英雄伝説〜焔の軌跡〜 リメイク 改訂版 |
翌朝、エステル達が待ち合わせ場所である発着場に向かうと王室所属の巡洋艦、『白き翼』―――『アルセイユ』が降りてきた。
その後エステル達はモルガン将軍から作戦内容の詳しい説明を受け、時間が来ると『アルセイユ』のブリッジにて竜捕獲作戦の行く末を見守っていた。
作戦は竜を眠らせ、ヴァレリア湖に落とす所まで上手く行っていたが、捕獲しようとしたその時竜の額についている『ゴスペル』が妖しく輝くと共に竜は目覚め、飛び去って行った。
高速で飛び去る竜に喰らいついて行く『アルセイユ』だったが、竜は高度を落として雲の中に入り、やがて『アルセイユ』は竜を見失い、作戦は無念の失敗となり、『アルセイユ』はボース市の空港に着陸し、エステル達は艦内の会議室で今後の事を話し合い始めた。
〜アルセイユ・会議室〜
「竜が逃げ込んだのは霧降り峡谷の北西部……空賊アジトがあった場所より奥にある霧の深い難所です。」
「つまり、飛行船を使った捜索は難しいということですね?」
ユリアの報告を聞いたクローゼは真剣な表情で尋ねた。
「残念ながら……。地上から捜索部隊を派遣するしかないでしょう。」
「ちょ、ちょっと待って!大勢の兵士を差し向けたらまた竜に逃げられちゃうわよ!」
「そうね……。ここは少人数で捜索して竜のスキを突いた方がいいわ。」
「うむ。下手をすればあの場にはいなかった”剣帝”に気付かれ、”ゴスペル”によって別の場所に動かされるかもしれん。」
モルガン将軍の提案を聞いたエステル、シェラザード、バダックはそれぞれ意見を口にした。
「つまり、この先はおぬしらに任せろということか?」
「難所の捜索は、軍人よりも我々の方が慣れていますからな。適材適所というやつでしょう。」
「ああ。ここは少数精鋭で行くべきだ。」
「ええ。軍人は隊列等の関係でどうしても足並みが遅くなってしまうけど、少数で向かう私達なら山道や難所の探索に向いているわ。」
モルガン将軍の言葉にジン、フレン、アーシアはそれぞれ頷いていたが
「――となると残る問題は竜を何とかする方法ね。」
「そういやまだ、そっちの問題が残っていたな……」
冷静な様子のレンが呟いた言葉を聞いたルークは疲れた表情で溜息を吐いた。
「もし、見つけた時はどうするの?倒すの?」
「それにおぬしらに捜索するアテはあるのか?たしか、峡谷の北西部には道らしき道もなかったはず。行き当たりばったりでは何日かけても終わりはせんぞ。」
「そ、それは……」
そしてソフィとモルガン将軍の問いかけに反論できないエステルは口ごもった。するとその時
「……そいつは任せとけ。」
「おぬしは……」
「アガット、ティータ!?」
会議室にアガットとティータが入って来た。
「よお、邪魔するぜ。」
「えとえと、失礼します。」
「どうしてここに……そ、それよりもアガットはもう動いて大丈夫なの!?」
昨日の戦いで負ったアガットの傷を思い出したエステルは既に平気な様子でいるアガットに驚いて尋ねた。
「怪我の方は心配ねぇ。ただのカスリ傷だからな。」
「……ティータ、ほんと?」
アガットの答えを聞いたエステルは信じられず、ジト目でティータに尋ねた。
「う、うん……。アガットさん、無理はしてないと思うよ。」
「相変わらず体力”だけ”は一人前ねえ?」
「ああん?」
ティータの話を聞いて自分を見つめて呟いたレンをアガットは目を細めて睨み返した。
「フム。任せろと言っておったが、作戦の顛末は聞いているのか?」
「ああ、ルグラン爺さんから大まかなことは聞いてきた。竜は霧降り峡谷の北西部に消えたそうだな?」
「うん、そうだけど……」
「霧降り峡谷について詳しいヤツを知っている。そいつに頼めば、竜の隠れた峡谷の北西部に渡れるだろう。」
「ほう……」
