真・恋姫†無双 外史 〜天の御遣い伝説(side呂布軍)〜 第八十二回 番外編:軍師たちの華麗なる新年会 |
えー、コホン、皆さまどうも初めまして。
ボクの名前は黄権、字は公衡。
今年で26歳、妻と今年で7才になる娘との三人家族です。
北郷様が新たなお館様となってからは成都のお隣、広漢へと異動しまして、政を任されております。
本日は初登場にもかかわらず、いきなり進行役に抜擢されてしまい、至らぬところばかりではありますが、どうぞ宜しくお願い致します。
ここは成都城下にあるとある酒場。
そこの一つの机に、四人の人物が座っており、注文した料理が運ばれてくるのを今か今かと待っていました。
「しかし、こうしてねねたち軍師が集まってそれぞれの国政について話し合うというのも、随分久しぶりな気がしますな」
先に机に運ばれていたお冷やで喉を潤しながら、ウンウンとしたり顔でそのようなことを言っているのは、
えめらるどの綺麗な髪をおさげに結い、パンダの顔の刺繍が施された黒い帽子をかぶった、
どこかいたずら盛りでヤンチャな子犬が思い起こされる小柄な少女、陳宮さんです。
「私的には、もっと定期的に開いたらいいと思うかな。定期的な情報交換は、そのまま参考にすべきことを持って帰って実践できるし、
益州全体の発展につながるしね」
頤に指を当てながら考えるように話しているのは、淡い青紫色の髪をついんてーるに結い、
つばの広い紺のとんがり帽子をがぶった、外界に怯える子猫の様な、不思議と保護欲がそそられる、こちらも小柄な少女、鳳統さんです。
「まぁ、特に最近は色々とごたごたしていたからな。潼関への遠征から始まって、南蛮対策に、極めつけはお館奪還作戦と赤壁だろ?今
思えばここ数か月は嵐のように過ぎ去ったな」
椅子の背もたれに体を預けながら、頭の後ろに手を回してぶっきらぼうに話しているのは、少し長めの金髪をおーるばっくで流した、
右目頭から左頬にかけて伸びる真一文字の傷跡が特徴的な孝直さん、えっと、孝直というのは字で、名前は法正さんです。
――――――え?孝直さんの話している内容がおかしい?お館様奪還作戦は終わってないし赤壁は始まってすらいない?
いえいえ、どちらもすでに終わった出来事ですが?
まぁ、そこは華麗に無視していただければ非常にありがたいものです。
そして、最後の一人はボクです。
特に特徴はないです。
あえて一つ上げるなら、よく女の子と間違われます。
幼い印象の顔つきや小柄で華奢な体つき、長い髪や高くて弱弱しい声色、
可愛らしい服の趣味などが女の子そのものらしいのですが、自分ではよくわかりません。
不思議です。
ちなみに今日は真っ直ぐに伸びた少し長めの黒髪に、浅葱色のりぼんを結わいつけ、
瑠璃色を基調にした服、お館様が仰るには『あおざい』と言うらしいですが、それを身につけています。
今日はこの四人で情報交換を行います。
「しかし、いつも思うのですがなぜ張松殿はこの会に参加しないのですか?というよりも、ねねは未だに姿すら見たことがないのです」
「あわわ、そういえば、私も見たことがないかも。確か越?郡を任されているんだよね?」
「まぁ、奴はそういう性質の人間だから気にしねぇことだな。そこそこ付き合いの長い俺ですら、数えるほどしかまともに姿なんて見た
ことねぇしな。それでも、表に一切出ることなく、部屋に籠りっぱなしで仕事を難なくこなしちまうもんだから大したもんだがよ」
「その話を改めて聞くと、本当に凄いことですよね。益州が西からの異民族の被害を受けないのは張松さんのおかげと聞いていますし」
「むむむ、確かに末恐ろしい奴ですな」
今話題に上がっている永年さん・・・あ、また癖で・・・永年は張松さんの字です。
それで、永年さんはボクや孝直さん、あと文長さんや子敬さんたちのように・・・
またやっちゃいました・・・えっと、文長は魏延さんの字で、子敬は孟達さんの字です。
で、要するに元々は前のお館様、劉璋様に仕えていた軍師です。
皆さんが仰るようにほとんど姿を現すことなく、ずっと部屋に籠りきりな少し変わった方です。
ボクも付き合いは長い方ですがやっぱりほとんど見たことがありません。
