始まり
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奪われる前に奪う

 

ゲイムギョウ界のリーンボックスという国には、ある大きな屋敷がありました。

そこにいる家族はとても裕福で幸福でした。

主は政府の重役で、その妻は美しく献身的に夫を支え、二人の間に生まれた子供たちは健やかでした。

ある日、休みが取れた屋敷の主は、「今日はどこに行こうか、何をしていようか」と、妻と子供達と一緒に話し合っていました。

多数決で海水浴に行くことが決まり、せっせと皆で支度をし始めました。

そしていざ旅行に行こうとしたその時、扉をたたく音を聞いて、来客かと子供の一人が尋ねずに扉を開きました。

その瞬間、破裂したような音と共に子供が吹き飛ばされ、それからピクリと動かなくなりました。

大きな音を聞いて主人達が駆けつけると、同じように破裂したような音が何度も何度も響き、屋敷の主とその妻は倒れました。

さらにそこから駆けつけた子供達も、破裂したような音と共に倒れました。

倒れた屋敷の主たちは、身体にいくつもの穴が開いていて、そこから血が流れて動かなくなりました。

「これで全部か?」

「いや、あと一人子供がいたはずだ」

「探すのも面倒だ、ここに火をつけてついでに焼き殺そう」

そんな大人たちの声が扉の先から漏れ出しましたが、それを耳にしたのは屋敷の中にはいませんでした。

 

一方そのころ、末の子供が向こうで読む本を決め終え、もって行こうと私室から出ました。

その時、屋敷中からもくもくと煙が立っているのに気がつきました。

何かあるのかと好奇心で煙の元にやってくると、屋敷には火をつけられていて、近くで家族がみんな倒れていました。

末の子供が駆けつけても、声をかけても、ゆすっても、叩いても、誰も返事をしてくれません。

末の子供は怖くなりました、自分が何をしても皆がおきてくれず、大怪我をしているのに誰も痛がらず、その上触ると皆冷たくなっていたのだから。

末の子供はそれが死だと理解すると泣き出しました。それでも家族が起きることはありませんでした。

 

泣き止んだ末の子供は周りがごうごうと燃え上がっていることに気づきました。

このままでは死んでしまいますが、末の子供は怖くて怖くて身動きが取れません。

そんな時、留守を頼まれて来た執事が、火の中を抜けて玄関から入ってきました。

末の子供に何があったのかを聞いた後、動けなくなっていた末の子供を抱きかかえて屋敷から出ました。

離れて見えなくなるときまで、燃えていく屋敷を末の子供はただただ見続けました。

屋敷から大分離れた後、執事は末の子供と一緒に、実家であるルウィーへと渡り歩く事になりました。

まだまだ幼く、家族を亡くして間もない末の子供を気にかけつつも連れて行き、執事はルウィーまであと少しの所まで来ました。

そんな時、末の子供を狙う雇われた殺し屋をかばい、刺し違う形で執事は倒れました。

執事は末の子供に知り合いの家への道を教え、「何が何でも生きてください」と言い残し、息を引き取った。

末の子供は刺し違えたのにまだ生きて逃げようとする殺し屋を見ると、死んだ家族と燃えた屋敷を思い出しました。

そして「奪わなきゃ奪われる、このまま逃がしたら必ず殺される」と思い、執事に刺さっていたナイフを抜き、這ってでもこの場を離れようとする殺し屋に向かって走り出しました。

そして殺し屋の上にまたがり、背中や首、頭にかけて何度も何度も突き刺しました。

どんなに殺し屋の身体に穴が開こうとも、血が流れようとも、何度も何度も刺しました。

そして執事が言い残したとおり、末の子供は何が何でも生きるためにまっすぐと歩き出し、ルウィー付近の貧民街に着きました。

奪われまいとして必死だった末の子供は、殺し屋を突き刺しているうちに執事の言っていた道を忘れてしまってどうすればいいかわからなかったからです。

しかも貧民街の住人からすれば、末の子供は身に着けているものから末の子供自信にいたるまで、高値で取引できるお宝のようなものでした。

そのため身包みを剥ぐ為に近づく者、捕まえて売り飛ばすために寄ってくる者、ただただ楽しむために襲う者、それらから末の子供は逃げる日々を送りました。

末の子供にお金はありません、なので襲ってきた者たちを殺し、そこから奪ったお金で食べ物を買いました。

更にその店員が何かを奪おうとしたらすかさず殺し、逆に食料を奪いました。

住処も襲ってきた者達から奪い取り、仮眠を取っていました。

それから奪われる前に奪いつくすという生活を送っているうちに、生き残る術や殺しの業を覚えていき、生活の為にそれを生業とし始め・・・・・・そうして彼は仮面を被り、道具や武器を仕込んだコートを着込み、リンク・ワーカーと名乗るようになりました。

