超次元の外れ者・リメイク |
「二大勢力対抗戦」
卒業式を終えると、赤い腕章のレッドテェッカーズ、青い肩章のブルーラインズ、二つの集団が向かい合っていた。
年に一度、卒業式が終わった後、二つの勢力の代表同士で戦う対抗戦があるそうだ。
生徒だけで体育館占領とかそもそも戦いあうとか学校側からすればそれを許すはずがない。
そこで二つの勢力・・・主にブルーラインズ側が対抗戦のルールとそのための設備を用意して説得した
その結果、「卒業式後の誰もいなくなった時だけ」「終わった後の片つけと修復は自分達でやること」を条件に、何とか場所を取ることに成功した。
このルールが決まるまでは会うたびに喧嘩をしており、時には大乱闘となったため、学校中が荒れに荒れて修繕費だけで廃校も覚悟しかけたらしい。
そこでブルーラインズの代表がレッドチェッカーズの代表に、「このままだと学校がなくなりそうだから、やるときは日を決めて、決闘形式でやらないか」と提案した。
レッドチェッカーズの代表は「お前たちの提案に従うのは癪に障るが、さすがに今の居場所がなくなるのは困る」と合意した。
それからは二つの勢力は、卒業式の後の体育館での代表戦をやるようになった・・・・らしい。
そんなわけで、僕もレッドチェッカーズの代表として集まったわけなんだけど・・・・ど新人にやらせるわけもなく、観客席に座った。
この対抗戦は、互いの代表がそれぞれ一対一で戦うというもの・・・実はこの代表戦、姉さんが戦ったことが一度もない。
なぜなら大将が戦う前に、決着がついてしまうからだそうだ。
この対抗戦の勝敗はいつも三連ストレートで、大将は最後まで席から離れたことはなかったという。
こちらのチームの先鋒は鉄砲弾ゴーレムの((岩三|ガンゾー))で、相手のチームは・・・・なんと人間だった。
この央共学園には僕以外にも人間はいるが、まさかグループの代表になっているとは思わなかった。
ルール上、予め用意された非殺傷の武器を身に着けて、双方の先鋒が前に出る。
向かい合った二人は、審判の合図を待つ・・・・とそんな時、相手側から「待った」がかかった。
かけたのはブルーラインズのリーダーで且つ大将代表の・・・・ってあれ?さっき卒業式の騒動を止めてくれた人だ。
「これまでこの対抗戦は、大将戦までいかなかった・・・・もういいかげんどっちのトップが強いか白黒つけたい。そこでだ」
相手側の大将は、その他全員が驚愕するようなことを口走った。
「レッドチェッカーズの先鋒、次峰、中堅・・・・まとめてこいつにかかって来い」
「は?」「え」「えっ」「む」「おぅ?」
「えええええええええええええ!?」
一番驚いたのはブルーラインズ側の先鋒だった・・・・無理もない、三人同時に相手しろと言うことだからやる側からすれば無茶もいいところだ。
「なななななな何言ってるんですか!どう見ても強豪ばかりじゃないですか!それを僕一人で!?無茶にもほどがありますよ!」
「レス、実戦じゃそういう複数同時遭遇なんてよくあることなんだぜ?寧ろ群れてかかるのは向こうのが上手だ」
「いやいやいやいやだからって!」
「心配すんなって、こんな前座トリオお前なら一瞬さ。よく見なよ奴らのモブ面、どう見ても引き立て役だぜ」
「「「・・・・・・・・(カッチーン)」」」
相手の大将の言葉に、こちら側の三人がブチギレた。
「上等じゃあああああ!てめぇなんざボッコボコにしちゃるわ!(byゴーレムのガンゾー)」
「ここまでコケにされたのは初めてだぜ・・・・(byバードマンのトンガ)」
「一瞬で細切れにしてやんよぉぉぉぉ先ずはてめぇをよぉぉぉぉぉ!!!(byサイクロプスのラショー)」
三人の強烈なプレッシャーと怒鳴りに相手側の先鋒はもうガタガタだ・・・・と言うかかわいそうになってきた。
「な・・・・なななな何してるんですか!これ怪我じゃすまないんじゃないですか!?」
「心配スンナ、骨は拾っといたる」
「確実に僕死んでますよね!?死ぬ前提で言ってますよね!?」
「そんじゃ逝って来い、そんで見事に還って来い」
「字が違う気がするんですけどぉおおおおおおおおお!?!?」
結局先鋒の人ことレスは、必死の抗議もむなしく、猛者三人の相手をすることになった。
三人とも血気盛んであり、今にも殺しにかかりそうだ。
「では試合・・・・・」
