不思議な夢の物語
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 「お、おい! ここで間違いねぇのかっ!?」

 「間違いねぇって!」

 「大体、何であたしまでが来なきゃなんなのっ!?」

 「お前がきたがってたんだろ〜? 文句言うなよ」

 「だって! まさか 『噂の洋館』 に来るなんて思ってもみなかったわよっ!!」

 とまぁ、俺たち3人は目の前にある “噂の洋館” の前にいる。 おおっとっとっ! 俺の名前は “クガク” って言うんだ。 んーで、向かって俺の右側にいるヒョロッとしたのがリュイネストって名だ。 長いので “リュイ” と呼ばれてんだよ。 名前と違って口が悪いのが玉にキズだと思っている。 そして、リュイと俺ともう1人のクラスメートならず幼なじみの女が左手にいる。 名前は “フィリス” といって、こいつも名前負けしている感じだ。というのも、名前どおりのお嬢ではなくて、逆に男勝りなのだ。

 「大体クガク、お前が無鉄砲すぎんだって! 何を血迷ってんなトコに来てんだよ!!」

 「無鉄砲なもんか! こういうとこにゃ、お宝がねむってんに決まってるだろーが!!」

 「アホかっ!! てめーはっっ!!!」

 「命がいくつあったって足らないわよっっ!!!」

 いちいちうるさいなぁ、もう……。 こんなことじゃ中に入れないので、俺はさっさと中に入ろう。 そうしたら、この2人も否応無しについてくる。 何故なら、とある “理由” があるからだ。

 

 

 

 

 

 この洋館は、もう数10年ぐらい人が住んでいない。 以前の住み主が病気でなくなってからそのままにしているという。 ……コウモリまで出てきちゃってっまー。 雰囲気満点である。

 「と、ところで、どこにあるんだ? ええっと、何だっけ……」

 おい、そこ。 目的を忘れんなってーの。 つーか、まだビビってんのかよ……。

 「この洋館のどこかにある、『シャオルの爪』 と 『ボロレワの角』 を手に入れるのよね」

 「あっ、そうそう! それで、集まったらどうなんだ?」

 「その人間の願いが叶うんだよ」

 「へぇ〜、そうなのか――って!! マジかよっ!?」

 「あたしも初耳よ!!」

 「俺だってそうだ。 その辺にいるヤツラが教えてくれたんだよ」

 「はっ……?」

 ゆ〜らり、ゆ〜らん、布オバケ〜♪ と、俺はそんな感じなのだが、2人はあからさまに顔が引きつっている。 その他にも、この館に仕えていた人間の幽霊だろうか。 色とりどり (といっても、暗がりなのですべて暗色に見える) な連中がいるようだ。

 ……そういえば、まだ俺たちの目的を話していなかったな。 この洋館をうろつきながらでも話せるだから、順を追ってちゃんと話すことにするよ。 それに、この館自体はどでかいが、1階しかないのでまず迷わないし、ね。

 まず、俺たちの出身は “ウラカ” という田舎町だ。 別に何の変哲もないその辺の小さな町である。 俺たち3人は、そんなところにぽつんと立っている、剣士と魔法使いを育てるための学校に通っているんだ。 ちなみに、俺が剣士、リュイが魔法使い、フィリスが僧侶をそれぞれ専攻している。 何気にパーティ的にはバランスがよいのだ。 それとは違い、この町は都市から離れているせいなのか、それとも町の周囲に茂っている森林がそうさせているのかはわからないが、古くからの伝説が語り継がれているという、変なところである。

