真・恋姫無双〜項羽伝〜三国編 |
第五章 10話 長坂橋 後編 立往生
張飛が引き連れてきた軍はとある林の前で陣取っていた
張飛「なぁ、燈おばちゃん?本当にこの辺りに居るのか?」
ピキ
陳珪「お・・おばちゃん??ねぇ鈴々ちゃん?・・・・・私、そんなに老けて見えます?ねぇねぇねえええええええ!!!!!」
陳珪は張飛に攻め寄りながら何かを主張し始めた
陳登「プッ・・・・クククククククッ、お母さんが・・お、おばさん・・ククククッ」プルプル
張飛「ヒッ・・・ご・・ごめんなのだ。燈お姉ちゃん」
張飛は陳珪の迫ってきている顔が恐く言い直すしかすべは無かった
陳珪「ええ、そうですね。私はまだ若いのですからそれでいいのです。それで?何の話でしたかしら?」
陳登「捜索の話よ、母さん」
張飛「そ、そうなのだ。本当にこの林の中に雛里を殺した奴がいるのか?」
張飛はまだ、先ほどの陳珪の迫力にけおされているみたいで声が少し震えていた
陳珪「ああ、その事ですか。それだったらこれを見てください」
そう言いながら陳桂は簡略な地図を取り出し
陳珪「喜雨さん、目撃情報を確認したいのでお願いします」
陳登「分かったわ。確か・・・最後の目撃情報はこの辺りだったはず」
陳珪「報告どおりですね。それで、今は兵を使ってこのように追い込み、囲うようにしています」
地図に包囲網の形を指でなぞりながらそう言った
張飛「そうなのか・・・・・ん〜〜」
陳登「どうかした?」
張飛「・・・・最初は雛里が死んだことに気が動転してたのだ。けど、今思うと一人の子供と獣二匹にこの人数は卑怯なのだ」
陳登「卑怯?」
張飛「そうなのだ」
陳珪「鈴々ちゃん。鈴々ちゃんは戦の時、大勢で敵を倒すのに卑怯と感じるのかしら?」
張飛「それは・・・・・」
陳珪「ならこのお話はこれまでにして、鈴々ちゃんは南蛮兵数人と一緒にこのように動いてもらっていいかしら?」
張飛「わかったのだ。でも・・・・・」
陳登「気が引けるの?」
張飛「ち、違うのだ。ただ、やっぱり・・・・・この進軍もそうだけど、この頃のお姉ちゃん達の動きが、昔みたいじゃなくて・・何だかいやなのだ」
陳登「嫌ですか・・・・」チラ
陳登はちらりと母を見るとコクリと一度頷いて見せた
この時に陳珪の頭の中で考えているのは今行っている策では無く、これから自分たちにかかる火の粉、それに関わってくる損得勘定であった
そして、頭の中で考えを纏めはじめ
陳珪「そうね・・・・(これがやっぱり最後になりそうね・・・これ以上は危険そうだし。)鈴々ちゃん、今はそれを心の隅に追いやっておきなさい。戦いでは少しの隙で自分の命を落とすことは私より鈴々ちゃんの方が知っているでしょう?」
張飛「うん」
陳珪「フフ、素直な子はお姉さん大好きよ。たしか成都に帰ったら桃香様とお話をするのでしょう?なら、その時に納得のいくまでお話をすればいいわ。お姉さんが最後にしてあげれる助言よ」
張飛「最後?」
陳珪「さあ、行きなさい。敵が如何に小さい者だろうと油断をしては駄目よ。もし危ないときは無理にでも助太刀はするけど・・・」
徐庶「ハァハァ、ハァ・・・・・・成刀無事?」
成刀「うん。今のところは。でもタマが・・・・」
徐庶は後ろを警戒しながら着いて来るタマに視線を向けると
身体が傷だらけで、何本かの矢が刺さっている状態のタマがそこに居た
足を動かすたびに、その足跡には血が溜まり、真っ白かった毛も赤く染まり始めていた
タマ「グルルルル(問題ない。速く進め)」
タマは唸り、徐庶に前を向き進めと言いたげに首を振った
そんな事をしている間も後ろからガサガサと迫ってくる音が近づいていた
タマ「ガウッ!!!(急げ!!)」
タマの吠え声が揖斐いた時と同時に背後から南蛮兵が数人飛び掛かって、タマを襲い始めた
徐庶「くっ!」
成刀「徐庶行こう!タマ、絶対死んじゃダメよ。すぐ追いかけて来なさい」
成刀は徐庶の袖を引っ張り前へ駆けだした
後ろからはタマの唸り声と南蛮兵の声だろうか人より獣に近い悲鳴の様な声が響き渡っていた
二人は走った
走り続けた
その間も幾度も劉備軍の攻撃を受けたが、この時の敵兵は南蛮兵が居なかったこともあり何とか逃げ出すことに成功していた
しかし
