英雄伝説〜焔の軌跡〜 リメイク 改訂版 |
ルーク達が霧の調査を開始している一方、ルーアンに到着したエステル達はルーアン地方の各地で起こっている”幽霊騒動”を調べる事になった。
そして目撃者の一人である孤児院の子供に事情を聞く為に孤児院に向かったが、院長の話では子供達は日曜学校に参加しているという話を聞き、孤児院の近くにある景色が綺麗な村――――マノリア村の日曜学校をしている場所である風車小屋に向かった。
〜ルーアン地方・マノリア村・風車小屋内〜
(あれっ、あの人……)
「!!(ケビン……)」
風車小屋の中の様子を見たエステルは見覚えのある人物に驚き、アーシアは目を見開いた。
「『同情することありませんよ。まったく、ティーア様は人がいいんだから』
正直なところ、ガストン公爵がこのまま黙って引き下がるとはとても思えないペトロでした。それに、不気味な仮面の人形師ハーレクインの動向も気になります。互いに面識があるようでしたが師匠のカプリは、言葉を濁してなにも教えてくれませんでした。
いずれにせよ、近いうちにもう一波乱あるに違いありません。ペトロは蒼騎士の改造を決意しました。『もう、ペトロ様ったら』
ちょっと拗ねたような口調にペトロは我に返りました。
『お茶が冷めてしまいますよ?』
青空を映した、涼やかな瞳が“大丈夫”と安心させるようにいたずらっぽく輝いています。照れくさくなったペトロはぬるまった紅茶で喉を潤しました。
……人形の騎士・おわり。」
見覚えのある人物――ケビンは子供達の前で読んでいた本を閉じた。
「ええ〜っ!もう終わりなのかよ〜!?ハーレクインとの決着はどうなるんだよ!?」
「バカねぇ、クラムったら。ここで終わるのがいいんじゃない。そしてペトロとティーア姫はいずれ結婚して幸せに暮らすのよ。はあ〜、ロマンチックねぇ♪」
「うんうん。やっぱり2人には結婚して幸せになってもらわないと♪」
「ボク、なんだか先生のお茶が飲みたいな〜。」
「カプリ師匠がカッコイイの。」
ケビンが本を閉じると話を聞いていた子供達は口々に感想を言い合っていた。
「はあはあ……。さすがに『人形の騎士』全22巻の一気読みはキツイわ。ほれ、これでええやろ。今日の授業はオシマイやで。」
「ぶーぶー。」
「ケビン先生、お疲れさまぁ。」
「ふう、敵わんなぁ……。あー、そこの人。授業は終わりやからもう入ってきてもええで。」
子供達の元気の良さに懐かしさや微笑ましさを感じたケビンは自分達を見つめる視線―――出入り口付近にいるエステル達を見つめて言った。
「あはは……。気付かれちゃったか。えっと、失礼します。」
「へっ……?」
「あああああっ!?」
「エステルさん!?」
そしてエステルがアガットやアーシアと共に小屋内に入るとエステルと出会った事のある子供達は驚きや嬉しさの表情で駆け寄って来た。
「みんな、久しぶりね!元気にしてた?」
「なんだよ!遊びに来たのかよ〜!?」
「エステルおねえちゃん。遊んで遊んで〜。」
「よく来たのー。歓迎するのー。」
「あはは……。みんな相変わらず元気ねぇ。えっと、ケビンさんもお久しぶりね。」
子供達の元気な様子にエステルは微笑んだ後ケビンに視線を向けた。
「おお、エステルちゃん。オレのこと覚えとってくれたか!」
「そりゃあもちろん。しかし、本当にその格好で神父なんかやってたのねぇ。」
