英雄伝説〜焔の軌跡〜 リメイク 改訂版
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〜王都グランセル・リベール通信社〜

 

「ちっ………始まっちまったか!行くぞ、ドロシー!見晴らしのいい場所を確保するぞ!!」

正午の鐘を聞いたナイアルは舌打ちをして慌ててカメラをいじっている眼鏡の女性―――リベール通信の新米カメラマンのドロシーに命令し

「ま、待ってくださいよ〜!すぐに感光クオーツをセットしちゃいますから〜!」

命令をされたドロシーは泣き言を言いながら決して手の動きを止めず、カメラの準備をしていた。

「おいおい、どうしたのかね!?3日ぶりに顔を見せたと思ったら……」

一方二人の様子を戸惑いの表情で見ていたナイアル達の上司は尋ね

「スクープです!『リベール通信』始まって以来のどでかいスクープなんですよ!」

ナイアルは真剣な表情でこれから始まる王都での出来事を思い浮かべて叫んだ。

 

〜グランセル城内・地下〜

 

正午の鐘がなると同時に城の地下の壁が動き、そこからヨシュア達が姿を現した。

「城門の開閉装置は親衛隊の詰所にあります!南側の階段を登りましょう!」

「迅速に終わらせるぞっ!」

「応!」

「フッ、行くとしようか!」

ヨシュア達は急いで親衛隊の詰所へ向かい、扉を開くとそこには驚いた顔で自分達を見つめる特務兵達がいた。

「え……!」

「バカな、侵入者だと!?」

「侵入された方は必ずそう言うんだよね。そぉれっ!!」

自分達の登場に驚いている特務兵達の様子を面白そうに見ていたオリビエは銃を連射し

「うおっ!?」

「くっ!?」

オリビエの銃技―――クイックドロウによって特務兵達は怯んだ。その瞬間、ヨシュアの姿は消えて一瞬で特務兵達の背後に現れた。

「ぐあああああっ!?」

ヨシュアの奥義―――漆黒の牙によって脇腹を斬られた特務兵達は悲鳴を上げて呻き

「行くぜっ!クゥエルスマッシュ !!」

「がっ!?」

「ぐっ!?」

そこにトンファーを構えたフレンが飛びこんで次々とトンファーで特務兵達の顎を命中させて気絶させ

「このっ……!」

まだ無事の特務兵は銃を構えたが

「たぁっ!」

「があっ!?」

跳躍したジンの蹴りを顔に受けて壁まで吹っ飛ばされてぶつかった後気絶した!

「よし、一丁上がりだ。」

「やれやれ、あっけない。」

「まあ、奇襲をされるなんて予想もしていなかったんだろうな。」

「今から城門の開閉装置を操作します!敵が来たら撃退してください!」

ヨシュアは開閉装置を操作しながら残りの3人に指示をし

「おお、任せとけ!『不動のジン』の名に賭けて誰一人として中には入れん!!」

「どれだけの特務兵が来ようと絶対に通さないぜ!」

「フッ、今こそ天上の門が開く時……。第1章の最終楽章の始まりだ!」

ジン達はそれぞれ闘志を高めて迎撃の構えをしていた。

 

〜グランセル城・正門〜

 

数分後、正門は重々しい音をたてながら開かれた。

「な、なんだ……?」

「おかしいな……。完全封鎖と聞いていたのに。」

突如開いた正門に驚いた見張りの特務兵達が戸惑いながら振り向いたその時、背後から迫って来る気配に気付いて振り向くとそこにはユリア中尉を先頭に親衛隊や遊撃士達が突撃して来た!

「なっ!?」

「馬鹿なっ!?」

突撃して来たユリア中尉達に驚いたその時、ルークが電光石火の速さで詰め寄り

「秘技―――裏疾風!!」

「え―――」

「な――――」

「斬ッ!!」

「「があっ!?」」

一瞬で特務兵達に斬撃を叩きこむと同時に背後に回った後斬撃による衝撃波を解き放って特務兵達を堀に叩き落とし、ユリア中尉達は城内へ次々と突撃した。

 

「フッ、まさかお前と肩を並べて戦う日が来るとはな。」

ユリア中尉達と共に走るバダックは静かな笑みを浮かべてかつて自分が互いの信念を賭けて命懸けで戦った相手に視線を向け

「それはこっちの台詞だっつーの!にしても今、思ったんだけどよ。ユリアやローレライもこんな事になるとは思わなかっただろうな。」

「クク、同感だ。」

ルークの言葉を聞き、口元に笑みを浮かべた。そしてユリア中尉達やルーク達が城内のホールに到着すると次々と特務兵達が現れた!

