ドラゴンクエストX〜紡がれし三つの刻〜コラボ版・第九話
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第九話「取り戻せ!春風のフルート。タダオの装備はぬいぐるみ」

 

 

〜妖精界〜

 

其処は人間界とは空間を隔てた場所にあり、人間が此処を訪れる為には迷いの森と呼ばれる迷宮を抜けねばならず、余程心が清い人間か妖精に認められた人間でなければならない。

 

そしてタダオは妖精族の戦士セイに連れられて此の妖精界にやって来た。

春を取り戻す勇者として。

 

 

―◇◆◇―

 

タダオが辿り着いた場所、其処は未だ雪が舞う一面の銀世界だった。

池には氷が張り、その池の中央には巨大な樹木が立っておりその樹には窓や入口であろう立派な門が備え付けられていた。

 

「ここが妖精の国なんか、セイ姉ちゃん?」

「ええ、そうですぞ」

「もっとお花でいっぱいの暖かい所やと思うたんやけどな。どこもみんな雪でまっ白や」

「其れも之も、春を呼ぶ春風のフルートが奪われた為です」

「春風のフルート?」

「はい、ともかくまずはシオン様の元へ行きましょう。あの巨木がそのままシオン様の居城になっております」

「わ〜、不思議な木やと思っとったらお城やったんか」

 

タダオ達は歩き出したセイの後を追い、巨木へと進んで行く。

途中、何人かの妖精に会ったが彼女達のタダオを見る目はお世辞にも良いとは言えなかった。

 

「なあ、セイ姉ちゃん。皆ワイの事ヘンな目で見るけど何かわるい事したんかな?」

「いえ、タダオ殿が悪い訳ではありませぬ。おそらくはその魔物達を連れている事が原因でしょう」

「何でや!タマモたちも何もわるい事してないで!」

「妖精族には偏屈な者が多いですからな、タマモ達がどうこうより魔物を連れていると言う事を疎ましく思っておるのでしょう」

「……セイ姉ちゃんもそうなんか?」

 

タダオは立ち止まるとセイを悲しそうな眼で見つめるが、セイはそんなタダオを見つめると微笑みながら首を振る。

 

「安心して下され。もしそう思っておるのなら初めからタマモ達を連れては来ませぬ。それにシオン様も魔物だからといって疎まれる様なお方ではございませんからな」

「そっか〜、うたがってゴメンな」

「いえ、分かって下さればそれで良いのです。では、参りましょう」

「うん、はよ行こ」

 

タダオはニコッと微笑むとセイの手をギュッと掴む。

セイはセイで、そんなタダオの笑顔にキュンッとなった様で頬を赤らめていた。

 

「ウ〜、コンコン」(アイツ、敵ね)

「ピィ〜…」

「あはは……」

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「シオン様、人間界よりタダオ殿とそのお仲間をお連れしました」

「待っていましたよセイ。ようこそおいで下さいました小さな勇者殿」

 

村の中央にある巨木の中に入り、階段を昇って行った先にある玉座の間に妖精の村の長、シオンは座っていた。

 

「それにしてもセイ、私は此処から貴女の行動を見守っていましたが……はぁ、もう少しやり方は無かったの?」

「い、いえ。しかし正攻法では中々気付いてもらえずやむなくあのような方法を」

「言い訳はよろしい。それはともかくとして、タダオ殿、私達の話を聞いてもらえますか?」

「うん、ええで。ワイに出来る事なら力になるで」

「ありがとうございます。それでは……」

 

シオンはタダオに語って聞かせた。

 

この村の長は代々季節の移り変わりを司る妖精で、代替わりしたばかりの自分も春を呼ぶ儀式を間近に控えていた。

そんな時、儀式において最も重要な神具の春風のフルートが何者かによって奪い去られ、雪の女王の手へと渡ってしまったのだ。

その為儀式を執り行えなくなってしまい、世界は何時までも冬のままで春へと季節を移せなくなっていた。

 

「このまま春の訪れが無ければ自然界のバランスは崩れ、どのような事態になるか分かりません。ですから一刻も早く春風のフルートを取り戻し春を呼ばねばならないのです。しかし私達妖精族は闘う力の無い弱い存在、その中でも唯一セイだけは戦士としての力を持っていました。ですがセイ一人だけでは心許無いのです」

「そこで私が人間界へと赴き、私と共に闘ってくれる勇者を捜していたのです」

「そーやったんか」

 

シオンは玉座から立ち上がるとタダオの元へと歩いて行き、その肩に優しく手を置き語り掛ける。

 

