英雄伝説〜焔の軌跡〜 リメイク 改訂版
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〜遊撃士協会・グランセル支部〜

 

「ただいま〜って、バダックさん!それにルーク兄とレンも!」

エステル達がギルドに戻ってくるとカルバードに帰ったはずのバダックやエルベ離宮にいるはずのルークとレンがギルドにいた。

「久しぶりだな、エステル。それに皆も。」

「旦那がここにいるって事は……まさか旦那も?」

「ああ。今から俺もお前達のチームに合流し、”結社”について調べる事になった。」

ジンの疑問にバダックは頷いて答えた。

「ホント!?」

「ふふっ、心強い仲間がまた増えたわね。」

「ああ。これであのクーデターの時のメンバーがほぼ全員揃ったな。」

バダックの加入にエステルやシェラザード、アガットは明るい表情をし

「フッ、後はヨシュア君や仮面をつけた謎のシスター……そして麗しの”星杯騎士”の主従を加えれば完璧だね!」

「フフ、そうですね。」

「何気にケビン神父がぬけてねえか?」

「本人が知ったら、どういう反応をするでしょうね?」

「つーか”麗し”って、イオンはああ見えて男だぞ?」

笑顔で叫んだオリビエの言葉にクローゼは微笑みながら頷き、フレンとアーシアはそれぞれ苦笑し、ルークは呆れた表情をしていた。

 

「あ、あのね、レンちゃん……その………ユウナちゃんの事なんだけど……」

レンの顔を見てユウナの事を思い出したティータは言葉を濁し

「うふふ、どうしたのかしら、ティータ?心配しなくてもティータがユウナと友達になったからと言って、レンは別にティータの事を怒ったり、嫌いになったりなんてしないから安心していいわよ。ティータが誰と友達になるのかはティータの自由なんだから、レンはその事について口出しするつもりはないわ。あ、先に言っておくけどレンがユウナと仲直りできないかってのは考えない方がいいわよ?ユウナがレンを捨てて、どこかに行った上、あんな”犯罪者”にまで成り下がった”偽物の妹”、こっちから願い下げだもの。まあ、もしユウナが”結社”を抜けてレンにレンを捨ててどこかに行った事を頭を下げて謝るのだったら、考えなくもないわよ?”一応”レンが”おねえちゃん”だから、”おねえちゃん”として寛大な心は持っておかないとね。」

「レンちゃん……………」

笑顔で答えたレンのユウナに対する厳しい答えを聞いて複雑そうな表情をし

「レンちゃん……血の繋がった家族―――それも妹をそんな風に扱うなんて、ユウナちゃんが知ったら悲しむと思いますよ?ユウナちゃんにとってはレンちゃんが血の繋がったお姉さんなんですから……」

「血が繋がっている事って、そんなに重要?エステルのパパとママは血が繋がっている娘のエステルと差別することなく、レンを二人の娘として大切にしてくれているわ。第一、血が繋がっているという理由だけで、どうして仲良くしなくちゃならないの?お金持ちの家とか、遺産相続とかで血が繋がっている家族同士、醜い争いをしているし、特に王族が王位を狙って一番醜い争いをしているじゃない。”獅子戦役”とかそうだし、公爵さんだって王位継承は絶対にお姫様に渡す気はないって、自分と血が繋がっているお姫様を嫌っているじゃない。現に公爵さんはお姫様を次のリベール国王にしない為にもリシャール大佐のクーデターに加担したんでしょう?」

クローゼの疑問を聞いたレンは不愉快そうな表情で尋ね返した。

 

「そ、それは………」

「………………」

「中々痛い所をついてくるねえ。」

「”獅子戦役”まで知っているなんて、随分博識なのね。」

「というか遺産相続とか、どこで知ったのよ。」

レンの答えを聞いたクローゼは反論を封じられて辛そうな表情をし、金髪の青年は複雑そうな表情で黙り込み、オリビエは疲れた表情をし、アーシアは目を丸くし、エステルは呆れた表情で溜息を吐いた。

「え、えっと………それでお前ら、勝負はどうだったんだ?エルナンの話だと、ヨシュアの行方を知っていそうな奴と模擬戦をしたんだろう?」

重くなった空気を変える為にルークは気まずそうな表情でソフィに視線を向けた。

 

