英雄伝説〜焔の軌跡〜 リメイク 改訂版
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宿舎に戻ったエステル達は夕食をとった後すぐにベッドに入り、寝始めた。

 

〜ル=ロックル宿舎・深夜〜

 

レンがパジャマを着て、ベッドの中でぬいぐるみを抱いて寝ていると、銃声やアーツの発動音らしき音が何度も聞こえて来た。

(――――敵襲!?)

異変に気付いたレンはすぐに起き上がって普段の服装に着替えた後素早く装備やオーブメントを確認し、部屋を出ると同時に隣の部屋からは武装したアネラスが出てきた。

「レンちゃん!レンちゃんも異変に気付いたんだね!?」

「ええ、後はエステルだけね。」

互いの顔を見合わせて頷いた二人はエステルが泊まっている部屋の扉を叩いた。

 

「……エステルちゃん!起きてる!?」

「敵襲よ、エステル!」

「アネラスさん!?それにレン!?やっぱりこの銃声って……!」

二人の声を聞き、既に起き上がって支度をしているエステルは血相を変えながら尋ね

「よかった!起きてたんだね!さあ、早く支度をして!」

「理由はわからないけどここを襲撃しているみたいね。多分、クルツお兄さんが応戦しているでしょうから、レン達も早く援護に行くわよ!」

「わかった!」

そしてエステルと合流したアネラスとレンは急いで階段を降りた。

 

「クッ……これでしばらくは……」

レン達が1階に降りると正面の入口から入って来た後鍵をかけたクルツが崩れ落ちた。

「だ、大丈夫ですか!?」

「た、大変っ!腕にケガをしていますよっ!」

「大丈夫……。ただのかすり傷ですから……。それよりも……敵の侵入を防がないと……」

管理人や整備士はクルツの怪我を見て表情を青褪めさせ

「ク、クルツさん!?」

「せ、先輩!?ケガをしたんですか!?」

「A級正遊撃士がケガをするなんて……それ程相手は手強いのかしら?」

2階から降りて来たエステルとアネラスは血相を変え、レンは真剣な表情で未知の敵の強さを考え込みながら尋ねた。

 

「エステルちゃん!アネラスちゃん!レンちゃん!」

応援が来た事に管理人は表情を明るくし

「すまない、油断してしまった……。見ての通り、武装した集団がこの建物を襲撃しているようだ……。3人とも迎撃に協力してくれ……」

「りょ、了解!」

「わかったわ。」

「そんな……。先輩に手傷を負わせるなんて……。誰が襲ってきたんですか!?」

クルツの頼みにエステルとレンはそれぞれ頷き、アネラスは敵の正体を尋ねた。

 

「先ほど少しやり合ったが……。あの格好は……おそらく『猟兵団』の一派だろう……」

「猟兵団って……あの百戦錬磨の傭兵たち!?」

「で、でも……どうしてそんな人たちが!?」

「リベール国外では遊撃士協会と猟兵団は事あるごとに対立している……。ここが彼らの標的になってもそれほど不自然ではない……。ひょっとしたら……例の結社が手を回したのか……」

(どうも引っかかるわね………いくら対立しているとはいえ、報酬もでない襲撃なんて基本お金で動く猟兵団はしないと思うのだけど……!!)

クルツの推測を聞いたレンは真剣な表情で考え込だ後気配を感じて後ろに振り向き

「え!?」

エステルは驚いて声を上げた。窓が叩き割られて鎧に身を包んだ猟兵が1人侵入してきた後、エステル達に向かって行った!