「さすがだな。」
「そ、それって誰なの?」
アガットの話を聞いたモルガン将軍とバダックは感心し、エステルは尋ねた。
「峡谷の東側に住んでいるウェムラーってオッサンだ。昔、道もない北西部に渡ったことがあるらしい。」
「なるほど。地元の人なら、あの峡谷の事をよく知っているだろうね。」
「フッ、さすが遊撃士。日頃の地道な情報収集が実を結んだということだね。」
(警察にもそういう部署があれば、色々と解決できる部分もあるんだけどな……)
「………………………………。しかし、実際に竜を見つけたらどうするつもりだ?おぬしらだけで退治できるような生易しい相手ではないぞ。」
アガットの説明を聞いたレイスとオリビエは感心し、フレンは物思いにふけ、目を伏せて考え込んでいたモルガン将軍は静かに問いかけた。
「竜の額には”ゴスペル”が仕込まれていたそうだな?まずはそいつを何とかするのが先決だろう。」
「ふむ……」
「考えてみれば、あれのせいで竜が暴れたかもしれないのよね。今までにも”ゴスペル”は色々な異常現象を起こしているし。」
「”ゴスペル”を無力化できれば竜の暴走を止められるという事か。ふむ。理屈としては合っている……」
「要するに”ゴスペル”の機能を壊せばいいって事か。」
「―――問題はその”ゴスペル”をどうやって無力化するか、ね。」
「さすがに力技で破壊できる代物ではあるまいしな。」
「それにあんな大きな竜の額だけを狙って攻撃するのは難しいと思うよ。」
アガットの話にモルガン将軍やシェラザード、ジン、ルークが納得している中、アーシアとバダック、ソフィは問題点を指摘した。
「”ゴスペル”の無力化というと、ケビン殿が使った方法を思い出すな。あの時はアーティファクトを”ゴスペル”に叩き付けることでショートさせていたが……」
「さすがに”アーティファクト”を使う訳にもいかないし、第一七耀教会……というか”星杯騎士団”がそんな事、許さないでしょうね。」
ユリアが呟いた提案にレンが否定したその時
「そんな悠長なマネはしないさ。フレームごと”ゴスペル”を破壊するだけだ。」
「なに……!?」
「ちょ、ちょっと待って!”ゴスペル”を壊すってそんなこと簡単にできるの?たしか物凄く硬いフレームで包まれてるんじゃなかったっけ?」
アガットがその場にいる全員を驚かせる提案を口にした。
「それについてもなんとか目処が付いた。……コイツだ。」
驚いているエステル達にアガットは何かの装置が取り付けられた重剣を見せた。
「それって……」
「根元に何かのユニットがはめ込まれているみたいね。」
「今朝、ラッセルの爺さんが定期便で送ってきた新発明……。”ゴスペル”のフレームを破壊するためのユニットだ。」
「ええっ!?」
アガットの話を聞いたエステル達は驚いた。
「ふむ……。一体どういう仕組みなんだい?」
「えとですね……。このユニットが、フレーム素材のみ崩壊させられる波長の高振動をブレード部分に与えるらしいです。振動が原因で2、3回使ったら壊れちゃうそうなんですけど……。うまく刀身を食い込ませられれば”ゴスペル”を破壊できるそーです。」
「よ、よく分からないけどメチャメチャ凄そうな発明かも。」
「うふふ、さすがはラッセル博士ね。」
レイスの質問に答えたティータの説明にエステルは表情を明るくし、レンは感心していた。
「さっきティータに付けてもらったばかりだが、どうやら問題なく動きそうだ。あとは実際に竜を捜しだして額に喰らわせてやるだけだが……。どうだい、将軍さんよ?」
「まったく……。そこまで用意されたのでは認めてやるしかないではないか。」
「それじゃあ……」
「俺たちに任せていいんだな。」
「うむ……。やれるだけはやってみるがいい。ただし念のため、飛行艦隊を峡谷の周りに展開しておく。おぬしらが竜を逃がした時、即座に対応できるようにな。」
