神次元の外れ者(58) |
「練習?本番?」(クリエ視点)
『宿舎・・・・PM9:00』
戦いとは事前の準備から始まるものであり、そこで躓くことは死を意味する。
だからこそ、これが演習だとしても気を抜くわけには行かない・・・・・戦いは当日起きる前から始まっているのだから。
これは・・・・これから向かう二人でお出かけというシュチュエーションに慣れるための練習、その前夜の一人会議だ。
相手はチータだからドキドキしないけど、本番じゃアイツと・・・・・・いかんいかん、落ち着くんだ私。
こんなところでもじもじしてたら、告って本番デートなんて夢のまた夢だ。
万全を喫するため、待ち合わせと明日着る服についてのイメトレをしよう。
時間よりも15分早く合流地点に着いて待つことで、純粋にこの日を待ちわびていたことをアピール。
それによって相手も「ああ、こいつよっぽど楽しみにしていたんだな」と思って乗り気になる。
さらに興味を持たせるために、服装も新調してイメージをガラッっと変える。
ただし必ず「私らしさ」を保ったままであること、変えすぎると逆に心配をかけてしまう。
今は秋、そしていつもワンピ・・・・けどここはあえて冒険をしてしまおう。
えっと確か・・・・ノーちゃんからもらったコスプレ制服があったっけ。
ブレザーを脱いでかわいい柄のネクタイでも締めて、髪にはシンプルなヘヤピンを一つつけて・・・・
「・・・・よしっ、細かいところは跡で修正を入れればいっかな」
ベーちゃん達女神は偽神と神獣対策や被害の対応、会議や国際交流で忙しいようだ・・・・こればっかりは、なってすぐのど素人が出張るものじゃない。
わかっているし、そのお陰でこうして羽を伸ばせてるわけだけど・・・・・・やっぱり胸が痛む。
私は元人神((No21|ナンバー・トゥエンティワン))・・・・偽神や神獣を生み出した、人神計画の関係者でもあるのだから。
この事は女神の皆やその関係者には勿論秘密だ・・・・チータとデバッカにも言わないようにお願いしている。
リーンボックスの新しい女神が元人神だとバレたら、ベーちゃん達に多大な迷惑がかかる・・・・いや、違うな。
この事がバレたら・・・・ベーちゃん達に嫌われるんじゃないかって、知られるのが、疑われるのが怖いんだ。
だから私は、これまでもこれからも隠し続けるだろう・・・・少なくとも【私が死ぬその日まで】
・・・・・・・あーもーやだやだ、こんなに気分が落ち込んじゃったら上手くいくのもしくじるよ。
明日はデート・・・・じゃなくて二人で出かける為の演習だ演習、暗くなっちゃったら相手も暗くなっちゃう。
心のもやもやを振り払い、私は宿のベッドに飛び込み、布団の中に潜り込んだ。
当日、朝、目覚めた直後にまず見たのは時計だった・・・・まだ時間はある、朝ごはんやセッティングも余裕でこなせるだろう。
朝食は軽めにトーストと牛乳を・・・・道中食べることもあるので、お腹にはちょっと空いて我慢できる程度に抑えておく。
腹の虫は聞かせてはならない、食いしん坊とか腹ペコとかいやしんぼうとか思われたら引かれる可能性もあるからだ。
その後歯を磨いて、顔洗って、服を着て、髪とかして・・・・・寝癖なし!忘れ物なし!チェックアウト済ませた!良し行こう!
『待ち合わせ場所・・・・AM8:30』
「・・・・・・・・・・・」
・・・・・・何してるんだろ、私。
時計を見る、そして日を見る、そして再度落ち込む、その繰り返し。
まさか宿の時計の6時を9時と見間違うなんて・・・・・・どんだけ張り切ってんのよ私のバカバカバカ!
よく見たら人もそんなにいないし!行ってる途中で気づけよって話だよ!
けど宿に戻るわけにも行かないし、かと言ってここにいても何にもならないし!
ど〜すればいいのよっ!今からやけ食いでもしようかな・・・・ん?
「・・・・・クリエ?」
「ん・・・・・えっ!?」
デバッカ・・・・どうしてここに?あ、そっか。クラトスとの戦い以降、暇さえ出来たらずっと偽神狩りやってるんだっけ・・・・その帰りか。
あれから意識しだすようになって、「ほっとけない」っていう気持ちが別のものに変わってきて・・・・・
あの時までは平気で話せていたのに、距離が出来たような・・・・どうしてこうなっちゃったんだろうね
「誰かと待ち合わせしているのか」
「え、あ、ち、違うよ!?ただ早く目が覚めちゃったから散歩でもしようかな〜って(汗)」
「そうか・・・・実は俺、ここで待つように言われたんだ。だから仕事を済ませた後ここに来ようかと・・・・」
「えっ・・・・」
デバッカが誰かと待ち合わせを・・・・?いったい誰と?まさかノーちゃん?ブーちゃん?
