本編 |
悪魔騎兵伝(仮)
第11話 伝えられなかった思い
C1 決別
C2 決意
C3 天空機動城塞セント・エルモ
C4 不信
C5 幻影
C6 追跡1
C7 追跡2
C8 突入
C9 脱出
C10 罪
次回予告
C1 決別
夜。エグゼニ連邦。エルフル樹海市。カルノア区ファンション経済特区ソーシン郊外。ヴァンガード城。メイド室。ベットに横になるメイド服を着たファウス。ファウスを見つめた後。扉の方へ歩いていき、照明のスイッチを押すポンコU。闇に染まるメイド室。窓を見つめるファウス。階段を下りる音。
オータキ『ファウスはどうだった?』
ポンコU『主様。ファウスさんは随分と疲れている様で…。今、ぐっすりと眠っています。』
オータキ『…そうか。そうだな。…色々と…色々とあったからな。』
ポンコU『主様…随分とお疲れの様ですが?』
オータキ『…まあ、最近色々とあったからな…。夕食を取るとしよう。』
ポンコU『はい…。』
ファウスは黒く染まる窓ガラスを見つめる。
朝エグゼニ連邦。エルフル樹海市。カルノア区ファンション経済特区ソーシン郊外。ヴァンガード城。メイド室。朝日がファウスを照らす。眼を開くファウス。ベットの脇の椅子に座る顔色の悪いオータキ。
オータキ『おはよう。』
眼を見開いて、起き上がるファウス。
ファウス『お、おはようございます。』
ファウスはオータキを見つめる。
オータキはファウスにパンとミルクの入ったコップの置かれたトレイをベットの上に置く。それを見るファウス。
オータキ『朝飯だ。』
ファウスは顔を上げオータキの方を向く。
ファウス『御主人様…。』
オータキの顔を見つめるファウス。
オータキ『どうした…?』
ファウス『随分とお顔の色が悪いようですが…。』
オータキはファウスを見つめ、ため息をつく。
オータキ『…そうだな。最近の仕事の影響だ。そうそう、あのNPO法人の代表に人喰いホームレス…。
色々とあったからな。』
俯くファウス。
ファウス『…ごめんなさい。僕、自分の事で手いっぱいで、自分の事しか考えてなくて。』
顔を上げオータキを見つめるファウス。
ファウス『御主人様を機に掛けることもしなかったんです。本当にごめんなさい。』
オータキは眼を見開き、ファウスの方を見つめる。
オータキ『…お前が謝ること…ではない。朝飯を食べろ。』
ファウス『御主人様…。』
ファウスはパンとミルクの入ったコップの置かれたトレイを見つめる。
ファウス『頂きます。』
ミルクを飲むファウス。オータキはファウスを見つめ、口を開けた後、俯く。
ミルクを飲み干す音。
ファウスはオータキの方を向く。
ファウス『御主人様。ありがとうございます。…あれ…。』
目が段々と細くなっていくファウス。
ファウス『あ、あれ、おかしいな。なんだか…。』
眉を顰め、ファウスから目をそらすオータキ。ベットにうつ伏せに倒れるファウス。コップが下に落ち、ミルクがこぼれ、床に染みを作っていく。吐息を建てるファウス。窓からの日の光がオータキとファウスを照らす。
C1 決別
C2 決意
エグゼニ連邦。エルフル樹海市。カルノア区ファンション経済特区ソーシン郊外。地下室。床には魔法陣が描かれ、タイル張りの壁で覆われた扉の無い隠し部屋。中央では口を布で塞がれたファウスが椅子に縛られている。
複数の靴音。
眼を開くファウス。
ネクロの声『…ですな。』
オータキの声『ああ…。』
顔を上げるファウス。
ネクロの声『偽王子は始末しましたか?』
オータキの声『………無論だ。』
ファウスは眼を見開く。
ネクロの声『そうですか。そうですな。あの子が生きていれば我々の計画に支障がでますからな。』
壁を見つめるファウス。
ネクロ『ぴょるぴょるぴょる。では、さっそく死体を頂き…。』
オータキの声『すまんな。死体は無い。』
ネクロの声『死体が無い?はは、冗談を。あなたはあの偽王子を殺したのでしょう。』
オータキの声『ああ、殺した。食事に毒を入れてな。』
ネクロの声『…分かりませんなぁ。なぜ、死体が無いのですか?』
オータキの声『…ファウスの死体は手違いで消し炭になった。セント・エルモのブースターの試験中にな。置く場所が悪かったのだ…。』
ネクロの声『おやまあ。折角の死体が…。』
オータキの声『…死体、死体と。死体に固執するのはもううんざりだ。他人の死体を集めた所でアイリスは蘇らないのだろう。』