「貴方の様にまだ年端もいかぬ少年にこの様な事を頼むのも心が痛みますが最早ほかの人間を捜す時間は無いのです。このセイと共に春風のフルートを取り戻す為に雪の女王と闘っては下さいませんか?」

「ええで、レヌール城のオバケかてワイらがやっつけたんや。そんな悪い奴なんかワイとセイ姉ちゃんでコテンパンや!」

 

タダオは胸を叩きながら誇らしげに引き受け、その足元ではタマモ達も元気よく鳴いている。

 

「コンコンコーン!」(そうよね、あの時タダオは“私の為”に闘ってくれたのよね!)

「ピイッピイピイ!」

「友達の為だもん、僕達だってタダオと一緒に闘うよ!」

 

「まあ、それは素晴らしい!あの事件を解決したのは貴方だったのですか。それに頼もしい仲間もいるのですね」

「へへへ、そやろ。ワイの大事な仲間で友だちや!」

 

タダオはそう言いながらタマモ、ピエール、スラリンの順に頭を撫で、タマモ達もそれが気持ちいいのかタダオに擦り寄って行く。

 

「じゃあ、さっそく行こ……、は、はっくしょん!! うう〜、やっぱり寒いわ。何かあったかい服はないんか?」

「そうですね、防寒着になる様な装備は…「おかあさ〜ん」…リリ?」

 

其処に一人の女の子がやって来た、シオンの子供なのか彼女をお母さんと呼びながら。

 

「リリ、今お客様と大事なお話をしてますから此処に来てはいけませんと言っておいたでしょう」

「ごめんなさい…。でもリリ、おかあさんのところにいたかったから」

「シ、シオン様!」

「どうしたのですか、セイ?」

 

セイは動揺していた、シオンの娘リリが身に付けている物を目にしてしまったのだから。

 

「シオン様……、リリ殿が身に付けているそれは……」

「これですか?リリが寒がるものですからよろず屋のディーに頼んで作ってもらった……はっ!」

 

そこまで言ってシオンはセイの言わんとした事にようやく気付いた。

それはシオンの周りに居る侍女達も同様の様でザワザワとざわめきながらリリの“装備”を見た後、その目はタダオに釘付けになる。

 

「ヨリ!タダオ殿用の“ぬいぐるみ”を此処にっ!」

「御意っ!」

 

シオンにヨリと呼ばれた侍女はすぐさま風の様に走り去り、そして数分も経たない内に戻って来た。

その手に、虎柄の“ぬいぐるみ”を抱えながら。

 

 

 

《ぬいぐるみ》

 

顔以外の全身を覆う物で結構高い防御力を誇り、毛皮で覆われている為、防寒着としても役立つ。

ちなみにリリが身に纏っているのは三毛猫を模した物でタダオ用にヨリが持って来たのは虎柄猫を模した物である。

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「ささっ、タダオちゃん!早くこれにお着替えしましょうね♪」

「ええー!ち、ちょっと待ってや。こんなんワイ、はずかしいで」

「何を仰いますタダオ殿!きっとお似合いですぞ!」

「そうですとも、さあ早く!」

「セイちゃんやシオン様もこう言ってるんですから、早く!早く!♪」

「ハリー、ハリー!」

「レウ、レウ、レウ!」

 

女性陣はタダオにぬいぐるみを着せるべく詰め寄って行く。

特にヨリの目はかなり逝っちゃっていた。

 

「コ、コンコンッ!コンコンッ!」(な、何をしてるのよタダオ!早く、早く着替えるのよ!)

「タ、タマモ……」

「ピイ〜〜」

 

タマモはタマモで早くぬいぐるみを装備したタダオが見たいのか、かなり鼻息が荒い。

そんな中、女性陣から何とか逃げようとしているタダオだが其処にリリがやって来て彼のマントを掴み見上げながら話しかける。

 

「ねえおにいちゃん。……リリとおそろい…イヤ?」

 

少し涙目なのがミソだ。

 

「ぐ、ベ、別にイヤなワケじゃ……」

「じゃあ、きてくれる?」

「それとこれとは話が…」

「やっぱり、イヤなんだ。…ぐすっ」

「分かった、分かった!うう〜〜、着たるわいっ!」

「わ〜〜い♪」

 

その涙攻撃に耐えられなかったタダオが諦めてぬいぐるみを着ると言った途端、リリは満面の笑顔で飛び跳ねる。

逆にタダオは「女の涙はひきょうや」と涙目で項垂れていた。

 