ですがその才はボクなんか足元にも及ばないほどすごいもので、劉璋様が愚に走ったせいで崩壊しかけた成都を、
孝直さんと共に知の方面で立て直しを図り、何とか今のお館様がいらっしゃるまで崩壊を防いだ功労者です。
「ですが、やはり少し気になりますな。いったいどんな顔をした奴なのですか?もしかしたら知らず知らずのうちに道ですれ違っている
かもしれないのです」
「お昼がたまたま隣の席同士だったってことも十分あり得るよね。何か特徴的なところとかはないんですか?」
「あーそうだな・・・あえて言うなら・・・・・・不健康そうな顔をしてやがるっていうか顔色が悪い」
「顔色が悪いとは、大丈夫なのですか?」
「あわわ・・・」
「あとは・・・そうそう、ネズミみたいな顔してやがる」
ねず、クスッ
「あわわ、ネズミみたいな顔って、誇張ですよね?」
「いや、黄権殿の今の反応を見れば恐らく的を射た表現だったに違いないです」
ま、まぁネズミというか齧歯類という方が正しいかもしれませんが、
顔色の悪さと相まってネズミという表現が出たのは言い得て妙だと言えます。
「要するに胡散臭そうな顔だな。あとずる賢そうだ」
「あわわ、何となく想像は出来ました・・・」
「2種類ある軍師の型の典型例の方ですな」
ここで言う2種類の型というのは、見た目は小奇麗だけど自身の才を鼻にかける嫌な奴の型と、
見た目の醜さに反してとても頭が切れて頼りになる型のことを指していると思われます。
皆さん酷いこと言っていると思われるかもしれませんが、私たち軍師にとって見た目など二の次の話。
胡散臭いやずる賢いといった評価は褒め言葉と同義ですので気にすることはありません。
顔色やネズミのくだりは何とも言い難いですが。
「・・・・・・・・・へいお待ち」
相変わらずここの店主は愛想がないというか、寡黙な方ですね。
「皆酒は行き渡っていますな?では、改めて、去年は色々とあったですが、今年もお互い一刀殿の築く太平の世を目指して宜しくですと
いうことで!」
「「「「かんぱーーーーい!!!!」」」」
こうやって軍師仲間で乾杯をすることで、ようやく一年が始まったんだって感じがしますね。
うん、お酒もおいしいです。
「さて、さっそくですが、今年はどこから取り掛かるです?東は当分大丈夫でしょうし、北も涼州の援軍要請に応じる程度でしばらくは
事足りるでしょうから、やはり南ですか?」
「そうだな、漢中の方は何とか防衛力強化の政策転換に持ち込もうとしているが、如何せん張魯のアホが動かねぇ。涼州と同盟を組んだ
おかげで北に対する危機感が薄れて余計だぜ。ますます農業に勤しんでやがる。まぁ、おかげで兵糧に関しては一切心配がないけどな」
孝直さんのイライラした顔が目に浮かびますね。
あと、東の孫策軍・劉備軍はついこの前まで同盟を組んでいたから当分大丈夫ということでしょうし、
特段急いで対策を練る必要はないということですね。
確か劉備軍の諸葛亮は隆中策を唱えていたはずですし、赤壁後に生まれた、
曹操軍とボク達益州、そして孫策劉備連合軍という、事実上の三国体制の均衡を保とうとするはずです。
「・・・ですが、孫策劉備軍については、頭ごなしに大丈夫と言えないかもです。隙さえあれば益州攻めも十分考えられます」
「・・・鳳雛殿が言いたいことは、代々劉家が守ってきた益州を、どこの馬の骨とも知れねぇ男が統治しているってことに付け入る隙が
あるってことか?」
そんなどこの馬の骨って・・・確かに天の御遣いという存在は神秘的が故言い方を変えればそうなってしまうのかもしれませんが・・・。
「さすがは法正さんです。簒奪まで言えば飛躍のしすぎかもしれませんが、私の知っている諸葛亮という人物は、それほど注意が必要と
いうことです」
「むむむ、ですがやはり早急に手を打つべきは南蛮族なのですぞ。この前も時期を無視して暴れていますし。雛里も現実逃避は良くない
のです」
そういえば、鳳統さんは南蛮対策を任されているんでしたっけ。
「あわわ、そうなんだよね。中々南蛮対策が上手くいかなくって・・・張松さんが今日来てくれたら、異民族に対する対策とか聞けたら
よかったんだけど・・・」
ああ、泣かないで鳳統さん!ほら、ここのシュウマイは絶品なんですよ!