唖然とするファウス。
オータキの声『機械人形では駄目だったのだ。』
ネクロの声『アイリスは時が経ちすぎたのです。』
オータキの声『実験期間が長すぎた…。ポンコ…。あの時…一瞬だけの間だったが…一瞬だけ…あの…。』
ネクロの声『アイリス・ヴァンガードを蘇らせるのは無理です。だからこそブルベドを滅ぼしましょう。』
オータキの声『…ああ、あの憎きブルベドをな。ブルベド都市国家の人間の死体はあんたが好きに使うがいい。』
ネクロの声『それはありがたい。ぴょるぴょるぴょる。』
ファウスは体を左右に揺らす。
靴音。
ネクロの声『あの…ポンコUといいましたか。あの機械人形はちゃんと指令ユニットになっていますか。』
椅子に縛られたまま、地面に転がるファウス。
オータキの声『ああ、あんたに言われて通りな。しかし、あの実験の巻き添えであのアンドロイドは少々いかれているが大丈夫か?』
ネクロの声『ええ、ぴょるぴょるぴょる。…彼女ならいい働きをしてくれますよ。』
ファウスは体を左右に振り、這って壁の方へ向かって行く。
C2 決意
C3 天空機動城塞セント・エルモ
エグゼニ連邦。エルフル樹海市。カルノア区ファンション経済特区ソーシン郊外。地下室。床には魔法陣が描かれ、タイル張りの壁で覆われた扉の無い隠し部屋。
遠ざかる靴音。
オータキの声『…この城とももう最後だな。』
機械音。鉄を叩く音。
オータキ『…故国コルポサント都市国家のセント・エルモよ。我々とアイリスの仇を討つ時が来たぞ。』
機械音。
椅子に縛られたまま、壁に何回も体当たりするファウス。彼は息を切らし、扉の無い隠し部屋を暫し見つめた後、眼をつぶって首を振り、眼を開けて、再び壁に体当たりをする。
機械音。
ファウスは眼を開き、壁を見つめる。小刻みに揺れだす扉の無い隠し部屋。周りを見回すファウス。
大きな音が鳴り響き、激しく揺れだす扉の無い隠し部屋。壁の一角が崩れ、隙間から虫程度の大きさを持つヘレヌ級パラサイトファイターを大量に周りに随伴させた天空機動城塞セント・エルモがヴァンガード城を破壊し、空へと上がって行く。瓦礫が落ちていく。眼を見開き、セント・エルモを暫し見つめるファウス。
床の魔法陣が消え、壁に現れる扉。ファウスは右を見た後、周りを見回す。彼は崩れた壁の一角の床に散らばる瓦礫を見つめ、跳びながらそこへ行くと鋭い瓦礫を探して見つけ、それを使って手を縛っているロープを切り、口から布を外す。息を切らすファウス。
ファウス『駄目…そんなこと。止めないと…。』
ファウスは足を縛っているロープを切り、立ち上がって周りを見回し、扉に駆け寄る。
ファウス『うんっ!』
開く扉。ファウスは瞬きした後、胸に手を当てて拳を握り、駆け去って行く。
エグゼニ連邦。エルフル樹海市。カルノア区ファンション経済特区ソーシン郊外。崩れたヴァンガード城から出て来るファウス。上空にはヘレヌ級パラサイトファイターを大量に周りに随伴させた天空機動城塞セント・エルモが浮遊し、北東へ向かう。ファウスはそれを見つめ、胸に手を当てて拳を強く握った後、街の方へ駆けていく。
C3 天空機動城塞セント・エルモ END
C4 不信
エグゼニ連邦。エルフル樹海市。カルノア区ファンション経済特区ソーシン郊外。崩れたヴァンガード城を背にして
上空を移動するヘレヌ級パラサイトファイターを大量に周りに随伴させた天空機動城塞セント・エルモを走って追いかけるファウス。彼は森の中の道に入り、上を見上げる。木々の隙間から見えるヘレヌ級パラサイトファイターを大量に周りに随伴させた天空機動城塞セント・エルモ。
暫く息を切らして走り、転ぶファウス。北東へ進みながら小さくなっていくヘレヌ級パラサイトファイターを大量に周りに随伴させた天空機動城塞セント・エルモ。ファウスは顔を上げてそれを見つめ、立ち上がって再び駆けていく。
エグゼニ連邦。エルフル樹海市。カルノア区ファンション経済特区ソーシン郊外。森の道を抜け、泥だらけになりながら街に辿り着くファウス。街の人々はヘレヌ級パラサイトファイターを大量に周りに随伴させた天空機動城塞セント・エルモの方を見つめて顔を見合わせる。
街の男A『ありゃなんだ?』
街の男B『さあな。空飛んでるが…。』
街の女A『あのオタクの城の方からきたから、なんかの催し物かしらね。』
ファウスは遠くなるセント・エルモを見つめる。街の女Bはファウスを見つけ、指さす。