「ヘッ、上等だ。ムダ弾を撃たせないようせいぜい気張らせてもらうぜ。」
そして竜を見つけるメンバーを厳選し、残りのメンバーは先にギルドに戻らせたエステル達はアルセイユから降り、空港の出入り口に向かい、空港から出ようとしたその時
「フン、ようやく来たか。たったそれだけの戦力で竜を無力化できると本気で思っているのか?」
突如何者かがエステル達に声をかけてきた。
「へ――――」
突如声をかけられたエステルが声がした方向に視線を向けるとそこにはジューダスがいた。
「あっ!」
「ふえっ!?」
「テメェは……」
「あの時廃坑で”剣帝”を一人で圧していた奴……!」
「ソフィの話にあったもう一人の異世界から来た人―――ジューダスね。一体私達に何の用かしら?」
ジューダスの登場にエステルやティータは驚き、アガットとルークは真剣な表情でジューダスを見つめ、アーシアは動じずジューダスに視線を向けて尋ねた。
「というか何であたし達が竜を無力化しに行く事を知っているのよ!?」
「フン、お前達があの白き飛行船に乗り、竜の捕獲作戦を観察する事は昨夜の内に知っている。そして空港から出てきた貴様らの仲間達の会話から推測すれば、自ずと答えは出てくる。」
エステルに睨まれたジューダスは鼻を鳴らして答え
「ハアッ!?って事はお前、昨夜ギルドの外で俺達の会話を聞いていたのかよ!?」
「うわっ、それって”ストーカー”って奴じゃないの?よく考えてみたら昨日の廃坑での時もあたし達の後をつけていたみたいだし。」
昨夜のギルドでの会話をジューダスが外で聞いていたことに気づいたルークは驚き、エステルはジト目でジューダスを見つめた。
「誰がストーカーだ!?」
エステルの指摘にジューダスは怒鳴った。
(いや、実際その通りじゃないですか。マリアンの事と言い、最近の坊ちゃんがやっている事はまさに”ストーカー”ですよ?)
(お前は黙ってろ、シャル!)
「???」
シャルティエの声を聞いたジューダスはシャルティエに視線を向けて睨み、聞き覚えのない声が聞こえたエステルは周囲を見回して首を傾げていた。
「それで?何の為に俺達に接触してきたんだ?」
「フン、知れた事。―――竜の無力化に僕も手を貸してやる。」
ルークの質問にジューダスは鼻を鳴らした後驚くべき事を口にし
「へ!?」
「ハアッ!?」
「何だとっ!?」
「ふえええっ!?」
「……理由を聞いてもいいかしら?」
ジューダスの口から出た加勢の申し出にエステル達が驚いている中、目を丸くしたアーシアは尋ねた。
「いつまでもこのボース地方にあの竜が居座っているのは、僕にとっても都合が悪いから手を貸してやるだけだ。」
アーシアの疑問に対してジューダスは答え
「それってもしかしてマリアンさんが関係しているの?崩壊したマーケットでのマリアンさんを凄く心配していた様子やレーヴェと戦った時の様子からして、そうとしか考えられないんだけど。」
「フン、お前達の好きに解釈しろ。」
(というか何気に的確な答えをついていますねえ、あのエステルって娘。坊ちゃんが誰かに手を貸す理由があるとしたらスタンやカイル関係か、マリアン関係ですし。)
エステルの質問に対し、ジューダスは答えを誤魔化していたが、シャルティエは的確な答えをついているエステルに苦笑していた。
「……………」
(おっとつい、口が滑ってしまいました。だからそんなに睨まないで下さいよ〜。)
そしてジューダスにギロリと睨まれたシャルティエは慌てた様子で答えたが
「………ねえ。貴方以外に他に誰かいるの?さっきから声が聞こえてくるのだけど。っていうか、やっぱりあたし達に同行する理由ってマリアンさんが関係しているようね。さっきから聞こえてくる声がそう言ってるし。」
(ええっ!?)
