真・恋姫無双〜魏・外史伝25(仮) |
第十二章〜再び交わる運命・前編〜
それは、一刀が陳留に到着するほぼ一日前の事、洛陽の城にて・・・。
「なぁ、秋蘭・・・。」
「何だ、姉者。」
「一体、この大陸で何が起きているのだ?」
「・・・?いきなりどうしたのだ?」
「うん、いや・・・。この前の建業の事と言い、五胡の侵攻の事と言い、蜀での正和党の反乱と言い、
急に戦事があちらこちらと起こっている。そうだろ?」
「確かにそうだな。」
「華琳様の言うとおり、この大陸に再び動乱が起こっている。だから我々もそれに備えて、軍備の増強を
しているわけだが・・・。ついこの間まで平和だったはずなのに・・・、一体これからどうなるのかなぁと・・・な。」
「・・・・・・。」
「夏侯惇将軍、夏侯淵将軍。」
城のとある廊下を歩いていた春蘭と秋蘭に、一人の兵士が礼をしながら話しかける。
後ろから呼びかけられた二人は足を止め、後ろを振り返った。
「ん?何だ、貴様?」
「お前は確か警備隊の人間だったな・・・。我々に何用だ?」
秋蘭の発言を聞き終えた兵士は、話を続ける。
「はっ。・・・実は先程、街の警羅をしていましたら、北郷隊長の事を耳にしましたので、
それをお二方の耳にもと・・・。」
北郷という単語を聞いた瞬間、二人の顔が驚きに豹変する。二人は互いに顔を見合う。
「・・・それで、お前が耳にしたというのは?」
秋蘭は、兵士から北郷に関するその詳細を求めた・・・。
「か、華琳様!」
華琳の執務室に、春蘭が慌てて入って来る。部屋には王としての業務をこなす華琳と、それを補佐する桂花がいた。
「どうしたの、春蘭?そんなに慌てて・・・。また何かやったのかしら?」
華琳はそんな春蘭に呆れながら、一体何をそんなに慌てているのかを尋ねる。
「い、いや・・・華琳様。私がどうという事じゃなくてでして・・・!」
「・・・でしょうね。仮に何かしでかしたのなら、馬鹿正直にここに来るはずないものね。」
「ちょっと待て桂花!何だその物言いは!!」
慌てている春蘭に、桂花が横からちゃちゃを入れる。
「止めなさい二人とも!私は忙しいのよ、口喧嘩なら外でやってくれる。」
「「は〜い・・・。」」
華琳に叱られる二人・・・。そこにもう一人、秋蘭が遅れて部屋に入って来た。
「華琳様・・・、失礼します。」
「秋蘭、あなたまで・・・。一体どうしたの?」
「姉者?華琳様にまだ言っていないのか?」
華琳の発言から、秋蘭は春蘭に確認する。
「うぐ・・・、すまん。まだ言えていない。」
春蘭はバツがあるそうに答えると、秋蘭は軽くため息をついた。
「申し訳ありません、華琳様。実は先程、警備隊の者からの報告で・・・。」
「警備隊の警羅報告なら後で聞くわ。今私は・・・。」
「北郷に関する事なのですが・・・?」
一瞬、華琳の左眉が動く。そして手に持っていた筆をゆっくり硯の上に置いた。
「聞きましょう。」
「はっ。では・・・。」
秋蘭の報告は以下のものであった。
先程、廊下で会った兵士の話によると、街の警羅の途中で、ここより東からやって来たという旅商人が
道端で商売を商っている時、たまたまではあったが天の御遣いの話をしていたのを聞いたのであった。
兵士はその商人から詳細を聞いてみると、洛陽に来る道中・・・山陽と陳留のちょうど真ん中にて北郷一刀
と思われる青年に陳留までの道を尋ねられたとのことであった・・・。天の御遣いかと尋ねると、
彼は人違いだと鼻で笑ったらしい・・・。
その旅商人は魏領内で運営されている人が乗り降り出来る様になっている馬車(バスの馬車版と考えて欲しい・・・。)を利用してここまで来たのであったが、その青年は金が足りないという理由からそこで別れた、と言っていた。
さらに、その旅商人を乗せていった馬車の運転手からも話が聞けたようで、どうやらその運転手は元・警備隊
出身で一刀のもとで働いていた事もあり、彼と面識もあった。運転手の話によると、どうやらその旅商人の言う通り
一刀と思われる青年を途中下車地にて見かけたとの事であったが、勤務中であったためその時はそのまま行ってしまった、ということであった・・・。
「・・・成程、しかしそれだけではいささか信用性に欠けるわね・・・。」
「はい、ですが・・・。」
「何?」
「一週間程前に、山陽付近の村が五胡の残党に襲われた事件は覚えていらっしゃいますか?」
「・・・ええ。確か、近くに駐在してい隊が駆けつけた時には、すでに五胡の残党達は皆死んでいたらしいじゃない?