街の女A『…に、偽王子』
一斉にファウスの方を向く街の人達。
街の男C『おい、偽王子だ。』
街の男D『なんだってこんなところに…。』
顔を見合わせ、ファウスの方を指さす。後ずさりし、震えるファウスの体。口を動かす人々。ファウスは拳を握りしめ、顔を上げて一歩前に進む。ファウスに背を向け、去って行く人々。走るファウス。
ファウス『ま、待ってください!御主人様を…御主人様を止めないと!』
顔を見合わせる人々。
ファウス『御主人様は…御主人様はブルベドを攻撃するって…。』
眉を顰める人々。
街の男B『…こいつ何言ってんだ?』
街の女C『大方、あの船に乗り遅れたんでしょ。それで文句を言ってんのよ。』
首を横に振るファウス。
ファウス『違います!御主人様がブルベドを…。』
街の男Aが一歩前に出る。
街の男A『恥を知れ!』
街の男Aを見つめるファウス。
街の男A『貴族になりすまし、ポルポで裏切りゃ、次は自分の主も貶めるのか!!』
ファウスは眼を見開く。
街の男A『お前が来てからこの町はズタズタだ。お前のおかげで何人が職を失って自殺したと思ってるんだ!』
震え、俯くファウス。
街の女A『そんなこというなら私達じゃなくて警察か、軍隊に言うのね。』
ファウスに背を向け、去って行く街の人々。肩を落とすファウス。
C4 不信 END
C5 幻影
エグゼニ連邦。エルフル樹海市。カルノア区ファンション経済特区ソーシン郊外。警察官駐屯所。椅子に座るファウス。机を挟んで向かいに座り、眼を細めて腕組みしながらファウスを見つめるエグゼニ連邦の警察官A。
エグゼニ連邦の警察官A『…それで、城主のオータキがあの空飛ぶ船でブルベドを攻撃する…と。』
頷くファウス。
ファウス『はい。』
顎に人差し指と親指をあて、人差し指で顎を撫でるエグゼニ連邦の警察官A。
エグゼニ連邦の警察官A『はは、嘘を言うんじゃないぞ。偽王子。』
眼を見開くファウス。
ファウス『僕、聞いたんです。それにお城も壊れて…グチャグチャで…。』
顎を撫でる人差し指を止め、眉を顰めるエグゼニ連邦の警察官A。
エグゼニ連邦の警察官A『うむ。』
エグゼニ連邦の警察官Aの傍らに現れるエグゼニ連邦の警官B。
エグゼニ連邦の警察官B『軍と連絡がつきました。あの船はオータキの周遊飛行デモンステレーションとの連絡があったとのことです。』
エグゼニ連邦の警察官Aは頷いて、ファウスの方を向く。
エグゼニ連邦の警察官A『だ、そうだ。』
眼を見開くファウス。
ファウス『えっ、でも…。僕は確かに…。』
ため息をつくエグゼニ連邦の警察官A。
エグゼニ連邦の警察官A『ピクニックに連れていかれなかっただけで、あることないこと吹聴して…夢でも見たんじゃないか?偽王子。』
瞬きをするファウス。
エグゼニ連邦の警察官A『まったく…。我々も、偽王子のホラに付き合っているほど暇じゃないんだ。』
体をエグゼニ連邦の警察官Bの方に向けるエグゼニ連邦警察官A。
ファウス『夢…。』
エグゼニ連邦の警察官A『…それに、お前の主を貶めることを言って恥ずかしくないのか?よりによって隣国のグリーンアイス連邦のブルベド都市国家を攻撃するなんてな。』
眼を見開くファウス。立ち上がるエグゼニ連邦の警察官A。
エグゼニ連邦の警察官A『分かったな。これで終わりだ。さっさと行け。』
ファウスは立ち上がり、頷いた後、一礼して去って行く。
エグゼニ連邦の警察官B『オータキの奴なんであんな奴をやとったんですかね?』
エグゼニ連邦の警察官A『さあな、趣味だろ。』
C5 幻影 END
C6 追跡1
エグゼニ連邦。エルフル樹海市。カルノア区ファンション経済特区ソーシン郊外。崩れたヴァンガード城を見つめるファウス。彼は、崩れたヴァンガード城に足を進める。瓦礫をかき分け、地下に進むファウス。彼は、崩れた地下室を見つめ、周りを見回す。
ファウス『夢…』
ファウスは地下室の中に入り、壁を触った後、耳を壁に当てて目を瞑る。暫し沈黙。眼を開き、首を横に振るファウス。
ファウス『…確かめなくちゃ。』
ファウスは地下室から駆けて去って行く。
エグゼニ連邦。エルフル樹海市。カルノア区ファンション経済特区ソーシン郊外の街を歩くファウス。彼は町の人々を見て、近寄るが避けられる。暫く歩き、警察官駐屯所の前に立ち、そこを覗き込むファウス。談笑するエグゼニ連邦の警察官Aとエグゼニ連邦の警察官B。
