人気店の娘達
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一刀の周りはかなり賑やかになってきた。

 

当初いた蜀の者達だけでも相当だったのに、蓮華がやってきて、華琳もやってきた。

さらに、蓮華と一刀の娘である孫登がやってきた時には、一刀と他の面々でひと悶着あった。

 

これだけでは終わらず、魏の北郷隊三人娘、凪、沙和、真桜、そしてツンツン軍師こと桂花も来ていた。

 

これで驚くのはまだ早かった。

この4人がもたらした情報で、一刀はさらに驚くことになる。

 

それは、この4人以外の魏の面々も、この世界に来ているはずだという事である。

これから訪れるであろう大変な事態に、ため息をつく一刀であったが、華琳の

 

「男冥利に尽きるじゃない。」

 

の一言で全てがおさまった。

 

一刀は、この男ならだれもが羨む状況に、贅沢は言ってられないと思いながら、長生きは出来ないなと感じていた。

 

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そんな学校が休みの日の昼下がり。

沙和がある情報を持ってやってきた。

 

一刀「大人気の中華料理屋?」

沙和「そうなのー。」

 

一刀はみんなと雑談を楽しんでいた。

 

膝の上に孫登を乗せ、その横で璃々が羨ましそうに眺めていた。

一刀の横には華琳、さらには蓮華、あと最近影の薄くなった白蓮と星、月と詠が雑談に加わっていた。

 

一刀「何が大人気なんだ?」

沙和「安くて美味しいんだけど、店員さんが可愛くて力持ちらしいのー。」

一刀「可愛い店員さん・・・。」

 

一刀の発言に皆が反応する。

 

星「一刀殿、やはり可愛い店員は気になりますかな?」

白蓮「北郷は相変わらずだなぁ。」

月「一刀さん・・・。」

詠「あんた!!これだけいるって言うのにまだ足りないっていうの!?」

華琳「男の甲斐性とは言うけど・・・、限度ってものが・・・ね。」

蓮華「娘の手前、そういったことは慎んでほしいのだが・・・。」

 

諦め、呆れ、そして怒りの反応を示され、一刀は話を逸らすことにした。

 

一刀「それで沙和、その中華料理屋がどうしたの?」

沙和「これからみんなで行こうなのー!!」

 

沙和が笑顔で提案した。

 

一刀への攻撃態勢だった面々は、この沙和の提案に一時停戦をする。

お昼は食べてから、大して時間がたっていないのでお腹は空いていない。

だが、お茶をするには悪くない時間帯だった。

 

華琳「そうね、行きましょうか。」

 

華琳がいち早く賛成の声を上げる。

 

沙和「やったー!!それじゃ、さっそく。」

華琳「あら、沙和。あなたは行けそうもないわよ。」

沙和「えー!!なんでなのー?」

華琳「後ろを振り返りなさい。」

 

華琳に促され後ろを振り返る沙和。

そこには、鬼の形相で立っている凪と桂花。

そして、涙目の真桜の姿があった。

沙和は、逃げ出そうとするが時すでに遅しだった。

 

凪「沙和・・・。宿題を終わらせずにどこに行こうというんだ・・・?」

桂花「私が教えてあげているのにどういうつもりよ!!」

真桜「沙和・・・。すまん・・・。」

沙和「真桜ちゃん、裏切ったなのー。」

 

手を合わせて謝る真桜に、恨み声を送る沙和。

 

凪「いいから来るんだ!!」

沙和「痛い!!凪ちゃん、痛いのー!!お気に入りの服が破けちゃうのー!!」

 

凪に首根っこを掴まれて、引きずられるように連れ去られる沙和。

その姿を見て心の中で合掌する一刀であった。

 

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一刀「で、みんなはどうするんだ?」

 

一刀は皆に聞いた。

もちろん、その噂の中華料理屋に行くかどうかである。

 

月「私は遠慮しておきます。これからやりたいこともありますし・・・。」

詠「月が行かないなら、私も遠慮しておくわ!!」

 

月達は行かないようだ。

 

白蓮「私は、久々に北郷と・・・「白蓮殿!!」えっ?」

 