 「つーかよ、何であんなド田舎の町に 『こんなモン』 が伝わっているんだか」

 「俺が聞きたいよ、そんなこと。 第一さ、よい子が通っている学校にこんな物騒なものがあること時点でおかしいし」

 と、俺は懐にしまってあった “ミナレスの涙” を取り出した。 これが、俺たちがここに来ることになってしまった理由なのである。

 「……まぁ、あの学校って変な先生が多いから仕方がないんじゃない?」

 と、名前どおりの色と形をした、一見宝石にも見えなくもないアイテムをまじまじと見るフィリス。 やはり、女の子はこのような光ものが好みのようだ。

 「とにかく! 早く2つの秘宝を手に入れてとっととこんなとこから出ましょうよっ!!」

 ……こう見えて、けっこうビビりなんだな、フィリスって。 普段は平気で持っている杖を振り回しているクセに。

 「……何よ? 何か文句あんの!?」

 「いえいえ! めっそうもない!! ……では、行きますか――」

 「っておい、クガク。 もう行き止まりじゃねぇか」

 ――あ、マジだ。 っつーことはだ、よ? 左右どっちかに行かないとダメだってことだよなぁ。 まーなんだ、こういうときは条件反射なのだろう。 3人で辺りをキョロキョロする。

 入ってからしばらく立つので、目のほうは暗闇を見るのに適してきていたが、それでもまず、自分の目と耳を疑った。

 

 

 

 ――ズシン、ズシーン……。

 

 

 

 「きっ、気のせいだよなっ!!」

 「そ、そうそう!! こんなところに動く物体がいるわけな――」

 

 

 

 ――ズシーン、ズシーン。

 「グルオォォオォッ!!」

 

 

 

 

 

 …………。 上を見上げれば、動く石像2つがありけり…………。

 

 

 

 

 

 …………はっ!!

 

 

 

 「うっぎゃぁぁぁぁっ!!!」

 な、なんなんだこりゃーっ!! もっとまともなトラップを仕掛けてくれよーっっ!!!

 「お、おい! お前らの魔法で何とかならないのかよっ!!」

 「ねぇよ! んなデカブツに効くやつかっ!!」

 「精霊呼びなさいよっ!! そうすれば太刀打ちできるでしょっ!?」

 「アホか! あれは時間がかかんだよ!!」

 「ってことは、倒せないまでも追っ払うことができるってことだろ? ……よし」

 ザッ!! と、俺は胆をすえて石像と向かい合う。 といっても、全速力で走ってきたので、お互いの差はけっこうあるのだが。

 「俺とフィリスで時間を稼いでやっから、ちゃんと精霊呼び出せよ! リュイ!!」

 「あ、ああ――!」

 「男は当たって砕けろ! ――って、こ ・ と ・ でっ」

 と言うと、フィリスは “オルガ” と “キリテア” という魔法を俺に向かってとなえた。 これらは、前者が守備力を上げるもので、後者は攻撃力を上げるためのものだ。 主に、直接攻撃が得意な人にかけるものである。 その間リュイは呪文の詠唱に入っていた。

 ――ズシーン、ズシーン、と迫り来る、俺たちよりも3倍は大きいだろう石像だが、よく見てみると獣の姿をしていた。 ひとつは、鳥の姿をしていて、もうひとつは人と獣の姿をかけ合せたような魔人――デーモンの形を成している。

 「フィリス、お前攻撃魔法は使えるんだったっけか?」

 「水なら何とかね。 でも、リュイみたく威力はないわよ」

 「援護射撃で十分だって。 時間稼ぎなんだから」

 ――ズシーン、ズシーン……。 と、近づくごとに耳が痛くなるような大きな音を立ててやってくる石像たち。 俺たちは臨戦体制に入り、俺自身は持っていた帯剣を抜き放って目の前の敵に食ってかかった。 といってもぶっちゃけ話、実戦は初めてなので、体が思うように動かないでいた。 力を入れたつもりなのだが、それとも相手が相手なのか、あっけなくはじき返されてしまう。 すぐさま、デーモンの姿をした石像が腕を振りかぶって反撃をしてきたが、かろうじて後ろに飛んでかわすことができた。しかし、もう1匹の鳥の姿をした石像が、こともあろうにフィリスのほうへと突っ込んでいく。