ファウス『あの、すみません。』
ファウスの方を向くエグゼニ連邦の警察官Aとエグゼニ連邦の警察官B。
エグゼニ連邦の警察官A『…またお前か?今度は何だ?』
頭を下げるファウス。
ファウス『あの、度々すみません。飛行場へ行きたいんです。』
首を傾げるエグゼニ連邦の警察官B。
エグゼニ連邦の警察官B『飛行場?』
頷くファウス。
ファウス『ええ、あの御主人様の船を追いかけたいんです。』
ファウスの方に進むエグゼニ連邦の警察官B。
エグゼニ連邦の警察官B『おいおい。飛行機をチャーターするなんてかなりの金がかかるぜ。』
ファウスはエグゼニ連邦の警察官Bを見上げる。
ファウス『お金…。えっといくらぐらい…。』
エグゼニ連邦の警察官A『安くても1時間換算で十数万エグゼだ。』
眼を見開くファウス『そんなに…。あ、あの他にはありませんか?』
エグゼニ連邦の警察官B『ヘリはそれよりちょっと高いがな、まあ、お前がオータキの奴から金をネコババすればできるかもしれないが。』
俯くファウス。
ファウス『そんな…。』
エグゼニ連邦の警察官B『ま、魔法が使えるんならそれで追いかけりゃ一番安上がりだがな。』
ファウスはエグゼニ連邦の警察官Aとエグゼニ連邦の警察官Bの方を見つめた後、一礼する。
ファウス『ありがとうございました…。』
去って行くファウス。顔を見合わせるエグゼニ連邦の警察官Aとエグゼニ連邦の警察官B。
エグゼニ連邦。エルフル樹海市。カルノア区ファンション経済特区ソーシン郊外。崩れたヴァンガード城の前で立ちつくすファウス。彼はため息をついて座り込み、顔を上げてヴァンガード城の全体を見渡す。彼の瞳に入る箒。
C6 追跡1
C7 追跡2
エグゼニ連邦。エルフル樹海市。カルノア区ファンション経済特区ソーシン郊外。崩れたヴァンガード城の前で箒を持つファウス。彼は箒に腰を下ろすと呪文を唱え、手をかざす。空色の光が箒を包む。箒と共に浮くファウスの体。更に呪文を唱えるファウス。彼は箒に乗って勢いよく空を飛ぶ。エグゼニ連邦。エルフル樹海市。カルノア区ファンション経済特区ソーシンの上空を飛び、北東へ向かうファウス。彼は、前方を北東の方を見つめる。
ソーシンを抜け、エグゼニ連邦フォーム区農業経済特区ファムの上空を、周りを見回しながら飛ぶファウス。
ファウス『…見つからない。』
再び周りを見回すファウス。彼の眼にエグゼニ連邦フォーム区農業経済特区ファムのエドラド農場にいる二人の農夫の姿が映る。下降するファウス。イヤホンを聞きながら木陰で休むエドラド農場の農夫A。彼を見て眼を見開エドラド農場の農夫B。
ファウス『あの、すみませんが…。』
駆け寄り、ファウスの顔をまじまじと見つめるエドラド農場の農夫B。
エドラド農場の農夫B『珍しいな魔女っ子メイドか?』
首を傾げるファウス。
エドラド農場の農夫B『随分と汚れてるな。泥んこ遊びでもしたのかい?』
首を横に振るファウス。
ファウス『い…いえ。その、お尋ねしたいことが…。』
エドラド農場の農夫B『なんだい?』
ファウス『あのこの辺で小さな機械を引き連れた大きな空飛ぶ船を見かけませんでしたか?』
頷くエドラド農場の農夫B。
エドラド農場の農夫B『小さな機械??んー、空飛ぶ船なら見たぞ。北東に向かって行った。』
ファウス『北東…。』
北東の方を向くファウス。エドラド農場の農夫Bとエドラド農場の農夫Bの所へイヤホンを外しながら歩いてやってくるエドラド農場の農夫A。
エドラド農場の農夫A『おっ、こんな所に魔女っ子でそれにメイドか。珍しい。たいがいの魔女っ子はマジカル経済特区の方にいくがね。』
頷くエドラド農場の農夫B。
エドラド農場の農夫B『ああ。で、この子があの空飛ぶ船を探しているんだと。』
エドラド農場の農夫A『そうかそうか。空飛ぶ船な。どうもラジオだとソーシンの城主の誰かがデモンストレーション飛行をやっているようだと。今はトルテト湾に滞空しているそうだよ。』
エドラド農場の農夫B『ああ、そりゃ湾を挟んで向こう側はグリーンアイスだな。』
エドラド農場の農夫A『それにしても、ニュースで言っていたがね。城壊してまでやるかい?』
眼を見開くファウス。
ファウス『グリーンアイス…。』
ファウスの額から汗が垂れる。ファウスの方を向くエドラド農場の農夫Aとエドラド農場の農夫B。
エドラド農場の農夫A『どうした?』
