというのならこれだけの覚悟が必要だってことをね」

 

 「・・・いや、まあ、そうなんだろうけど」

 

 俺、腐っても『傷だらけの獅子』のスフィアリアクターなわけで、たぶんだけど他のスフィアリアクターより傷だらけな体だと思うんだ。ああ、こう傷だらけになるから知らない方がいいという事か・・・。

 着ている濃い緑色の作業着の上の方を脱ぎ捨て、下に来ていたシャツも取る。厚手で長袖だった服の下にあるのは『知りたがる山羊』のスフィアを持ったアサキムとか幼少期に敵対してきたフェイトとなのは。はやて達やその守護騎士。『偽りの黒羊』と『尽きぬ水瓶』を持ったジ・エーデルの攻撃で受けた傷があちこちにある。我ながらよくぼろぼろにしたものだ。

 

 「・・・うっ」

 

 「これだけの傷。僕の知り合いにもいないぞ」

 

 「よく見えないけど、よく見ると顔のあちこちにも怪我しているような」

 

 傭兵家業をやっていた高町家夫妻や恭也さんに美由紀さんがそれぞれのコメントを貰う。あんまりじろじろ見ないで欲しい流石に恥ずかしい。

 

 「まあ、力を使いこなせなくてついた怪我もあるんだけどね・・・」

 

 「だからってこの怪我は・・・」

 

 「まあ痛々しく見えても実際のところは後としてしか残っていない訳で普段の生活や戦闘には支障をきたさないけどね」

 

 「あのロボットに乗っているのに・・・」

 

 「ガンレオンが傷つけば俺も傷つくんだよ。それに一年前まではガンレオンだって本当に人が着込む鎧サイズしかなかったんだって・・・。何故かここに来てから急に大きくなったけど」

 

 守護騎士やNERV。アスカのコメントは様々だがまあスフィアをうまく使いこなせなかったからついた傷なんだが、それにもう消そうと思えば消せる傷を消さないのは自分への戒めだ。

 スフィアにはまだ何かある。それが何なのかは分からないけど、なんというか直感、本能に近いなにかがそう言っている。

 

 「・・・どうして」

 

 「ん?」

 

 「どうして、そこまで戦おうとするんですか」

 

 「戦わないと死ぬからだよ。死にたくないから戦う」

 

 「逃げたっていいって言ったじゃないですかっ、それなのにどうして逃げれるはずの貴方達が戦わないといけないんですか!」

 

 シンジは高志の体中についた傷を見て改めて思い知った。目の前にいる人間は自分がしている人間で誰よりも戦ってきていると。それも何度も死にかけているのが感じ取れた。彼等は逃げようと思えば逃げれたはずなのに逃げない。その思いがどこからきているのか、どうしてそこまで戦えるのかと。

 

 「俺達が逃げたらお前達が死ぬだろ。特にグランツさん達には命を救われた。だったら助けてあげるのが道理だろ。・・・それとも助けて欲しくなかったのか?」

 

 誰かに助けてもらったらその人を助けるのは当たり前。目の前にいる男はそう言っている。

 

 「それで死んだら元も子もないじゃないですか・・・」

 

 なのはもシンジに続いて高志に話しかける。目の前にいる人はつい最近までの自分に似ていた。自分もまた管理世界で死に掛けた。それと同じように言っている高志がどこか自分とは違う。その際は何なのか。シンジ同様に知りたかった。

 

 「そうならないように一応毎日訓練はしているんだぜ?それにそうならないように周りの人に助けを求めている。・・・てか、ずっと頼りっぱなしだよ。プレシア然り、グランツさん然り、『助けて欲しいから助ける』な状態だな」

 

 「…私達もあなたの助けになっているんですか?」

 

 「当たり前だろ。シュテルだけじゃない。ディアーチェにレヴィ。キリエにアミタ。研究所の皆。皆が俺を支えてくれているから俺は立っていられるし、頼りにしている。この間の無限パンチなんかわかりやすいぐらいに頼りになったぞ」