 

「あ……!」

「しまった!」

猟兵の行動が早くアネラスとエステルは迎撃の構えが遅くなったが

「二の型・改―――双波洸破斬!!」

「何っ!?」

既に迎撃の構えをしていたレンは双剣を振るって斬撃波を猟兵に放ち、猟兵は驚きながら側面に回避した。

「瞬迅爪!!」

そこにエステルが棒を突きの構えをして突撃して来たが

「フッ!」

猟兵は大剣で受け流した。

「弧影斬!!」

その時剣を一端鞘に収め、抜刀したアネラスは抜刀した瞬間衝撃波の刃を放ち

「グッ!?」

衝撃波の刃をその身に受けた猟兵は怯んだ。

 

「四の型・改―――紅葉散華っ!!」

「チッ!?」

更にレンが電光石火の速さで猟兵の横を駆け抜けながら抜刀による斬撃を猟兵の脇腹に叩き込み、脇腹に斬撃を叩きこまれた猟兵はレンに煙幕弾を投擲したが直感で背後から自分を襲う脅威を感じたレンは背中を向けたまま側面に跳躍して回避し

「えいっ!ファイアボルト!!」

「くっ!?」

オーブメントの駆動を終えたエステルがアーツによる炎の弾丸を猟兵に命中させて怯ませた。

「たあっ!」

「ガッ!?」

その時アネラスが猟兵を蹴り上げ、同時にエステルとレンは駆け出し

「落葉!!」

「グッ!?」

蹴り上げた猟兵をアネラスが叩き落とした瞬間、エステルは棒で強烈な突きを放ち、同時にレンは闘気を溜め終わった拳を繰り出した!

「兎迅衝!!」

「剛烈破掌!!」

「ガハッ!?チッ、やるじゃねえか……」

二人の同時攻撃が猟兵に命中すると猟兵は壁に叩きつけられ、地面に跪いた!

 

「はあはあ……。な、何とか勝てたけど……」

戦闘が終了し、エステルは息を切らせながら棒を構えたまま、跪いている猟兵を警戒し

「そ、そこの人!武器を捨てて降伏してっ!」

「器物破損、不法侵入、傷害の容疑で拘束するわ。レン達―――遊撃士に喧嘩を売ったのが間違いだったわね?いくら百戦錬磨の傭兵とはいえ、一人で挑むなんて”無謀”としか言いようがないわよ?」

アネラスとレンはそれぞれ猟兵を見つめて警告した。

「クク……。思ったよりもやるようだ。だが、詰めは甘いようだな。」

「え……」

「!いけない、新手が来たわ!」

2人の降伏勧告を聞き、口元に笑みを浮かべて言った猟兵のセリフにエステルは驚いたその時新手の気配を感じたレンは血相を変え、同時に地面に跪いている猟兵と同じ格好をした猟兵が窓から侵入してきて、煙幕を投げた!

「あ……!」

「は、発煙筒!?」

煙幕は部屋中を満たし、その事に気付いたエステルとアネラスは驚き

「フフ……。お眠り、仔猫ちゃんたち。」

驚いている様子の二人を嘲笑うかのような女性の声が聞こえてきた。

「レンが唯でやられると思わないでよっ!そこっ!ヴァリアブルトリガー!!」

その時敵がいる位置を自分の身に秘められている超感覚で感じ取っていたレンは二振りの小太刀を投擲すると同時に双銃で狙撃し

「なっ!?グッ!?」

「グアッ!?」

レンの攻撃に命中したのか、二人の呻き声が煙の外から聞こえ、同時にレンはエステルとアネラスと共にその場で崩れ落ち、眠ってしまった。

 

〜翌朝・サントクロワの森〜

 

「ん……。……もう朝かぁ……。………………………………。!!!」

森の中で目覚めたエステルは眠る前までの状況を思い出し、すぐに身を起こした。

「え……。ここ、どこ……?たしか敵が襲ってきて……」

周囲の風景に戸惑い、エステルは周囲を見渡した。そこで、アネラスとレンが倒れていた。

「アネラスさん!レン!起きて、2人とも!」

「う……ん……?誰よ、レンを起こすのは……寝不足はお肌に悪いのよ……?」

「うーん……えへへ……。うさぎさんとー……くまさんのぬいぐるみ……。……どっちにしようかなー……」

エステルに揺すられた二人はそれぞれ寝言を呟いた。

 

「な、なんの夢を見ているんだか……。というかレン、その年で肌を気にするなんて、幾ら何でもマセすぎでしょ!って今はそれどころじゃないって!2人とも!大変なの、起きてってば!」

