ここ５０層「アルゲート」は様々な店が立ち、人や物が流通しているため、毎日が賑やかなのだが今日は

どちらかというと騒がしかった。何故なら・・・

「逃げるんだよぉ〜」

「「「待てぇ〜〜」」」

白昼堂々カーチェイス（追いかっけこ）が行われていたからだ。

逃げている方は、黒いロングコートを身に纏い、フードで顔が見えないようになっていた。追いかけている方

は３人、同じ服装で統一されていたﾞアイングラット解放軍ﾞと呼ばれる攻略組の１つ、通称ﾞ軍ﾞと呼ばれる連

中だ。

「くそ〜、逃げ足が速いぜ。」

「それにしても、アイツどうやって俺たちの物を盗みやがったんだ？」

３人のうち２人は、それぞれ思ったことを口にした。そして、共通で思ったことはﾞどうやって逃げているア

イツは物を盗んだﾞかだ。盗まれた物は宝石がついたネックレス、たしかにストレージゲージに入れておいた

はずなのに気付いた時は、逃げているヤツの手の中にあったのだった。それを軍の１人が気づき今にいたるのだった。

「はいよ〜ゴメンネ、通るよ〜」

どこか軽い口調で言いながら、プレイヤーやNPCを追い越して大通りに走っていた。

「いや〜今日もさえているな俺の勘は」

「あいも変わらず、君の勘は驚かせるばかりだ。特売日のある層を当てるとは・・。」

「でも、おかげで食材を安く調達できました。これで、当分は持ちますね。」

大通りを歩く三人の若者は買い物の帰りなのか、紙袋をそれぞれ持って歩いていた、すると・・・。

「ゴメンネ〜通るよ」

反対側からロングコートの男が向かってきたので３人は隅によった。ロングコートの男は通りすぎ、遅れて軍も通りすぎていった。

「よく走るなアイツ・・」

「前も、あんな光景をみたような気がするよ」

「後ろの３人は、軍でしょうか？」

３人は再び歩きだし、転移門に向った。

「別に１人でも大丈夫よ、無理についてこなくても・・」

「いえいえ、そんなことは・・」

「何かあってはいけませんから。」

３人の女性が歩いており、そのうち二人は一歩離れた所から１人の女性についていくようにあるいていた。

前の１人はこう言ったものの、どこか嬉しそうに微笑んでいた。周りのプレイヤーはその微笑みに見とれるば

かりだった。３人は右角に曲がろうとした時、ロングコートの男が角に曲がって横をすれすれに通りすぎていった。

「きゃっ何？」

「あっ、あれは・・」

「おい、コラ、人に当っ・・チッ、あいもかわらず足が速い」

１人は通りすぎた風圧でひるみ、もう二人はロングコートの背をただただ、見るのだった。ちなみに１人はその背をにらみつけていた。

このカーチェイスを見ていたのは彼ら、彼女らだけでない。例えば、アルゲートのとある雑貨屋に二人組

の青年が店から出た時はたまたま、その前の道にロングコートの男が横切った時、

「あれって・・・」

「彼ですね・・まったく。」

茫然と眺める、白を基調とした服の青年とあきれながら見ていた青を基調とした服を着ている二人組の青年もいれば・・。

「・・・・・・・・・。」

アルゲートで一番高い、建物の上に立ち、白いコートを着て白のフードで顔を隠した男がその様子をみている者。

「・・・ん？あれは。」

路地から大通りを出ようとした時、たまたまその前を通りすぎるのを見かける１人の大男など、様々のプレイ

ヤーがこの一部始終を見ていた。そして、彼らはそろって、この言葉を口にするのだった。

「「「「また、おまえかゼウス」」」」

「へっへ、またまたやらかしてしまいました。」

風圧でフードが脱がされ、あらわれたのは１人の男の姿、彼こそがこの物語の主人公、プレイヤーの１人ゼウスである。

ゼウスはそのままスピードを落とさずにアルゲートの町を走り回るのだった。