林の出口が近づいて来た時
二人の真横から
張飛「そこなのだーーー!!!!!!」
張飛が南蛮兵を数人引き連れて奇襲を仕掛けてきたのだった
陳珪の策で迂回して来ていた張飛の待ち伏せに合ってしまったのであった
張飛は自分の得物を振り上げ成刀の首へ振り下ろそうとし、後ろの南蛮兵達の内二人は徐庶に向かい後は二人を囲うように動き出した
徐庶「危ない!!」
徐庶はとっさに成刀を守ろうと成刀に覆いかぶさり張飛に背中を見せるようにした時
ズバ
徐庶の右肩から左わき腹に向けて振り下ろされた武器が何も抵抗なく通り過ぎていった
徐庶の背中からは即死と言う訳ではないが放置していたら必ず死が訪れるほどの血が夥しいほど流れ出したのだった
徐庶「ッ!!!」
しかし徐庶は怯むことなく、振り向きながら張飛に向けて左手に潜めていた暗器を投げつけた
キンキン
その攻撃は徐庶を襲おうとしていた南蛮兵に遮られ、そのまま徐庶に止めを刺そうと攻撃を仕掛けてきた
そこに
雅「じゃまだ!!!!」
ブオン
剛圧と言っていいほどの勢いで雅が金剛罰斧振りぬき、襲っていた南蛮兵を真っ二つにしていた
そして張飛にも
香風「どこ見てる?」
香風が大斧を振りぬいた
ガキン
それを張飛は驚きながらも武器で受け止めた
張飛「にゃ!?何なのだ、おまえたち?」
音色「成刀、無事!?」
張飛の声を完全に無視して音色は成刀の元に駆けよって、怪我がないかなど色々確認を始めた
成刀「音色お姉ちゃん、私の事よりタマが!タマが一人で!!」
雅「タマが後ろで戦っているのですか?」
成刀「うん。お願い、タマを助けて」
雅「そうか・・・香風は無理そうだな。私が行く。音色は成刀さま頼む」
雅は張飛と戦っている香風を一度見、自分が行くことを決めた
音色「わかったわ。成刀、行きましょう。徐庶、今までありがとう。この子を守ってくれて。逃げ道は私達が作るから着いて来て」
音色は徐庶にお礼の言葉を告げ、着いて来るように言った
徐庶「いえ、お礼を言うのは私の方です。もう命は無いと思っていましたから」
徐庶はそう告げて音色について行った
雅「香風、気を付けろよ」
雅もそう告げて林の奥へと向かっていった
香風「・・・・頑張る」
張飛「一体何なのだ、お前たちは?」
香風「お前たちの敵・・・・・それさえ知っていればいい」
そう言うと香風は攻撃を仕掛けはじめた
ガキン!!
香風の攻撃は周りの木ごと切り倒しながら攻め、逆に張飛は木の合い間合い間を縫ての攻撃をくり出し始めたのだった
タマ「ガオ―――――――ン!!」
グシュ
タマは迫ってきていた兵の最後の一人の首を噛みちぎり終えたところだった
タマ「ハァ、ハァ・・・・・・・グルグル」ピクピク
戦い終えて呼吸を整えようとしている所に、また何かが迫ってくる音に気付き警戒を強めたが
雅「タマ、私だ。無事か?」
タマ「ガウ」
雅「成刀さまなら心配ない。それより走れるか?」
タマは縦に一度頷いて同意の意思を見せた
雅「なら急ぐぞ。今は無事と言っても、敵はまだ居る」
その頃、成刀を連れた音色は無事橋についていた
葵「成刀様!!!御無事で」
葵はやってきた成刀に飛びつき怪我が無いか入念に、それは入念に調べようとしたが
成刀「ちょっ、ちょっと青!やめて!!服を脱がそうとしないで!」
成刀が身をよじらせながら嫌がった為、服を脱ぐことは避けられた
音色「葵さん、調べるのは後で、今はすぐに離脱を」
炎蓮「ああ、音色の言う通りだ。しかし・・・その前に、成刀様・・・・その、涼刀様は・・」
成刀「・・・・・」
炎蓮「そうですか・・・・いえ、すみません。涼刀様ならきっと大丈夫なはずです。何せ、成刀様の姉上ですし、一刀様の娘様で有られるのですから」
成刀「うん」
不安に思いながらも自分に言い聞かせるように成刀は頷いたのだった
そうしていると林からドゴ―ンドゴ―ンと言う音が近づいて来て皆が構えを取り警戒して林を見ると
香風「これで隠れられない」
張飛「うにゃ!でもそんなのかんけいないのだ!!うりゃりゃりゃりゃっ!!」
二人が現れ戦い続けたのだった
そして少し離れた場所から雅とタマが現れた
雅「ふむ・・・まずは皆の元に向かうか。タマ、もう少しの辛抱だからな」