彼らを見つめ、首を横に振るファウス。
ファウス『い、いえ、なんでもありません。その、そのトルテト湾は何処にありますか?』
北東を指さすエドラド農場の農夫A。
エドラド農場の農夫A『ここを北東にまっすぐ行けばつくよ。』
ファウス『そうですか…。』
頭を下げるファウス。
ファウス『ありがとうございます。』
ファウスは北東の方を向いて、空を箒に乗って飛んで行く。
C7 追跡2 END
C8 突入
エグゼニ連邦トルテト湾。夕日が滞空するヘレヌ級パラサイトファイターを大量に周りに随伴させた天空機動城塞セント・エルモを橙に照らす。箒に乗ってそれを見つめるファウス。
ファウス『…やっぱり。気のせいかな。あれはきっと夢…。』
ファウスの眼に映えるヘレヌ級パラサイトファイターを大量に周りに随伴させた天空機動城塞セント・エルモの光る主砲。眼を見開くファウス。彼は呪文を唱える。空色の風が巻き起こり、加速する箒に乗ったファウス。ヘレヌ級パラサイトファイターが一斉に放電し、電気柵を天空機動城塞セント・エルモの周りに貼る。ファウスの目に映る大きく光る天空機動城塞セント・エルモの主砲。ヘレヌ級パラサイトファイターの小型レーザー砲が、ファウスの方の服をかすめる。
ファウス『だ、駄目ーーーーーーーーーーーーーーっ!』
ヘレヌ級パラサイトファイターの小型レーザー砲を潜り抜けセント・エルモの主砲の前に行くファウス。艦橋からファウスを見つめ、舵を動かすオータキ。後ろには古代エルフ族の化石の動力源の前の機器で覆われた席に座るポンコU。
眼を見開くネクロ。旋回するセント・エルモ。主砲から発射されたピンクの巨大な光がトリテト海の遠方の海を抉る。周りながら飛ばされるファウス。巨大な爆発が起こり、数他の水柱が立った後、巨大な煙が昇る。ファウスは天空機動城塞セント・エルモを見つめ、その艦橋の窓に体当たりして、砕き、内部に入る。ファウスを見つめるオータキにネクロ。ファウスを見下ろすオータキ。
オータキ『なぜ来た…。』
ネクロはオータキの方を向く。
ネクロ『…偽王子を生かしておいたのですか?』
眉を顰めるオータキ。舌打ちするネクロ。
ネクロ『エグゼニやグリーンアイスの奴らに気付かれてしまいますな。再チャージには時間がかかりますし…。』
立ち上がるファウス。
ファウス『御主人様!こんなこと!こんなこと止めてください!こんなこと間違っています!』
眼を見開いてファウスを睨み付けるオータキ。
オータキ『間違っているだと!あのグリーンアイス連邦の連中はな。ユグドラシルの侵略を食い止めたスパルタン市にアーヴェ市、そしてその両都市国家に積極的な支援を行った俺の故郷を含む都市国家を解体した奴らだ。そして、そんな俺に光を与えてくれたアイドルのアイリスを殺したのがブルベドだ!』
オータキを見つめるファウス。
ファウス『殺した…?』
オータキ『…ああ、アイリスはブルベド鉱山のハザードを食い止めるために落盤させて鉱山を閉鎖させた。』
眼を見開くファウス。
オータキ『確かに生存者はいたかもしれない。でも、止む負えない決断だろう。周辺への被害を食い止める為に一生懸命にやったんだ。だが、ブルベドの奴らは寄ってたかってアイリスを責め、自殺に追い込んだ…。俺は…何をやっていたんだろうな。ちくしょう。手紙しかださなかった。俺はアイリスの汚名を挽回する為に親衛隊の隊員達に働きかけたさ。誰もついてこなかったが…。はは。』
手で頭を押さえるオータキ。
オータキ『ああ、あの親衛隊の奴らは仲間だと思っていたさ。しばらく経って、そいつらはアイリス追悼で俺のコレクションを使いたいと言ったんだ。俺は喜んで貸してやった。アイリスの汚名が少しでも挽回できればと…。俺の気持ちがあいつらに伝わったんだとな。結果どうなったと思う?そいつらは付加価値のついた俺のコレクションを高額で売り払ってとんずらだ。…はは、何が親衛隊だ。ああ。クソッたれどもが…。神が…神が奴らの犯した罪を裁かぬから、我々が裁くのだ!生かす価値の無いクソ野郎どもをな!』
俯くファウス。
ファウス『そんな…。』
ファウスは胸に握り拳を当てて首を振る。
ファウス『…それでも。』
ファウスはオータキを見つめる。
ファウス『いけないことです!』
ファウスを見つめるオータキ。
ファウス『…命は、命の価値の重みに差異なんてありません!皆、尊くて大切なものなんです!