「チッ、鳳雛殿を煩わせやがって。今からでもあの引き籠りを引きずり出すか・・・」
「・・・・・・例えば、この前一刀殿が言っていた、五斗米を利用した策をもっと本格的に考えてみてはどうです?」
「そうだよね、食を絡めた外交は結構有効打になるかもしれないんだよね。この前一度益州での作物の収穫高と民の年間の消費量、あと
必要最低限の備蓄等含めて試算してみたんだけど、結構現実的な数字になったの」
「よし、その時になったらいつでも言ってくれ。鳳雛殿のためなら、俵をいくつでも持って行ってやるからよ」
何だか孝直さんがいつになくやる気ですね。
「法正、お前妻子持ちのくせに雛里にデレデレしていたら奥方に搾り取られますぞ?」
ち、陳宮さん搾り取るっていったいな――――――
「勘違いすんじゃねぇよ、陳宮。俺は純粋に鳳雛殿を軍師として尊敬してんだ。天の言葉でいう“ふぁん”ってやつだ。尊敬する相手の
力になりてぇと思うのは当然だろ?」
ああ、この流れは何だか嫌な予感が・・・
鳳統さんもどう反応したものかとあわわあわわ言いながら無心にシュウマイを食べていらっしゃいますし・・・
「ふん、どうだか、傍から見れば浮気にしか見えないのです。特にお前は奥方も小柄な方ですし、好みも近いに違いないのです」
それは否定できません。
ただ孝直さんの奥さんと鳳統さんでは性格が真逆ですけど。
「俺に限らず鳳雛殿は皆から優遇されてるだろ?そいつら全員鳳雛殿に気があるってことかよ?違うだろ?まぁお前は案外ポンコツだし、
人からあんまり尊敬とかされたことねぇからそう思うのかも知れねぇけどな」
確かにボクも鳳統さんには何だか手を貸してあげたくなるっていう衝動に駆られます。
不思議です。
「ふん、少なくとも、お前はもやしっ子だから俵なんて持って行けっこないのです!」
「あわわ、もやしっ子?」
あ、陳宮さん今のは一番話がこじれ――――――
「雛里は法正のもやしっ子ぶりを知らないのですか!?良いですか、コイツはガラの悪い不良のような見た目に反して、その腕っぷしは
空っきりなのです!例えば、昔まだ成都にいた時、コイツは大量の書簡を運ぶ時に、兵士に頼んで運ばせたり、いざ自分で運ぼうとする
時は、わざわざ荷台まで持ち出して運ぼうとして、結局運べず書簡をぶちまけたりといった体たらくなのです!」
ああ、そんなに嬉々として事実を語らなくても・・・
「あァ!?誤解を招くような言い方してんじゃねぇよ!普通一人で運びきれねぇ量の荷物運ぶ時は人に頼むだろうが!」
「お前の場合は一人で運べる量でも重ければ兵士に頼んでいるのです!それに、その言い分ですと荷台のくだりは否定しないのですな?
