模型戦士ガンプラビルダーズI・B 第44話
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 多目的アリーナのエントランス、トーナメント表の前に集まったアイ達とケイ三兄弟、人ごみはその周囲に集まり、トーナメント表よりも六人を見ていた。

 

「まさかあなた達が一回戦相手になるなんてね」

 

「全くだ。トーナメントには64ものチームが出てる。そんな中で復讐相手であるお前らにいきなりでぶつかるとは思わなかったぜ」

 

 ケイ三兄弟の長男、マツオはトーナメント表に視線を移しながら呟いた。心なしか雰囲気が以前会った時より落ち着いた気がする。

 

「アンタ、前にアイが挑戦者を相手にしていた時一度も姿見せなかったけど、何やってたのよ」

 

 警戒しながらナナが問いかける。彼ら、特に長男のマツオはアイに対し、「俺がアイを倒す」と息巻いていたが、ここ四か月一度も姿を見せなかった。

 

「有り体に言っちまえば、特訓を積んでたって奴だな。……ヘッ、おかげで自信と実力はついたつもりだ」

 

 そう言うマツオは確かに印象が変わっていた。除く肌や手はゴツゴツした印象になっていた。依然と比べてかなり筋肉を付けた様だ。

 

「以前会った時より雰囲気が随分変わった気がするけど、鍛えていたという事だね」

 

「ん?あんたは……確か俺達をゼイドラで圧倒した(第13話参照)」

 

「ハガネ・ヒロだよ。今はアイちゃんのチームでお世話になっている」

 

「そいつは……丁度いいぜ!俺のリベンジにはあんたへの復讐も含まれているんだ!今の俺の実力を試すために!俺の恥をすすぐために!俺達と戦ってもらおうか!」

 

「なーに格好つけてんだ。マツオ」

 

 突如マツオの左右から屈強な男が二人現れる。直後、マツオの顔が青ざめた。

 

「せ!先輩!」突然の乱入者にアイ達は困惑する。

 

「ガンプラに関しちゃよくわからねぇが、相手に失礼な態度を取っちゃ駄目っていつも言ってるだろうが、ちゃんと頭下げな」

 

「う……」と言いながらマツオは渋々頭を下げる。弟のタケオとウメオも慌てて頭を下げる。

 

「いやぁ後輩のコイツが失礼な態度とりまして、すいませんね。こいつ礼儀知らずで」もう片方の先輩がアイ達に話しかける。二人揃って強面だがえらくフランクだ。

 

「あ、大丈夫です。別に気にしてませんから」とアイ。

 

「も、もう口でいう事は無い。……よろしくお願いします」とマツオは先輩に注意しつつの言葉でその場を後にした。「待ってくれ兄ちゃん!」と弟達も後に続く。

 

「前にアイツに因縁つけられたって聞きましたんで、不快に思ってないかと心配だったんですが大丈夫でしたか?」

 

 残った先輩達がアイ達に頭を下げる。「いえいえ」とアイ達は答える。

 

「アイツも根は悪い奴じゃないんで、どうか次の試合ではちゃんと戦ってやって下さい。それじゃ」

 

「え、あの、最後に聞かせてください。何の先輩なんですか?」

 

「大学の『レスリング部』です」

 

 

 そしてトーナメント表の前から移動し、三兄弟について話し始めるアイ達、

 

「まさかレスリングやる様になっていたとはね。にしてもあいつ、随分と自信ありげになったわねー」

 

「そうだね。あの態度も自信の表れって事なんだろうけど、やっぱガンプラバトルでも格闘スタイルが得意になったのかな」

 

 そう話し合っていると、前回戦ったミゾレとニワカ、そしてライタがアイ達に話しかけてきた。

 

「さっきのやり取り見てたぜ。お前ら、あの三兄弟が初戦の相手か?」

 

「あ、ライタ君、まぁね」

 

「……気を付けた方がいいぜ。あいつら、違法ビルダーかもしれない」

 

 ライタの発言に眉をしかめるアイ達「どういう事?」と言葉にせずとも表情から伝わった。次にミゾレが続く。

 

「実は数日前、別のゲーセンで彼ら三兄弟を見たのさ。さっきのサバイバルで君達が戦った違法ビルダー『テツ』と『ヤス』と話し合ってる所をね」

 

「あのデブの三兄弟、ほとんど俺達の前にも姿を現さないから、得体のしれない所があるんだよ。案外本当は奴らと結託して妙な準備でもしてるかもしれない。気をつけてくれ」

 

「あの違法ビルダーと一緒に?アイ……もしかしたら本当に……」

 

 ナナも疑いを持とうとする。ナナ自身、先輩と名乗る二人がそう言ったとはいえ、あの三兄弟は正直信用できない。アイを騙した経験があるからだ。

 

「違法ビルダー……かなぁ。実際に戦ってる所見てないから何とも言えないよ……」

 

「そう思うよ。ナナちゃん、確証も無いのに人を違法ビルダーだなんて疑うのはよくないよ」とヒロがナナに忠告する。

 

「ちょっとお人好しすぎない?ヒロさんだって簡単に信用するのは甘いよ。フジミヤ・レムさんだって違法ビルダーになっちゃって、きっかけを作ったマスミさんがそれを隠してたって目にあったのに……あ!」

 

 しまった!とナナはハッとする。ヒロはナナの発言に少し眉間に皺を寄せた。

 

「ご!ごめんなさい!」

 

「いや、いいよ。マスミが黙っていたのは事実だし、マスミの事は信じてたからね」

 

「前々から思ってたっスけど、ヒロさんって簡単に人を信用するっスよね」

 

「否定できないなぁソウイチ君、まぁ……僕の場合、理屈より心で感じた事を信じた方がうまくいくんだ。だからあの兄弟達だって、自信は本物だと思うからクリーンファイトで答えてくれると思うよ」

 

「そうかなぁ、アタシはどうも信用しきれないけど……」

 

「ちょっとちょっと!何辛気臭い話してるんですか!!」

 

 その時、突如黄色い声が響く、アイにとっては聞き覚えのある声だった。

 

「あ!えっと……チトセちゃん!」

 

「あったりー!お久しぶりですヤタテお姉ちゃん!」

 

 にこやかに答える猫目とサイドテールが可愛らしい女子小学生。『チトセ』だ。以前友達の『ケン』がガンプラバトルでフーリガンに絡まれていた所をアイが助けたといういきさつがある。

「あの人達でしたら大丈夫ですよ。ちゃんと正々堂々としたバトルで勝ってましたから」

 

「さっきのサバイバルで見たのかい?」

 

「その前からですよ。大学の合間を縫ってやってたらしくて、別の店ではトップのビルダーとして頑張ってました。あの人達の活躍はこの目で見てたから分かりますよ」

 

「本当?機体とか戦法とか分かる?!」ナナが食いつく。

 

「あーはいはい。機体は確かジ・Oって奴でしたね。迫りくる相手をパイルドライバーで潰すわ。ラリアットでふっとばすは凄い戦い方でしたよ」

 

 レスリングだけに肉弾戦よりの改造か……とアイ達は分析、しかし一人ナナは納得出来ないでいた。

 

「ちょっと待ってよ。ジ・Oって言ったらあの横綱みたいな恰好の機体でしょ?そんなよく動けるわけ?」

 