過去に過ちを犯していたから…だから…だからと言ってその人達の命を奪っていいなんて、間違っていることです!こんな残酷なことをしてもアイリスさんは喜ばないですよ!御主人様!!』
ファウスを睨み付けるオータキ。
オータキ『あいつらを、俺に赦せというのか!だったらあいつらの過去の過ちで酷い目にあった奴らは…。』
オータキはファウスの眼を見つめる。ファウスから目をそらし、歯ぎしりして下を向くオータキ。
オータキ『…アイリスは生き返らん。…俺の心が晴れればそれでいい!』
顔を上げるオータキ。
オータキ『邪魔をするな!ファウス!』
大きな音が鳴り、床に崩れ落ちるファウス。ファウスの後ろから現れる警棒を持ったメイド服を着た女アンドロイドA。
C8 潜入 END
C9 脱出
激しく揺れる天空機動城塞セント・エルモ独房。転がり、独房の壁にぶつかり目を覚ますファウス。
ファウス『…ここは?』
顔を上げるファウス。
ファウス『僕は…。』
揺れる天空機動城塞セント・エルモ独房。ファウスは滑って背中を壁に当てる。
ファウス『あう!』
周りを見回すファウス。
ファウス『御主人様に…。』
眼を見開き、飛び上がって頭を抱えながら蹲るファウス。
ファウス『あ…あ…。』
ファウスは体を震わしながら、首を横に振る。
ファウス『ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。』
天空機動城塞セント・エルモ独房の扉が開き、現れるメイド服を着た女アンドロイドB。彼女はファウスを見つめる。
ファウス『ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。』
ファウスの傍らに座り、肩を叩く女アンドロイドB。
女アンドロイドB『ファウスさん。』
女アンドロイドBの方を向くファウス。
ファウス『ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。』
ファウスの肩を握りしめる女アンドロイドB。
女アンドロイドB『ファウスさん!しっかりしてください!』
女アンドロイドBはファウスをさする。女アンドロイドBの方を向くファウス。
ファウス『…えっ?』
ファウスを見つめる女アンドロイドB。
女アンドロイドB『今すぐ、ここから逃げてください。』
独房の右側を指さす女アンドロイドB。
女アンドロイドB『船尾に脱出艇があります。今なら、親衛隊長も攻撃に気を取られています。』
頭を押さえる女アンドロイドB。ファウスは女アンドロイドBを見つめる。
ファウス『あなたは?』
女アンドロイドB『私はアイリス・ヴァンガード。』
眼を見開くファウス。女アンドロイドBはファウスの眼を見つめる。
女アンドロイドB『あなたは私をポンコUって呼んでた。』
ファウス『ポンコU…さん!』
頷き、ファウスを見る女アンドロイドB。
女アンドロイドB『そう。何もかも思い出したの。あのことも…あの実験の事も、でもあなたとの記憶もある。今、この子を使ってあなたと話しています。』
艦内アナウンス『リア九段階に移行。チャージ90%完了。』
上を向くファウスと女アンドロイドB。
女アンドロイドB『主砲の発射状況が進んだ!急がないと…。』
女アンドロイドBは立ち上がり、ファウスを見つめる。
女アンドロイドB『…ファウスさん。今までありがとう。あなたのおかげで私、私を取り戻せた。でも、そう長く持ちそうもないの。蘇りなんて大それたことのバチね。本当にありがとう。』
ファウスを暫し見つめた後、歩いて出ていく女アンドロイドB。
ファウス『ポンコUさん!』
扉から出て女アンドロイドBの手を握るファウス。
ファウス『待って、僕…。』
前方を向いたまま歩き続ける女アンドロイドB。
ファウス『…ポンコU…さん。』
ファウスは女アンドロイドBを見つめた後、前方を向いて駆けていくファウス。
C9 脱出 END
C10 罪
天空機動城塞セント・エルモ廊下。ファウスは周りを見回す。
ファウス『御主人様…何処に…。』
機械音。
ファウスは2、3歩歩き、右側の扉を覗く。ファウスの目に機械音が鳴り、ヘレヌ級パラサイトファイターを生産し、外部へ吐きだしている3Dプリンターの部屋が映り込む。
揺れる天空機動城塞セント・エルモ。
ネクロの声『…に及んで偽王子を生かすとは。』
眼を見開いて、前方の廊下を見つめるファウス。
ネクロの声『偽王子…純真なあの子は計画の邪魔にしかならない。』
駆けるファウス。
オータキ『五月蠅い。死体が欲しいのならば、これから殺すブルベドの民からもらっていけ。ファウスは…あの子は…殺すことなどできない。』
ファウスは艦橋に出る。
ネクロ『随分と甘くなりましたな…。』
ファウスはネクロとオータキを見つめる。
ファウス『御主人様!』
ファウスの方を向く一同。
オータキ『ファウス!』
ネクロ『偽王子!』
ポンコU『…ファウスさん!どうして…。』
ファウスの方に呪文を唱えながら飛び上がるネクロ。眼を見開くファウス。
オータキ『ファウス!』