あの二人、人間だったデバッカとちょっとした交流があったんだっけ。
確かノーちゃんはクエストに無理やりつき合わせて、ブーちゃんは本を買ってくれたんだっけ?まさかそこから?そこからデバッカに好意を!?
いやいや割りと裏表のない二人が好意なんてものを隠せるわけがない。けどじゃあ誰が・・・・・・?
ベーちゃんかな・・・・でもでもベーちゃんもデバッカの事弟としてみてたし・・・・・いやまてよ?もしかしたら近親相姦狙いか・・・・?ベーちゃんの部屋にあるゲームにはそれ系のも・・・・・・
「けどそんな暇ないのにな・・・・」
ボソッとデバッカはつぶやいた。
「今こうしている間にも、偽神や神獣による被害が起こっているのかもしれないんだ・・・・クリエだって俺が弱いから、アイツに負けたから、死ぬところだった・・・・・・」
デバッカ・・・・・だから偽神狩りを自分から・・・・帰ってくるのも遅いし、大怪我して帰ってくることもあった。
・・・・本当に短い期間で、偽神や神獣による被害は激減していった。そのお陰でベーちゃん達の負担も大分減った・・・・・でも、ほんの少しの間に、コイツの笑顔を見なくなった。
「もっと強くならなきゃだめだ、もっと、もっと。誰よりも強くなって、誰にも負けないようになって、そうすれば・・・・」
パァンッ
「・・・・・・・?????」
「それで君が笑わなくなるなんて笑えないよ」
怒りました、怒りましたとも、怒りのあまりひっぱたきましたともこのバカを。
どうして素でもかっこつけようとするのかな男って・・・つくづくそう思っちゃうよ。
「君ね、人が必死になって生き返らせたのになに【死のうとしてんのよ】」
「いや、死ぬ気はないぞ?だから強く」
「あのね、ただ命が助かればそれで良いってわけじゃないの。命が助かっても心が死んだら何にも意味ないんだから」
「心・・・・」
「皆だって気づいてるよ?短い間に変わったって、感情乏しくなったって。言葉通り【変わった】というのならいい、けどそれは【変わった】んじゃない、【廃れた】って言うんだよ」
あのクラトスを倒した程だ、もっもっと強くなるだろう、もしかしたらこのゲイムギョウ界の誰よりも強くなってしまうかもしれない。
でもその代わりに心が死んでしまっては意味がない、そんなデバッカ、見たくない。
だって容易に想像できてしまうから・・・強さの代わりに感情を失う、躊躇わずに己を削ってしまう、というか現在進行形で削ってる目の前のコイツを・・・・・・
「もし私をまた死なせたくないのなら生きなさい、命だけじゃなく心も・・・魂も一緒に。もし片っぽでも死ぬようなことがあるんなら・・・・私は引っ張りあげるために、何度でも死んでやるんだから」
「・・・・・ごめん」
・・・・・・って何くさい台詞を口走ってるの私いいいいいいいいいいいい!!!
目的のデート・・・じゃなくて二人で出かける練習するはずがどうして説教してるのYooooooooooooooooo!!!
というかどうしてチータは来ないの!?何でこうしてまたされなきゃいけないの!?
あーもーこうなったのは全部チータのせいだ!チータが悪いんだ!アイツが11時に集合なんて言うからこうなるんだ!
(※現在9時ちょっと前)
・・・・あ、でも何だかすっごくしゃべりやすくなってる!ちゃんと話せてる!よかったこのまま克服できるかも!
「・・・・そういえば、待ち合わせしてるって言ってたけど、誰と待ち合わせてるの?」
「チータと。」
「・・・・・え?」
「そろそろ来るころだと思うんだが・・・・あ、向こうに隠れてる・・・・なにやってんだろ?」
「・・・・・・・・・・・・(じとー」
「・・・・・・ん?え、あ・・・・・・・えへへへへへへへへ」
デバッカの指差すほう・・・電柱をじとーっと見ていると、そこには電柱の裏で抜き足差し足としているチータがいた。
私の視線に気づいたチータは、愛想笑いをしながら私達のもとへ歩いてきた。
「いやーここまで早くくるとは思わなかったよお二人さん・・・そんじゃこの際だし、三人で一緒にぱーっと遊ぶか!!」
「へ?」
「え・・・・・ええええええええええええええええええええええええええ!?!?!?」
こうして、私の意図せぬ所で張り巡らされた陰謀的な何かによって・・・練習と同時に本番もやることになりました。
・・・・・・どうして変な悪知恵をすぐに働かせられるのかな男って・・・・・・・・つくづくそう思っちゃうよ。
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デートの心得とか女心とかってどんな感じがあってるんだろ・・・・ | ||
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