行こうと言おうとした白蓮を星が遮る。

 

星「そう言えば白蓮殿に用事があったのを思い出した。よろしいか?」

白蓮「いや、私は北郷と・・・、って引っ張るなー!!」

 

一刀と一緒に行きたがる白蓮を、その場から無理矢理遠ざける星であった。

 

蓮華「私も今回は遠慮しておこうかな。」

一刀「えっ?」

蓮華「孫登と璃々ちゃんを寝かしつけてあげたいし・・・。」

 

蓮華の発言に下を向くと、一刀の膝の上で頭を前後に揺らしながら今にも寝そうな孫登の姿があった。

その横で孫登を羨ましそうに見ていた璃々も、眠たそうに目をこすっている。

 

一刀「そっか。それじゃ、俺と華琳で行くか。」

華琳「そうね。」

 

そう言って一刀は、孫登を蓮華に預け、華琳と共にその中華料理屋へと向かった。

 

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お店に向かう途中、突然華琳が立ち止まった。

 

華琳「そうだわ。その前に一刀にはこれをつけてもらわないと。」

 

そう言って華琳は、一刀に帽子とサングラスを渡す。

 

一刀「華琳、これは?」

華琳「ちょっとした変装よ。私がいいって言うまで外しちゃダメよ。」

 

一刀にはよく分からなかったが、言われたとおり帽子を被りサングラスを身につけた。

 

そうして、2人は話題の中華料理屋の前まで来た。

お昼をだいぶ過ぎているにもかかわらず、店の前にはまだ行列ができていた。

 

一刀「こんな感じじゃ、ちょっと待たないとダメかもなぁ。」

華琳「そうね。でもきっとすぐよ。」

 

そう言って、行列の一番後ろに並ぶ2人。

行列に並ぶ事に違和感を感じないなんて、華琳もだいぶ現代に染まっているなぁなどと考える一刀であった。

 

意外と回転がいいらしく、30分ほどで華琳達の番となった。

 

??「ありがとうございましたー。次の方は・・・何名・・・。」

 

彼女が噂の可愛い店員だろう。

ピンクの巻き髪に可愛い感じのエプロン。

まだあどけなさの残る顔は、確かに可愛かった。

 

その彼女だが、華琳を見た瞬間、固まってしまった。

と、奥からもう一人女の子が出てくる。

 

??「季衣、早くお客様を・・・案内して・・・。」

 

緑のショートヘアに大きめのリボン。

先ほどの子と同じ可愛い感じのエプロン。

この子も間違いなく可愛い店員さんの一人だろう。

 

この子も先ほどの子と同じく、華琳を見た瞬間に固まってしまった。

 

そして・・・。

 

??「華琳さまー!!」

 

そう言って二人同時に華琳に抱きついてきたのである。

それは華琳の親衛隊を率いていた、許緒こと季衣と典韋こと流琉の2人であった。

 

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2人がこの店で働いているのにはわけがあった。

2週間ほど前のことである。

 

あちらの世界で、鏡に触れてすぐに、この世界に来た2人。

周りの様子が一変して、一刀の世界に来た事は認識できたが、これからどうするかあてがなかった。

とりあえず歩くことにしたのだが、闇雲に歩いても華琳や一刀に出会えるはずもなく、何の手掛かりのないまま周りは暗くなっていった。

 

季衣「流琉〜。おなか空いたよぉ!!」

流琉「私だって空いたけど、食べ物持ってないよ〜!!」

 

何も食べずに歩きずくめだった2人。

さすがに空腹に耐えきれず、座り込んでしまった。

と、そこで声をかける者がいた。

 

??「お嬢ちゃん達、どうしたんだい?」

 

2人が見上げると、そこには白髪まじりの頭をした老夫婦が2人の事を見ていた。

季衣が何かを言おうとしたが、それを遮り流琉が話した。

 

流琉「お兄ちゃんとお姉ちゃんを尋ねて来たのですが、お金もなくお兄ちゃん達の家も分からなくて途方に暮れていたんです。」

 

涙ながらに話す流琉に、老夫婦は驚いた。

 

夫「それじゃ、今日泊まる場所とかは?」

流琉「あてはないです・・・。」

夫「それは困ったね・・・。」

 

