真・恋姫SS 【I'M...】17話 |
俺は、何をすればいい。
それが一番大きく、俺の頭に存在していたものだ。
華琳…
「ふふふ………ようやく会えたわね、陶謙」
「………誰だ?」
少女はその男に向かって、笑いかける。
だが、男のほうは彼女に見覚えがないと言わんばかりに、疑問の色を浮かべる。
「この鎌を見て…思う事はあるかしら?」
詰め寄り、鎌を前へとかざす。
「な――っ…」
男は声を出せなかった。
信じられない。恐ろしい。そんな感情が頭を支配する。
「ずいぶんといい顔をするのね………そんな顔で…そんな口で命じたのかしら?母を殺せと!!!」
叫び、少女は男に鎌を突き立て――
「ひっ」
だが、その鎌は男の顔の横を通過し、壁に突き刺さる。
「7年……あなたをどうやって殺そうかずっと考えていたわ……どうすれば一番後悔と絶望の中で死ねるのかしらね…ふふ」
少女は笑う。
心のそこから、嬉しそうに。
「なんなら、あなたの民を道ずれにしてあげましょうか……そうね、それがいいかもしれない」
男は何も言えず、ただ、少女の言葉一つ一つに畏怖を抱く。
今の彼の目には、これから起こりうる惨劇の最後に自分が殺されるという、その事実しか映っていなかった。
「た…たのむ…」
「え?」
「…………す、すまなかった…だ、だから……命は…」
「………………………………ふふふ…」
少女が笑いを浮かべ、男はその顔を上げる。
「あはははははははははは!!!!!」
「あ……」
「ぅぁああああっ!」
笑いは怒りを抑えられず、少女はその鎌を薙いだ。
男の首は弾けとび、その切断面からは、噴水のように鮮血があふれ出す。
「…あはは………こんな……っ…こんなやつに……」
仇は討ったのに、悲しみが止まらない。
「母様……どうして…」
こんなやつに。こんな屑に…。どうして…。
少女の涙が、返り血を洗い流す。
『気は…すんだか?』
不意に聞こえた。
「……………ずいぶん、いきなりね…」
7年前、突然姿を消した男。
『仇は討てたんだろう?』
「……………えぇ。」
『なら、気は済んだか?』
「それより、言う事はないの?」
突然消えて、突然現れて…私がどんな気持ちで…
『…………華琳』
名前を呼ぶ、男の声。ずいぶん懐かしくて、それは胸に染み渡る。
たった今人を殺したというのに、迷いも後悔もなくて、ただ、悔しかった。悲しかった。
「どうして、いなくなっちゃったのよ…」
『………………』
「一刀!!!」
―――――。
………。
叫ぶと、目の前の景色が変わっていた。
「あぁ…」と頭を抑える。
自分の状況を見て、改めて確認する。
寝台の上で、布団をかぶって、座っている。
またか…なんておもいつつ、寝台から降りようと体を動かす。
あの日から、ずっと見ている夢。仇を討って、その後に残るのは何もなくて…
それをあいつに見られて…
ひたすら責められる。
そんな夢。
あれから7年。
私は官軍に所属し、今は洛陽の北部の警備を任されるところまで来た。
官軍へ入ったのは、いたって不純な動機。
あの男を殺してやりたいから。その力を得るため。
自分でも驚くほどの速度で地位をあげていると思う。だけど、それは母の影響もあるのかもしれない。
あれでも三公にまで上ったのだから。
その娘というだけで、他の者とは始まりから違っているのかもしれない。
でも、今はそんなことはどうでもいい。少しでもはやく上へ行き、1軍を任されるようになるまでは。
私の一日は、警邏の分担を決めるところから始まる。
洛陽の北部のみとは言っても、それでも都はひろい。
だから、北だけでも他の街一つ分と同じだけの警備の数を敷く。
近頃は治安がどんどん悪くなる一方で、それでも人数が足りないくらいなのだ。
それでも、治安は守らなければならないのだから、頭が痛くなるというものだ。
警邏が終われば、その報告を聞き、まとめ、処理していく。
この効率の悪さを何とかする改善点はないかとも思うが、なかなか見つからない。
はぁ…と、ため息混じりに、今日も一日は始まる。
「では、この巡回路どおりに警邏をお願い。怪しいもの、規律を乱すものがいれば必ず捕まえるのよ。」
『はっ』
華琳は、部下達に今日の仕事の内容を伝え、警邏を開始する。
それから、その日の警邏を終え、私は帰還した。
ふぅ…と、ため息なんてついて、椅子に座る。
ここは、執務室…なんて言えば、聞こえはいいのだろうが、自分にとっては牢獄も
同然な場所。
送られてくる警邏の報告書に目を通し、次の日の予定を決め、これからの対策を考
える。
そんな繰り返し。
春蘭や秋蘭とは、今の部署になってからはあまり会うことも無くなった。
「曹操様」
ガチャという音と共に、部下が入ってきた。
また仕事を持ってきたんだろうと勝手に決めつけ、その上で「どうかしたの。」な