「どーいう意味やねん。しかし、こんなところでまた会えるなんてなぁ。これはひょっとして運命の再会ってやつかもな♪」
その後子供達を孤児院まで送り、幽霊の目撃情報を聞き終えたエステル達はケビンと共に街道に出た。
〜マノリア海道〜
「いや〜、ホンマ元気なガキどもやったわ。しかし院長先生の人徳かな?どいつも気持ちのいいほどまっすぐな性格しとったわ。」
「そりゃあテレサ先生だもん。本当はもう一人、子供達の面倒を見てる子がいるんだけど。学校が試験期間とかで今日は来ていないみたい。」
感心しているケビンにエステルは子供達を育てている人物達を思い浮かべながら笑顔で答えた。
「ふーん、そうなんか。そういやオレはこれからルーアンに戻るけど。アンタらはどうする?一緒に街まで行くとするか?」
「そうだな、こっち方面での聞き込みも終わったし……旅は道連れと行くとしようや。」
「そうね。それに神父の方を街まで護衛するのも遊撃士の仕事の一つだしね。」
ケビンの話を聞いたアガットとアーシアはそれぞれ同意し
「いや〜、正遊撃士3人の護衛なんて、メッチャ助かるわ〜。……………………………」
アーシアの答えを聞いたケビンは笑顔で答えたが何かに気付いて呆けた様子でアーシアの顔をジッと見つめた。
「え、えっと……私の顔に何かついているのかしら、ケビンさん?」
「もしかしてアーシアさんに一目惚れしたの〜?アーシアさん、綺麗な人だもんね〜。」
ケビンに見つめられたアーシアは冷や汗をかきながら苦笑し、エステルはからかいの表情でケビンを見つめて尋ねた。
「ハハ、んな訳ないで〜。知り合いの顔にちょっとだけ似ていたから、驚いていただけですわ。」
エステルのからかいに苦笑しながら答えたケビンは何かを思い出すかのような懐かしそうな表情でアーシアを見つめながら答えた。
「そうなんだ。じゃ、ルーアンへレッツ・ゴー!」
その後エステル達はケビンと共に時折現れる魔獣達を倒しながらルーアン市に到着した。
〜ルーアン市〜
「やれやれ……よーやく戻れたか。おおきに。ここまで送ってくれて助かったわ。」
「あはは、お礼なんてやめてよ。」
「フフ、まさか神父の方が武装しているとは思わなかったわ。(ふふっ、星杯騎士としても成長しているわね、ケビン……)」
「俺達がいなくてもあんただったら大丈夫だったろうな。ボウガンとは古風だが……アーシアみたいな腕前で感心したぜ。」
「いや〜、巡回神父なんて町外れに行くお仕事ですから、最低限の武装はしとるけど本職の人達程ではないですって。それはそうとアーシアさんでしたっけ?一つ聞きたい事があるんですけど、よろしいですか?」
アガットの言葉を聞いたケビンは苦笑しながら答えた後アーシアに視線を向けた。
「?何かしら。」
「オレと同じようにボウガンみたいな骨董品を使っている事にも驚いたんですけど……アーシアさんが使っている剣って、見た事のない珍しい剣やな〜っと思って。」
「あれ?神父さんなのにケビンさんはせ……モガ。」
ケビンの疑問を聞いて目を丸くしたエステルは何かを言いかけようとしたがアーシアの両手に口を抑えられ
(エ・ス・テ・ル〜〜?私やアリエッタさんが”星杯騎士団”は七耀教会の裏組織で、その名を第三者の前で口にする事は滅多に許されないって、教えたわよね?いくら同じ七耀教会所属とはいえ、普通の神父やシスターが知っている訳がないでしょう〜〜?)