「あり得ない事じゃないよ。ジ・Oはああ見えて全身にバーニアを装備してるから非常に素早い。更に優れたパワーと隠し腕の器用さ。改造次第によってはそう言った使い方も出来るだろう。ただ技量は高いとみて間違いないね」

 

「情報有難うチトセちゃん、そういえばケン君は今日は一緒じゃないの?」

 

 ケンは第34話と35話で一緒にいた少年だ。アイにガンプラの技術を教えてもらいビルドスペリオルを完成させた。

 

「いつも一緒ってわけじゃないですよ。ケンの奴今回は『アイお姉ちゃんに挑戦するんだー』って言って別のチームに行っちゃいましたよ。付き合い長い私の事ほっといて、ちぇー男ってデリカシー無いですよ」

 

 むくれながら答えるチトセ。アイ達は苦笑しながらチトセをなだめていた。同時に「やっぱりあの三兄弟は違法ビルダーじゃないんだ」と信用の個人差はあれど、警戒をゆるめた。

……そして、それを見る奴らもいた。

 

「チッ!テツさん、どうやらあのAGEの女、あのデブ兄弟とバトルするみたいですよ」違法ビルダー、テツとヤスの二人だった。

 

「ぅぅぅ……どっちも気に入らないなぁ……なんか文句言いたいけど……どうしよう怖いし……」テツが弱気に答える。彼はネットやガンプラバトル等、バーチャルな空間でなければ強気になれない性格だった。

 

 

 ヤスは思い出していた。数日前(先述のニワカの言っていた話である)のあるゲーセンのガンプラバトルコーナーでの事を。その日、ヤスとテツはマツオ達がアイにリベンジを狙っている事。そして昔卑怯な手で勝っていた事を調べあげ、ヤス達はマツオ達三兄弟を仲間に引き込もうとしていたのだ。

 

「あんたらがあのAGEの女に恨みを抱いてるのは知ってるぜ!聞けばあんたらも実力ある旧世代ビルダーなんだろ?これを使えばもっともっと強くなれるぜ」

 

 確実に仲間に出来る確信があったのだろうか、ヤスの態度はいつも以上に横柄だった。

 

「に、兄ちゃん。チャンスだぜ。これがあればヤタテの奴らも」

 

 タケオとウメオは賛成の意思を示した。ヤスは簡単に仲間に引き込めると思った。が、

 

「いらねぇ」

 

「あ?今なんつった?」

 

「いらねぇって言ってんだ。ガンプラバトルの邪魔になる。帰ってくれ」

 

「おいデブの兄ちゃん、あの女に勝ちたいんだろう?今の実力で勝てると思ってんのか?アンタの実力じゃアイツの実力にはまだ及ばないぜ!」

 

「その為に少しでも力を研磨してんだよ。邪魔になるから帰れ」

 

「い!今更いい子ぶりやがって!!無理だ!お前らに勝てるはずがねぇ!!時代遅れの旧世代ビルダーが!!」

 

「聞こえなかったのか?」

 

 マツオは淡々として表情でヤスの胸ぐらを掴み持ち上げた。小柄な小学生のヤスは軽々と持ち上げられる。強気だったヤスの表情が一転して苦しそうになる。声を出そうにもうめき声しか出ない。掴まれた服の襟が首を絞めてしまってるのだ。足をバタつかせて抵抗するがマツオはビクともしない。それ程の腕力だった。その横でテツはただブルブル震えていた。

 

「周りの迷惑になる。帰れ!!」

 

 そういうとマツオはヤスを放り投げた。受け身の知識も無いヤスは背中を打ち付けてしまった。

 

「て!テメェ!テメェなんか無様に負けちまえバーカ!!」

 

 そのままヤスは捨て台詞を吐きながら、そして泣きそうになりながらテツと共にゲーセンから出て行った。その後、イラつきながらヤスは街をぶらついていた。

 

「くそっ!あのデブ……ムカツク……」

 

 その時だった…ヤスに話しかける人物がいた。

 

「あの……さっきの事でお話が……」

 

「あん?」

 

 

 誰がヤスに話しかけたかは伏せておこう。そして今、違法ビルダーの誘いを蹴ったマツオはアイと対決する事になった。

 

「文句は言えない。かといってどっちも気に入らないし応援なんて……どうしよう……」

 

「へっ、何も問題ないですよ」

 

 不安で肩を強ばらせるテツ、反面ヤスは余裕だ。

 

「ど……どうしたの……?」

 

「応援しましょう。俺達であのAGEの女を……」ヤスは小学生とは思えない悪どい表情で笑った……。

 

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 そしてバトル一回戦が始まる。フィールドは『北アフリカ砂漠地帯』『ガンダムSEED』に登場した砂漠だ。雲一つない青空、見渡す限りの砂と灼熱の大地。遮蔽物のないフィールドはガチンコで戦うにはピッタリな空間だろう。三機とも木馬の様な母艦、アークエンジェルから出撃する。

 

「前にあの三兄弟と戦ったのと似た様なフィールドになったわね」

 

「うん、でも私達もあの兄弟達も随分変わったはず、気を付けていこう!」

 

 機体を飛ばしながら、ナナの問いにアイが答える。今回のチームはアイ&ナナのAGE−3E、ソウイチのバイアラン・スパイダー、そしてヒロのウイングガンダムノヴァだ。

 

「見通しがいい所為か遠くの敵の母艦『レセップス』が見えるっスよ」

 

 『ガンダムSEED』に登場した顔のないスフィンクスの様な姿の陸上母艦レセップス、そこから敵対チーム『ストレイキャッツ』の三機が飛び出してくる。機体のサイズ的にここからでは光の粒ぐらいにしか見えないが。その中でひときわ凄い勢いで突っ込んでくる機体がある。恐らくマツオのジ・Oだろう。

「あれか!!」

 

 アイ達はここぞとばかりにジ・Oめがけて撃ちまくる。しかしジ・Oは左右に動き射撃を回避しながら突っ込んでくる。凄まじい加速力だ。そうこうしてる内にジ・Oの姿が確認できた。背中にライトニングバックウェポンシステムMk-IIを取り付けており、更に機動力を底上げした機体だ。

 

「クッ!なら」

 

 ソウイチがバイアランの左右のライザーソードを展開。数百メートルに及ぶビームソードが出現。

 

「っ!ソウイチ君!待って!!」

 

「こいつでぇっ!!」

 

 アイの制止を聞かず、ソウイチは相手を薙ぎ払おうと、ライザーソードを大きく振るう。数百メートルに及ぶライザーソードは遠くで砂を巻き上げながら広範囲を爆発させる。そして巻き上がった砂塵はジ・Oを巻き込んでいく。バイアランが振り切った時はジ・Oはその場から消えていた。

 

「やったか?!!」

 

「元ウルフのメンバーも随分短絡的な手を使う様になったもんだな」

 

「っ!!」

 

 バイアランの上空にジ・Oはいた。すかさず上に対応しようと両腕を上げるソウイチ。しかしジ・Oはバイアランの攻撃が飛んでくる前に背中の左右のブースターの向きを器用に変えてバイアランの背後に立つ。後ろを取られたと判断したソウイチはすぐさま背中の大型バーニアを全開にしようとするが、

 

「逃がすか!!」

 

 マツオの声が響くと同時にジ・Oの首の左右のビームキャノンからビームサーベルが発生、バイアランのバーニアと両肩をあっという間に切り裂く。バイアランの両腕とブースターが砂漠の砂地に落ちた。