「あ、うん。模擬戦の勝敗自体はあたし達のボロ負けになりかけたけど、この人が加勢したお陰で何とか対抗できかけたから認めてもらえて、話してくれるそうよ。」

「エ、エステル達がたった一人に戦ってボロ負けになりかけ!?」

「あら。アーシアお姉さん達もいたのに負けかけたんだ。」

(この娘……ヴァンをも超えているかもしれんな……)

エステル達がたった一人に挑んで敗北した事にルークは驚き、レンは目を丸くし、ソフィの強さを感じ取っていたバダックは真剣な表情でソフィを見つめていた。

「つーか、今更だがお前、何者なんだ?」

「そ、そう言えば……あたしの事も知っていたようだけど……」

その時青年の正体を怪しがっていたアガットの言葉に青年が自分の事を知っていた事を思い出したエステルは青年を見つめ

「あ!お前は……!」

「フフ、君と会うのは”あの時”以来だね。」

青年を見て何かに気づいて驚いているルークに青年は微笑んだ。

 

「あら、お兄様の知り合いなのかしら?」

「あ〜、知り合いといえば知り合いなんだが……」

「フフ、彼とは縁があって一時的に共に行動をしたことがあるんだよ。――――自己紹介が遅れた。私の名はレイシス・フォン・アウスレーゼ。先のクーデターでは偉大なるアリシア祖母上と大切な妹のクローディアを反逆者達の手から奪還し、見事クーデターを未然に防いでくれた事、感謝する。」

レンの質問に答えに困ったルークが言葉を濁している中青年――――レイシスはルークの代わりに説明をした後自己紹介をした。

「ア、”アウスレーゼ”って……!し、しかも女王様を”祖母”扱いした上クローゼを”妹”扱いしたって事はもしかして以前のクローゼの話にあった……!?」

レイシスの自己紹介に仲間達が驚いている中エステルは口をパクパクさせてレイシスとクローゼを見比べ

「はい、私の兄――――レイシスお兄様です。お帰りなさい、レイシスお兄様。」

驚いているエステル達の様子を苦笑しながら見つめて答えたクローゼはレイシスに微笑み

「ただいま、クローディア。少し見ない内に随分と綺麗になったね。」

対するレイシスも微笑んだ。

「もう、お兄様ったら……最後に会ったのは今年の年初めですからまだそんなに時間は経っていませんよ?」

レイシスの賛辞にクローゼは苦笑しながら答えた。

 

「ふえええええええ〜〜〜っ!?クローゼさんのお兄さんという事はリベールの王子様ですか〜!?」

「こいつは驚いたな……まさかあれ程の使い手の正体がリベールの王子だったとは想像もしていなかったぞ。」

「というかこんな立派な王子がいるのに、何でアリシア女王の跡継ぎ問題の話に名前すら出て来なかったんだ?」

一方レイシスの正体を知ったティータとジンは驚き、フレンは不思議そうな表情をした。

「ふむ、聞いた事がある。リベールの王族に名高きリベールの”剣聖”―――カシウスさんに届く相当な剣の使い手がいると。ただその王族は”庶子”の為、王位継承権は持っていないとの事だが……」

「あら、オリビエさんもレイシス殿下の事をご存知だったのね。」

「全く……旅の演奏家がどこでそんな情報を仕入れてくるのだか。」

オリビエの説明を聞いたアーシアは目を丸くし、シェラザードは意味ありげな笑みを浮かべてオリビエを見つめた。

 

「フフ、まあそういう事だ。アリシア祖母上には無理を言って見聞を広げて将来リベール王族の一人として故郷の役に立つ為に世界を放浪している身だから、私の名は国内でもあまり知られていないんだ。」

「そ、そうなんだ……えっと、それでレイシス王子はどうしてソフィとの模擬戦の時に助太刀してくれたの?というかあたし達とソフィの模擬戦の場所をどうやって知ったの??」

「その前に私の事は”レイシス王子”だなんてそんな堅苦しい呼び方で呼ばなくていいよ。気軽に”レイス”と呼んでくれ。」

「へ?”レイス”って……もしかしてその名前ってクローゼみたいに、王族である事を隠すために名乗っている名前なの?」

「ああ。まあ私はクローディアと違って、それ程名前は知られていないのだが身分を隠して旅をしている間は念の為に偽名を名乗っているのさ。」

「フフ、謙遜し過ぎですよ、お兄様。軍、政府共にお兄様の武勇や知勇は轟いているのですから、お兄様の方が私より有名だと思いますよ?」

自分は無名である事を説明したレイシス―――レイスの話を聞いたクローゼは苦笑しながら指摘した。

 