そう言って老夫婦は何やら話をしていた。

そして、2人の方を振り返ると話した。

 

夫「お嬢ちゃん達、よかったらうちに来るといい。」

 

この言葉に2人は驚いた。

 

季衣「えっ、いいの?」

夫「いいよ。なあ?」

妻「ええ。」

流琉「でも、お邪魔では?」

 

流琉のこの言葉に老夫婦は笑った。

 

夫「子供達はだいぶ前に出ていったからね。私達2人だけなんだよ。」

妻「お嬢ちゃん達さえよければ、是非来てくれないかしらね?」

 

季衣と流琉は相談した。

そして、一つの結論を出した。

 

流琉「よろしくお願いします。」

 

流琉のこの言葉に老夫婦は喜んだ。

 

夫「そっかい。それじゃ、早速うちに案内するよ。えーと・・・。」

季衣「ボクは季衣。」

流琉「私は流琉と言います。」

妻「季衣ちゃんと流琉ちゃんね。」

 

季衣と流琉は老夫婦と握手をすると、2人の家へと案内された。

そこが件の中華料理屋だった。

 

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2人は、老夫婦の家に着くと早速食事をご馳走になりお風呂にも入った。

あっちの世界とのギャップに驚くばかりだったが、さも当たり前のように振る舞った。

それでも、季衣は尻尾を出しそうになったりしたが、流琉がうまくフォローしていた。

 

2人とも落ち着くと、老夫婦は2人の話を聞きたがった。

季衣が話をして、おかしいところは流琉がフォローするようにしていたが、老夫婦は喜んだ。

そして、この中華料理屋の話になった。

 

流琉「なんだか、ずっと開いていないみたいですね。」

 

そう、店内のテーブルの上には椅子が乗せられたままになっており、厨房もしばらく火を入れていないんじゃないかというくらい閑散としていた。

 

夫「もうこの年になるとなかなかね・・・。」

妻「ここ2、3年は店を開けてないかねぇ。」

 

この話を聞き、流琉は腕を組み考えると、話しだした。

 

流琉「今日のお礼に、私がお店開いてもいいですか?」

老夫婦「えっ?」

 

流琉の提案に驚く老夫婦。

流琉の姿からは料理をする風には見えなかったからだ。

 

季衣「流琉の料理は天下一品なんだよ!!」

 

季衣の言葉にも、疑いの目を向ける。

 

流琉「お願いします。」

 

流琉の必死の訴えについに折れた。

 

夫「そこまで言う言葉を無下には出来ないからね。お願いしてみようかね。」

流琉「ありがとうございます!!」

 

こうして、3年ほど閉店していた中華料理屋は、流琉の手で復活する事になった。

 

復活するにあたって、流琉は厨房の使い方を習った。

ガスや電気の扱いに最初は戸惑っていたが、すぐにマスターし自在に使えるようになった。

季衣には、客対応をしてもらうようにした。

元々、老夫婦が2人で営んでいたような小さなお店だったので、外は1人でも問題なかった。

 

最初は渋っていた季衣だったが、

 

流琉「私達でこのお店を流行らせて話題にすれば、きっと華琳様や兄様も来てくれるはずだよ。」

 

という流琉の言葉で、やる気になっていた。

 

それからすぐに、可愛い店員のいる安くて美味しい中華料理屋という事で話題となり、行列の出来る店となった。

最初は戦とは違う忙しさに、目の回る2人であったが、元々料理好きの流琉と、お客とのやり取りが楽しくなってきた季衣は、その忙しさすら楽しく感じるようになっていた。

心の片隅には、常に華琳と一刀の姿があったが、こんな生活もいいかなと思い始めていた。

 

そんなこんなで、2週間が過ぎて2人の想いは通じるのであった。

 

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華琳の胸の中で泣きじゃくる2人。

その様子に、一刀も店内の客も、そして老夫婦も驚いていた。

華琳は、しばらく2人を抱きしめていると体から離した。

 

華琳「ほら、仕事中でしょう?ちゃんと案内しなさい。」

 