「親衛隊の者達よ!今こそ、情報部の者共に我らに汚名を被せたことを後悔させてやるぞ!!」

「イエス・マム!!」

ユリア中尉の号令を合図に親衛隊員達は特務兵達との戦闘を開始し

「遊撃士協会の底力、奴等に思い知らせてやるぞっ!!」

「応!!」

バダックの号令にルークやクルツ達―――遊撃士達は力強く頷いて戦闘を開始した!

 

〜空中庭園〜

 

「あ、ありえません……!どうして城門が勝手に………一体どこから侵入したのよ!?」

一方城内に雪崩れ込んで来るユリア中尉達の様子を空中庭園で見ていたカノーネ大尉は狼狽え

「た、大尉殿!いかがいたしましょうか!?」

「このままでは敵に女王宮まで侵入されてしまいます!」

特務兵達は混乱しながら上官に指示を仰いだ。

「第一小隊を残して全員、玄関広間へ急ぎなさい!敵を女王宮に侵入……いえ、女王陛下を奪われてはなりません!」

「ラ、ラジャー!!」

特務兵達は玄関広間で戦う仲間達を援護すると共に侵入者たちを排除する為に次々と空中庭園から去って行った。

 

「くっ、何たる失態……。閣下が戻られる前に何としても撃退せねば……」

「た、大尉どの!」

「と、特務飛行艇が!」

カノーネ大尉が唇を噛みしめて悔しそうな表情で侵入者たちの撃退方法を考えていたその時、異変に気付いたカノーネ大尉を守る護衛の特務兵達が声を上げた。

「しまった!そちらが本命か!?」

情報部が使用していたはずの飛行艇―――特務飛行艇は空中庭園の広い場所に着陸し、扉が開くとエステル、シェラザード、クローゼ、レン、アリエッタが次々と出て来てカノーネ大尉達と対峙した。

 

「エ、エステル・ブライト!?それに……クローディア殿下!?おまけにロレントにいるはずのレン・ブライトや”星杯騎士”まで……!クッ、あの時の取引きによって”星杯騎士”は関わらないんじゃないの!?」

エステル達の登場に驚いたカノーネ大尉は自分達と取引きしたにも関わらず条件を破ったアリエッタを睨んで叫び

「うふふ、ちゃんと守っているじゃない。だって、”オバサンと取引きをした星杯騎士”は今回の作戦に関わっていないわよ?」

「アリエッタは、そんな取引きに応じた覚えは、ありません。」

「おのれ……!わたくし達を謀ったのね!忌々しい教会の狗共が………!」

レンとアリエッタの説明を聞いたカノーネ大尉は怒りの表情でアリエッタを睨み

「カノーネ大尉!またお邪魔するわよ!!」

「お祖母さまを……解放していただきます!!」

「な、舐めるなァ!小娘ども!!」

そしてエステルとクローゼの言葉を聞いたカノーネ大尉は烈火の如く怒った。

 

「うふふ、血が昇っているようだから、少し抜いてあげるわ♪―――疾風追連!!」

その時レンが電光石火の速さで次々とカノーネ大尉達の脇腹に斬撃を叩き込んでエステル達の傍に現れ

「え―――」

「な―――」

「あ――――」

レンの電光石火の速さの攻撃についていけなかったカノーネ大尉が呆けたその時、カノーネ大尉達の脇腹から大量の血が噴出した!

「きゃあああああっ!?」

「ぎゃあああああっ!?」

その瞬間カノーネ大尉達は悲鳴を上げて怯むと同時にアリエッタは魔力を溜め込み、光を放つぬいぐるみを掲げた。

「雷の鉄槌!スパークウェーブ!!」

「ああああああああああああっ!?」

「ぐああああああっ!?」

すると雷の球体がカノーネ大尉達を包み込んで放電し、全身に電気ショックを受けたカノーネ大尉達は気絶して次々と地面に倒れた!