 

「なっ!」

 

「ソウイチ君!」

 

 驚きの声を上げるソウイチ、アイ達はすかさず救援に向かおうとするが。突如アイはAGE−3Eの歩を止める。

 

「何?!なんで止まるのアイ!」

 

「周囲を見て」

 

 ナナは周囲を見て驚愕する。丸い物に棒状の物が四方向突き出してる小型の物体。それが周囲にいくつも浮かんでる。浮遊機雷、ハイドボンブだ。上空を見ると浮遊機雷を盾からばら撒いてる機体が見えた。『Zガンダム』に登場した『パラス・アテネ』。機雷をばら撒いてるその機体はギャンバルカンのパーツを身に着けており、両手に持ったギャンのシールドからハイドボンブをばら撒いていたのだ。(なおギャンバルカンのキャノン砲と干渉する為、パラスアテネの肩のアーマーの角度は下げてある)

 

「浮遊機雷か!なら、ばら撒いてる奴ごと誘爆させる!」

 

 ヒロのウイングノヴァがバスターライフルをパラス・アテネ向けて構える。が、直後ヒロのGポッドに警告音が入る。後ろから二条のビームが飛んできたのだ。すかさずシールドで防御するヒロのノヴァ。

 

「何だ!三機目がいるのか!?」

 

「ヒロさん!機雷はこっちで!」

 

 アイが機雷に両腕のバルカンを撃ちこみ誘爆させる。しかしソウイチのバイアランはすでにマツオのジ・Oに背中から捕まれ。空高く飛んでいた。

 

「くっ!離せよ!!」

 

 ソウイチはバイアランの脚裏のサーベルを使ってジ・Oの足を破壊しようとするも出来ない、ジ・Oの腰フロントアーマーに収納された隠し腕に足をがっちり掴まれていたのだ。そしてジ・Oは落下体勢に入りライトニングバックウェポンシステムMk-IIのバーニアを全開にする。頭を下にしたバックドロップの体勢だ。

 

「ジ・Oセメントクラッシュ!!!」

 

 マツオの叫びが木霊する。あっという間にジ・Oは頭から地面に落下。

 

「うわぁぁっ!!」

 

 ソウイチの叫びが聞こえた。搭乗機のバイアランの上半身は地面に激突した衝撃でひしゃげ、めり込んだまま動かない。ゆらっとジ・Oは立ち上がりアイ達に向き直った。

 

「次はお前らだ。ヤタテ!」

 

「ま!待て!」

 

 そのままマツオはアイ達に突っ込もうとするが。ソウイチの叫びに止まる。まだソウイチのバイアランは生きていた。両腕を、頭部を失ってなおジ・O目がけて残りのバーニアをふかし足裏のビームサーベルで戦おうと突っ込む。

 

「うぉぉおおおお!!!!」

 

「まだ諦めねぇか!いいだろう!ならこのフィニッシュホールドで答えてやるぜ!!」

 

 そう言うとマツオはバイアラン目がけ背中のバーニアを全開、自らの片腕を広げ突っ込んだ。ラリアットの体勢だ。バイアランも飛び蹴りの体勢でジ・Oに突っ込む。

 

「ただのラリアットでビームサーベルに勝てるもんか!!」

 

「笑止!!」

 

 直後、ジ・Oのラリアットが赤く輝く、そして輝いた腕はビームの刃を飴細工の様に砕く。

 

「この輝きは!ビルドナックル?!」

 

「ビルドッッ!!!ボンバァァッッ!!!!」

 

 マツオは叫ぶ。ラリアットはバイアランを襲い、空高く吹っ飛ばした。その衝撃たるやバイアランの全身に亀裂が入る。

 

「この威力……。ガンプラ魂が……、でも、ヤタテさん!こいつの戦い方は!!」

 

 言い終わらない内にソウイチのバイアランは爆散、空高くでの爆発だった為、バイアランの破片が周囲に雨の様に降り注いだ。当然アイ達もそれは見ざるを得なかった。

 

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 観戦席ではソウイチがやられた姿を、彼の母親、カナコはしっかりと見ていた。

 

「あぁーっ!ソウイチーっ!!」

 

 倒される息子に母は嘆きの声を上げる。

 

「よっしゃ!!マツオの奴派手に決めやがった!!」

 

「俺達のアイディアも盛り込んだんだ。これ位やってくれないとな!!」

 

 その近くでマツオの先輩二人はマツオに対しての称賛の声を上げる。先輩をはじめとした周囲の反応はカナコとは違った。派手なパフォーマンスによりバイアランを破壊した事により歓声が起こる。今回は今までとは規模の違う大会だ。観客も多く、その声も大きかった。試合を見ていたアイの仲間達はそれを複雑な表情で見ていた。

 

 

 そして再びガンプラバトルの内部では…

 

「アサダがっ!!」

 

 ナナが驚愕の声を上げた。マツオが本当に強くなっていたのが正直驚きだった。そして観客席からの歓声はガンプラバトルの中にまで届く。

 

「んんーっ。いい声援だぜ……耳に染み渡る」

 

 マツオはそれを穏やかな表情で聞き取る。

 

「てかアンタ本当にあの卑怯だった三兄弟?!ぜんっぜん感じ違うんだけど!!」

 

「そう思うだろうな!俺はこの四か月!自分を変えたつもりだぜ!!」

 

 そう言うとジ・Oは両腕でビームサーベルを持ちながら斬りかかってくる。相手を掴むために隠し腕も展開した。

「フォール狙いで行くぜ!!」

 

「っ!!アイちゃん!技の一つ一つが大きい!掴まれたら終わりだ!距離を取って戦って!」

 

 パラス・アテネの相手をしながらヒロが叫んだ。

 

「クッ!解ってますよ!!」

 

 アイもAGE−3Eの右手にバスターライフルを、左手にGNソードライフルモードで迎え撃とうとする。迫るジ・Oにバスターライフルを撃つアイのAGE−3E、しかし軽くかわすとジ・Oは突っ込んでくる。アイもジ・Oに向いたまま後ろに下がりながらも射撃で応戦。しかしそんなAGE−3EにGポッドからの警告音が走る。

 

「後ろ?!」

 

 しかし正面からもジ・Oがすぐそこに迫る。ジ・Oは隠し腕でAGE−3Eをつかもうとする。その上の両手にはビームサーベルが握られてる。隠し腕でこちらを抑え込んでからビームサーベルで切り裂くつもりだろう。シャコのパンチの様に隠し腕が素早く飛び出す。相手を上から押さえつけようとするのはレスリングの基本だ。

アイはさせまいと、AGE−3Eの両腕の袖からビームサーベルを発生させ振るう。ジ・Oの隠し腕が片側、切り裂かれ宙に舞う。

 

「ほうっ!!」

 

 マツオの関心の声が上がる。自分では素早く動かしたつもりだが、向こうは簡単に対応してくる。ならば力比べとマツオはビームサーベルを直接AGE−3Eに振り下ろす。AGE−3Eはそれを受け止めた。パワーだったらAGE−3Eも負けてはいない。「押し返せる!」同乗していたナナは一瞬確信するが、

 

「ッ!アイ!後ろからビームが!!」

 

「っ!?」

 

 AGE−3Eの背中にビームが迫ってくる。アイはAGE−3Eの位置をすり足でずらす。AGE−3Eのすぐ横で爆発が起きる。

 