「ハハ、皆は私の事を持ち上げ過ぎているだけだよ。まあ、そう言う訳だからクローディアのように私の事も気軽に”レイス”と呼んでくれ。」

「……わかったわ。それじゃあさっきの質問に答えてもらってもいいかな、レイスさん。」

「君達に合流する為に王都のギルドに向かったのだが偶然王都から出ていく君達を見かけてね。気になって後をつけて、君達の模擬戦を見守っていたのだが……途中から劣勢と判断して余計なお世話かもしれないと思ったが加勢させてもらったのさ。」

「アハハ……余計なお世話どころかレイスさんが助太刀してくれたお陰でソフィに認めてもらえたから、凄く助かったわよ……って、あたし達に合流って、もしかして……!」

「まさかレイシス王子殿下も我々の”協力員”として協力してくださるのですか?」

レイスの話を聞いて苦笑していたエステルだったがある事に気づくと信じられない表情でレイスを見つめ、エルナンは驚きの表情で訊ねた。

「ああ。故郷で暗躍を始め、クーデターの真の黒幕でもあった『結社』とやらの存在はリベール王家の一員として放っておくわけにはいかない。それに何より私の可愛い妹が性質の悪いストーカーに狙われているらしいからね。兄として妹を守る為にも旅を中断して故郷に戻ってきたんだ。」

「え、えっと……レイシスお兄様、その”ストーカー”というのはもしかして……」

「間違いなくあの変態仮面野郎――――”怪盗紳士”の事だな。」

「フフ、言われてみれば”怪盗紳士”は姫殿下に随分執着していた様子を見せていたから、”ストーカー”といわれてもおかしくないわね。」

「あ〜……確かに家族があんな性質の悪い変態ストーカーにつけ狙われているなんて知ったら、普通ならいても立ってもいられないわね。」

レイスが”ストーカー”扱いしている人物を察したクローゼは冷や汗をかき、アガットは呆れた表情で呟き、アーシアとエステルは苦笑していた。

 

「そういう訳だから私も君達に加勢させてもらいたいのだが……構わないだろうか?」

「勿論大歓迎よ!エルナンさん、いいよね?」

「ええ。あのカシウスさんに届く程の使い手が協力してくださるのは、こちらとしても大助かりです。レイシス殿下も”協力員”として登録しておきますので、これからよろしくお願いします。」

レイスの申し出に明るい表情で頷いたエステルに視線を向けられたエルナンはレイスの加勢が大歓迎である事を答えた。

「フフ、不謹慎ですが”結社”のお陰でレイシスお兄様がリベールに帰って来て下さった事は本当に嬉しいですし、心強いです。お兄様がリベールに帰って来て下さった事をお祖母様も知れば、きっとお喜びになると思います。」

「フッ、まさか己の”美”を手に入れる為の最大の障害である眠れる”獅子”を起こす事になるとは我が好敵手も想像もしていなかっただろうね。」

レイスが正式に仲間になった事にクローゼは微笑み、オリビエは静かな笑みを浮かべて呟いた。

「うふふ、話は纏まったようだし、そろそろレン達が知りたい肝心の話をそっちのお姉さんから話してもらってもいいのじゃないかしら?」

「そうでしたね……”銀閃”、”重剣”、”不動”、”暁”、”不屈”、そしてエステルさんを同時に相手にして互角以上に戦い、あのカシウスさんに届く程の使い手であるレイシス殿下が加勢してようやく互角となる程の使い手である貴女が何故エステルさん達に同行する事になったのか、聞かせてもらっても構いませんよね?」

「勿論、”依頼人”の正体もよ!」

レンに促されたエルナンとエステルはそれぞれソフィを見つめて訊ねた。

「いいよ。まずエステル達を私に守ってって依頼したのはエステル達が予想していた人―――――ヨシュアだよ。」

「!!」

「ええっ!?」

「ヨ、ヨシュアおにいちゃんが!?」

「一体何の為に依頼したんだ?」

ソフィの口から出た人物の名前を聞いたエステルやクローゼ、ティータは驚き、アガットは眉を顰めた。そしてソフィはエステル達に同行する真の理由――――バルバトスが現れた際、確実に葬る為にエステル達に同行する事をヨシュアに依頼された事を説明した。