やはり非力なもやしなのです!」
あぁ、孝直さんの様子が―――
「お前ぇ陳宮・・・言わせておけば・・・もやしを馬鹿にしてんじゃねぇよアホめ!」
「・・・・・・・・・あー・・・」
「あわ―――――――――あわわ・・・?」
始まってしまいました・・・
「いいかッ!もやしってのはなぁ、水と種さえあれば誰でも栽培可能!食い過ぎても“へるしー”だから問題なし!安い、早い、旨いの
三拍子がそろった万能食材!蔑む要素なんか一つもねぇ、食の優等生なんだよ!それをお前は!言うに!事欠いて!くだらねぇ比喩に!
使いやがって!そんなこと言うんだったらなぁ、もう二度ともやし食うなアホめ!明日から城下にもやし禁止令を発令してやるからな!
お前限定でだ!金輪際お前がもやしの恩恵を被ることはこの俺が絶対―――!」
「あーあー悪かったですーもやしの件については発言を撤回するのでもう勘弁して下さいですー」
孝直さんはもやしのことになると我を忘れるきらいがあります。
ほら、若干周囲の目が痛々しいです・・・いったい何が彼をそうさせるのか・・・あ、もやしがですね・・・
「チッ、とにかくだ、前も言ったかもしれねぇが俺は軍師だ!適材適所!軍師は力で勝負するんじゃねぇ!頭で勝負するんだ!非力でも
別に問題ねぇんだよ!」
「ですが、一刀殿の話によれば、天の国では昨今、諸葛亮は功夫使いだったり、びーむなる謎の光線をも放出する武闘派だと言うのです!
もはや頭脳だけで生き延びられる時代ではなくなってしまうのです!」
何だか話が明後日の方向に飛んで行って収拾がつきそうにないのでその辺にしておきましょう陳宮さん。
「あわわ、朱里ちゃんが功夫使い・・・」
ほら!鳳統さんがボーっと夢想の世界に旅立とうとしていらっしゃるじゃないですか!
きっと鳳統さんくらいの可憐な少女が「計算通りです」とか「今です!」とか叫びながら、
かっこよく二節棍でも振り回している光景が繰り広げられているに違いありません!
「チッ、じゃあ話を戻すが、とにかく、俺は小柄な女子に惹かれるとかそういう趣味は特にねぇ。アイツの場合は選んだ相手がたまたま
小柄だっただけにすぎねぇ」
(あわわ、それはつまりそういうことなんじゃ・・・)
あ、鳳統さんがこちらの世界にご帰還されたみたいですね。
「まぁ、確かにあの紀霊に比べたら法正は全然そういう感じではないですな」
「キレイ?キレイっていや、まさか袁術軍配下の紀霊のことか?見たことねぇが、そんなにヤバい感じなのか?」
「あわわ、そっか、恋さんと袁術は昔同盟関係だったから」
「はいです。見た目は普通の青年ですが、もう小さい女子を見たら敵味方関係なく眼の色を変えて、ねねもななもウンザリだったのです。
本命は美羽様だぁあああなどと叫んでいましたが、雛里の場合は間違いなく舐められているでしょうな」
「あわわ!?」
舐められるってまさか比喩じゃなくて文字通りペロペロとされてしまうということなのでしょうか・・・
「それはホンモノってやつじゃねぇか・・・世の中にはいろんな奴がいるもんだな」
「いろんな奴といえば、黄権殿も相当特殊な部類だと思うのですが、黄権殿は本当に自身のことを普通だと思っているのですか?聞いた
話によれば、男性に言い寄られたことも何回かあると聞いていますぞ?」
「女の私たちから見ても、黄権さんは羨ましいくらいとても可愛らしい容姿をしていらっしゃると思います」
ですからボクはいたって普通ですよ。
確かに服の趣味は少し女の子っぽいかもしれませんし、そのせいで勘違いする方もいるみたいなんですけど
―――てちょっと、ボクは今日はなれーしょんなのですから話は振らないでください!
「そこまでにしといてやれ、黄権は男だ女だっていう性別の枠にはめられる存在じゃねぇ。それこそ一晩中議論したところで解決できる
問題じゃねぇぜ」
孝直さんも何気にひどいこと言ってますよね!?