 

 いつの間に近付いてきた高志の体にあった大きな刀傷を撫でながら質問してくるシュテルの頭に手をいてヒートスマイルをした後、その場にいる全員にもその笑顔を見せつける。

 

 「お前達の為に戦うんじゃない。俺を助けてくれるお前達を戦う。お前達を助ければそれ以上にお前達が俺を助けてくれるんだ。助けないわけないだろう」

 

 情けは人のため非ず。

 自分が助けたその恩は巡り巡って自分に帰ってくる。それに本当に最悪になったら逃げる気満々だしな。と、おちゃらけた様子で本音を零す高志。だが、本当に彼が逃げ出すのはきっと今以上に傷だらけになった後だろう。

 

 「・・・随分、綺麗な理想論を語るわね」

 

 「それを語るだけの力と覚悟はあるさ」

 

 「貴方たちへのメリットがあまりにも少ないと思いますけど・・・」

 

 「メリットはある。D・エクストラクターの技術向上。人の想いを動力にするアレを上手く運用できるようになるだけでもかなりのメリットだ」

 

 リツコとリンディの言葉に即座に切り返す高志。そんな彼だからこそこう言える。

 

 「それだけの力を持っていても俺達はお前達に話せないものがある。だってそれは俺達でもどうしようもないくらいに強大な物だからだ。だからこそ研究所の人達には伝えようと思う。NERVや管理局のお前達にも教えようとしないのは『最悪、自分達以外の人間を犠牲にしてもいいや』と思う可能性があるからだ」

 

 管理局はフェイトやはやてといった優秀とはいえ子供を戦場に出そうとする組織だし、NERVはあのいけ好かないゲンドウが指揮官の組織だ。

 リンディの人柄は未だに掴めていないが盗聴器といった物を持ち込もうとしている時点でアウトだ。

 

 「ふ〜ん。つ・ま・り、より関係がある私達には話しても大丈夫だと思っているでいいのかしらん?」

 

 「むしろ関係が深くなりそうだから話しておかないといけないんだよ。てか、服着てもいいか?」

 

 シュテルと同じようにそれでいてどこか挑発しているような手つきでこちらの上半身に触れてくるキリエ。なんかシュテルとキリエで変に刺激してくる。どこか性的な刺激が・・・。アリシもなんか正面から抱きついてくる始末に高志は困った表情をしながらアリシアに視線で訴える。

 

 「・・・そうだね。こういうのは裸の付き合いでけりをつけた方がいいね」

 

 「は?」

 

 アリシアの言葉に高志はもとよりそこにいた全員の目が・になった。

 

 「私達の事が知りたいのならうちの公衆浴場を解放してそこに立体映像を出そう。水着はこっちで用意するから。身体検査ついでにみんないろいろ話し合おうよ。お互い丸腰のほうが落ち着くだろうし。うんうん。それがいい。そうしよう。私がお兄ちゃんの一番だと見せつけるチャンスだし」

 

 「おい、本音を隠せ本音をよ」

 

 「そして驚愕するがいい。イビル・ジョーの存在に」

 

 「やめろ、まだトラウマを抜けきっていないんだから」

 

 狂食竜がどうしたというのだろうか?それは後に高志と一緒に脱衣所に入ったシンジ・高町恭也・士郎だけが知ることになる。

 

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 ―獣の血。水の交わり。風の行きつく先。日の文明。そして、太陽の輝き。―

 すごいや。たった一つのスフィアしか持っていないのに既にシンカの兆しを見せている。さすがは使徒を撃退するだけはあるな。もしかしたら彼だけ世界をどうにでも出来そう。

 あの機体も私達が想像もしないシンカをしている。楽しいなぁ、楽しいなあ。彼はどんなシンカをしてくれるのか楽しみだ。だからこそ、だからこそあっちのスフィアにも頑張ってもらわないと。

 

 ねえ、『強欲の金牛』。

 

説明
第二十四話 支えて支えられて
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