二人の寝言を聞いたエステルは呆れた後すぐに自分のやるべき事を思い出して大声をあげ

「ん〜……?」

「うるさいわねえ……?」

エステルの大声を聞いた二人はそれぞれ起き上がった。

「あれ、エステルちゃん……。あ、そっかぁ……もう朝練の時間なんだ……」

「もう、アネラスお姉さんったらいつまで寝ぼけているつもりよ。」

既に状況を理解していたレンはアネラスの言葉を聞くと呆れた表情で吐き

「アネラスさん、お願いだから目を醒ましてよ〜!」

エステルは必死の表情で声を上げた。

 

「………………………………。……えーと。何がどうなっちゃってるの?もしかして昨日の襲撃って、ただの夢?」

「そんな訳ないでしょう?もし夢だったら、どうしてレン達が森の中で眠っているのよ。」

「アネラスさん、実はまだ寝ぼけているんじゃないの?」

未だに寝ぼけているようにしか見えないアネラスにレンとエステルはそれぞれ呆れた表情で指摘し

「あー、なるほどねー。いやー、これはお姉さん、一本取られちゃったなぁ。」

当の本人であるアネラスは笑い飛ばした。そしてエステル達は状況確認の相談を始めた。

 

「えっと、まずは状況を整理してみようか。昨夜、猟兵団らしき集団が宿舎を襲撃してきて……。クルツ先輩が手傷を負って、私たちが駆けつけた直後に窓から敵が侵入してきて……。その直後、私たちはすぐに眠らされてしまった。」

「多分あの煙には催眠ガスのような効果も混ぜられていたのでしょうね。唯、レン達をここに運んできた事はかなり違和感を感じるんだけど。」

「うん、確かにおかしいよね。持ち物の類は無くなってみたいだけど……。訓練の時に使っていた武具を取られちゃったみたい。」

「あ、あたしもだ。…………っていうことは、あたしたちをこの場所に運んできたのって……襲撃してきた猟兵団?」

「うん……。そう考えるのが自然だけど……。ただ、私たちを拘束しないで放置した理由が分からないんだよね。」

「………………………」

エステルとアネラスが互いに首を傾げて相談している中、レンは真剣な表情で黙って考え込んでいた。

「気絶したあたしたちをここに運んで武装解除した後……。何らかのアクシデントが起きて慌てて別の場所に移動したとか?」

「なるほど。それはイイ線行ってるかも。そうなると、この場所に長居をしていたら危険みたいね。エステルちゃん、地図は持ってる?」

「あ、うん。荷物は取られてないから……。……あったあった。」

アネラスの言葉に頷いたエステルはル=ロックルの地図を広げた。

 

「うん、やっぱりそうだ。ここは昨日訓練で使った『サントクロワの森』だと思う。」

「ということは……。当面の目的は、森を脱出して宿舎の様子を確かめるくらい?」

「後はできれば奪われたレン達の武具を取り返すことね。今の装備で猟兵に挑むのは心許ないし。」

「そうね。武具を取り戻せるか微妙だけど、探したほうがいいだろうしね。それじゃあ、出発しようか。敵が近くにいるかもしれないし、慎重に行動した方がいいね。」

「うん、わかった。」

「じゃ、行きましょうか。」

そしてエステル達が探索していると宝箱を見つけ、その中には奪われたはずの武具が一つ入っていた。

 

「あ!これって、あたし達の装備じゃない!」

「うん、そうみたいだね♪ひょっとしたら他の装備もどこかに隠されているかも。」

「多少危険が伴うかもしれないけど探す価値はありそうね。(武装を解除したのに、何でわざわざ宝箱に隠しているのかしら?……………それに色々と不審な点がある―――――!!なるほど。うふふ、そう言う事ね♪)」

装備が見つかった事に二人が喜んでいる中、ある答えに辿り着いたレンは小悪魔な笑みを浮かべた。その後森を探索した際、奪われた武具がところどころ隠されており、エステル達は自分達の武具を全て取り戻した。

 

〜出口付近〜

 

「アネラスさん、レン!あそこが出口みたい!」

「ふ〜……。ようやく一息付けるねぇ。」

「――下がって!」

出口を見つけて安堵の表情をしている二人とは逆にレンは警告し、警告を聞いた二人は咄嗟にレンと共に後ろに跳躍した。するとエステル達がいた所に銃撃が撃ちこまれた!