そんな二人を見ながら女性陣は……

 

『『『『リリ、恐ろしい子!!』』』』

 

と、例の目で戦慄を感じていたとか。

 

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((閑話休題|それからどうした))(cvキンキン)

 

 

 

「どうしたもこうしたも、約束したからには着替えるしかあらへんわい」

 

別室でぬいぐるみに着替えたタダオがてぽてぽと歩いて来る。

その顔は照れから来るものなのか若干赤らんでいた。

 

「こっ、これはっ!」

「まあ、何と愛らしい」

「おにいちゃん、かわいい…」

 

そんなタダオの姿を見たセイ、シオン、リリの三人は其々顔を赤く染め、タマモは……

 

「コ、コン……」(お、思い残す事は無いわ……)

 

虚ろな目をして倒れ伏し、ピクピクと痙攣していた。

 

「タマモー、しっかりー!」

「ピキィーー!」

 

彼女の傍ではスラリンとピエールが逝かない様にと声をかけ続けていた。

 

「うう〜〜、やっぱり恥ずかしいわ。でもあったかやからガマンしよ。じゃあ、セイねえちゃん、はよ行こか」

 

そう言いながらタダオはセイの元へと歩いて行く。

 

 

 

てぽてぽてぽてぽてぽてぽてぽてぽてぽてぽてぽてぽてぽ

 

 

 

「は〜〜ぁ、は〜〜ぁ、は〜〜ぁ」

 

ヨリは、てぽてぽ歩くタダオの姿を見て、遂に………

 

「はぁーーーーーーーぐぅーーーーーーーーーーっ!!」

 

遂にヨリは壊れた。

 

「わあっ!な、何や何や!?」

 

タダオは突進して来るヨリをギリギリかわし、そのままの勢いで彼女が抱き付いた柱に亀裂が走ったと思った瞬間、粉々に砕け散った。

それを見たタダオ達の背中に戦慄が走った。

 

「セ、セイ姉ちゃん!何なんやこの姉ちゃんは?」

「ヨリよ、落ち付け、落ち付かぬか!」

「はぁ〜、はぁ〜。な、何なの、その可愛さは?何なの、その愛らしさは?そう、これはハグリストである私への挑戦ね!いいわ、その挑戦受けてあげる。さあ、お姉さんの胸の中に飛び込んで来なさい!」

 

「ラリホーマ」

 

ヨリはシオンの唱えたラリホーマによって深い眠りに落ちた。

((小睡眠呪文|ラリホー))では無く((大睡眠呪文|ラリホーマ))なのは暴走したヨリにはラリホーでは通用しないからであり、以前にもこの様な暴走事故があった事を物語っていた。

 

「侍女のヨリが失礼をしました」

 

「うう、こ、こわかったわ…」

「だいじょうぶ?おにいちゃん」

 

タダオは未だ怯えながらセイにしがみ付き、リリに心配され、セイはそんなタダオに恍惚の表情を向けながらもタマモに威嚇されていた。

 

「ウウ〜〜」(わ、私のタダオに…羨ましい)

「コ、コホン!ではそろそろ出発しましょうか、タダオ殿」

「そやな、早く春を呼ばないかんな。タマモ、ピエール、スラリン、しゅっぱつや!」

「コンッ!」(了解っ!)

「ピイッ!」

「分かったよ!」

「ではまず、宿屋の中にあるよろず屋で装備を整えなさい。私の使いと言えば無料で用意してくれるでしょう」

「ありがとうや、シオンさま」

「おにいちゃん、がんばってね」

「おうっ!」

「セイ、タダオ殿をしっかりとサポートするのですよ」

「ははっ、お任せあれ」

 

そうしてタダオはタマモ達を引き連れて元気に駆け出して行く。

 

 

 

 

てぽてぽてぽてぽてぽてぽてぽてぽてぽてぽてぽてぽてぽ

 

 

 

 

「ま、待ってタダオちゃん……せ、せめてひとハグ…」

「「「「ラリホーマ」」」」

「はうっ!」

 

 

玉座の間を後にして階段を下り、一階の図書室に来ると妖精達が話しかけて来た。

 

「まあ!貴方がフルートを取り戻す為に呼ばれた人間の戦士ね」

「うん、そうやで」

「でもセイ、この様な子供で大丈夫なの?」

「その心配なら無用だ。お主達もレヌール城を占拠しておった魔族の話は聞いておろう。その魔族を撃退したのは他でもないこのタダオ殿だ」

「セイ、それよりも雪の女王が居る氷の館の入口は鍵で閉ざされているわ。おいそれとは中に入れないわよ」

「う、うむ。そうであったな」

「扉を開く鍵があれば…」

 