さっきのようにぴりぴりした空気がない・・・・そりゃそうだ、これから始まるのは勝負じゃない、リンチだからだ。
「始めっ!」
合図とともにラショーは飛び上がり、クッションバットを叩きつけた。
レスは驚きながらも右に飛び込んで回避したが、瞬時に左に転がる。直後、さっきまでいた位置にエネルギー弾が通り過ぎた。
トンガは試合開始直後すぐ、ラショーの後ろで狙撃の構えをしていた。
転がった先はラショーの足、ラショーはそのままレスを踏み潰そうとした。
サイクロプスの巨体に踏まれたら、いかに非殺傷武器を持ってても意味なく死にかねない。
ラショーが踏んでくることを察知したレスは、転がるスピードを速くしてぎりぎり回避した。
「ちょこまかと・・・!」
咄嗟に、反射的にラショーは足元のレス目がけて踏みつけるも、レスは慌てて這って逃げるようにかわした。
動きはまるで素人、ぎこちなくて戦いなれなんててんでしてない・・・・でも、それでも生きるのに必死なのはわかった。
多分これが、人間のあり方なんだろう・・・・なんとなくそう思った。
モンスターを相手にしている以上、下手をすれば死んでしまう。
死ぬのは誰だって嫌なものだ、たとえ死を望んでいたとしても、いきなり来られたら怖くて撤回するだろう。。
そんなモンスターを三体も相手にしている普通の少年・・・・正直降参でもしたいのだろう。
でもそれをしないのは・・・・多分意地というか恩義というか、そういう感情的なものが突き動かしているのだろう。
とある日、休暇でモンスター語の魔道書を解読していた父さんが言ってたことを思い出した・・・・
「課題や脅威などといった大きな壁を、人は知恵と勇気を振り絞って挑んできた。同じように挑む者達が力を合わせることで、不可能だったことも可能になった。そしてこれまで文化や文明を築いてきたんだ・・・・それは一部のモンスターにも言える事だけど、大して力のない人間だからこそ、その点は負けてないと私は思う」
そう言いながら自力で解読して、新しく術を覚えたときの父さんの顔がすごくうれしそうだった事も、ついさっきあったときのように浮かんだ。
ダァンッ
「おおおおおおおおおおおおおお!!!!!?」
観客の仰天の声にハッと我に返った僕が、改めて試合の様子を見ると・・・・ガンゾーが倒れていた。
そしてレスの魔弾式スタンガンの銃口から煙のように魔力が出ていた。
それは戦っていた相手も驚いていたのだろう、他の二人も「何が起きたのか」と言いたげに硬直していた。
「あの猛攻の中で当てやがっただと!?」
「な、なに言ってんだよ。あんなのマグレだよマグレ」
「にしたってたまったもんじゃねぇな・・・・コアに直撃したようだし」
観客のざわつきに二人は我に返る。「そうだ、こんなところで立ち止まってはいられない」「このまま舐められるわけにはいかない」
戦いの経験を積みに積んできた二人は、自分達よりも全くの素人に負けるわけにはいかないというプライドで自らを奮い立たせた。
「魚おおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
ラショーがここで一気に決めようと意気込むように叫び、当たればひとたまりもないような大振りでレスを攻撃する。
「これならよけられる」とレスは落ち着いてかわす・・・・とそのとき
チュンッ
「・・・!」
光弾がレスの顔を横切り、左頬に掠った跡が出来た。その先にはトンガがライフルを構えていた。
ラショーがわざと大振りをしてかわした隙をトンガが狙撃・・・・・二人は確実にレスをしとめる気だ。
「おっしー!あれ当たったと思ったのになー!」
「とんだラッキーボーイだぜ!ってか向こうの親玉は運だけで勝つ気でいやがんのかよ・・・・舐めてくれるぜ」
本当にそうなのだろうか・・・・確かに観客の言うとおりかも知れない。手練の二人の連携に素人がよけられるわけがないと思うのが普通だ。
でも・・・・・((彼は本当に素人なのだろうか|・・・・・・・・・・・・・))、というか戦い始めたころよりも落ち着いてるような・・・・・
「って言うか・・・あれ?掠りはするが直撃してねぇぞ?」
「た、たまたま調子が悪いだけだろ、アイツトリ目だから・・・・」
いや・・・・ここは十分明るいし、そこまで離れてない!ということはまさか・・・・【対応】しているのか?