「うわっ!!さっきの警告音の奴!?」

 

「アイツ!余計なことを……だが!チャンスだ!」

 

 ひるんだAGE−3Eを残りの隠し腕でつかもうとするジ・O、だがアイもこう来るというのは分かっていた。右足をハイキックの要領で蹴り上げる。右足にはGNソードUがマウントされていた。足の剣先はジ・Oに迫る。

 

「ぬぁっ!!」

 

 すんでの所で下がるジ・O。のど元をGNソードが通り過ぎた。

 

 

 所代わってヒロとパラス・アテネのバトルはヒロの方が優勢だった。パラス・アテネの方はシールドミサイルと背中のガトリングキャノンで弾幕を張りながらウィングノヴァを圧倒しようとするも相性が悪い。

 

「実弾の弾幕ならこっちが有利だ!!」

 

 ヒロは叫びながらツインバスターライフルを放つ。高出力のビーム兵器を持ったウィングノヴァには実弾の弾幕も意味をなさない。大型のビームで弾幕ごと飲み込んでしまうからだ。ひるむパラス・アテネのビルダー、その隙にウィングノヴァは右腕にビームサーベルを握り、一気にウィングノヴァは距離を詰める。パラス・アテネをビームサーベルで横一文字に切り裂こうとする。

 

「っ!!」

 

だがパラスアテネはシールド中心部からビームサーベルを発生させノヴァのビームサーベルを受け止めた。

 

「何っ!?」

 

 直後、ノヴァの真横からビームが飛んでくる。隠れている三機目だろう。とっさにヒロは左腕のシールドで防御。そこからパラスアテネは鍔迫り合いのままシールドの弾幕を撃ちまくる。至近距離からのミサイルにノヴァは思わず後退。

 

「くそっ!いいタイミングで撃ってくるな!!」

 

「……悪いけど、このまま時間は稼がせてもらうわよ。あんちゃんの邪魔はさせない!」

 

「?!」

 

 パラスアテネからビルダーの声が発する。ヒロは違和感を覚えた。女の声だったからだ。

 

 

「フフフ……いいねぇ!お前を倒せば大歓声が期待できそうだ」

 

 アイと対峙したマツオはニヤリとした笑みを浮かべる。アイは「歓声?」と聞き返した。

 

「そうとも、観客たちは面白いバトルを望んでる。俺の最高の技で……お前をぶっとばすのさ!!」

 

 そう言うとマツオは再びジ・Oのビームサーベルを構え斬りかかってくる。

 

「改心したと思ったら、自己顕示欲ばっかり強くなっちゃったみたいでまぁ!!」

 

「改心?!俺は別に改心した覚えはないぞ!!覚えたのは、自分への自信と!勝利の美酒だけだぁ!!」

 

 マツオはそう叫びながらAGE−3Eに斬りかかった。

 

「俺は!お前が別のビルダー達から挑戦を受けていた時!大学のレスリング部でひたすらトレーニングを繰り返していたんだ!!」

 

 そしてお互いの機体がぶつかり合いあいながら、マツオは自分がどんな経験をしてきたか話し出す。

 

――そう、その厳しい生活はとてもじゃないがお前への打倒のガンプラの製作も、ガンプラバトルの特訓も両立できるものじゃなかった。無理やり勧誘されたレスリング部だったが、正直どちらかは辞めようかとも考えていた。だが――

 

「ケイ、いるかー」

 

――ある日、俺がガンプラを作ってる時に先輩は俺が一人暮らしをしてるアパートに来た。――

 

「へーガンプラか。最近流行のガンプラバトルとかやるのか?」

 

「はは、まぁ、ですがどうも勝てなくて自信持てないですよ」

 

「勝つ自信か。そこでお前に朗報だ。お前次の試合に出ろ」

 

――あろう事か先輩は俺に試合に出ろと言った――

 

「待ってください!俺は全然試合経験ないんですよ!!大事な試合に俺なんかが!」

 

「もちろん大事な試合だったらお前は出さないよ」

 

「なっ!!」

 

――そして俺は試合に出た。レスリングはマットに両肩をついた方の負けだ。俺はとにかく勝つ事だけを頭に無我夢中でフォールを狙った……相手を押さえつける事だけを頭に!そして勝った!その時の小さいながらも起こった歓声と拍手、褒めてくれた先生と先輩、その感覚が忘れられなくなった!そしてもっと自分を高めたいと思った!――

 

 

「そして俺はこの経験をガンプラバトルでも活かせないかと考えた。そして先輩のアイディアや自分の経験を元に作り上げたのがこのジ・Oグラップラーだ」

 

「確かに見事な改造だよ。プロレスをジ・Oにやらせるとはね」

 

「へ!ありがとよ。最もレスリングとプロレスは厳密には別物だがな」

 

「回想聞く限りはいい話っぽいけど、結局それで勝利に酔いたいのが目的なら台無しね!」

 

「フン!言ったろうが!俺は別に改心した覚えはないと!それにな!!」

 

 引き撃ちするアイのAGE−3Eに対し、ビームサーベルで切りかかりながらマツオは叫ぶ。元々自己顕示欲と承認欲求は持っていたのがマツオだ。表面上な部分と精神的な余裕は良き方向に進んだが根っこの部分は変わっていなかったと言う事だろう。

 

「ガンプラバトルってのは相手のガンプラを壊せばいいんだぜ!!折角壊すなら!ド派手な技で壊すのが相手のガンプラと!作った奴への手向けってもんだぜ!!」

 

「アンタ……本当に変わってない!!」

 

 

 アイとマツオの戦いの一方で、ウイングノヴァとパラスアテネの戦いは決着を迎えようとしていた。押され切ったパラス・アテネはシールドを失ってる。

 

「二機そろって必死に僕を止めようとして!アイちゃんとのバトルに水をさして欲しくないって事かな!」

 

「そうよ!あのお姉ちゃんを倒すのはあんちゃんの目標だったんだ!!その為にあんちゃんは自分を磨いてきたんだから!!」

 

「そうか!!」

 

 ヒロが叫ぶ。同時にウィングノヴァのビームサーベルがパラスアテネの胴体を横一文字に切り裂いた。

 

「あ!あんちゃん!なーんちゃって!!」

 

 慌てた声から一転、おどけた声と共にパラス・アテネの無事だったバックパックが分離し飛んでいく。二門のガトリングキャノンを備え付けた脱出機。ヴァリュアブルポッドだ。

 

「しまった!浅い!」

 

 相手はそのまま離脱しようとするが、ヒロは逃すものかとバスターライフルを構えた。しかしそれもGポッドへの警告音で我に返る。またもウィングノヴァの後方から二条のビームが飛んできた。三機目の援護だろう。

 

「うぉっと!!」

 

 難なくかわすヒロ、すかさずツインバスターライフルを左右に分割し、ヴァリュアブルポッドと撃ってきた三機目に向けてそれぞれのバスターライフルを構える。だがさっきの隙をついてヴァリュアブルポッドはとうに離脱。横槍を入れてきた三機目も姿を消していた。

 

――しまった。見失ったか……本当タイミングで撃ってくるな……とはいえ襲ってこないと言う事は、アイちゃんと合流した方がいいか――

 

アイが集中して狙われたら面倒だとヒロは判断、ここから確認できるアイとマツオのバトルの場へと飛び立った。

 

 