「あらあら……中々勘の良い娘ねえ。そっちのお嬢ちゃん達はその娘を少しは見習ったらどうかしら?」

するとその時銃を構えた女猟兵が現れた。

 

「お、女の人!?」

「エステルちゃん、レンちゃん、気を付けて!この人……かなり強いよ!」

「あら……。それを見抜く力はあるのね。それに、あのガスを食らってもう目が醒めたのは驚きだわ。さすがは遊撃士。体力だけは無駄にあるみたいね。それとそこの菫色の髪のお嬢ちゃん、昨日はよくもやってくれたわねえ?」

「うふふ、何の事かしら?」

女猟兵に視線を向けられたレンは小悪魔な笑みを浮かべ

「昨日嬢ちゃんが投擲した双剣、あたしの肩に刺さったんだよね。」

「うふふ、それは御愁傷様♪」

猟兵の話を聞いたレンは笑顔で答えた。

 

「あ、あんたたち!いったい何が目的なの!?どうして訓練場を襲ったのよ!?」

「ふふ……。答える義理はないわね。あなたたちに選べるのは2つ。大人しく降伏するか、このままあたしに狩られるかよ。」

「くっ……。(回収した装備で何とか戦える……!?)」

エステルは目の前の猟兵と自分達の装備の状況を瞬時に判断し、レンとアネラスに視線を向け

「アネラスさん!レン!」

「うんっ!」

「うふふ、昨日の”借り”をしっかりと返さないとね♪」

視線を向けられた二人はそれぞれ武器を構えた。

「ふふ……。いいわ、仔猫ちゃんたち。存分に狩らせてもらうわよ!」

そしてエステル達は猟兵との戦闘を開始した!

 

「ほらほら!」

「くっ………!」

「くうっ……!」

エステルとアネラスは猟兵の正確無比な射撃に近づく事ができず、防御や回避に専念していた。

「嬢ちゃんには昨日の”借り”を返させてもらうよっ!」

そして二人を牽制した猟兵はレンに視線を向けると同時に手榴弾を投擲し

「――紅葉散華っ!!」

レンは電光石火の速さで手榴弾を回避すると共に猟兵に詰め寄り

「フン、かかったね!」

詰め寄って来るレンに猟兵は銃撃を放ったが、常人とは思えない程目が鍛えられ、自分に向かって放たれた銃弾を見切っていたレンは小太刀で自分を襲う弾丸を真っ二つにして、猟兵に近づいた瞬間斬撃を叩き込み、猟兵は間一髪で回避した。

 

「エステルちゃん、アーツの援護をお願い!」

「オッケー!」

そしてアネラスは猟兵に向かって突撃し、エステルはオーブメントを駆動させたが

「させないよっ!」

「あうっ!?嘘、オーブメントの駆動が止まっている!?」

猟兵が放った銃弾が蜘蛛の巣のようなエネルギーを放ち、駆動しているエステルのオーブメントの駆動を止めた。

 

「えいっ!ソウルブラー!!」

「グッ!?」

その時背後でオーブメントの駆動を終えたレンが時の刃を猟兵に命中させて猟兵を怯ませ、そこに猟兵の目の前まで詰め寄ったアネラスが攻撃した。

「―――剣風閃!はい、はい、はぁいっ!!」

「チッ!?」

三連続で襲い掛かる衝撃波の刃を猟兵は受けてしまい

「はい!もう一つ!」

「グッ!?よくもやってくれたねえ!?」

そこにアネラスが閃光の如くの速さで猟兵を2回斬り付け、アネラスの剣技―――閃光斬を受けた猟兵はアネラスの至近距離で銃を連射した。

 

「あうっ!?」

至近距離からの銃の連射に加え、蹴りも加えられた連携攻撃をその身に受けたアネラスは呻き

「龍炎撃!!」

レンはアネラスを攻撃している猟兵の背後から闘気を込めた斬撃を放ったが

「!!」

背後からの強襲に気付いた猟兵は攻撃を止めて側面に跳躍して回避した。

「アネラスさん、今助けるね!ティア!!」

そしてオーブメントの駆動を終えたエステルはアーツを発動した。すると治癒の水が一滴アネラスに落ち、落ちた水滴はアネラスが負った傷を若干塞ぎ、アーツを放ち終えたエステルは猟兵に向かって突撃した。