二人にも焦りが見えてきた・・・・いや、なんとなくだけど、動きが焦っているような感じがした。
一方レスも疲れているように見えた・・・・見えたけど、その表情は、動きは、二人よりも遥かに落ち着いていた・・・・ように見えた。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
ラショーが叫びをあげて大振りをする。そこをレスはよけながら銃口をトンガに向けた。
向けられたことに普段は動じないはずのトンガだったが、当たらなくて焦っている所に銃口をまっすぐ自分に向けられて一気に動揺し、引き金から指をすべさせた。
その瞬間を逃すことなく、レスは引き金を引く
「しまっ――――!!」
ダァンッ
鎮圧用スタンガンの非殺傷の魔弾が、トンガの眉間を撃ち抜いた。
「ヌンッ!」
ラショーは撃った直後のレス目掛けてバットを横に振りぬいた・・・・が、そこにはレスが((いなかった|・・・・・))
「・・・・!どこだ!どこにいる!」
前、後ろ、右左、どこを向いてもレスはいなかった。どこからくる、どこから撃ってくる、ラショーの頭の中ではそればかりが巡っていて、まともな思考が出来なかった。
息は荒く、観客の声ももはや焦りに拍車をかけていた。だが攻撃が中々来ないので、今のうちにと息を整えると、観客の声も聞き取れるようになっていた・・・「下にいる」と。
ラショーは恐る恐る、気づかれないように目線を下にやると、そこには弾込めを終えて銃口を向けるレスがいた。
「・・・・・・・・・!!!!!!」
ダァンッ
眉間を撃ち抜かれたラショーは、力なく倒れた。ただ他の二人と違う点といえば・・・・口から泡を吹き出していたことだろうか。
そして三人を倒して安堵したレスは、その場にへたれ込んだ
「あの叫び声を合図にした即興連携は大したもんだったぜ、もうちょっとでそいつを仕留められただろうにな〜♪」
「にししししし」と相手側の大将が笑う。まるで誰もが予想しえなかった事をはじめからこうなると知っていたかのように。
「せーはーぜぇはぁ・・・・・」
「よくやったレス、俺は最初から信じてたぜ?」
「信じるにしてもやりすぎですよぉ!!僕危うく死ぬところだったんですよ!?」
「いいじゃねぇか、勝ったし生き残れたし。それにこれでわかったろ?お前は強いって事に」
「え・・・・・」
「お前って前から自信のなさが足引っ張ってたけどさ、ホントは誰よりも努力してっから強いって事わかってんだぜ?」
「だからって・・・・・」
「どんなに言っても信じねーお前が悪いっ、これを期に自信をもちな?」
心身ともに疲れて立てなくなっていたレスは大将に頭をなでられた後、次峰と中堅だった二人の肩を借りて退場して行った。
まさかこの人・・・先鋒に自信を出させる為にあんな無茶を?普通じゃ考えられない・・・・・・
「そんじゃ、こっちの一勝って事で副将戦と行こうぜ?お前ら後がねぇからがんばれよ〜」
そう言ってへらへらと笑う相手の大将は控えに戻り、二人の副将が前に出る。
こちらの副将は((105|トーゴ))だった。こちら側の観客から声があがる。
「がんばれトーゴーオオオ!!!」
「お前だけがたよりだ!」
「つないでくれええええええ!!!!」
必死な観客の声に応えるように、トーゴは右腕を上げた。そして相手の観客席からも声援があがる。
「止めをさしてください!」
「勝ってください副団長!」
「この戦いに終止符を!」
なんと相手側の副将は、あろう事かトーゴとの相性最悪の・・・・((霊種|ゴースト))だった。
機械種は物理的な攻撃が主なのでゴーストには効果が薄く、なおかつ有効打である魔法は使えない。
使える者もいるがごく少数であり、トーゴは使えない。
対してゴーストは精神的な魔法系統の攻撃を主としており、憑依による精神干渉も出来る。
それを応用すれば機械に憑依してプログラムに侵入し、データ操作をする事なんて造作もない。
つまり攻撃の届かない内側から相手を攻撃する事が相手には可能であるため、トーゴの勝ち目は1%もない。
だがトーゴは諦める様子ではなかった、寧ろ勝つ気でいるようだった。
「大将戦は見ものだったのだが・・・・残念だ」
「勝った気でいるとは舐められたものだ」
「だがそれは事実だろう?私はゴースト、君はロボット、この圧倒的な差は覆せない」
「ではそれを覆して見せよう、他でもない((この俺|ロボット))が」
こうして誰もが出来レースと思ってしまうような、種族的な差のある第二試合が始まった。
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