 

「鬼気迫るというか……。妙におっかない女だったわね。いったい何者なの?」

カノーネ大尉達が気絶するとシェラザードは気絶する寸前に見せたカノーネ大尉の気迫を思い出して目を丸くしてエステル達に尋ね

「リシャール大佐の副官よ。典型的な雌ギツネって感じ。」

「後は仕事に熱心すぎてお肌が荒れているオバサンよ。」

「なるほど、そんな感じだわ。」

エステルとレンの答えを聞いたシェラザードは納得した様子で頷いた。

「さてと……目指すは女王宮ね!」

「はい、急ぎましょう!」

そしてエステル達はアリシア女王を救出する為に女王宮に突入した!

 

〜女王宮〜

 

「は、反逆者ども!のこのこと来おったな!?私を新たなる国王と知っての狼藉か!?」

エステル達が女王宮に突入すると数人の特務兵達に護衛されているデュナン公爵が自らの地位を脅かそうとしているエステル達を睨んで叫んだ。

「今のリベール王はアリシア女王、です。」

「冗談は髪型だけにしなさいよ。あんた、まだ国王になったわけじゃないでしょ!」

「全くね。そんなセンスのかけらもない髪型をしている人が王様だなんて、レンやリベールの国民達はみんな絶対嫌よ。」

デュナン公爵の叫びに対し、アリエッタは淡々と答え、エステルとレンは呆れた様子で指摘し

「な、なぬう!?」

二人の指摘を聞いたデュナン公爵は顔を真っ赤にした。

 

「デュナン公爵閣下ですね。私たちは遊撃士協会の者です。クローディア殿下の依頼で女王陛下の救出に来ました。大人しくそこを通してくれるとこちらも助かるんですけど。」

「ク、クローディアだと!?あの小娘……余計なことをしおって!!」

そしてシェラザードの忠告を聞いたデュナン公爵は自分にとって忌々しい存在であるリベール王女の顔を思い出して声を上げ

「デュナン小父(おじ)様……。もう、終わりにしてください。小父様はリシャール大佐に利用されていただけなんです。」

「な、何だそなたは……。………………………………」

クローゼに話しかけられたデュナン公爵は呆けた後クローゼの顔をジッと見つめ

「ク、ク、ク、クローディアではないか!なんだその髪は!?その恰好は!?」

やがて自分に話しかけた少女がクローディア姫である事に気付いたデュナン公爵は混乱し始めた。

 

「やっと気付いたのか……。こりゃ、ルーアンで会った時も気付いてなかったわけだわ。」

「うふふ、親戚なのに今まで気付いていないなんてお馬鹿さんねえ。」

「あの人、全然賢くない、です。」

「よく判らないけど、ずいぶんと抜けた人みたいね。」

「あの、黙っていた私が悪かったんだと思います……」

呆れた様子で叔父をけなしているエステル達を見たクローゼは親類として叔父の名誉を守る為に苦笑いをしながらデュナン公爵のフォローをしようとしていた。するとその時

「こ、この私をよくもたばかってくれたな!これだから女という生き物は信用がおけんのだ!小狡(ずる)く、狭量で、ささいな事ですぐ目くじらを立てて……。そんな下らぬ連中に王冠を渡してなるものか!」

デュナン公爵がエステル達を睨んで叫んだその時、その場の空気は凍った!

