外史を駆ける鬼・春恋*乙女編 第02話
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外史を駆ける鬼・春恋*乙女編 第02話「演説」

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「昌人!!またお前はワシが寄越した家庭教師を帰らせたそうだな」

「当然です。偏った経営学など不要です。何が『社員は道具として扱え』ですか。社員あっての会社ではありませんか。昔の偉い人も言っていますよ。『人は城、人は石垣、人は堀、情けは見方、あだは敵』ってね。社員を愛さない経営はいつか瓦解を起こしますよ」

「ふん。ならば聞くが、今現在我が社が繁栄を止めていないのは何故だ」

「それは貴方の力ではありませんよ」

「………何?」

「貴方に惹かれて人が集まってくるのでは無く、代々続いた”先代達の功績のおかげ”で人が集まってくるに過ぎないだけです」

若者の言葉に男は喚き散らし、若者は気にせずにその場を立ち去る。立ち去る時に、男に聞こえずに小さく呟く。

「いずれ分かることになりますよ。貴方に捨てられた人たちの悲痛な叫びがね」

 

 

フランチェスカ学園の入学式が始まり、校長の有難い演説から始まり学校関係者それぞれの祝いの言葉と続き、最後に格生徒代表の演説に続き現在は生徒会長の不動如耶の言葉で、次は風紀委員の演説である。

「なんだい一刀君。緊張しているのか?」

体が強張っている一刀の緊張をほぐす為に、昌人が話しかける。

「そりゃ……全校生徒に加え保護者も参道していて、その保護者も財界の人物も数人いるって話じゃないですか。緊張もしますよ……」

「別に気構えることもあるまい。向こうにいる人物より関羽や張飛の様な伝説の将の前で演説する方がよっぽどのプレッシャーだと思うけどな」

「……いや、まぁ……そうですけど」

一刀は外史での仲間のことを思い出す。

完璧主義で皆のお手本の愛紗、いつも元気一杯な鈴々、抜け目の無い星、完璧な様で少し抜けている朱里、負けず嫌いな翠、皆の母親紫苑。

思い浮かぶ仲間の顔を思い出すと、皆歴史にその名を残す優秀な将なのだ。

彼はよく自分自身が彼女らを率いることが出来たものかと感慨深くなると、そう考えればホールに集まった人々に対して、それほど緊張をすることもないかと思い始めた。

「ほら、如耶ちゃんの演説は終わったぞ。次は一刀君の番だ」

司会の教師より一刀の名前が呼ばれると、ホール内中には拍手が響き渡り、一刀の登場を今か今かと待ちわびる。

「気にせずに行ってこい。仮に失敗しても私が取り戻してやるから」

昌人は頼もしい言葉と共に一刀の背中を張ると、少し強すぎたのか彼は痛みで背中を反る。やがて一間を置いて、一刀は舞台裏から舞台への小さな階段を登り、舞台上にその姿を現す。

ホールに埋まる人々は一斉に一刀に視線を向けて、彼を照らすライトの明かりに一刀は一瞬目を細めるが、そんなそぶりは見せずに中央の演説用の机に歩を進め、止まると同時に正面に体を向けて改めてホールの端から端を見渡す。

この様な大規模ホールを高校の校舎内で持ち、席が完全に埋まりきる規模の入学式を迎える高校はそれほど無いであろうが、満席といってもせいぜい千人程である。

50万を越す兵の前で高らかに演説していた頃に比べれば、それも少ない人数だと一刀は感じてきて、彼は礼に習い一つお辞儀をすると胸元より封筒を取り出し置かれたマイクの前で答辞を読み始める。

「新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。皆さんのご入学に際して、今この場に居合わせたことを嬉しく思います。冬の雪が解けて、春の花が咲き誇るときには、皆さんは新たなる思いを胸に、この場に臨んだことでしょうg――」

一刀は淡々と答辞と読み上げている間も、目の前の生徒や保護者達の雰囲気の視線を気にしていたが、どうも周りの集中力が切れ掛かっている様な気がしていた。

各学校関係者に続いて、各生徒役員の代表者の挨拶。彼らはついこの間まで中学生の子供であり、伝統としきたりの堅苦しさも相まって、その雰囲気を慣れている子供などごく一部であろう。