 こちらのバトルも佳境に入りつつあった。対峙した二機、ジ・Oの左腕は再び赤く輝きだす。ソウイチのバイアランを破壊したラリアット技『ビルドボンバー』だ。更にジ・Oは首のビームキャノンとビームライフルを併用し牽制、AGE−3Eの動きを止めようとしながら突っ込んでいく。バックウェポンのバーニアが一層火を噴いた。砂塵を巻き上げ瞬く間に距離を詰める。

 

「ビルド!!ボンバー!!」

 

「ッ!!ナナちゃん!!」

 

 ビルドボンバーがAGE−3Eに当たる直前、AGE−3Eは分離し回避、そしてすぐさまジ・Oの真上の上空で合体。ジ・Oが上に対空攻撃を仕掛ける前に、AGE−3EはGNソードUをジ・Oめがけて大きく振りかぶる。そして力いっぱい投擲した。

 投げたGNソードUに対し――脳天からやられるか?!――とマツオは焦り回避しようとする。ジ・Oが動く前にGNソードUはジ・Oに届いた。その一撃はジ・O本体には命中せず、背中のバックウェポンとバックパックのジョイント部を切り裂いた。

 

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「あれ〜背中だけ?アイちゃん外しちゃった?」

 

 観客席でアイの攻撃に疑問を持ったタカコが口にする。その隣でツチヤが答える。

 

「いや、あれでいいはずだよ。だって……」

 

 その周りでどんどん観客の歓声は大きくなっていった。派手なパフォーマンスを好むマツオの立ち回りは場を大きく盛り上げていった。

 

「うおおー!!ケイ!やっちまえー!!」

 

 先輩達もノリノリで叫ぶ。

 

 

「し!しまった!!ライトニングバックウェポンが!!」

 

 マツオの狼狽した声が響く。彼にとってかなり重要な部位だったらしい。

 

「さっきソウイチ君にかけた技を見てて思ったよ。確かにあなたの技は強力だけど。それの多くが背中のバックウェポンの突進力に頼った物。そこをつけば脆いってね!」

 

「アサダの奴はね、やられながらもそれをアタシ達に伝えようとしたってわけ」

 

「そういう事かよ……。だがこうでなくちゃ面白くねぇ!!お前を倒すのは俺だ!これ位で戦う術を無くす俺じゃねぇぜ!!」

 

 技の要を失ってなお、ジ・Oはビームサーベルを両手に構えAGE−3Eに斬りかかろうとする。だがその時だった。

 

ビキ……ビキビキ……

 

「ん?なんだこの音」

 

 マツオが突如自機から発する音に首を傾げる。

 

「アイ!見て!」

 

 ナナが驚きの声を上げた。さっき破壊したジ・Oのパーツが再生しているのだ。それはまぎれもなく違法ビルダーの再生システム『アインヘルヤルシステム』だった。

 

「アンタ、それ違法ビルダーのギミックじゃない!なんでそれ持ってるのよ!!」

 

「ま!待て!俺は違法ビルダーになった覚えは!」

 

 

 マツオのうろたえぶりとマツオのジ・Oが再生した事はギャラリー達にも衝撃的だった。先ほどの派手な歓声は鳴りを潜め。どよめきの声が次第に出てくる。

 

「あの人……違法ビルダーだったの?!」

 

「どうだろう。あのうろたえぶりはなんか引っ掛かる」

 

 ツチヤの疑問を余所に、別の場所では誰かが声高らかに叫んだ。

 

「おい!!やっぱりアイツは違法ビルダーだったんだ!いい子ぶってクリーンファイトやってる様な真似してずっと俺達を騙してたんだな!!」

 

 違法ビルダーのヤスだった。

 

「アイツ……違法ビルダーの!自分の事は棚に上げて!!」

 

 ツチヤが渋い顔をして言った。ヤスも違法ビルダーなのに、自分の事は新世代ビルダーと名乗り、自分の事は棚上げし、マツオの事はいかにも悪人と言った風に叫ぶ。そんなヤスを知るツチヤ達は怒りの感情が湧いてきた。だが彼に同調するギャラリーもいた。

 

「本性は卑怯な違法ビルダーだったのかよ!情けないぜ!!」

 

「そうだな!!俺ファンだったのにこの有り様かよー!!」

 

「違法ビルダーだったなんて!さっさとガンプラバトルなんかやめちまえー!!」

 

 ヤスを中心に徐々に暴言を吐くギャラリーが増えてきた。この流れにツチヤは違和感を覚える。

 

「なんだ?!周到すぎる!」

 

「打ち合わせでもしたみたい……あの同調してるの……多分彼らも違法ビルダーでしょうね……サバイバルの時見なかった人も多い……」

 

「そうね。でも普通の人達も影響されてるみたい……」

 

 ムツミとカナコも違和感を感じたようだ。だが次第にギャラリーの暴言はどんどん広がっていく。違法ビルダーを嫌う人達はもちろん、それ以外でも元々エキサイトしていたギャラリー達だ。それ故に悪く言う方向に行くのも簡単だった。

 

 

 歓声はどんどんブーイングへと変わっていく、それはマツオの心を抉っていった

 

「ち!違う!俺は!俺は違法ビルダーなんかじゃ!!」

 

 外に向けてマツオは弁明を叫んだ。しかしブーイングに勢いづいたギャラリー達は止まらない。

 

「違う!違うんだぁ!!」

 

 その場に膝をつき、四つん這いの体勢になるジ・O。相手のAGE−3Eの目の前で、だ。

 

「アイ、どうしよう?ちょっとこの状況はアタシも異常だと思うけど」

 

「ナナちゃん…私もだよ。チャンスといえばチャンスかもしれないけれど、この状況で倒すのもちょっと違うと思う」

 

 アイとナナはどうするか思案していた。このうろたえぶりはわざとやった様には思えない。……しかし、それとは別問題で、今棒立ちになっているAGE−3Eを倒すチャンスなのは明白だった。

 

「……兄ちゃんがあそこまでショックを受けるのは意外だったけど、決めさせてもらうぜ!!ヤタテ!!」

 

 AGE−3Eを狙う機体が照準をAGE−3Eの背中につける。そして撃とうとした時だった。

 

「させるかぁっ!!」

 

 ヒロの叫び声が聞こえた。ヒロのウィングノヴァの放ったバスターライフルの最大出力が砂漠のある地点を撃った。ビームの濁流は大地を飲み込み今までで最大の大爆発を起こす。その爆発はバスターライフルの着弾地点を中心に、広がる様に砂が滝の様に落ちていった。今の一撃が砂漠に大穴を開けた。

 

「な!何!」

 

 後ろで起こった大爆発にアイもナナもマツオも一斉に向いた。そして穴がこちらに広がっているのが見えた。

 

「大地が落ちて行ってる?!うわっ!!」

 

 そのままAGE−3Eもジ・Oも落ちていった。地下には古代ギリシャの様な遺跡が広がっていた。ところどころ砂に埋もれてはいるがそれはまぎれもなく上の砂漠と同じ位の広さの巨大な空間だった。AGE−3Eもジ・Oも地下の砂の上に降り立つ。

 

「何これ?!地下に古代遺跡?!」

 

「ステージ元ネタの漫画版であったんだよ。このシチュエーション。ステージの仕様が変わったって事だね」

 

「ん?ねぇアイ!あれ見て!!」

 

