英雄伝説〜焔の軌跡〜 リメイク 改訂版 |
発着所に到着し、アルセイユに乗り込もうとしたエステル達だったがオリビエが乗り込んでいない事に首を傾げ、オリビエに尋ねると何とオリビエは帰国する為、アルセイユに乗らない事を口にした。
〜グランセル国際空港〜
「うーん、まさかオリビエが帝国に帰っちゃうなんて……」
「ホント、随分いきなりね。」
自分達を見送ろうとしているオリビエを驚きの表情で見つめていたエステルは呟き、シェラザードも頷いた。
「いや、本当はもう少し前に帰国する予定だったのだがね。エステル君が掠われてしまったので予定を伸ばして滞在していたのだよ。」
「そうなんだ……。ゴメンね、あたしのせいで。」
「フッ、気にすることはない。君の帰りを待ったおかげで愛しのヨシュア君とも再会することができたしね。」
謝罪するエステルにオリビエはいつもの調子で答えた。
「はは、相変わらずですね。……あの、オリビエさん。」
「おや、なんだい?」
ヨシュアに呼ばれたオリビエは不思議そうな表情でヨシュアを見た。
「貴方は……。……いえ、何でもありません。今までエステルの旅を助けてくれて感謝します。」
「フッ、望んでいたことなのだから水臭いことは言いっこナシだよ。だが、そこまで言うのならお礼に熱いベーゼでも……」
「えーかげんにしなさい。もう……最後くらいちゃんとお別れしようよ。」
相変わらずふざけている様子のオリビエにエステルはジト目で睨んだ後、呆れた表情で溜息を吐いた。
「はは、ボクはいつでも真面目なつもりなんだがねぇ。エステル君、ヨシュア君。シェラ君に他のみんなも……色々と大変だろうが気を付けて行ってくるといい。このオリビエ、帝国の空からキミたちの幸運を祈っているよ。」
オリビエは笑顔をエステル達に向けて言った。
「うん、ありがと!」
「ふふ……あんたの方こそ気を付けて。」
「……どうかお元気で。」
「……短い間でしたがお世話になりました。」
「また機会があったら呑もうや。」
「今度はその変人っぷりをちったぁ直してきやがれよ。」
「あはは……。あのあの……さよーなら!」
「うふふ、いつかまたオリビエお兄さんの歌や演奏でレン達を楽しませてね♪」
「いや〜、短い付き合いでしたけどごっつ楽しかったですわ。」
「僕もです。フフ、貴方の声は僕の古い知り合いとそっくりですから、懐かしい気分でした。」
「お元気で……色々とお世話になりました。」
「さよなら、です。」
「また、いつか会おうぜ!」
「フッ、機会があったら、エステル達と組んでまた俺に挑んでくれ。その時は武術大会のリベンジをさせてもらおう。」
「リベールにまた来て、俺達とバカをやって楽しむ日が来ることを待っているぜ!」
「フフ、貴方のこれからの人生に空の女神(エイドス)の加護を。」
「またいつか私達にオリビエのピアノやリュートを聞かせてね。」
「フン、その軽薄さで男がいる女に近づいて修羅場に発展して、刃傷沙汰に発展しないようにせいぜい気を付ける事だな。」
「フフッ、いつか”互いの本当の立場”で相見える時が来る事を楽しみにしているよ。……最も、その日は近いような気はするがね。」
エステル達がオリビエに別れの言葉を告げて次々とアルセイユに乗り込んで行く中、レイスは最後に意味ありげな笑みを浮かべてオリビエに別れの言葉を告げてアルセイユに乗り込んだ。
〜アルセイユ・ブリッジ〜
「あ……」
「お、おじいちゃん!?」
アルセイユに乗り込むと、ユリア大尉を含めた王室親衛隊員に加えてラッセル博士もいた。
「久しぶりじゃの。ティータや。元気にしておったか?」
「えへへ……うんっ!」
「ま、色々あって数日前から乗り込んでおったんじゃ。それよりも……エステル、ヨシュア。2人とも本当によく無事で戻ってきたのう。」
アガットの疑問に答えた博士はエステルとヨシュアに笑顔を向けた。
「あはは……うん、何とか。」
「……心配をかけて申しわけありませんでした。」
ラッセル博士の言葉にエステルは苦笑しながら頷き、ヨシュアは軽く頭を下げた。
「なに、戻ってきたのならそれで万事オッケーじゃよ。しかし、”四輪の塔”に異変が生じたとはのう……。こりゃわしも、気合いを入れて調査する必要がありそうじゃな。」
「うん、頼むわね。ところで……どの塔から行けばいいのかな?」
「そうだね……距離的なことを考えたら”琥珀”か”紅蓮”が近いけど……」
エステルの疑問を聞き、今後の方針をどうするかヨシュアは考え込んだ。