なんとか眠らないように目を擦る新入生の姿も窺え、一刀は突然答辞の紙を閉じて、改めて新入生に向き直る。

マイクも使わずにお腹に力を込めて話し出した。

「新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。私は生徒会庶務、北郷一刀です。今日より皆さんが学びの扉開き、共に学ばんとすることを嬉しく思います。そこで皆さんに問いかけたいと思います。何故皆さんはこの学校に入ってきたのでしょうか。自分の意思でしょうか。親の薦めでしょうか。それとも『フランチェスカ学園卒業』という名の肩書きでしょうか。この学園には優秀な教員がいます。設備もあります。これは受験戦争に乗り切った貴方方の特権です。十分に有効活用して下さい。なればこそ貴方方は何をこの学園で学びますか?高校教育など人生を生きていく上であっても無くとも必要の無いものです。利用方法など精々大学受験に使うための基礎知識です。なら何故この学園に入りましたか。良い大学に入る為、高校大会で優勝する為、それはそれで結構なことです。しかし皆さん忘れてはなりません。”十代の高校生活は一度しか無い”ことを。時間は金で買えません。皆さんがこれから行なうべきことは、お金で買えない”価値”を、これから自分自身の手で創り出すことです。やがてその”価値”がこれから続く人生の大きな糧となるはずです。ですから皆さん。何ごとも”頭”で学ぶのでは無く、”心”で学んで下さい。懸命に覚えた英単語も、学ぶことを怠れば時間の経過と共に徐々に忘れていくものですが、心に刻んだことは、決して消えない将来の糧となるはずです。どうか、学生生活を謳歌して下さい。以上で答辞を終わります。生徒会庶務、北郷一刀」

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一刀はまた一つ頭を下げると、一斉に拍手が巻き起こる。その拍手の中には、後ろで控えている保護者の面々からも拍手が沸き起こっていた。

やがて舞台裏の先程出た反対側に掃けると、そこで待っていたかのように如耶が軽く拍手をしながら話しかけてくる。

「北郷殿、なかなかの演説でござった。『頭で学ぶのでは無く、心で学ぶ』、確かにその通りでござる。それがしも今回学ぶべきことも多ござった」

「ははは、どうも。………でも、折角考えた答辞の言葉も無駄になりましたけどね」

そう言いながら、一刀は先程胸元にしまっていた答辞の封筒を取り出した。

「書面で書かれたありきたりな言葉より、本心の言葉の方が、遥かによいはずでござる」

「……そう言って頂ければありがたいですよ」

一刀はまだ緊張がほぐれていないのか、顔を強張らせながらも笑顔で笑って見せて、如耶は突然少し頬を染めて固まってしまう。

「………?主将、どうかしましたか?」

「――え?いや、なんでもないでござる。なんでも。そ、そろそろ重田殿の演説が始まる頃でござろうな。しっかりと聞こうでござろうではないか、な!」

如耶の少し慌てた行動に一刀は首を傾げるも、続く昌人の演説に一刀は裏から舞台に視線を移す。

「新入生の皆様、始めまして。そしてご入学おめでとうございます。私は風紀委員長、重田昌人です。これから私も新入生の皆様にお祝いの言葉を送ろうとしたのですが、生憎、本日私が言おうと思っていたことは、先程の北郷くんに全て喋られてしまいましたので風紀委員からの確認事項を報告させていただきます」

言葉が終わると突然ホールの照明は落とされて、照明は舞台にのみ点灯すると、舞台には巨大なスクリーンが登場し、そこには白い画面が映し出されると、新しき校則の文字が出てくる。

「今年度より学園が始まるにあたり、幾つかの新校則の発足と既存校則の禁止の一礼を報告させていただきます」

昌人は視覚できる赤外線ポインターを使い説明を始める。

「まず学園のアルバイト制の緩和。現在学園のアルバイト規制は黎命館を含む”学校施設”でのアルバイトは許可されていましたが、これからは学園外でのアルバイトを許可します。しかし、こちらの用意した『フランチェスカ求人』に記載しているアルバイト先のみとします。詳しいことは新しく配られる生徒手帳にも記載していますので、後ほど配られ次第確認して下さい。なお、その規則を破った学生がいれば、温情で停学、最悪退学処分となりますのでご注意を。保護者の方も重々気をつけて下さい」

アルバイト制の緩和にて一部の学生の顔は綻んでしまうが、直ぐに顔を引き締め直される。

「次に、学園内の携帯電話持込ですが、これを少し制限します。今後は、”校舎内への持ち込み”を禁止します。まお、持ち込みを見つけ次第、その場で没収とし、直ぐに内蔵のSIMカードを抜かせていただきます。そして反省の色が見られないようであれば、携帯会社との契約を打ち切らせていただいた後に、卒業までは携帯を使用できないとお考えください。特別な事情がある方は、風紀委員までご足労を」