 「やべっ!! フィリス、よけろっっ!!!」

 「――っ!!」

 叫んだ俺は何とかフォローに行こうとするのだが、目の前にいるデーモンの石像に邪魔されてそちらに行くことができないでいた。 そんな中、フィリスは持っていた杖を身の回りで躍らせながら、相手の攻撃を受け流している。 しかし、その様子は、自らの身の安全を考えての行動というより、なにかを探って入るような感じだった。

 「やっぱりそうなんだわ! リュイッ! まだ詠唱は終わらないのっ!?」

 「もうちょいだ! もうちょっとねばってくれっ!!」

 「おいフィリス! 何がそうなんだよ!!」

 「こいつの爪よ! 変な色に光っているの!! もしかしたら、これが 『シャオルの爪』 なのかもしれないわ!!!」

 「な、何だって!?」

 そういうフィリスに従って、俺は目の前にいる石像の角を見てみた。 何故角なのかというのは、言わなくてもわかるだろう。 ……確かに、左側の角が青緑色に光っているようだった。 しかし、このことに気を取られた俺は、デーモンの石像から強烈な一撃を腹に受けてしまい壁へと吹っ飛ばされてしまう。

 「――や、やっべ……」

 「ク、クガク!!」

 「ウオォオォン!!」

 と、2人の悲鳴に近い叫び声と石像の発するおたけびが、館全体にこだまする。 気がつくと、目の前にはもう既にヤツの爪が迫っていた。 もうだめだ! と思い、とっさに目をつぶった瞬間――。

 

 

 

 

 

  キイィィインッ!!

 

 

 

 

 

 「グルッ!!」

 「――っ!?」

 ……? いったい、何が起こったのだろう? こういうふうに、物事を考えることができるということは、死んじゃあいないようだけど……。 俺は、自分の身に降りかかった事柄を理解するために、おそるおそる、目を開けた。 すると、どうだろう。 目の前には結界が、張ってあったのだ。

 「こ、こりゃいったい……」

 「行けっ!! サラムッッ!!!」

 キィヤァァッ!! という、獣のような奇声を上げ、デーモンの石像に向かっていく火の精霊 ・ サラム。 四属性の中で、1番攻撃に適している属性のものだ。 火属性の最下級の精霊だが、気性が荒いので扱うのが難しい。 完全に使いこなすには、相当の訓練が必要だと聞く。

 「フィリス、今のうちにバブル ・ スチームを詠唱しとけ!」

 「!? サラムなら、石像の2つや3つぐらい壊せるでしょ!?」

 「オレはまだ使いこなせねぇんだよ! 『サラム自身』 に攻撃させることができるのは、せいぜい1回なんだっ!!」

 「! そういうことね、わかったわ!!」

 と、俺の目の前にいる石像が、一部をのぞいて砕け散ったときの2人会話。 何を示すのかというのは、魔法のことをあまり知らない自分自身にも理解ができた。 俺は、目の前に転がった “ボロレワの角” を急いで懐にいれ、詠唱中の2人と鳥の姿をした石像の間へと入った。 時間稼ぎをするためだ。

 「オラ来いよ。 俺とお前と、どっちが素早いか勝負だ!!」

 「ギル……!!」

 自慢じゃないが、俺は自分の足には自信がある。 短距離も得意だし、長距離もそうだ。 確かに命はかかっているが、それは仲間も同じことである。 剣では倒せないから、魔法に頼るしかないのだ。 それに、これはまたとない自分の腕試しの、絶好なチャンスではないか。

 俺は、言い知れぬ恐怖より、闘争心のほうが勝って心躍 (おど) っていた。 もはや先ほどの恐ろしさなど、どこかに消えていたのだ。 そのせいか、敵の動きもよく見え、ちゃんと間合いのよいタイミングでよけている。 もちろん、攻撃はしない。 そうすることで、こちらに気を引かせるのだ。