「”アルセイユ”の速さならどの塔でもあまり変わらないさ。敵の情報が分かっている所を優先した方がいいかもしれない。」
「敵の情報?」
そしてユリア大尉の提案を聞いたエステルは首を傾げた。
「先ほど、”翡翠の塔”に向かった斥候部隊から続報が入ってきた。現れたのは、仮面を付けた白装束の怪しい男だったそうだ。」
「あの怪盗男!」
「斥候部隊とはいえ、たった1人で撃破するなんて……」
「ヘッ、ただの変な野郎じゃなかったみてぇだな。」
「ああ……相手が盗人だからといって油断せず、気を引き締めて挑む必要があるね。」
「”怪盗紳士”ブルブラン……。分身や影縫いを始め、トリッキーな技を使う執行者だ。一筋縄では行かないと思う。」
ユリア大尉の話を聞いたエステルは声を上げ、クローゼは信じられない表情で呟き、アガットとレイスは真剣な表情になって呟き、ヨシュアは冷静な表情で敵の情報を説明した。
「そっか……。でも、敵の正体が分かっただけ、他の塔よりはマシだと思うし……。うん!まずは”翡翠の塔”に行きましょ!」
「了解した。発進準備!これより本艦は、ロレント地方、”翡翠の塔”に向かう!」
そしてアルセイユは飛び立った。
〜グランセル国際空港〜
「フッ……これで猶予期間(モラトリアム)も終わりか……。いや、まだ最後のチャンスが残っているかな。」
「ま、待って〜!」
空港から飛び立つアルセイユを見届けたオリビエが静かな笑みを浮かべて呟いたその時、聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「おや、君たちは……」
声に気付いたオリビエが振り向くと、そこには息を切らせているドロシーとナイアルがいた。
「ああ、行っちゃった……」
「ぜいぜい……ま、間に合わなかったか。」
飛び立つアルセイユを見たドロシーとナイアルは肩を落とした。
「どうしたんだい、記者諸君?また竜事件のように乗り込むつもりだったのかな?」
「ああ、それとヨシュアが帰ってきたって聞いたんでな。まあいい、ドロシー。急いで”アルセイユ”を撮れ!望遠レンズを使えばそこそこ使える画が撮れるだろ。」
「アイアイサー!」
「フフ……」
祖国が緊迫した状況に陥っていてもいつもの調子を見せるドロシー達の様子を微笑ましく見守っていたオリビエはその場を静かに離れた。
「……挨拶は済んだのか?」
オリビエが発着場の出口に着くと、ミュラー少佐が待っていた。
「フッ、一応ね。そちらの準備はどうだい?」
ミュラー少佐に尋ねられたオリビエは頷いた後、尋ねた。
「叔父上の方は何とかなった。宰相閣下も、むしろ好都合だと判断されたようだ。」
「確かにあの人なら王国人受けしそうだからね。フフ……楽しくなりそうだ。」
「まったく……何という悪趣味なヤツだ。彼らの驚愕した表情が今から目に浮かぶようだぞ。」
オリビエの計画によってこれから何が起こるか想像できていたミュラー少佐は呆れた表情で呟いた。
「ハッハッハッ。まさにそれが狙いだからね。―――まあ、ボクの正体を見抜いていたどころか、ボクが”本当の立場”でリベールに現れる時が近い事を悟っていた王子殿下なら”次に相見えた時”に”ボクの本当の狙い”すらも見抜くかもしれないね。」
「”リベールの若獅子”か…………情報によればかの”剣聖”に迫る剣の使い手との事だったが……戦略眼や先を読む能力も”剣聖”に迫るかもしれんな。お前も”自分と同じ存在である”王子殿下を少しは見習ったらどうだ?」
オリビエの話を聞いたミュラー少佐は重々しい様子を纏って呟いた後オリビエを見つめた。
「ハハ、他人の真似をした所で”本物”と比べられて、”本物”の凄さを思い知らされるだけだし、第一そんなのはボクらしくないだろ?」
「……少なくても”自分の立場”を理解して将来の為に行動なされている事については見習って欲しいのだがな。」
オリビエに問いかけられたミュラー少佐が顔に青筋を立てて呟いている中、オリビエは空を見上げた。
(今度、相見えた時にはお互い敵同士というわけだ。くれぐれも”結社”ごときに遅れを取らないでくれたまえよ。)
そしてアルセイユは”翡翠の塔”に向かって行った………
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第66話 | ||
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