 アイはナナの指定した地点を見た。少し離れた場所に半壊状態の手足の生えた黒い烏賊の様な機体『グーン地中機動試験評価タイプ』が見えた。『ガンダムSEED』に登場した水陸両用機『グーン』のバリエーション機だ。この機体の特徴はその名の通り地中を潜航出来ることだ。キット化されてない為、自作かプロショップに作ってもらったかのどっちかだろう。

 

「うぅ、な、直さないと……」

 

 タケオの声が響いた。乗っていたのはマツオの弟だった。タケオが言うとグーンのモノアイが一瞬光る。すると半壊したグーンのボディが見る見るうちに再生していく。

 

「た、タケオ。お前そのシステムは」

 

 再生するタケオに気づいたマツオが近づいた。

 

「兄ちゃん、ゴメン。俺が以前のヤスって奴に頼んで違法ビルダーのデータを売ってもらったんだ」

 

「な!ならどうして俺の方まで再生した!このジ・Oは普通に作りこんだ機体の筈だ!」

 

「データいじって再生プログラムが兄ちゃんのジ・Oにも反映する様にチップ付けたんだ。あの時の違法ビルダーから買った!」

 

「っ!お前!!」

 

 ジ・Oはグーンを蹴り飛ばす。「うわぁっ」というタケオの声、アイ達は「あっ!」と声を上げた。

 

「何故だ!何故こんな余計な事しやがった!!」

 

「ちょ!ちょっと!こんな時に兄弟喧嘩はやめてよ!!」

 

 なおもグーン殴り掛かろうとするジ・Oを思わずAGE−3Eはしがみついて止めた。

 

「お!俺は!兄ちゃんに勝ってほしかったんだ!」

 

「俺の為だと……?」

 

「兄ちゃんはあの姉ちゃんに勝つために自分を鍛えていた。でも兄ちゃんが強くなってもあの姉ちゃんは更に上を行っちまう!加えて俺達は兄ちゃんみたいに強くはなれなかった!!」

 

 震える声で答えるタケオ。しかしマツオにそんな言い訳が通用するわけでもなく。彼の怒りに火を注ぐだけだった。

 

「お前ぇっ!!そんなのが俺の為になったとでも思ったのかぁっ!!」

 

-5ページ-

 そしてそれを見ていたヤスも面白がって煽る。

 

「ハハハッ!こんなセコイ手でしか手助けできないなんてな!そんな兄貴の方も相手に敵わない!」

 

「恥かくために出た様なもんじゃねぇか!!兄弟揃って無意味なんだよ!!」

 

 騒ぎ立てるヤスや違法ビルダー達、それを無言で見つめるマツオの先輩達……。

 

 

 そしてなおもマツオの身はブーイングに晒される。罵声を身に浴びるマツオは怒りと情けなさで押しつぶされそうになる。

 

「お!俺は……自分のスタイルを築いてきたのに……ようやく自分でも楽しいって思える様になってきたのに……!こんな!こんな!!」

 

 その時だった。ヒロのウィングノヴァが上空に向けてツインバスターライフルを最大出力で撃った。撃った時の轟音は罵声を一瞬消し去る。

 

「お前らっっっ!!!!!だまれぇぇっっ!!!!!!!!!」

 

 すかさず罵声を上回る大きさのヒロの絶叫がフィールドに、観客席に響いた。その場にいたほとんどが唖然とする。

 

「確かにタケオ君は違法ビルダーに手を出した!!!でもそれはお兄さんにそれでも勝ってほしかったという意味だろうっっ?!!お前らに彼らを悪くいう資格なんかないっっ!!」

 

 すかさずヤスは大声で反撃に出る。

 

「綺麗事ぬかしやがって!!違法ビルダーに手を出したのは事実だろうがぁ!!兄貴も兄貴だ!!弟のそんな気持ちも理解しないまま試合に出させやがる!!どいつもこいつも自己中な悪人だって事だろうが!!」

 

「自己中なもんか!!少なくとも弟さんは兄さんに勝って欲しいという気持ちは本物だっっ!!!さっき僕はお兄さんのチームメイトと戦った!彼らはお兄さんがアイちゃんと存分に戦える様僕を必死に足止めしていた!!『アイちゃんを倒す事は兄さんの目標だった!だから邪魔はさせない!』って!!そんな風に慕われるお兄さんが自己中なもんか!!彼らは善人だ!さっきみたいな事になったのも少し不器用だっただけなんだ!!僕はそう信じる!!!」

 

 

「ヒロ……」

 

 観客席でヒロの剣幕を見ていたチーム『エデン』のメンバー達、

 

 

「……もういいぜ。ヒロさんよ」

 

「?!マツオ君……」

 

「元々俺達は嫌われていた。今更好かれる側になろうなんて虫が良すぎたってだけだ」

 

「だったら!!なんでさっき君を見ていた観客たちは君に歓声を送ったんだ!!」

 

「そうだよ。ヒロさんの言う通り。嫌われてたら歓声なんて送ってないよ」

 

「へっ。自分の行いを改めたのも、自分でちやほやされる目的だったんだがな」

 

「それでもそれを見て楽しんでくれた人がいたのも事実だ!」

 

「あんちゃん。その人達の言う通りだよ」

 

 その時だった。ジ・Oの後ろに一機の戦闘機がホバリングで止まる。さっきヒロが逃がしたヴァリュアブルポッドだ。

 

「チトセ……」

 

 ヴァリュアブルポッドから発する声はアイ達にも聞こえた。しかもそれはアイ達全員が聞き覚えのある声だった。

 

「あ……アイ、今の声って……」

 

「しかも『あんちゃん』って……まさか!」

 

 アイは愕然とする。口ぶりからしてさっき会った人物だ。

 

「アイお姉ちゃん。そうですよ。チトセです。フルネームは『ケイ・チトセ』あの三兄弟は四兄妹なんです」

 

 アイとナナは開いた口が塞がらなかった。余りにも似てない妹だったから。

 

「う……嘘……」

 

「アハハ、言いたい事は解りますけど今はそんな事言ってる場合じゃなくて、あんちゃん。タケあんちゃんがやった事は確かに許せないよ。でも、一度はああやって皆を沸かせたんだもん。またさっきみたいに全力でやればきっと皆分かってくれるよ。だってあんちゃんはさっき言われた通り、自分の為とはいえ皆を楽しませたのも事実なんだもの」

 

「だが……」

 

「あーもうウジウジしないでよ!ただでさえ試合中で時間惜しいのに!!いいから早くさっきのノリでやんなよ!!やんなかったらあの秘密!ここでバラすから!!」

 

「な!何!わ!解った!解ったからここで言うな!!」

 

『秘密って何。凄い気になる』という全員が感じた疑問をよそにマツオのジ・Oは再び目に力強い光を灯した。

 

「恥ずかしい所を見せたな。今度は手加減なしでいくぜ」

 

「かかっておいで!」と身構えるアイのAGE−3E。

 

「いや、悪いがまずはお前と戦いたい。ヒロ」

 

 さっきまでの狼狽ぶりを誤魔化すかのようにヒロのノヴァをジ・Oは指さす。

 

「?僕を?」

 

「さっきあぁ言われたらな。俺の中で妙なスイッチが入りやがった。先にお前を倒さなきゃ気が済まなくなったぜ」

 

「そうか。解ったよ。相手になる」

 

「ふ、そうとなりゃこの直した部分はいらねぇな」

 