(ご、ごめんなさい……(アーシアさんって怒ったらお、お母さんと同じくらい怖いかも……))
膨大な威圧を纏ったアーシアに微笑まれ、身体を震わせながら頷き
(ったく、機密情報をポロッと口に出そうとしてんじゃねーよ。この調子だと先が思いやられるぜ……)
「(怒られていないオ、オレの方にまで余波が……ホ、ホンマに色々とルフィナ姉さんと似ている人やな……ま、まさかホンマにルフィナ姉さんなんか?―――いや、それは”絶対にありえない”な………何をアホな事考えてんねん、オレ……)え、え〜と。もしかしたら聞いたらあかん話やったんですか?」
その様子を見ていたアガットは呆れた様子で溜息を吐き、ケビンは身体を震わせながらアーシアを見つめた後複雑そうな表情になったがすぐに表情を戻し、苦笑しながら尋ねた。
「えっと……実は私、遊撃士になる前、”ある組織”の見習いとして所属していた事があってね。色々な理由でその”組織”を辞めて遊撃士になったのよ。それでこの剣やボウガンはその組織からもらったものだから、今でも使い続けているのよ。」
「!そうやったんですか。(元”星杯騎士”か……道理で”騎士団”にしか伝わっていない”法剣”を使っている訳やな。しかしルフィナ姉さんとまるっきり同じ戦闘スタイル――――法剣とボウガンを巧みに使う戦闘スタイルの見習いなんて、見かけた事ないで?しかも使っていた法術や技(クラフト)も、ぶっちゃけ”正騎士”レベルと言ってもおかしくないし。)……それでさっきの幽霊の話に戻すけど、ルーアン礼拝堂にも何人か相談に来とるらしい。ただ、テオドロ教区長によると普通の霊とは思えないそうや。」
アーシアの話を聞き、アーシアの過去を察したケビンはそれ以上追及するのを止め、エステル達にとって有益になるかもしれない情報を口にした。
「普通の霊じゃない……?」
「教会の教えでは、人が死んだ時、善なる魂は空に登るんだったな?」
「ええ、反対に罪を背負った魂は昏き煉獄に落とされるんですけど……たまに、その枠からはみ出てどちらにも行けん魂があるらしい。それがいわゆる『幽霊』やと教会では一般的に言われとりますわ。」
「なるほど……だけど今回の幽霊騒動はその”幽霊”じゃないのね?」
ケビンの説明を聞いて納得した様子で頷いたアーシアはケビンを見つめて尋ねた。
「ええ。普通の霊は、多くの場合何かに縛られていることが多い。場所だったり、人だったりしてな。やけど、今回の幽霊騒ぎにはどちらにもあてはまらん。せやから教区長さんもしきりに首をひねっとったで。」
「なるほど……今回の幽霊騒動で幽霊が目撃されている場所はバラバラだものね。」
「まあ、調査の参考にでもしたってや。ほな、オレは礼拝堂に戻るわ。またな〜、エステルちゃんたち。」
そしてケビンはエステル達から去って行った。
「うーん、助言はなかなか聖職者っぽかったけど……やっぱりどう見ても神父には見えない人ねぇ。」
(ふふ、まあそれを言ったらアインも同じだけどね……)
「ま、巡回神父なんて変わったヤツが多いからな。昔ラヴェンヌ村に来てたやつもけっこう変わった親父だったぜ。」
ケビンを見送りながら呟いたエステルの感想を聞いたアーシアは苦笑し、アガットは納得した様子で答えた。
「ふーん、そうなんだ。――あ、そう言えばアーシアさん。もしかしてケビンさんって、”星杯騎士”なの?」
「え?どうしてそう思ったのかしら?」
エステルの疑問を聞いたアーシアは目を丸くして尋ね
「だってケビンさん、元”星杯騎士”のアーシアさんと同じボウガンを使ったり、え〜と……”法術”だっけ?それを使ってあたし達の援護をしてくれたし。」
「う〜ん、私が騎士団にいた頃は見かけた事はないから何とも言えないわ。それに”法術”なら七耀教会全体に伝わっているから、一般の神父やシスターでも使える人達はいるわよ?(さすが”剣聖”の娘ね……)」
エステルの勘の鋭さに感心しながら答えを誤魔化した。
「そうなんだ。さてと……目撃情報はまだ残ってるね。この調子で次もいこっか?」
「ああ、そうだな。」
「それじゃあ行きましょう。」
そしてエステル達は幽霊騒動の調査に戻った。
エステル達が幽霊騒動の調査をしている一方霧の調査や溜まっていた依頼の消化を終えたルーク達が夕方に街に戻ってくるとある異変が起きていた……………
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