 

「………………………………」

「………………………………」

「………………………………」

「…………フゥン……………」

「………………………………」

そしてエステルとシェラザードは無表情で、クローゼは困った表情で、レンとアリエッタは冷たい眼差しでデュナン公爵を見つめた。

「……え……その…………」

5人がさらけ出す無言のプレッシャーに圧されたデュナン公爵は大量の冷や汗をかいて一歩下がり

「か、閣下……。今のはマズイのでは……」

「あ、謝った方がいいかと……」

空気を読んだ特務兵達は表情を青褪めさせた。

 

「ふーん……下らない連中か……」

「いやはや、見直したわ。このご時世に大した度胸がある発言ね……」

「うふふふふふふ………そんなレン達にやられる公爵さんはどんな下らないお・と・こ・かしら♪」

「アリエッタ、怒った、です………!」

そしてエステル達はそれぞれ膨大な威圧を背後に背負ってそれぞれ武器を構えてデュナン公爵達を睨み

「ご、ごめんなさい小父様。今のはちょっと……弁護できそうにありません。」

クローゼは申し訳なさそうな表情で謝罪した後、エステル達と共に戦闘を開始した。デュナン公爵にけなされた事によって怒りの頂点に達したエステル達は電光石火の速さでデュナン公爵を守る特務兵達を気絶させ、その場で無事なのはエステル達と守りを失ったデュナン公爵だけとなった!

 

「はい、一丁上がりと!さーて、お次は公爵さんの番かしら?」

特務兵達を気絶させたエステルは棒を一振りしてデュナン公爵を睨み

「女ごときが振るう鞭の味、味わってもらおうかしらねぇ?」

シェラザードは鞭を強く叩きつけてタイルを破壊し

「うふふふふふふふふふふふふ…………」

「女の子を馬鹿にした罪は重い、です。」

レンは背後に瘴気のようなものを背負いながら黒い笑顔を浮かべて笑い続け、アリエッタは背後に魔力によって発生した電撃をバチバチと迸らせながらデュナン公爵を睨み

「ひ、ひええええええ……。寄るな、寄らないでくれええ!」

「あ、あの……。そのあたりで許してあげては……」

エステル達の威圧に圧されたデュナン公爵は悲鳴を上げ、その様子を見たクローゼは苦笑いをしながらエステル達を諌めようとした。

 

「くっ、こうなったら陛下を盾にするしか……。……ええい、ままよ!」

そしてデュナン公爵がエステル達から逃げてアリシア女王を人質にしようと、走り出したが、ろくに前も見ていないデュナン公爵は階段の手すりに顔を思いっきりぶつけてしまった。

「ぎゃうっ……」

手すりに思いっきりぶつかってしまった公爵は鼻血を出しながら呻き声をあげた後、気絶した。

「あちゃあ……。ちょっとやりすぎちゃったかしら?」

「まあ、邪魔したのは事実だし、いい薬になったんじゃない?」

「レンもシェラお姉さんの考えに賛成よ。だいたい、こういう人は一度酷い目に遭うべきなのよ。」

「自業自得、です。」

「はい……。不幸な事故だと思います。でも、気絶した小父様をこのままにしておくわけにも……」

気まずそうな様子のエステルの言葉にシェラザード達がそれぞれ頷いたその時

「……こ、公爵閣下!?」

デュナン公爵の執事であるフィリップが慌てた様子でデュナン公爵に近づいてきた。

 

「あ、フィリップさん!」

「エステル様……。それにクローディア殿下……。この度は、我が主が迷惑をおかけして申しわけありません!全ては、閣下をお育てしたわたくしの不徳の致すところ……。どうか、これ以上の罰はわたくしめにお与えくだされ!」

主であるデュナン公爵を守る為にフィリップは頭を深々と下げた。

「ちょ、ちょっと待ってよ!」

「う〜ん、執事さんにそこまでされたら許してあげないと、大人げないわね。」

「そう、ですね。」

「フィリップさん……どうか頭をお上げください。私たちは、お祖母さまを……陛下をお助けしに来ただけです。もとより、小父様に何もするつもりはありません。どうか、私の部屋で小父様の手当てをしてあげてください。」

「で、殿下……」

エステル達の寛大さに感謝するフィリップは感謝の涙を流しながら顔を上げた。

「実際、大した傷はないわ。ぶつかったショックで気絶しているだけだから大丈夫。」

「そうよ、それにレン達は遊撃士よ。基本的に戦う術のない人を傷つけたりしないわ。多分、少し寝たら起きると思うわ。」

「み、皆様……本当にありがとうございます。このご恩、決して忘れませんぞ!」

そしてエステル達はその場はフィリップに任せ、アリシア女王がいる私室に向かったが、私室はもぬけの殻で、テラスに人の気配を感じたエステル達がテラスに出るとそこにはアリシア女王と厄介な人物がいた。