雅は一度香風を見て問題なさそうと判断し皆の元に向かった
成刀「タマ!!タマ無事なの!?」
成刀は血だらけのタマに駆け寄り体を摩った
タマ「グルル(問題ない)」
徐庶「一応、傷薬を塗りましょう」
徐庶は持っていた傷薬を出血が酷い何か所に濡ってやった
炎蓮「後は、逃げるだけだな」
雅「殿は私と香風がするから、さきに「ギャッ!!」ッ!!」
雅が炎蓮達に先に向かうように指示をしようとした時、香風の意表をつかれたような声が聞こえそちらを向いた
そこには何人もの南蛮兵達が香風を襲っていた
雅「ちっ!!皆は先に行け!!」
雅は香風の元に駆けだして行った
葵「成刀様行きましょう」
炎蓮「一応私は橋の前で控えておく。後で合流しよう」
炎蓮は渡ってその場に残り、残りが歩みを進めていった
雅「そこを退け―――――――!!!!」
橋の方へ迫ってくる南蛮兵を切り裂きながら香風の元へ向かうが
林の中から何人も何人もまるで波の様に南蛮兵が出てきた
雅「ちっ!香風聞こえているか!!今すぐ身を屈めろ!!!はぁあああああ!!!五臓六腑をぶちまけろ!!!!!
ゴ――――――――――――――ッ
金剛罰斧が巨大化し迫りくる南蛮兵の体を二つに切り裂き、勢いもそのままに後ろの林の木も何本か斬り落ちていった
張飛「な、何なのだ今の?」
張飛は南蛮兵によって林の方に下げられており、雅の声で身の危険を感じすぐさま身を屈めたことが幸いして無傷でしのげていた
雅「香風、無事か!?」
香風「何とか」
雅「そうか。ほら」
雅は香風に手を差し伸べ立たせようとした時
林の方から
陳珪「今です」
その言葉と供に矢が何本も、何本も射こまれてきた
それは矢の雨と言っていいほどの物であった
雅「っ!!」
雅はとっさに取っていた香風の手を引き寄せ香風を抱えるようにして自分の背で矢の雨から香風を守った
香風「か、かーゆ?」
雅「ケフッ・・・・何ともない。それより無事か?怪我は?」
香風「大丈夫・・・それより、かーゆ・・・・背中が」
雅の背中や腕には何本もの矢が刺さっておりそれは痛々しい物だった
雅「いい。それよりも速く・・・速く逃げろ。これはお前には荷が重すぎる」
林からはまた大量の南蛮兵が出てきており、雅はそれを見て何かを覚悟した顔でそう告げた
香風「でも、でもっ!!」
雅「いいから行け。それと、これを持って行け」
そう言って金剛罰斧を渡した
香風「これはかーゆの・・・・で、でもシャンは、シャンは!!」
雅は何かを叫んでいる香風を無視して
雅「炎蓮!!!香風を頼む!!」
バッ
そう言って雅は香風を金剛罰斧と供に投げ渡した
そして足元に落ちていた香風の大斧を拾い上げ
雅「邪魔だな」
腕に刺さっている矢を抜き取り
雅「ふっ!!」
ガラガラガラ
斬撃を橋へ飛ばし橋を崩壊させた
雅「香風!!お前に伝え忘れていたが私の真名は雅だ!!そして誰にも負けない立派な将になれ!!・・・・・これが、私が最後にお前に渡せる最後の言葉だ」
そして雅は振り返り迫ってくる南蛮兵へと向かっていった
炎蓮に抱きかかえられたままその場を離れていっていた香風は涙を流しながら
香風「かーーーゆ!!かーーーゆ!!・・・・・・・・雅おかーーーーーさーーーーん!!!」
今まで雅に対して思っていた言葉が、今まで伝えることの無かった言葉が最後の最後に伝えられた言葉が別れの言葉になってしまったのだった
張飛は戦い続ける雅の姿を見て
張飛「やめるのだ!!皆、やめるのだ!!!燈お姉ちゃん、皆の攻撃をやめさせるのだ!!!」
燈の元に駆けよりながらそう叫んだ
陳珪「何故かしら、鈴々ちゃん?」
張飛「何故って!?それはもう戦いが終わっているのだ!!橋が壊れて追いかけられないし、それにこの人数で攻撃したらただの虐殺なのだ!!」
陳珪「鈴々ちゃんの言う通り一理あるわ。でも、アレを見て鈴々ちゃんは本当に攻撃をやめろと言えるのかしら?」
陳桂はそう言って戦いが起きている場所を指さした
そこには敵を切り裂き傷つきながらも永遠と戦い続ける雅の猛将の姿が其処に在った
張飛「!!」
陳珪「あのような者を相手にしているときは一切手を抜いては行けません、痛い目に合うのは私達になってしまいますから。それにもし鈴々ちゃんがあの方と同じ立場だったらあなたも戦い続けるでしょ?相手が攻撃を出来なくなるまでは」