 

「あの野郎―――バルバトスが俺達の前に再び現れるだと……?」

説明を聞き終えたアガットは表情を厳しくし

「確かエルモ温泉でやり合ったそうね?」

シェラザードはエステル達に視線を向けて尋ねた。

「うん……でも、たった一撃であたし達は無力化されて、あいつはあたし達を”雑魚”扱いしてその場から去って行ったの………」

「まさに”狂気”を身に宿す……彼を言い表すなら、それしか当てはまりません。」

「―――仮にバルバトス・ゲーティアがエステルさん達の前に再び現れると仮定して……一体何故貴女はそこまでして、バルバトスを討つつもりなのですか?何か深い事情があるのですか?」

エステルやクローゼが不安そうな表情をしている中、エルナンは真剣な表情でソフィに視線を向けて尋ねた。

「……私の大切な家族や故郷を守る為に”エフィネア”に帰る前にできれば排除したいと思っているの。」

「”エフィネア”??」

「もしかして貴女の祖国の名前かしら?」

「フム……しかしそうなると少々おかしい話だね。”エフィネア”なんて名前の国は少なくてもこの西ゼムリア大陸には存在しないよ?」

「……私は東ゼムリア大陸にも足を延ばした事があるが、そのような国名は耳にしたことはないが……」

ソフィの口から出た謎の単語にエステルは首を傾げ、アーシアは質問し、オリビエとレイスは考え込んでいた。

 

「え、えとえと。後気になっている事があるんです。おねえちゃんを治す時にソフィさん、オーブメントも使わず魔法(アーツ)を使っていましたよね?しかも聞いた事もないようなアーツを。あれって何なんですか?」

「確か……”キュア”、だったな?」

(”キュア”って……お、おいおい……!?それって譜術じゃねえか!)

(この娘、まさか………)

ティータとジンの質問を聞き、心当たりがあるルークは驚き、バダックは真剣な表情でソフィを見つめた。

「あれは魔法(アーツ)じゃないよ。再生術だよ。」

「へっ!?さ、再生術??」

「クルツの”方術”と似たようなものか?」

ソフィの答えを聞いたエステルは驚き、アガットは眉を顰めて尋ねた。

 

そしてソフィは自分が異世界の者である事やバルバトスと戦う事になった経緯を説明した。

 

「い、異世界って………」

「レン達がいるこの場所とは違う時間軸で様々な事が無限に起こっている”並行世界”。まさかそんな夢物語のようなところから来るなんて、普通に考えたら誰も信じないわね。」

「で、でもでも……実際ソフィさんが使っていた再生術?だったよね?それを使っている事を考えるとありえるのかも……」

ソフィが自分達が知る異なる世界の者である事に仲間達が驚きのあまり絶句している中、エステルは口をパクパクさせ、レンとティータは興味深そうな様子でソフィを見つめ

(あ、ありえねえ!他にも異世界があるなんて!?)

(だが、俺達の件を考えるとありえない話ではないな……)

ルークとバダックはそれぞれの想いを抱えてソフィを見つめていた。

「あ、あのソフィさん。さっきの戦闘で光みたいなのを出したり色々な武器を出して戦っていましたけど、もしかしてあれもソフィさんの世界の武器なんですか?」

その時ティータが質問を続けた。

「……あれは私自身に備わっている”能力”だから武器じゃないよ。」

「へ?ソフィ自身に備わっている”能力”??」

「フム……もしかして先程のイオン神父―――”守護騎士(ドミニオン)”が持つという”異能”とやらに酷似しているものなのかな?」

ソフィの答えにエステルが首を傾げている中、オリビエは自身の推測をソフィに訊ねた。

「その”異能”がどんなものなのかはわからないけど、私は”人間じゃないから”、普通の人間には備わっていない力があるの。」

「ハアッ!?」

「”人間ではない”……それは一体どういう意味なのでしょうか?」

そしてソフィは自分が人間ではなくかつてソフィの星を滅ぼした特殊な生命体を倒す為に作られた戦闘用ヒューマノイド――――”プロトス1(ヘイト)”である事を説明した。

 

 

説明
第47話
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