 

「こいつを喰らいなぁっ!!」

突撃して来たエステルを見た猟兵は銃から鋼すらもへこますほどの強力な威力を持つ弾丸―――グレネード弾をエステルに放ち

「翔舞―――」

エステルは跳躍して回避し

「煌爆破!!」

「グッ!?」

棒を猟兵に叩きつけると共に衝撃波を発生させて猟兵を怯ませた。そこにレンとアネラスが挟み撃ちで同時に攻撃を仕掛けた!

 

「――八葉滅華。ヤァァァァァァッ!」

「さあ、行くよっ!まだまだまだまだまだっ!」

「グアアアアアアッ!?」

左右から襲い掛かる怒涛の斬撃をその身に受けた猟兵は悲鳴を上げた。

「これで……!」

「止めだよっ!」

そして連撃を放ち終えた二人は跳躍して強烈な一撃を猟兵に叩き込み

「ハァァァァ……金剛撃!!」

二人が攻撃している間に力を溜め終わったエステルは棒を振るった!

「ガハッ!?クッ……。少し甘く見ていたか……」

3人の同時攻撃を受けて吹っ飛ばされた猟兵は地面に跪いた!

 

「はあはあ……。遊撃士を甘く見ないでよね!」

「うふふ、たった一人で勝負を仕掛けるなんて、自分の腕に自信過剰なお馬鹿さんのする事よ?」

「小娘3人と侮ったのが運の尽きだったみたいだね!」

「フフ、威勢のいい仔猫ちゃんたちだこと……」

3人の威勢のいい言葉を聞いた猟兵は不敵に笑った後、立ち上がって発煙筒を投げた。

「またっ……」

「もうその手には乗らないわよ!」

「エステルちゃん、レンちゃん、息を止めて!」

3人は息を止めて後ろに跳躍し、煙を吸わないようにした。すると投擲された発煙筒は辺り一面を煙だらけにし、視界が困難な状態になり

「すでに方術使いは捕まえた。仔猫ちゃんたちの味方はいない。あきらめて投降することね……」

風によって煙が晴れると既に猟兵の姿はなかった。

 

(うふふ、お疲れ様♪)

「あ!いない!」

「逃げられたか……。アネラスさん、レン。深追いしない方がいいよね?」

小悪魔な笑みを浮かべるレンに気付いていないアネラスは猟兵の姿が無くなった事に声を上げ、エステルは二人に確認した。

「そうだね……。待ち伏せされる危険もあるし。ねえ、エステルちゃん、レンちゃん。今の人が言ってた『方術使いは捕まえた』って……」

「あ……。うん……クルツさんのことだと思う。」

「もしかしたら昨日レン達を眠らせた発煙筒によってクルツさんも眠らされた後拘束されたんじゃないかしら?」

「そっか……。………………………………」

二人の答えを聞いたエステルは表情を曇らせた。

 

「だ、大丈夫だってば!仮に捕まったとしてもクルツさんなら無事だって!それに……こういう時こそ今までの訓練が活かせると思う。」

「あ……。非常時の行動、安全の確保、そしてカウンターテロ行動……。うん……確かにそうかも!教えてもらったことを活かしてクルツ先輩を助けなくっちゃ!」

「うふふ、今こそル=ロックルで学んだ事が発揮される時ね。」

エステルの言葉を聞いたアネラスは頷き、レンは口元に笑みを浮かべていた。

「うんうん、その意気!ね、アネラスさん、レン。とりあえず宿舎に戻らない?敵に占領されたままかどうか確かめた方がいいと思うし。」

「うん、そうだね。それじゃあ、出発しようか。」

(さてと。次はどんな”訓練”になるのかしら?)

そしてエステル達は森を抜けて警戒しながら宿舎に向かった………………

 

 

説明
第30話
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