普通に考えて男一択ですよね!?
10秒も議論は続かないですよね!?
「あわわ、舐められるといえば聞こえは悪いかもしれませんが、それは相手が何とも思っていない相手だからということで、た、例えば、
互いに・・・お、想い人同士であれば・・・そ、それも一つの、あ、愛情表現として受け入れられるのではないでしょうか?」
話題を戻してボクの話がなかったことにされている!?
いや、それでいいんですけど、でもなんか悔しいです!
「えー、雛里、それはいくらなんでもどうかと思いますぞ?どんな相手だろうと舐められるのは嫌なのです」
「いや、鳳雛殿の言う通りだぜ陳宮。例えばだ。お前の場合、紀霊になんか死んでも舐められたくはないんだろうが、相手がお館なら、
舐められても嫌じゃないし、むしろご褒美って感じじゃねぇのか?」
「な、ななななな何を馬鹿なことを!!それではまるでねねが一刀殿のことを好いているみたいなのです!!」
え?何をいまさら・・・
「ねねちゃん・・・」
「あ?好きじゃねぇのかよお館の事」
あ、孝直さんが悪い顔をしています・・・
「す、すすすすすすす好きなんかじゃないです!それは天の御遣いとして多少は尊敬してはいるですが、好きなどととんでもない!誰が
あのような鈍感な女たらしのことを!ねねは恋殿一筋なのです!」
「おいおい、ここで呂布殿の名前を出してんじゃねぇよ。対象は当然男限定だぜ?」
「男限定!?な、ならねねは思い当たる節が全くないのです!!少なくとも一刀殿はありえないのです!!」
陳宮さんは頑なに否定していますね・・・もう皆知っていることなのですし 、別に堂々と宣言してしまえばいいと思うのですが、やはり
女心からして、そうはいかないのでしょうか。
「そーかよ、まぁ確かに男の俺からしてみても、お館のあのわざとじゃねぇかって思えるほどの鈍さと女たらしさはねぇわな。鬱陶しい
事この上ねぇし、あれじゃ一時的に気の迷いが生まれてもすぐに冷めちまうか。それらを差し引いちまったら、お館には何も残らねぇし、
なるほどそーかそーか、俺の勘違いだったかすまねぇな。よく考えてみりゃ何のとりえもねぇお館のことを何とも思わねぇのは至極当然
だわな」
まぁ鈍さで言えば、孝直さんも文長さんのお館様に対する想いに気づいていない節がありますし人のことは言えないですけどね。
(あわわ、さすがにあからさますぎるけど・・・)
さぁ、陳宮さんはどう切り返す・・・!?
「・・・・・・・・・こらーーー!!!法正、お前それ以上一刀殿のことを悪く言うとねねが許しませんぞーーー!!!」
「悪くって言ったって事実だろ?それともお前は何かお館の良いところが一つでも言えるのかよ?」
「一つ?ふん、片腹痛いのです!良いですか?まずは文字通り神がかった天の知識!雛里の推挙しかり!元戎発案しかり!娯楽としての
温泉しかり!これらの知識が益州にもたらした恩恵は計り知れず、無能などと評するのは言語道断なのです!」
一つでも、という孝直さんの言葉を陳宮さんは鼻で笑って一蹴してみせると立ち上がり・・・あ、お酒がこぼれて・・・
そして、満面のドヤ顔で控えめな胸をこれでもかというほど張りながらお館様の良いところについての演説を始めました。
「さらに!類稀な度胸と駆け引き、そして決断力!裏を返せば命知らずで無鉄砲とも言えるかもしれませんが、下?での曹操との絶妙な
やりとりしかり!合肥での三羽烏からの挑発に対する対応しかり!涼州勢からの援軍要請に対する即決しかり!これらの能力は上に立つ
者として必須であり、当然としてそれらを持ち合わせている一刀殿の良いとこととして挙げられるのです!」
陳宮さんの声がだんだん大きくなってます・・・ここは公の場なのですから、
これでは陳宮さんのお館様への想いの内を公開しているようなものですね。
「そして、極めつけは人々を惹きつける魅力!人柄!思いやる心!何よりも優しさ!益州の人々、涼州の人々皆を惹きつけ、味方に引き
込んでいるのです!ねねたち将兵に関しては言うに及ばず!このような人間性もまた、一刀殿が誇るべき美点だと言えるのです!」
「・・・・・・・・・ちなみに、今順番に挙げていったのは、どっちかっていうと君主としての色合いが強いわけだが、一人の男としては
どう評価するんだ?」
あ、孝直さんが釣りにかかりました!