「何!?」
周囲を見回した後首を傾げたエステルの質問を聞いて驚き、非常に限られた人物にしか聞こえないはずのシャルティエの声がエステルに聞こえている事に気づいたジューダスは目を見開いてエステルを見つめた。
「お、おねえちゃん?」
「一体何を言ってるんだ?」
「声なんて聞こえねえぞ?」
「他に誰かいるのかしら?」
一方ティータやアガット、ルーク、アーシアは戸惑い
「………お前。まさかシャル―――この剣の声が聞こえるのか?」
(あのー……本当に僕の声が聞こえるんですかー?僕の名前はピエール・ド・シャルティエです。聞こえたら返事してください。)
ジューダスはシャルティエを鞘から抜いてエステルに見せて尋ねた。
「また聞こえた!名前はピエール・ド・シャルティエって!って………………………え”。け、剣が喋った??」
(うわっ。その娘だけ本当に僕の声が聞こえているみたいですよ、坊ちゃん?)
「チッ、スタンやカイルと言い、何故こんな能天気な奴等に”ソーディアン”を扱う”素質”があるんだ?」
シャルティエを見て口をパクパクさせるエステルの様子にジューダスは舌打ちをした。
「むっかー!誰が能天気よ!?それよりその剣の事、説明してよっ!!でないと例え頭を下げて頼まれても連れていかないわよ!?」
(坊ちゃん、説明しておいた方がいいんじゃないですか?)
「フン、シャルに免じて特別に説明してやる。一度しか言わんからよく聞いていろ。」
そしてジューダスはエステル達に『ソーディアン』の事を軽く説明した。
「い、意志ある剣って……」
「な、何だそりゃ!?そんな剣、ありなのか!?」
「し、信じられない………(話を聞く限り、どう考えても”古代遺物(アーティファクト)”クラスの武器じゃない!?それもかなり高位の……!ソフィの世界といい、異世界の技術は一体どれだけ進んでいるのかしら?)」
『ソーディアン』の説明を聞いたエステルは口をパクパクさせ、ルークとアーシアは驚きの表情でシャルティエを見つめ
「し、しかも嵌められてあるそのコアが意志を持っているどころか、コア自身が自ら起動して”昌術”っていう魔法(アーツ)みたいな事までできるなんて……う〜、どんな構造になっているのか凄く気になるよ〜。」
「ったく、やっぱり爺さんの孫だけはあるぜ……」
仲間達がそれぞれ驚いている中興味深そうな様子でシャルティエを見つめるティータの様子を見たアガットは呆れた表情で溜息を吐いた。
「フン、これで納得したな?ならばさっさと行くぞ。時間を無駄にした。」
そしてジューダスはシャルティエを鞘に収めてエステル達に背を向けて進もうとしたが
「ちょっと待ちなさいよ!マリアンさんとの関係をまだ聞いていないわよ!?」
「………何故それをお前達に教える必要がある?」
エステルの制止の声を聞き、振り向いてエステルを睨んだ。
「一緒に行動するからにはあんたの正体をハッキリさせておきたいし、遊撃士としてメイベル市長からも頼まれているの!記憶喪失のマリアンさんの手掛かりを知る貴方に話を聞いてきて欲しいって!後できれば、貴方と直に会って話をしてみたいって事も言ってたわ!」
(ええっ!?マリアンが記憶喪失!?)
「何だと………?おい、それは一体どういう事だ。」
眉を顰めているジューダスにエステル達はメイベル市長から聞いたマリアンの事情を説明した。
「……………………………」
(坊ちゃん………そ、その、元気出してくださいよ!もしかしたら既に記憶が蘇っているかもしれませんよ!?あの時のマリアン、坊ちゃんのもう一つの名前を知っていたんですから!)
マリアンの事情を聞き終えて黙って考え込んでいるジューダスの様子を見たシャルティエは心配そうな表情で声をかけ
「ねえねえ、もしかしてマリアンさんと恋人同士なの?レーヴェとの戦いの時だって、マリアンさんを傷つけられたから怒っていたんでしょう?」
エステルは自分が気になっていた事をシャルティエに視線を向けて尋ねた。
(う〜ん、坊ちゃんとマリアンが恋人同士だったら本当によかったんですがねえ。坊ちゃんとマリアンの関係には色々と複雑な事情がありまして。まあ、あの銀髪の剣士と戦った理由がマリアンを傷つけられたからという答えはあっていますけど。)
「あ、やっぱり。恋人同士じゃないって事は、もしかしてジューダスはマリアンさんに片思いしているのかしら??」
(え、えーと。それを僕の口から言うのはちょっと……)
自分の説明を聞いてある事を推測したエステルに尋ねられたシャルティエが答えを濁したその時
「これ以上ふざけた事を言うと叩き割るぞ!?シャル!」
ジューダスはシャルティエを睨んで怒鳴った!