 「クガクッ!!」

 「オッケーッ!!」

 と、リュイが合図を送った。 受け取った俺は、その辺にあった石を拾い上げ、敵に向かって勢いよく放り投げる。 相手は面倒くさそうに腕を振り、いとも簡単に砕いてみせた。 しかし、石像が次に見たものは、サラムにまとっていた灼熱の炎であり、瞬く間にそれは火柱となった。

 「よっしゃあっ、ビンゴ! 次、2番手〜っ!!」

 「んもう! 調子に乗らないでよっ!!」

 と、リュイにツッコミをいれるフィリスもやる気は十分のようで、すでにとなえ終わっている魔法を解き放った。 火柱が収まったのを見計らって放ったので、急激の温度変化に耐えられなくなった鳥の石像は、全身に微細なヒビがどんどん入っていく。 しかし、あと1歩のところまででそれは止まってしまった。

 「あーっ! もうちょいだったのにっ!!」

 「へっ。 ここまでヒビが入ってりゃあ、俺の剣でも通じるさ!」

 と、俺は本業である剣士の得物を握り締めた。 そして、助走をつけ、そして力いっぱいに飛ぶ。 目的である “爪” を傷つけないように、敵の右肩から左わき腹に向かって思いっきり叩き切った。 石像は、

 「ギィァアアァアッ!!」

 という、まるで生きているような断末魔を上げ、体の破片がポロポロと崩れ去っていったのだった……。

 

 

 

 

 

 「はぁぁ……。 ようやくひと段落ついたなぁぁっ……」

 「し、しぬかとおもったわ……」

 「よぉしっ! ようやく3つの秘宝が手に入ったんだ!! これで――」

 と、ようやくお宝を見つけたので、当然の行動をとろうとしたら、背後が何やら寒気がした。 ヒヤヒヤしながら振り返ってみて見ると―――……。

 

 

 

 

 

 ――人魂、浮遊霊、中身のない甲冑姿、生首etc――

 

 

 

 

 

 

 

 …………。

 

 

 

 

 

 ………………。

 

 

 

 

 

 ……………………。

 

 

 

 

 

 「ぎゃああぁぁぁああぁっっ!!!」

 

 

 

 

 

   * * *

 

 

 

 

 

 「うわぁぁあぁっ!!!」

 チュンチュンチュン、チチチ……。

 ――? な、何だよ。 ここって、思いっきり俺の部屋じゃん!! ってことはだぞ? あれは全部夢だったのかっ!? ……な、なんつー性質 (たち) の悪い夢なんだ……。 それとも、誰かの嫌がらせかっ!? それなら何もしてないぞっ!! この前、誤って担任の持っていた何かの箱を壊しちまっただけでっっ!!!

 と、俺がベッドの上で汗だくになっていると、

 「いつまでねてんだいっ!! とっとと起きて朝メシ食いなっっ!!!」 という、心にもない母ちゃんの怒鳴り声。 ……ちったぁ恐怖心を持った息子をいたわる、ってことしないのかなウチの親は……。

 いいや。 とりあえずシャワーを浴びて、リュイとフィリスに聞いてみよう。 ……でも、やけに生々しかったなぁ。 この町に伝説があるのは本当の話だし……。 この際図書館で調べてみようかな。 本当にあの館の中に2つの秘宝があるのか、俺たちが手に入れた “ミナレスの涙” があの場所にあるのか、を。 もしかしたら、また新たな冒険に出れるかもしれない。 あ、でも、もうちょっと強くなってからのほうがよいな。 今のままじゃあ、間違いなく返り討ちにあうだろうから。

説明
2006年の夏に書いたもので、初めての短編でした。
ジャンルは冒険ファンタジーです。
内容は、剣士のクガクが近くにある洋館を友人たちとともに探検をし、実はそれが夢だった、になっております。
楽しんでいただけたら幸いです^^
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一次小説 短編 ファンタジー 冒険 

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