それから昌人の報告諸々が終わり入学式は幕を閉じたのだが、外に出ると生徒達の阿鼻叫喚の声が節々から聞こえる。

今回の新しい学校の校則の感想である。携帯の使用は寮に限られるなど様々な厳しい校則を出されたが、しかし学園外での遊びに行ける店の規制が緩和されるなどと良い部分もあったのだ。

 

「ええやんええやん。重田さんもなかなか粋な計らいしよるで」

所変わり、ここは2年U組・カモミール。フランチェスカ学園はクラスを「いち」や「ワン」、「ファースト」などと呼ばずに、花の名で呼ぶ風習がある。ちなみにカモミールの花言葉は、『親交』。

そしてそのクラスの中で、エセ関西弁で騒ぐ人物は、一刀の悪友でもある及川祐だ。

「そうか?確かに色々緩和された法則もあるけども、厳しくなったところもあるんじゃないか。校舎への携帯の持ち込み禁止とか」

「そないな細かいことは気にせえへんて。それよりワイとしては、バイトが出来ることが何より嬉しいわ」

「……なんでバイトがそんなに重要なんだ?」

「だって考えてみてみい。一般家庭の子供の小遣いなんかたかが知れとる。せやけど、バイトの校則解禁によって、ワイにも自由に資金を得られる機会が出来るやさかい、こんな美味しい話はないで」

「でも、あれも成績が平均点以上の者だけだろ。お前は不思議なことに成績良いから大丈夫だろうけど、例え平均点を越えていても、極端に成績が下がれば直ぐにバイト指し止めじゃないか?」

「大丈夫。ワイ効率のええほうやから、勉強もバイトも効率よう出来るわ」

「……ほんとに暢気な奴だな」

「それに……」

「?」

「何より、バイト先で可憐なお姉さまと恋の予感もあるかもしれんやないか!!」

及川は声高らかに宣言しながら、何かを掴むガッツポーズで拳を天井に突き立てる。

「………ホントに暢気な奴だな。この前お前がデートとか言っていた女の子はどうした?」

一刀のその一言で、及川の世界が止まり、彼は拳を上げたまま固まった。

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彼はそんな及川を放っておきながら、鞄より水筒を取り出し、コップにお茶を注ぎ飲みだす。

水筒の中身は緑茶であり、今朝愛紗と合流したときに、彼女が持たせてくれたものだ。

「うん。やっぱり愛紗のお茶は美味い」

愛紗がこちらの世界に来てより、彼女は料理と、特にハマッたことがお茶を入れる事らしい。

一刀に美味しいものを提供したいという思いが重なり、クラスメイトの結衣佳に料理を、風紀館にいるときには昌人にお茶の入れ方を学んだらしい。

「ふぅ、落ち着く……」

冷たいが心温まるお茶を味わいながら、及川は一刀のお茶を奪い取り飲み干した。

「てめ、何するんだよ!」

そう言いながら一刀は及川を殴り飛ばすが、及川は膝からヨヨヨと崩れながら一刀に訴える。

「別にええやないか………幸せを少し分けてくれたかて。そらええよなぁ、あんさんには既に心に決めた((女性|ひと))がおるんやさかい」

「なんだよ。お前も見つければいいじゃないか」

「そない簡単に見つかるわけないやろ!なんやねん、戦場にでも恋は育むことが出来るって。メタル○ア・ソリ○ドやないんやで!!」

しかし自身がそうやって最愛の女性を見つけたのだから、一刀にはそれ以上の助言など出来なかった。

「………はぁ、愛紗のお茶は美味しい」

彼は奪われたコップを取り戻すわけでもなく、水筒の内蓋を開けてそのまま直接お茶を飲む。

「ちくしょおおぉぉぉぉっ!!リア充爆ぜろぉぉぉぉぉっ!!!!」

 

説明
この物語は一刀と愛紗が学園生活を送っていればという妄想の元に成り立っています。
うp主は春恋をプレイ済みですが、出ているキャラの性格が違う。口調が違うなどと言った点がありましたら、気を使わずにコメント打ってください。

それでは、まじかるー
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恋姫†無双 春恋*乙女 一刀 愛紗 昌人 如耶 及川 外史を駆ける鬼シリーズ 

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