んて用件を尋ねる。
その者は、机に書簡を拡げ、それについての説明を始める。
人事についてらしいが、今更何を決めようと言うのか。
「家柄や出身などを考えると…やはりこの者達を入隊させるのが――」
「それより、実際にその者達は使えるのかしら?」
「それはもちろんです。この者達は代々、漢に仕える文官や武官の家系ですから…
」
私に意見を求めるくせに、いつもこうだ。
何かを決める時は既に結論を出してから持ってくる。
その上、くだらない理論を散々並べ、さもどうだといわんばかりの顔で押し付けて
くるのだ。
いいかげん、嫌になる。
文官とのやり取りを済ませ、私は外へ出た。
夜ということで、昼間とは違い涼しい風が吹く。
街はところどころで明かりがついて、壁越しでも、いくつかの声が聞こえる。
しばらくの時間を歩いて、そろそろ戻ろうとしたとき。
ポツ…ポツ…
「雨………?」
肌に当たる水滴の感触に雨が来たことを知る。
小ぶりな雨はどんどんその強さを増していく。
雨から逃げるように走って戻るが、雨はそれすら許さぬように、さらに強くなる。
ザァァ…
仕方が無く、近くにあった建物の屋根を使い、雨宿りする。
「はぁ……もう最悪ね…」
ずぶぬれになった自分を見て、つぶやく。
濡れて肌に吸い付く服の感触が気持ち悪い。
また、無意識にため息をついて、座り込む。
そのまま、雨がやむまで過ごそうか迷って、しばらく前を見つめる。
目の前で空から流れる雨。
それは、あの日にも降っていたもので――。
「だから…雨なんて嫌いなのよ…」
今でも、綺麗に思い出せる、あの日の全て。
「本当に…嫌……」
だってこれは…
「大事な者でも消えたかの?」
「え………………」
いつからいたのか、建物の影になっている、路地裏のような場所でいかにも怪しい
格好した人がいた。
「あなた何者?こんな時間に何をしているの」
「流星が降る時、これより起こる乱世を鎮めるべく、天より遣いが舞い降りる」
「………………は?」
その者は私の言葉を無視して、そんな事を口にする。
肌と呼べる部分が一切見えず、全てを布で覆っているため、その者が何を考えてい
るかすら分からない。
「ならば、この雨が呼ぶのは何であろうな…?」
「何を………」
やはり、こちらの疑問には答えない。
「雨なんて…奪うだけよ。何も呼びはしない」
私はその者から視線をはずし、そう口にしていた。
「ならば、お主も奪うか?曹孟徳よ―――…」
「―――っ」
何を言っている。何故名前を知っている。何のつもりだ。何が言いたい。
そんな疑問よりも強く響いた。
「………………………。」
しばらく私は黙り込むと、いつの間にかさっきの者の気配がなくなっていた。
相変わらず降り続ける雨が嫌味のように音を立てる。
「………………………なら、どうしろと言うのよ……」
誰に向けてでもなく話しかけていた。
あとがき
まず、更新が遅れていることについては申し訳ありません。
どうしても、現在リアルが忙しい時期に入ってしまってなかなか時間がとれなくて、仕事の合間に数行ずつ単位で執筆はしているんですが…
まぁ、言い訳ですよね。本当にすみません。
これからについては、説明書きでもあるとおり、しばらく華琳メインです。
一刀&三連星の絡みを期待した方は申し訳ないです(´・ω・`)
見捨てられないように、できるだけがんばりますので、これからもヨロシクお願いしますm(__)m
説明 | ||
アイム17話です。 一刀が再び過去へ戻ったところですが、ここからしばらく華琳のターンです。 次⇒http://www.tinami.com/view/96160 前⇒http://www.tinami.com/view/81814 |
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コメント | ||
次回がとても気になる展開ですね。次回に期待です。(自分のペースでがんばればいいと思いますよ)(もっさん) う〜む。 意味ありげな一刀の登場。 華琳の思いがどうなっていくのかが楽しみです!(タンデム) 毎回読ませて頂いてますよwwあまり無理せずともゆっくり待ってますので。(悪来) 見捨てる訳ないじゃないっすかww 次も期待してますよ〜(狐狗狸) 一刀の現れ方が意味深ですね・・・次回の展開を期待して待ってま〜す(cheat) お疲れ様です。無理の無いように頑張ってくださいw(フィル) お仕事がんばってくださいね。無理は禁物ですよ。(ブックマン) さて・・・・・・どういった感じで行くのだろうか・・・・・・愉しみです^^w(Poussiere) |
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