ほとんど勢いで語っている陳宮さんはどう返すのでしょう・・・!
「ふん、もちろん一刀殿は男性としても魅力あるお方ですぞ!」
あらら・・・
「まずは外見!特に顔立ちについてはどこかの誰かが十人並みなどと言ってたですがとんでもないです!時にかっこよく頼もしく、時に
優しく甘い、実に程よく整った顔立ちなのです!」
なんだか本日一番の活き活きさ加減ですね陳宮さん。
「そして、体格も太り過ぎずやせ過ぎない、身長も低すぎない中肉中背!筋肉もムキムキとまではいかないものの、意外とがっちりして
おりその意外性がまた高評価なのです!」
はて、なぜ陳宮さんはお館様の体のことをそんなに詳しく知っているのでしょうか。
ほら、鳳統さんもそのことが気になっているみたいで凄い眼をしていらっしゃるじゃないですか・・・
「次に内面ですが、時に真面目で時に冗談の通じる面白さを兼ね備えており、そして何より、優しさと思いやり!これらが多くの女性を
虜にすることはもはや周知の事実なのです!」
もうそれって自分も虜になっていると宣言しているじゃないですかとツッコむのは野暮というものなんでしょうね。
「最後に能力面は先程も言った通りで重複するですが、多彩な天の知識、最低限の武、口も巧みで駆け引きも完璧!一方圧倒的庶民派で
親しみやすいところもまた良いところなのです!」
そしてこの満足げなドヤ顔。
陳宮さん、よほどお館様のことが好きなんですね。
「・・・・・・・・・で、正直なところお前はお館様にどうしてほしいんだ?」
もう孝直さんも完全に調子に乗っていますけど、さすがの陳宮さんもこの釣りには引っかからないのでは・・・
「それは勿論、穏やかな微笑と共に優しく抱きしめられ、優しく頭を撫でられた後、甘い愛の言葉を囁かれながら濃厚な口づけを交わし、
そして最後には―――ッ!」
おっと、予想外に恥ずかしいことを得意げに宣言しようとしている陳宮さんでした、
あともう少しというところで言葉を失い固まってしまわれました。
みるみる顔が耳まで真っ赤になっていきます。
どうやら自分が何を口走ろうとしているのか自覚してしまったようです。
「――――――ッという砂吐きそうな妄言をこの前ななが酒で酔った勢いで叫んでいたのですッ!」
結局強引に高順さんの発言にしてしまわれたようです。
「あわわ〜〜〜」
鳳統さんは今の陳宮さんの発言から色々頭の中のお館様が凄いことになっているのか、
真っ赤な顔を両手で覆いながらプルプルしていらっしゃいます。
「ま、御馳走様でしたっていうことで勘弁しておいてやるよ」
孝直さんは日頃漢中で溜まっている鬱憤でも解消されたのか、とても良い顔をしていました。
「さて、そろそろ良い時間だし、いつものやつでシメとするか」
「むむむ、もうそのような時間に・・・充実した時間とはすぐに過ぎ去ってしまうものですな」
「あわわ、ですが、今回も貴重な時間を過ごせました」
・・・・・・・・・あれ?何だか良い感じでまとめに入っているみたいですけど、
かなり脱線していたような気がしましたが、そもそも何の話をしていたんでしたっけ・・・
「店主!」
「・・・・・・へい」
「「「もやしラーメン四人前!!!」」」
こうして益州を代表する軍師たちの新年会は、今年も謎の盛り上がりを見せ、
最後に恒例と化しているシメのもやしラーメンを陳宮さん、鳳統さん、孝直さんが三人声を合わせて注文するのでした。
【第八十二回 番外編:軍師たちの華麗なる新年会 終】
あとがき
第八十二回終了しましたがいかがだったでしょうか?