女アンドロイド達が一斉に飛び上がり、ネクロを捕縛する。
ネクロ『何っ!』
立ち上がる古代エルフ族の化石の動力源の前の機器で覆われた席に座るポンコU。
ポンコU『あなたは危険すぎます。』
瞬きするオータキ。ネクロを封魔鎖で縛る女アンドロイド達。ファウスに駆け寄るポンコU。
ポンコU『ファウスさん。大丈夫?』
ポンコUを見つめ、頷くファウス。ポンコUとファウスの傍らに寄るオータキ。艦橋の窓から見える爆発。揺れる天空機動城塞セント・エルモ。
オータキ『…これはいったいどういうことだ?』
オータキを見つめるポンコU。オータキを見つめるポンコU。
ポンコU『隊長…。久しぶり。』
眼を見開くオータキ。
オータキ『…アイリス!アイリスちゃんなのか!』
頷くポンコU。
ポンコU『隊長。お願い。こんなこと止めて。』
窓から見える爆発が艦橋内をまばらに染める。
オータキ『でも、あいつらがしたことは…。』
眼を閉じ、首を横に振るポンコU。
ポンコU『こんなこと望まないよ。だって私はアイドルだもん。』
崩れ落ちるオータキ。ポンコUはオータキの傍らに寄り、抱きしめる。笑い出すネクロ。
ネクロ『ぴょるぴょるぴょる。蘇りの初の成功。素晴らしい成果。やはり緩やかな変化よりも急激な変化の方が、記憶が鮮明に蘇るということですな。わざわざ天然のアビス層の破片を仕入れていた甲斐がありましたよ。』
オータキはネクロを睨み付ける。
オータキ『ネクロ!お前はそれを知っていながら…。』
歯ぎしりしてネクロを睨み付けるオータキ。
オータキ『俺に人殺しを焚きつけたというのか!』
ネクロ『…ええ、そうですよ。朧げな記憶しか持たぬ実験体が最近になって歌まで歌いだしましたからね。』
眼を見開くファウス。
ネクロ『このまま放っておいてもよかったのですが、やはり試験のできるチャンスは生かさなければねえ。』
床を握り拳で叩くオータキ。
オータキ『…貴様!ふざけるな!貴様のせいで、俺は…。』
ネクロ『それがどうした。正直、あなた方がどうしようとどうでもいいのです。蘇りの試験、屍術の研究さえ進めばね。こんかいはいい収穫でした。良いデータもえることができた。すばらしいことです。』
ネクロを見つめ、体を震わすファウス。
ファウス『…あなたは狂っている。』
首を横に傾げて口角をあげるネクロ。
ポンコU『つっ…。』
頭を押さえるポンコU。
オータキ『アイリスちゃん!』
ファウス『ポンコUさん!』
ゆっくりと立ち上がるポンコU。
ポンコU『…隊長。ファウスさん。私…そう長く持ちそうにないの。』
眼を見開いてポンコUを見つめるオータキとファウス。
オータキ『そんな…。』
ポンコU『…沢山の人の意識が流れ込んで…つっ…。』
頭を押さえるポンコU。
ポンコU『感じられるでしょう。あの凄まじい怨念と憎しみが。』
ファウス『憎しみ…。』
ポンコU『彼女の意識の傍らにいたから良く分かるの…。古代に燃料にされるためだけに狩られ、化石にされた悲しみ…。私が抑えなければ彼女はこの船を奪い、世界中の人々を皆殺しにするわ。でも…もう限界…。
だから私の体に埋め込まれたアビスの破片と共に、彼女を壊すわ。』
ファウス『そんなこと駄目です。他に方法があるはずです。だから…ポンコUさん、行かないで!』
ファウスを見つめるポンコU。
ポンコU『ファウスさん。ありがとう。でも、限界なの。あなたが思うよりも悪化してる。このままだと駄目なの。』
首を横に振るファウス。
ファウス『でも…。』
ポンコU『分かって。』
ファウス『ポンコUさん…。』
ポンコU『今までありがとう。あなたがいたから、自分を取り戻すことができたの。』
ファウスはポンコUを見つめる。ポンコUの前に立つオータキ。
オータキ『そんな悲しい事言わないでくれ!せっかく生き返ったのに、折角会えたのに!』
オータキを見つめるポンコU。
ポンコU『隊長。今までありがとう。私に機会を与えてくれて、でも…結局、何もできなかった。
あなたが私の為にしてくれようとしたこと…それを止めることができなくて本当にごめんなさい。』
ポンコUはオータキの頬にキスをして古代エルフ族の化石へと向かうポンコU。泣き崩れるオータキ。
ネクロ『何をしようとしている!私は許さんぞ!せっかくのサンプルが!せっかくの成功した被検体が!止めろ!行くのではない!まだ貴様からは調べたいことが山ほどある!』
ネクロを睨み付けるオータキ。
オータキ『黙ってろ!』
古代エルフ族の化石の前に立つポンコU。彼女は振り返り、オータキとファウスを見つめた後、古代エルフ族の化石に手を当てる。光りだすポンコUの体。大きな光が覆い、爆発音とともに四散するポンコUと古代エルフ族の化石。暫し散らばった破片を見つめる一同。
艦内アナウンスの声『第一動力源停止。第二動力源に移行します。』
ネクロ『折角の被検体が…。』
ゆっくりと立ち上がるオータキ。
オータキ『…主砲を停止する。』
ファウス『御主人様。』