それから張飛はただ見ている事しか・・・目を離すことができなかった
ただ目前の敵を撃ち滅ぼしていく雅の姿を
何かを守るため
その身に背負った物を守るため闘い続ける姿を
昔自分が持っていたはずの目指していたはずの姿から目を離すことが出来なかったのである
それから雅は戦って、戦って、戦い貫いて
目の前に迫ってくる敵が居なくなるまで戦い貫いた
それは陳珪達が連れてきた南蛮兵の増殖を上回るほどに殺していき遂には元が完全に断たれるほどであった
陳珪「これでは流石に無理ですね。皆さん撤退をしますよ!」
そう言って陳桂は弓兵として連れてきた一般兵を引き連れて撤退を始めた
その間も張飛は雅から目を逸らすことが出来なかった
そして雅は
雅「ハァハァ・・・・・如何した・・・・もう終わりか?まだ私は戦えるぞ!!!」
言葉を発して大斧を構えて、撤退する軍を睨みつけた
しかし、それ以降、体はおろか、指先ですら動こうとしなかった
その間に陳珪達は撤退を済まし、残ったのは張飛と雅だけになった
張飛は疑問に思い警戒しながら雅の元に近寄るとそこには
立ったまま
武器を構えたまま
まるで目の前に敵がいるかの様な眼光のまま
息を引き取った雅の姿が其処には在った
張飛「!!」
その姿は体中が傷つき、背中には何本もの矢が刺さって見るも無残な姿だったが、それでもいくら敵の将であったとしても誇らしく、気高く戦い貫いた将に張飛の目には見えたのだった
張飛は雅に畏敬の念を感じながら手厚く葬った
炎蓮は先行していた葵達に無事合流して起こったことを簡単に伝え歩みを進めていた
その間も香風は気が落ちていて全く話そうともせず自分で歩くこともできない状態だった
その姿を見て
成刀「香風・・・聞いて」
香風「・・・・・」
香風は流石に目上の者からの言葉だったので目線を上げたが言葉を発さなかった
成刀「香風・・・・・私も、この出来事で大切な友を失ったの」
そう言って成刀は羽織っていた狼の毛皮を見せた
成刀「それはとても悲しかった・・・・でも、ポチは・・ポチは私を生き残らせるために命を絶ったことに気づいていたの。だから・・・泣かなかった。ううん、泣けなかった。だから私は前を向いて行こうと思ったの。だから、香風も前を向こう。華雄さんが託してくれたものを大事に、大切にして・・・・」
香風「成刀・・・様。グス・・・でも、かーゆは、雅お母さんは・・・うえーーーーーん」
成刀「うん。泣いてすっきりしよう。今は誰も止めたりしないから」
あとがき??
成刀の話はこれで一応は終わり次回から涼刀の話に行きます
次の話も個人的には中々盛り上がってる内容だと思っています
頑張って書いて行きたいと思いますので楽しみに思われるとうれしいです
ps
艦これのイベントが始まりましたね。自分、秋月と海風を掘るのが精いっぱいでE3に出撃できていません
皆さんはどうでしょうか?
では次回もお楽しみに
説明 | ||
遅くなりました。艦これで遠征やらイベントやらで遅くなってしまいました すみません |
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コメント | ||
華雄まで?!むぅ、この奪還戦で今まで何人犠牲になったやら解らんね。仲間は死ぬし、一刀老け込むし。この悲劇の連鎖は元を辿ればあの姉妹が原因だし この事態が収束した後、どうなるやら。(みぞれ寒天) 華雄が!!…しかし、これでも鈴々はまだ劉備に尽くすのか?陳母娘はそれこそ五臓六腑をぶちまけてほしい位ですが。(mokiti1976-2010) 大往生、見事なり。金剛罰斧はこうして継承されたんですね。雛里は頭が良いから自分なりの解決法を考えたが、親友の悪意で失敗。それでも自らけじめをつけた。鈴々も同様だとしたら、もう義姉の悪意で何かしら苦しみそうな未来しか見えない。武人として雅に敬意を払うのは立派であり、当然のこと。人としての礼節すら忘れた劉備軍の中に在って、その姿は清冽ですね。(Jack Tlam) |
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