さて、今回のお話は本当は第五章終了後に投稿するお話だったのですが、第五章執筆中に加え、
投稿する弾が切れてしまったこと、加えて新年会ネタという時期的にちょうどいい頃合いだったので、フライングで投稿しました。
つまりは現在執筆中の話の内容が変わったら、本作中で話されているようなネタバレ的展開にならないかもしれないため、
冒頭でも後日譚と見せかけたフェイクと表現しました。
要はあくまで息抜き回なので軽く読み流してくださいというお話です。
さて、ついに名有りモブからの脱却を果たした黄権くん。しかもなぜかナレーション。以下、紹介文でございます。
黄権(コウケン):字は公衡(コウコウ)。26歳、妻と7才の娘・黄崇(コウスウ)の三人家族。少し長めの黒髪に浅葱色のリボンを結わいつけ、瑠璃色を基調にしたあおざいを身につけている。幼い印象の顔つきや小柄で華奢な体つき、弱弱しく高い声色も相まって、どこからどう見ても女の子。俗にいう男の娘である。ちなみに一人称はボク。現在は成都に東に位置する広漢に赴任中。実家は火事により燃えてしまうが家の中に取り残されていた黄崇は北郷と高順に助けられている。つなげて読めば黄公衡(コウコウコウ)、特に意味はない。
黄権といえば、劉璋配下の文官の中ではかなり評価の高い人物なだけに、今回先を見据えて予めキャラ作りに踏み切った次第です。
果たして本編登場の機会は訪れるのか、、、
一方張松くんは今回のような扱いで今後もなされていくものと思われます。別にいいですよね 笑
そして、新年会本編自体は、軍師たちの華麗なる談話か聞けると思いきや、結局飲み会的なノリの話に 笑
ちんきゅーはいじられポジションなイメージ。雛里は何だかんだで優遇されてるイメージです。
結局軍師たちはみんな仲良しということでした。
それでは、また次回お会いしましょう!
陳宮限定のもやし禁止令。凄いのか凄くないのか良く分からない権力 笑
説明 | ||
みなさんどうもお久しぶりです!初めましてな方はどうも初めまして! 今回から本編から脱線しまして、番外編をお届けいたします。 益州の頭脳を担う者達のハイレベルな語らいが、今始まる、、、!? ※注意!本作は第五章の後日譚、と見せかけたフェイクです!これネタバレ発言じゃねーかと思われたらそれは気のせいですので華麗にスルーしてください! それでは我が拙稿の極み、とくと御覧あれ・・・ |
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コメント | ||
>kk=2様 一気読みありがとうございます!とりあえずあと2回分は蒸発しないので今しばしお待ちを!(sts) >神木ヒカリ様 きっと、まーた言ってらぁ的な温かい視線を向けられながら酒の肴の化していたのでしょう(sts) >グアンクー様 詳細についてはねねの拠点フェイズまるまる一話使ってもいいのですが削除されちゃうのでねねの心の内に留めておきましょうw(sts) >nao 様 いや、ねねは本来可愛いだけでなく軍師としてのスキルも高い―――はずなんです・・・!(sts) >アルヤ様 さらに現状成都を離れ漢中に務めている立場上他地域への干渉行為ですらありますw(sts) 酒場の客達は、生温かい目でねねを見守っているんだろうな。(神木ヒカリ) ねねが一刀としたいことをもっと詳しく?(グアンクー) ねねが可愛いなぁ〜軍師としては駄目すぎるがw(nao) 間違いなくすごいけれどもとんでもない職権乱用でしかも無駄使いwwwwww(アルヤ) |
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