(アハハ……どうやらあの様子だと図星のようね。)
(フフ、片思いの人の為だけに竜に挑むなんて、素敵な話よね。)
(は、はい。……まるで何かの御伽みたいで素敵です。)
(というか剣と喋る男とか一歩間違ったら、変人じゃねえのか?)
(お、おい。本人に聞こえるって!)
ジューダスがマリアンの為だけに竜を何とかしようとする自分達に同行する事を察して口元をニヤニヤさせるエステルや静かな笑みを浮かべるアーシアと共にティータは目を輝かせてジューダスを見つめ、アガットの小声の言葉を聞いたルークは冷や汗をかいた。
「――――貴様ら全員、僕に斬り殺されたいようだな……!?」
「アハハ、ごめんごめん。それで?マリアンさんとの関係を教えてよ。」
エステル達の小声での会話が聞こえていたジューダスは殺気を纏ってエステル達を睨み、睨まれたエステルは苦笑した後すぐに気を取り直して真剣な表情で尋ね
「…………………マリアンは昔僕の家でメイド長として働き、僕の世話役も兼ねていた。―――それだけだ。」
「メイドがいたって事はもしかしてお前って、貴族か金持ちの家の出身か?」
ジューダスの説明を聞いてジューダスが上流階級か富豪の出身である事に気付いたルークはジューダスを見つめて尋ねた。
「フン、貴族ではないが一般人と比べると裕福な生活を送っていた事は否定しない。―――そんな事よりいい加減決めたのか?僕を連れて行くか、行かないのか。もし連れて行かないのなら僕は僕のやり方で竜を無力化するぞ。」
「う、う〜ん。あたしはいいと思うけど……ルーク兄、アガット、アーシアさん。どうする?」
ジューダスに視線を向けられ、答えが出せないエステルはルークとアガットに視線を向け
「俺はいいと思うぜ。竜と戦うんだから、戦力は一人でも多い方がいいと思うし、”剣帝”と一人で戦える腕前ならむしろ俺達の方が頼む側だと思うぜ?」
「私も構わないわ。……というかむしろ連れて行って勝手な行動をしないか見張った方がいいと思うわ。」
「――――俺からは条件がある。」
ルークとアーシアが賛成している中、アガットだけは明確な返事をせず目を細めてジューダスを睨んだ。
「条件だと?」
「ああ。俺達と行動している間は俺達の指示に従って貰う事だ。こっちの指示も聞かずに勝手に動かれたら俺達が迷惑なんだよ。いくらテメェが凄腕だろうと、これだけは守ってもらうぜ。でないと、せっかく居場所がわかった竜がまた逃げちまうかもしれねえしな。」
「フン。仲間達の制止の声も聞かずに勝手に動いた上、力量の差もわからずに挑んで叩きのめされたお前にだけは言われたくないな。」
アガットに睨まれたジューダスは鼻を鳴らして嘲笑し
「こ、このガキ!喧嘩、売ってんのか!?」
ジューダスに嘲笑されたアガットはジューダスを睨んだ。
「ア、アガットさん!落ち着いて下さいよ〜。」
「全くもう……アガットがもう一人増えた気分だわ。」
ジューダスとアガットの様子を見たエステルが呆れた表情で溜息を吐いたその時
「「俺(僕)をコイツ(こんな奴)と一緒にするな!!」」
アガットとジューダスが同時にエステルを睨んで怒鳴った!
(息ピッタリじゃねえか。)
(フフ……)
その様子を見守っていたルークは冷や汗をかき、アーシアは微笑ましそうに見つめていた。
こうしてジューダスを仲間に加えたエステル達は霧降り峡谷に向かい、アガットが尋ねた人物によって、通れなかった道が通れるようになり、探索を開始した………
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