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社会と世界の中で

 

それはごく普通の家庭だった。

夫は会社員で妻は主婦、近所づきあいも良くて明るい未来を描いていた・・・・・そんな夫婦だった。

だが、ある事をきっかけに、二人の生活は一転する。

他国との競争、国内の他の会社との競争、そうしている内に費用がかかった会社のコスト削減によって夫はリストラされた。

それでも夫はめげず、その甲斐あって別の会社への就職を果たした。

だが、元いた会社とはライバル関係だったその会社からスパイ容疑がかかり、そのまま解雇された。

己の名誉と潔白のために訴えはしたが、証拠も理屈も根拠でさえも、金による圧力でねじ伏せられて敗訴した。(※後に前いた会社との対立関係を解消するための材料にされた事を知ることになる)

それでも夫は挫けず、せめて職には就こうとアルバイトをしつつ就職活動をする事にした。

どんな目に遭おうとも、妻の為に、未来の子供の為に、諦めなかった夫だったが・・・・・・それ故に、夫婦共々犯罪組織に入団した。

この際だから言うが、犯罪組織に入っている人が全て悪と言う事は無い。

収入良いからとか、生活に困ってるからとか、そんなありふれた理由で女神と敵対する立場になった者も少なくは無い・・・・寧ろ多い。

マジェコンヌの団員の中には女神を信仰する者だっているし、逆に女神を嫌っていても全うな職に就く者だっているものだ。

早い話が「信仰で飯は食えぬ」ということだ。

確かに感謝はしているが、自分達には家庭がある以上、それを犠牲にしてまで味方につくような義理も恩も無い。

しかも前いた会社を訴えたことが響いて中々面接まで受けられず、将来子供が生まれたときの為の費用も用意する必要があった。

「例え世界がかかっているとしても、女神なんぞに浮気できるかっ!どんな事があっても支えてくれる俺の嫁と未来生まれる子供の方が大事なんだよ!俺は!!!」

それが夫の出した答えだった・・・・・そしてそんなこっぱずかしい告白を叫ばれた妻は、顔を真っ赤にして慌てふためいた。

女神を心から信仰していた妻は「嬉しいけどやっぱりそれは」と言ったが、「まともな職にありつけるまでの間だけでも」と説得され、しぶしぶ納得した。

 

それから女神が負けて捕らえられたから当然のごとく信仰はだだ下がっており、割と昇進してしまったが為に辞めるに辞められず、ついに三年も経ってしまった。

妻は「これも女神様のお導きなのね」と半分ヤケクソになっていた・・・・・そしてもう半分は、子供が生まれた幸せでいっぱいだった・・・・ちなみに男の子だ。

夫がせっせと犯罪組織の一員として働いている間、妻は子供の世話をやいていた。

同じような理由で入った仕事仲間そこから派生したママ友等の人間関係は良好で、夫のめげず挫けず諦めない性格が周囲を轢きつけ、予想以上に組織全体のモチベーションを上げた。

四国の人々や社会が後ろ向きになりつつある中、組織や家庭が前向きになりつつあった。

・・・・・・けれども、そんなことは長く続くものではなかった。

女神候補生・・・・女神の妹の活躍によって組織は次第に劣勢となり、団員も危ない橋を渡ることになった。

場合によっては捕まるかもしれず、最悪殺されるかもしれないという状況になっても、夫は家庭を護るために、与えられた任務を全うし続けた。

・・・・・そして、マジェコンの生産工場の警備を任される事となった夫は、身を案じる妻と、立てるようになった子供に「行って来ます」と言って家から出たのを最後に、女神候補生一行の襲撃の際に起きた事故で亡くなった。

妻はその報せを聞いて深く悲しみ、その拍子で強く抱きしめられた子供は泣き出した。

 

・・・・・・その後、妻と子供は国の警備員に捕らえられ、離れ離れとなった。

夫も子も失った妻は生気を無くし、犯罪組織に無理やり居続けさせられたことによるストレスが原因と見られて精神病院へと送られた。

そして親から離れた子供は容態が急に悪くなったため、犯罪神の影響も視野に入れて大きな病院に送られた。そのかいあってか偶然かは定かではないが、一命を取り留めた。

それはごく普通の家庭だった。しかしきっかけ一つでそれは崩れ去る。

いかに頑張ろうとも努力しようとも、一瞬であっけなく、実ったものごと掻っ攫われる。

しかしそれでも、その全てが無意味となることは無い、二人の間に出来た子供は、今も生きているのだから。

説明
息抜きがてら思いついたのを書いてみた・・・・・一応連載してるのと絡んでます
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