 

〜テラス〜

 

「お祖母さま、大丈夫ですか?」

「助けに来ました、女王様!」

「クローディア……。それにエステルさんも……」

自分を助けに来たエステル達をアリシア女王は複雑そうな表情をし

「ようやく来たか……。待ちくたびれてしまったぞ。」

アリシア女王が複雑そうな表情をする事になった原因―――エステル達の最大の障害となるロランス少尉がエステル達を見つめていた。

「ロ、ロランス少尉!どうしてこんな所に……」

「フフ……。私の任務は女王陛下の護衛だ。ここにいても不思議ではあるまい?」

「ふ、ふざけないでよね!いくらあんたが腕が立ってもこっちは5人もいるんだから!」

余裕の態度を持っているロランス少尉に対抗するかのようにエステルは声を上げた。

 

「なに、こいつ……。ずいぶん腕が立ちそうね。いったい何者なの?」

「シェラお姉さんの言う通りよ。その人、かなりできるわ。ひょっとしたらルークお兄様ぐらいはあるのじゃないかしら?」

「情報部、特務部隊隊長。ロランス・ベルガー少尉!もと猟兵あがりで大佐にスカウトされた男よ!」

「ほう、そこまで調べていたか。さすがはS級遊撃士、カシウス・ブライトの娘だ。」

シェラザードとレンの疑問を聞いて答えたエステルをロランス少尉は感心した様子で見つめた。

 

「!!」

「外部には公表されていない先生のランクを知っているなんて……。こいつ、タダ者じゃないわね。」

「カシウス・ブライトのランクを知っているのならば、よほどの情報通の、裏組織に所属しています、ね。」

ロランス少尉の情報通にエステルは驚き、シェラザードとアリエッタは警戒し出した。

「フフ……。お前のことも知っているぞ。ランクC、『銀閃』シェラザード・ハーヴェイ。近々、ランクBに昇格予定らしいな。そしてそこの菫色の髪の少女、もちろんお前も知っているぞ。ランク2級、若干8歳でかの”風の剣聖”と同じ”八葉一刀流二の型”を”皆伝”し『剣聖』と『焔の剣聖』の剣技に加えて状況に応じて銃も使い、すでに戦闘能力はA級正遊撃士に届くと言われている準遊撃士、『戦天使の遊撃士(エンジェリック・ブレイサー)』にして株や相場で莫大な富を築き、ラインフォルトやヴェルヌを始めとした大企業の大株主となった『Ms.L』でもあるレン・ブライト。規定年齢に達した時、正遊撃士の資格を与えると検討されているらしいな。しかも、正遊撃士に就任した際の級は現在の所E級だそうだな?」

「なっ………!レンが『Ms.L』である事を知っている事に加えて、あたし達が知らない協会のレンの正遊撃士就任に関する情報まで……!本当に何者よ!?」

「ふーん、今そんな事になっているんだ。ありがと。良いお話を聞けたわ。」

遊撃士協会内部の事を知るロランス少尉にシェラザードは驚き、レンは口元に笑みを浮かべていたが目は笑っていなかった。

「……………………」

「あら、レンの顔をそんなに見つめるなんて……もしかしてレンの顔に見惚れたのかしら♪」

「あんたね………」

「良くこんな状況で、そんな事が言えるわね……」

「アハハ……」

そして自分の顔を黙って見つめるロランス少尉の行動を見たレンは小悪魔な笑みを浮かべ、レンの言葉を聞いたエステルとシェラザードは呆れ、クローゼは苦笑いをしていた。

 

「いや………さすがは”あいつ”と双子だけあって、成長しても随分似ていると驚いただけだ。髪の色が同じであったら、”あいつ”と顔見知りの俺でも見分けが難しいだろう。」

「へ?ふ、”双子”?」

「!………………………何をおかしなことを言っているのかしら?レンに”双子の家族なんていない”わよ。」

ロランス少尉の口から出た言葉が理解できないエステルは戸惑い、何かに気付いたレンは目を見開いて驚いた後冷たい視線でロランス少尉を睨み

「……………………」

睨まれたロランス少尉は何も語らなかった。

 