未だに泣きじゃくる季衣と流琉を促す華琳。

華琳に促された2人は、涙を拭いた。

そして、季衣は華琳達を案内し、流琉は厨房に戻った。

季衣に案内された席に座る華琳と一刀。

 

華琳「久々の流琉の料理、楽しみにしているわ。」

一刀「俺も楽しみだな。」

 

一刀の声を聞き、ドキッとする季衣。

ただ、華琳に出会った喜びからか、仕事中だからか、この程度の変装でも一刀の事に気付かなかった。

 

しばらくして、華琳達の元に料理が運ばれてくる。

昼食をすでに食べてしまっていたので軽めのモノを頼んだのだが、その匂いをかいだ瞬間、急に食欲が出てきた。

華琳がまず一口食べる。

それを見て一刀も一口食べた。

それは、今まで食べたどの中華料理よりも美味しかった。

 

一刀(これなら話題になるはずだ)

 

一刀は納得した。

 

料理を食べ終わっても、しばらく会話を楽しんでいた2人だが、まだ混んでいるという事でそろそろ帰る事にした。

 

季衣「華琳様・・・。」

 

会計時、季衣が泣きそうな声で華琳に話しかけた。

 

華琳「仕事終わる頃にまた来るわ。あなた達が会いたい人を連れてね。」

季衣「はい!!ありがとうございました。」

 

華琳はお金を払い店を後にした。

一刀は、なぜか声をかけちゃダメと念押しされていて、そのまま黙って店を出た。

 

そのまましばらく歩いていると、一刀が華琳に話しかけた。

 

一刀「なんで俺はこんな変装をして、あの2人に話しかけちゃいけないんだ?」

華琳「あの2人にとって、あなたの存在はそれほど大きいモノなのよ。」

 

そう言って華琳は、一刀が季衣と流琉に兄として大変慕われていた事を話した。

一刀は、その話を聞いて、自分がその役目をしなければと思った。

一刀に会えたのに、一刀は2人の事を知らないでは、あまりに可哀想すぎるからだ。

ただ、この一刀には2人との思い出がない。

それだけは、どうしようもない事実だった。

なので、ある程度したら真相を話すつもりだと、華琳は話を加えた。

また一つ、やるべき事が増えた。

 

一刀(あの世界の俺ってやりすぎじゃねーか・・・。)

 

今の自分ではない自分に文句を言う一刀であった。

 

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あとがき

 

季衣と流琉、登場の巻でしたがいかがでしょうか?

 

季衣と流琉を登場させようと思った時に、流琉は料理関係で違和感ないだろうと

なら季衣はウェイトレスとかどうだろうと思い、こんな話になりました。

 

作中、華琳は一刀に変装をさせますが、それは事前に華琳があそこで季衣と流琉が働いている事を知っていたためです。

そして、一刀に会わせてしまうと大変な事になるだろうという配慮からです。

なら一刀を連れて行かなければいいじゃんという話になりますが、そこはまあ主人公なので(笑

 

この続きはまた後日書くつもりです。

 

今回もご覧いただきありがとうございました。

説明
過去作、失われゆく世界で現代に来てしまった、季衣と流琉の話です。

過去の作品を見てもらえば分かりますが、作中に登場する一刀は、蜀ルートでの一刀です。
また、現代が舞台と言うことで
個々の話し方や呼称が原作と若干異なっている部分もあります。

その辺りをご理解の上、ご覧下さい。

誤字脱字報告、叱咤激励、感想をお待ちしております。

前作はこちら
http://www.tinami.com/view/81732
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コメント
続き待ってますねww(悪来)
どの世界でもやりすぎですwww(フィル)
再会のやり取りが楽しみですね。続きが楽しみです(cyber)
さて・・・・・・どうなっちゃうのかな・・・・愉しみです^^w(Poussiere)
やっぱり可愛いですなぁww(ストー)
季衣と流琉はやっぱりいい子ですねぇwww(キラ・リョウ)
沙和の振りですぐにこの二人とわかったね。(motomaru)
続きがたのしみですね。(ブックマン)
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真・恋姫無双 恋姫†無双 一刀 華琳 季衣 流琉 蓮華 白蓮  沙和 

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