頷くオータキ。俯き、口を動かすネクロ。オータキとファウスは機器で覆われた席へ行く。機器を操作するオータキ。音が鳴り響き、白い球と黒い級が混ざり合ってファウスとオータキを襲う。オータキはファウスに体当たりする。床に転がるファウス。顔を上げるファウス。体が抉られ、両足と右手失い筋が抉れて残るオータキの左腕。転がるオータキ。ファウスはオータキの下に駆ける。
ファウス『御主人様!御主人様!』
眼を開くオータキ。
オータキ『…ファウス。…良かった無事で…。』
ファウス『御主人様!…今、僕が…。』
ファウスは呪文を唱え、オータキの体に白い光をまとった手をかざす。オータキは壊された制御パネルを見つめる。
艦内アナウンス『チャージ100%完了。リア十段階に移行します。』
立ち上がりオータキとファウスの方を向き、呪文を唱えながら腕を向けるネクロ。ネクロを見つめるファウスとオータキ。
ネクロ『…おや、この体ではもう限界の用だ。』
ファウス『ネクロさん…。どうして!どうしてこんなこと…。』
ネクロ『どうして?きまっているじゃありませんか。失った貴重なサンプルの代わりに、素材を集めさせていただく。』
ネクロを見つめるファウス。
艦内アナウンス『主砲発射まであと10。』
ネクロ『蘇りの第一歩。また、材料が大量に手に入る。ぴょるぴょるぴょる!ぴょーるぴょるぴょる!ぴょーるぴょるぴょる!』
ファウスは首を横に振る。ゆらりと揺れて、その場に座り込む死体になったネクロ。ファウスを見つめるオータキ。
艦内アナウンス『主砲発射まであと9。』
オータキ『…主砲発射まで…時間がない。』
コントロールパネルに目を向けるオータキ。
オータキ『制御も…やられた…。主砲を停止するには…。』
艦内アナウンス『主砲発射まであと8。』
オータキ『動力源を壊すしかない。…このセント・エルモの第二動力源は…俺だ。』
眼を見開くファウス。オータキはむき出しにされた自身の心臓に目を向ける。
オータキ『見えるだろう。ファウス…。』
オータキの心臓に付着し脈打つアビス層の破片。
艦内アナウンス『主砲発射まであと7。』
ファウス『そんな…どうして。』
オータキ『動力源を潰せば、主砲は停止するブルベドの奴らは助かる。』
ファウス『でも、そんなことをしたら御主人様が…。』
オータキ『ファウス…。』
艦内アナウンス『主砲発射まであと6。』
オータキ『俺がこんな状況で話せているのも…。』
オータキはアビス層の破片に目を向ける。
オータキ『こいつのおかげだ。だが、人食いホームレスを見ただろう。俺がこいつを制御できなくなれば…。』
首を横に振るファウス。
艦内アナウンス『主砲発射まであと5。』
ファウス『何を言っているんですか!まだ時間はあります。ジャンヌさんも言っていたじゃないですか。必ず助かる方法はあります。だから…。』
首を横に振るオータキ。
艦内アナウンス『主砲発射まであと4。』
オータキ『時間がない。ファウス。剣を取れ。』
オータキを見つめ、首を左右に振るファウス。
オータキ『発射まで時間がない!早く剣を取って、俺からこいつを切り離せ!』
艦内アナウンス『主砲発射まであと3。』
ファウス『嫌です。きっと何か方法があります!だから…。』
オータキ『ファウス…お前はブルベドの奴らを見殺しにするというのか!?』
眼を見開くファウス。
ファウス『違う…。違う違う!僕は、僕は…』
ファウスを見つめ涙を流すオータキ。
艦内アナウンス『主砲発射まであと2。』
オータキ『ごめんな。ファウス。俺は、覚悟はしていた。』
自身の手を見つめるオータキ。
オータキ『手さえ動けば自分でやっている。ファウス。後生だ。もうこうするよりしかたがない!時間も迫っている。』
艦内アナウンス『主砲発射まであと1。』
オータキ『早く!沢山の人が死ぬんだぞ!』
涙を流しながら剣を取り、オータキの心臓の上に振りかざすファウス。
ファウス『うわああああああああああああああああああああ!』
ファウスは泣きながらオータキの心臓についたアビス層の破片を切り離す。ファウスの顔を見つめるオータキ。
オータキ『…ファウス、ありがとう…すまなかった…。』
ファウスの顔を見つめながら、ゆっくりと目を閉じるオータキ。
艦内アナウンス『発…。』
オータキの亡骸の横で泣くファウス。
雪崩れ込むエグゼニ連邦の兵士達。エグゼニ連邦兵士Aがネクロの死体に引っかかり、転ぶ。
エグゼニ連邦の兵士A『いってーな!こんなところで寝やがって!』
ネクロのフードを取るエグゼニ連邦の兵士B。
エグゼニ連邦の兵士B『どうした…。』
ネクロの死体を見つめて口に手を当てるエグゼニ連邦の兵士B。
エグゼニ連邦の兵士B『おい、こいつ干からびてやがるぜ。』
エグゼニ連邦の兵士A『オータキのやろうネクロフィリアか?』
固まる前方のエグゼニ連邦の兵士達。彼らの方へ歩いていくエグゼニ連邦の兵士Aとエグゼニ連邦の兵士B。
エグゼニ連邦の兵士A『おいおいどうした…。』
オータキに剣を突き刺すファウスを見つめるエグゼニ連邦兵士A。ファウスを指さすエグゼニ連邦の兵士B。
エグゼニ連邦の兵士B『『主殺し!主殺しだ!主殺しだーーーーーーー!』
C10 罪