 そういうとマツオはさっきアイに破壊されたライトニングウェポンと隠し腕をはがそうとする。しかしヒロはそれを止めた。

 

「待ってくれ。それだってタケオ君の勝ってほしいという気持ちだった筈だ。どうか直したままで戦ってほしい」

 

「何言ってんだお前」そう返そうとしたが、無視できない言葉だった。

 

「……変な奴だな。お前。後悔すんじゃねぇぞ!!」

 

 そう言うとお互いはビームサーベルを発生させ、一気に距離を詰める。

 

「アイちゃんは手を出さないでくれ!!」

 

 そう言うとヒロは両手にビームサーベルを構えジ・Oに斬りかかる。(バスターライフルは分割し盾に装着)ジ・Oもまた両手とビームキャノン部のビームサーベル、計四本で切りかかる。

「こいつに接近戦を挑むたぁ無謀だな!!」

 

 隠し腕でノヴァをつかもうとしながらマツオが叫ぶ。ヒロはそれを器用にかわし剣を捌く。ツインバスターライフルは使えない。さっき何度も撃った所為でノヴァにはエネルギーに余裕がないのだ。砂に埋没した古代遺跡で戦う二機は、さながらコロッセオで戦う剣闘士の様だった。

 

「負ける気は無い!!」

 

 ノヴァは牽制として首横からマシンキャノンを発射、狙うは構造上弱い関節と隠し腕、察知したジ・Oは後方へホバーしながら下がる。そしてある程度距離を取るとすぐさまバックウェポンを全力噴射し突っ込んできた。凄まじい突進力だ。

 

「っ!来るか!」

 

 ノヴァが下がろうにもジ・Oの突進力は凄まじい。避ける事自体余計とヒロは判断、正面から受け止めようとビームサーベルを構えた。

 

「うぉぉおおっっ!!!」

 

 マツオの咆哮と共にビームサーベルを振り上げ衝突するジ・O。砂塵舞う中ノヴァは二本のビームサーベルでそれを受け止めた。といってもその勢いにノヴァは鍔迫り合いの体勢のまま相当後ろに下がることになるが、

 

「くっ!!ぅぅぅっっ!!!」

 

 ジ・O衝突の勢いに足がガクガクと震える。進路上の石造りの建築物に背中から突っ込んで突き破る。遠くで残りの二人と戦っていたアイとナナは思わず「ヒロさん!」と叫んだ。しかしノヴァは倒れる事無くしっかりとジ・Oを受け止めた。やがて勢いも無くなり止まる二機。

 

「ほう!コイツの勢いに耐えるとはなぁ!!」

 

「当然だ!僕だってこいつに自分の全てをつぎ込んだんだ!!」

 

「だがな!!」

 

 マツオの不敵な笑み、直後ジ・Oがライトニングバックウェポンを最大出力で上空へ飛び上がる。ノヴァも一緒だった。ジ・Oの隠し腕はノヴァの脚を掴んでいたのだ。ジ・Oは程なくして穴から脱出、それでもなお上空へと飛び続ける。ロケットの様な推力だ。

 

「うわっ!!離せ!!」

 

「詰めが甘いぜ!!俺のド派手な技!『ジ・Oドライバー』で砕いてやる!!」

 

 そういうとマツオはノヴァをひっくり返し、ノヴァの頭を下に向ける。両腕を隠し腕に掴まれ。両足を両腕に掴まれたパイルドライバーの体勢だ。(ノヴァの前後の向きはジ・Oと向かい合う体勢だったりする)そして地面に向けてジ・Oは真っ逆さまにバーニアを点火、落ち始めた。

 

「この技はジ・Oの構造上、尻もちが付けないんでな!!立ったままの体勢で地面に降り、その衝撃で相手を股のスタビライザーで砕く!!この股を格好悪いという奴もいるがそれは違う!敵を潰す断頭台ってわけだ!!」

 

「くっ!!このぉ!!」

 

 ヒロは最大パワーでジ・Oの拘束から逃れようとする。しかしジ・Oの腕を振りほどくことは出来ない。

 

「諦めろ!そのウィングのパワーじゃこいつからは逃れられない!!」

 

 ノヴァは上半身を反らせ、エビぞりの様な体勢になる。その時だった。ノヴァの左腕からシールドが射出され。ノヴァの背中に装着される。飛行形態。バードモードになろうというのだ。

 

「負けられないんだ……僕には!!果たさなければならない事があるんだ!!」

 

「バードモードで脱出しようってか!!無駄だ!その推力じゃコイツからは……なにぃっ!!!」

 

 突如ノヴァのボディは青く輝く。エネルギーの幕を全身に張ったのだ。しかもこれには攻撃判定があり、ジ・Oの接触していた部分はすぐさま蒸発。ジ・Oの拘束を解いたノヴァは脱出した。

 

「切り札は最後まで取っておくものだよ!!」

 

「くっ!お前!!」

 砂漠で青空の下、バードモードのノヴァは反転、青いエネルギーを纏ったままジ・Oに突撃をかける。

 

「うぉおおっっ!!」

 

「拳がなくったってなぁ!!」

 

 ノヴァに向かい合うジ・Oの右腕が赤く輝く。ソウイチを葬ったラリアット『ビルドボンバー』だ。ジ・Oもまた最大推力でノヴァに向かっていった。

-6ページ-

「ビルド!ボンバァァッ!!」

 

「ノヴァ!!ストラァァイクッッ!!!」

 

『うわぁぁあああああっっっ!!!!』

 お互いが自分の全てを技にかけ、相手へとぶつかっていく。ノヴァの青い光、ジ・Oの赤い光、ぶつかり合う時にはまばゆい光がフィールドを覆った。

 

「うわっ!!凄い光!!」

 

「どっちが勝ったの?!」

 

 タケオのグーンとチトセのヴァリュアブルポッドを破壊し、遺跡から上がってきたアイのAGE−3Eは光量に目を覆った。暫くしても光は収まらない。少し光が収まるとアイとナナは二機を薄目で見る。まだノヴァとジ・Oはぶつかりあったまま膠着していた。二機とも接触部分には亀裂が入っていた。そしてノヴァのシールド先端部分の亀裂は大きくなっていく。

 

「くぅっ!なんてパワーだ!!」

 

「ハハハ!どうやら俺のフォールの様だな!!」

 

「舐めるな!!僕はこんな所でっっ!!終われないんだぁぁっっ!!!!」

 

 再びノヴァの放つ光が、推力が強くなる。その勢いはジ・Oの腕の中にノヴァの機種がめり込み、次の瞬間ジ・Oグラップラーの体はウィングノヴァのボディに引き裂かれた。ジ・Oの上半身が舞う。

 

「なっ!!俺の!!フォール負けかぁっ!!」

 

 マツオは叫ぶ。そして上半身と下半身、まとめて爆発。タケオのグーンを破壊した為、ジ・Oの再生する術は失われていた。これにより、アイ達のチームは勝利を収めた。

 

 

 Gポッドの中、マツオは愛機を取り出し、申し訳なさそうに見つめた。

 

「……お疲れさん、俺のジ・Oグラップラー」

 

 そしてGポッドから出てくると、ギャラリー達は一斉に拍手と歓声を送った。

 

「すげぇ!すげぇバトルだったぞ!!」

 

「本当!感動的だったよ!!」

 

「うぉぉっ!!お前こそ真のビルダーだ!!」

 