妖精達が言うには雪の女王の城である氷の館は常に閉ざされたままで中の様子を知る妖精は一人もいないらしい。それがフルートを取り戻す難点となっている理由の一つでもある。

 

「…よろず屋のディーなら何か知ってるかも」

「ええ、彼はガイルの友達だったから」

「ちょうど今からディーに会いに行く所だ。詳しく聞いてみよう」

「教えてくれるといいんだけど」

 

「何の話や?」

「いえ。さ、参りましょうタダオ殿」

 

 

 

シオンの居城を出て、少し進んだ場所に宿屋はあり、よろず屋はその中にあった。

 

「ごめん、ディーは居るか?」

「おっ!セイ殿。話は伺ってますよ、一応装備は整えておきました」

「すまぬな」

 

ディーが持ち出して来たのはピエールとスラリンに「石の牙」タマモには前足に取り付ける「石の爪」そしてタダオには「鉄の剣」を用意していた。

 

「セイ姉ちゃんにはないんか?」

「心配なら御無用。私には特注品の槍、この「龍牙」がありますからな」

 

 

((龍牙|りゅうが))

 

それはドワーフのディーとガイルが共同で作り上げた槍で、龍の牙を思わせる双刃の槍である。

 

 

「それでだなディーよ、聞き辛い事ではあるのだが…」

「分かってますよセイ殿。ガイルの奴は今、西の洞窟に居を構えてます。アイツも最初は先代を恨んでた様ですがシオン様に代替わりした事で落ち付いた様ですわ。まあ、亡くなった方を何時までも恨み続けるというのも愚かだと言ってましたからな」

「そうか、ならば会いに行ってみよう」

「ただ…」

「ただ、どうした?」

「……春風のフルートを盗み出したのは、どうやらザイルの奴らしくて」

「な、なんとっ!!」

「ザイル?だれや?」

 

 

 

=冒険の書に記録します=

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《次回予告》

 

ガイルというじいちゃんにカギの秘密を教えてもらいに洞くつに来たんやけど、そこでワイはじいちゃんにザイルって奴を助けてくれって頼まれたんや。

ザイルは雪の女王にだまされてフルートを盗んだんやと、だます雪の女王は許せんけどあんなええじいちゃんを心配させるザイルって奴もゆるせんわ。

とっつかまえてお尻ペンペンや!

 

で、セイ姉ちゃん。その蝶々みたいなの何や?

 

次回・第十話「華蝶仮面があらわれた!」

 

うわ〜、カッコええな〜〜。

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(`・ω・)今回は自分でも何だろなと思いました。

ちなみにヨリの元キャラは「おと×まほ」の「幾瀬依(いくせより)」です。

知らない方には解り辛いネタですね、可愛い子が大好きなハグリストで、そのハグ力は熊と全力で対決して勝っちゃうほどです。

 

シオンとリリとはフラグは立ててないつもりです。

 

装備について一言。

 

石の爪はやはりタマモに石の牙は似合わないだろうと牙から爪に変更。

鉄の剣もタダオ(横島)には杖より剣の方が似合うだろうと変更、もっとも妖精の村にはブーメランより強い武器は無いですが、雪の女王との闘いではブーメランより剣の方がいいですよね。

セイの武器はやはり龍牙しかないです。服は恋姫の物と見た目は同じだと言いましたが、素材としては「みかわしの服」と同じ物を使用しています。

 

 

説明
スクエア・エニックスのRPGゲーム「ドラゴンクエストX〜天空の花嫁〜」を独自設定の上、キャラクターを他の作品のキャラをコラボさせた話です。
それが駄目だという方にはお勧めできません。

コラボするキャラクター
リュカ=タダオ(GS美神・横島忠夫)
フロ−ラ=ネリネ(SHUFFLE!シリーズ・ネリネ)
ビアンカ=リアス(ハイスクDD・リアス=グレモリー)
ベラ=セイ(恋姫無双・星)
サンチョ=バーク(SHUFFLE!シリーズ・バーク)

※以前、同じタイトルで投稿していた作品のリメイクです。
この作品は作者のブログ「四人部屋」と二次小説サイト「Over The Rainbow 〜にじの彼方〜」にも投稿しています。
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タグ
ドラゴンクエストX コラボ 独自設定 リュカ=横島 

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