「!………貴女、まさかとは思いますが”あの時”、”楽園”の中にいた教団員達を殲滅した”身喰らう蛇(ウロボロス)”、ですか?」

その時何かに気付いたアリエッタは真剣な表情でロランス少尉を見つめながら尋ね

「ら、”楽園”?”教団員”??それに”身喰らう蛇(ウロボロス)”って何なの??」

「………恐らくだけど一般的には知られていない裏組織の事ではないかしら?」

「……………………」

アリエッタの質問を聞いたエステルは戸惑い、シェラザードは真剣な表情でロランス少尉を睨み、レンは複雑そうな表情で黙り込み

「さて……な。今この場で互いの”立場”やあの下種共の件を口にすべきではないと思うが?――――”第七位”を冠する者の守護者たる”星杯騎士”―――”七の守護者(セブンスガーディアン)”アリエッタ・タトリン。一体何の用で”主”と共にリベールに訪れているのやら。」

「………………………」

アリエッタは黙って警戒の表情で静かな笑みを浮かべるロランス少尉を睨んでいた。

 

「あ、あの……。お祖母さまを返してください。もしあなたが大佐に雇われただけなのならもう戦う理由などないはずです。」

エステル達がロランス少尉を警戒している中、クローゼは祖母であり、女王でもあるアリシア女王の解放を嘆願した。

「この世を動かすのは目に見えている物だけではない。クオーツ盤だけを見ていては歯車の動きが判らぬように……」

「え……」

そしてロランス少尉が口にした言葉を聞いたクローゼは最初訳がわからず呆けたが

「心せよ、クローディア姫。国家というのは、巨大で複雑なオーブメントと同じだ。人々というクオーツから力を引き出すあまたの組織・制度という歯車……。それを包む国土というフレーム……。その有様を把握できなければあなたに女王としての資格はない。」

「!?」

やがて何かを理解したのか、血相を変えた。

 

「面白い喩(たと)えをするものですね。ですが……確かにその通りなのかも知れません。まさか、この場で国家論を聞くとは思いませんでしたけれど……」

一方ロランス少尉が口にした意味深な言葉を完全に理解していたアリシア女王は重々しい様子を纏って答え

「フ……これは失礼した。陛下には無用の説法でしたな。」

アリシア女王の答えに満足したのかロランス少尉は口元に笑みを浮かべた。

「な、なんかよく判らないけど……。要するに、女王様を解放する気はないってわけね。」

「だとしたら……どうする?」

「決まってる……。力ずくでも返してもらうわ!」

ロランス少尉に問いかけられたエステルは棒を構えて交戦の意志を伝え

「そうね……。ここまで来て後には引けない。」

「ええ、レン達の前に障害があるのならそれを取り除くまでよ!例え何者だろうとね!」

「敵は倒すだけ、です。」

「あなたからは敵意は感じられませんけど……。お祖母さまを取り戻すためなら剣を向けさせていただきます!」

エステルに続くようにシェラザード達もそれぞれ次々と武器を構えて交戦の意志をロランス少尉に伝えた。

 

「フフ、いいだろう……。ならば、こちらも少し本気を出させてもらうぞ。」

「え……!?」

エステル達の答えに満足したのかロランス少尉は口元に笑みを浮かべた後被っていたヘルメットを投げ捨てた。

「………………………………」

「……銀髪……」

「いや……アッシュブロンドね……。どうやらこいつ……北方の生まれみたいだわ。」

「あら、中々ハンサムな人ね。」

「……………!」

アッシュブロンドの髪を持ち、冷徹な視線で自分達を見つめるロランス少尉の容姿をエステル達が見つめる中、ロランス少尉の容姿を見て何かに気付いたアリエッタは血相を変えた。

「フフ……。北であるのは間違いない。まあ、ここからそれほど遠くはないがな。お前たちが女、子供であろうが手加減するつもりはない…………行くぞ!!」

そしてエステル達はロランス少尉との戦闘を開始した!

 

 

説明
第22話
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