 その拍手と歓声は全てマツオに注がれていた。当然その中にはマツオを疑ったライタ達もいた。しかもライタは泣いてるという有り様だ。唖然としていたマツオの顔は次第にほころんでいく。

 

「ありがとうよ!!皆!!」

 

 マツオは笑顔で自分の愛機を高く掲げた。

 

-7ページ-

 

「い!急げ!早く逃げなきゃ!!」

 

 その頃、マツオにヤジを送った違法ビルダー達は会場から一目散に逃げようと廊下を走っていた。

 

「おーっと、逃がさんぞ」

 

「ひっ!!」

 

 ヤスとテツの進路上に数人の大男がたっていた。マツオの先輩達だ。

 

「お前らだな?あんなヤジ飛ばしてマツオを傷つけた違法ビルダーって連中は」

 

「ウメオ君、あのヤスとテツって奴がマツオに暴言吐いて、タケオ君に違法ビルダーのチップを売ったんだな?」

 

「はい。あいつらです」

 

 反転して逃げようとする違法ビルダー、しかしその進路上にも先輩は現れ、退路も塞がれてしまう。

 

「な!なんだよ!俺達をどうしようっていうんだ!」

 

「ひ……ぼ、暴力はやめて……」

 

 ヤスとテツ、他違法ビルダーらは怯えながらも抗議する。

 

「暴力は振るわねぇけど、なにかしらお仕置きはしとかねぇとなぁ」

 

「おぉ、そうだ。明日っからレスリング部で合同合宿あんだろ?折角だから雑用に連れてくんべ、トレーニングにも参加させときゃ少しはいい薬になるだろ。丁度人手が足りなかったしな」

 

「お、名案だな」

 

「ふ!ふざけんな!!初対面の相手に!俺らの親の了承もなしに!!」

 

「じゃ、親御さんに確認取るから一人ひとり電話番号言え」

 

「ぃぃですよ……」(どうせOKなんか出すもんか……)

 

……数十分後……

 

「ほぼ全員OKだってよ……」

 

「う!嘘だぁ!!」

 

「決まって皆『一日中遊んでるか家でゴロゴロしてるんだからいい経験になる』ってご家族の方が言ってたぞ」

 

 それから一週間、違法ビルダーの面々はレスリング部地獄のトレーニングと雑用(と連日の脱走未遂)で死にかける羽目になるが、それは別のお話。

 

……

 

「悪かったよ兄ちゃん……。思えば馬鹿な事をした」

 

「気にすんな。終わったことだ。同じ事をやらなけりゃそれでいい……その、悪かったな。俺も自分が称賛される事ばっかり考えてた」

 

 試合が終わった後。アイ達とマツオ達はラウンジに座りながらお互いの機体を見せ合っていた。マツオとタケオの機体の傍には中に入っていた違法ビルダーのICチップが入っていた。

 

「それにしても妙な話ね。違法ビルダーの機体でもガンプラ魂が使えたなんて、今までてっきり使えないもんだと思っていたわ」

 

「さぁね、今まではデータの塊だったから使おうにも使えなかったのかも」

 

「それにしても、マツオ君のジ・Oもそうだけど、タケオ君の地中用グーンも見事な物だね。原型機は発売されたけどこの機体自体は発売されて無いからね」

 

「でもあんまマジマジと見ないで下さいよ。慣れてない改造だったんで出来は正直……」

 

「そんな事ない。見事だよ」

 

「あ、有難うございます。地中へ潜る機能はifsユニットをグーン内部に取り付けて機体をビームで覆って付けたんですよ。違法ビルダーから買ったのはあくまで再生機能だけです」

 

 照れながらもタケオは自分の機体をアピールする。

 

「……なぁヒロよ。なんでお前、俺を信じた。なんでタケオを庇ってくれた」

 

 ヒロに感じた疑問をマツオは口にする。

 

「……僕の友達は、勝ちたいという気持ちと、勝てない現実にずっと悩んでいたからだよ」

 

「?」

 

「そしてうまくいかない事に、別の友達は少しでも勝つ感覚を思い出させようって違法ビルダーの機体を与えた。でも友達はそのまま違法ビルダーとして普通のビルダー相手に暴れまわる結果になってしまった」

 

「今はそいつは?」

 

「そのまま違法ビルダー側に行ってしまった。この大会に出るって言うから今はアイちゃん達と行動してるってわけだよ。連れ戻す為にね」

 

「……連れ戻せると思ってんのか?お前……」

 

「出来るよ。僕は信じる。その友達も、僕自身も」

 

「……そうかい」

 

 出来るわけない。そう言おうとしたがヒロの口調と表情は真剣そのものだった。マツオは何も言えなかった。なんだかそれを現実に出来る様な気がしたから。

 

「ま、今回は俺の負けだが次は負けねぇぜ、もっと強くなってお前に挑戦するぜ!ヒロよ!」

 

「あれ?あんた確かアイ倒すのが目当てだったんじゃ……」

 

 今までアイ打倒だったのがいきないヒロ打倒になっていた。ナナは疑問を持たずにいられなかった。

 

「い!いいだろ?!別にどっちも倒すのが目標だったんだ!手始めにお前からって事だ!」

 

 狼狽した表情でマツオは答える。そうは言いながらマツオのライバル意識はヒロの方に映っていた。

 

「んー、なんか蚊帳の外ですよ私、妹って衝撃の真実のつもりだったのになんか悔しい」

 

 その横でジュース飲んでたチトセは不機嫌そうな表情だった。

 

「ま〜ま〜、ところでチトセちゃん、マツオさんの秘密ってなんだったの〜」

 

「あーあれですか?あれはですね。違法ビルダー見て『俺もあんな風だったのか』って勝手に落ち込んで〜」

 

「っ!!い!言うな!!それ以上言うなぁぁっ!!!」

 

 慌ててチトセを止めるマツオ、その姿になんだか見てたアイ達は吹き出してしまう。笑い声が周りに木霊した。

 

 

「……アタシ抜きでも、盛り上がってるじゃねぇか……アイ……」

 

 少し離れた場所で、『一回戦を勝ち抜いた』とアイに報告しようとしたノドカは、談笑するアイを柱の陰から隠れながら見ていた。若干むくれながら。

-8ページ-

 

待たせてしまいすいません。先月は忙しかったり身内の都合で神戸に行ってたりとのコンボで書く余裕が余りなく、しかも話を二回程書き直したりで時間がかかってしまいました。元々はマツオが違法ビルダーか疑ってどっちか。という話だったのですがヒロの掘り下げ含めてこうなっちゃいました。おかげで最初重要キャラだったチトセがぶっちゃけいらない子に……次回はもっと早く出来る様頑張ります。ではまた

説明
第44話「求めたのは勝利の美酒と栄光」

 アイ達がエントリーした全国大会県内予選、トーナメントはついに発表、アイ達の初戦の相手はチーム「ストレイキャッツ」聞いた事のないチームに首を傾げるアイ達だったが、そこへ現れたのは以前アイが倒した相手『ケイ三兄弟』だった。
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コメント
mokiti1976-2010さん 読んで頂き有難うございます。本当、どうヤス達を着地させるかなぁ、と色々悩んでますw(コマネチ)
ふむ、ゲス…じゃなかったヤス達はまさに因果応報って所でしょうか。いっそガンプラの事なんか忘れる位、合宿の雑用に明け暮れていれば良いのにとか思ってしまった今日この頃。(mokiti1976-2010)
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