それが一体・・・?」
「実はその報告には続きがありまして、その時はあまりに信憑性に欠けた内容でしたので報告しなかったのですが
その村唯一の飯屋にて、北郷思われる人物が老人と一緒にいるのを目撃したという証言がありました・・・。」
「何ですって・・・?本当なの?」
「はい・・・。ただ先程も言った様に、・・・見間違いの可能性があったため伏せていました
が・・・。今回の報告から考えると・・・、どうもそれが事実の可能性が上がってきました。」
「・・・?どうしてそうなるんだ?」
良く分からないという顔して、秋蘭に尋ねる春蘭。
「山陽からここ、洛陽に行くなら・・・陳留を経由していた方が最短で着けるからよ・・・。全く、それも分からない
なんて・・・あなた、よく魏の将がやっていられるわね・・・。」
秋蘭に代わって、桂花が説明する。説明し終えた桂花は、春蘭に向かって溜息をついた。
「まぁ・・・、そういう事だよ姉者。・・・それを踏まえた上で、どういった経緯かは分かりかねますが、現在
北郷は陳留に徒歩にて向かっていると思われます・・・。今までの証言からして、恐らく明日明後日には陳留に
到着する計算になります・・・。」
長い報告を終えた秋蘭は華琳の意見を仰ぐため、華琳の方を見た。
「・・・そう、よく分かったわ。報告ご苦労だったわね、秋蘭。」
そう言って、華琳は再び筆をとると、そのまま業務に戻った。
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
そんな華琳の反応に思わず、三人は固まった・・・。彼女のその反応は、彼女達の予想していたものと
全く違うものであったため、思考停止してしまったのであった。
「あの・・・、華琳様?」
春蘭が先に口を開く。
「あら、まだ何か報告があるのかしら・・・?」
「いえ・・・そうではなくて・・・ですね。それだけ・・・ですか?」
「それだけとは・・・?」
「いやぁ、ですから!その・・・、これから何処かに行くという予定とか・・・。」
「別に今日は何処かに視察する予定は無いわよ?」
華琳は業務をこなしながら、会話を続ける。彼女の視線は竹簡の方に向けられていた。
「あの・・・、華琳様?」
今度は桂花が口を開く。
「何、桂花・・・?」
「お、お疲れのようでしたら・・・、ここは私に任せて少しご自分のお部屋でお休みになって・・・。」
「私は別に疲れてなどいないわよ?」
華琳は業務をこなしながら、会話を続ける。彼女の視線は竹簡の方に向けられていた。
「華琳様、北郷を迎えには行かないのですか?」
最後に秋蘭口を開く。それは他の二人が言いたかった事であった。
「どうして?」
「どうしてって・・・華琳様?秋蘭の話・・・聞いておりましたか?」
すかさず春蘭が華琳に確認する。
「そうね。聞いていたわ。一刀が陳留に向かって来ているという話でしょう?」
「でしたら・・!」
「春蘭、あなた・・・今私達が、この国が置かれている状況がどのようなものか分かっていない様ね・・・。」
華琳は業務をこなしながら、会話を続ける。彼女の視線は竹簡の方に向けられていた。
「あの五胡の大軍勢の侵攻から、国境付近では何度も五胡と衝突し、この間だって擁州に侵攻してきた五胡
を撃退したばかり・・・。一人の男に現を抜かしいる場合では無いでしょうよ。」
華琳の言う通り、約五十万の大軍勢が魏領に攻め入ってから、間も置かず、国境付近にて五胡と魏軍が
何度も衝突していた・・・。五十万程では無かったが、西方の涼州・擁州に五胡の侵攻を許してしまっていた
のであった・・・。
「それは、そう・・・でしょうが・・・。ですが、華琳様。あの男一人で果たしてここまで来られるか・・・。」
桂花は苦しいながらも、何とか発言する。
「そ、そうです!桂花の言う通りです!あ奴が一人でここまで・・・、それどころか陳留に辿りつけるか!!」
それに春蘭が続いた・・・。が華琳はそれでも筆を止める様子は無かった・・・。
「あの男だって馬鹿では無いわ。もし本当に陳留を経由して来ているのなら、そこの警備隊に保護されて
・・・後は向こうから勝手に来るでしょう。その時に・・・。」
「・・・曹孟徳とあろう方が、一人の男に会うのに何を恐れているのですか?」
華琳が話を続けようとしたその時、沈黙を通していた秋蘭が突然、彼女の話を遮った。
華琳の話と一緒に、華琳の手も止まる・・・。
「何ですって・・・?」
華琳は少し不愉快そうな表情で秋蘭を見上げた・・・。
「しゅ、秋蘭・・・?」
隣で聞いていた春蘭は目を丸くしながら、秋蘭を見る。
「先程から黙って聞いていれば、最もらしい事を仰られておりますが・・・。要するにあなたは北郷に
会うのが怖いのですか?それを言葉を多く並べ立て、上手い事隠しておられたつもりのようですが・・・。」
「・・・・・・。」
秋蘭の暴言を黙って聞く華琳。
「秋蘭、いくらあなたでも言葉が過ぎるわよ!!」
一方、その暴言に華琳に代わって怒る桂花。しかし、秋蘭はそんな桂花に目もくれず、話を続けた。
「一体何が怖いのでしょう?
また自分の前からいなくなる事が・・・?
それとも無様な今の自分の姿を北郷に晒す事が・・・?
もしそんな理由でしたら・・・、これ以上そんなふ抜けた姿をさらして、我々を幻滅させないで下さい。」
「おい、秋蘭!?一体どうしたんだ!いくら何でもそれは言い過ぎだぞ!!」
華琳に向かって、冷たく言い放つ秋蘭に、その横で慌てふためく春蘭。
「私が心から敬愛する曹孟徳は・・・、自分が欲しいものは自らの手で手に入れて来ました。そして・・・
周りから如何な事を言われようとも、如何なる障壁にぶつかろうとも自分の信じる道を決して曲げる事無く、
真っ直ぐと突き進んでいきました。・・・少なくとも今までは。」
「・・・・・・。」
秋蘭の暴言を未だ黙って聞く華琳。その表情にもはや怒りの色は無く、全くの無表情・・・。冷め切った無表情が
そこにあった。それでも、秋蘭は話す事を止めない。
「今のあなたは・・・どうでしょうか?私の知る曹孟徳であれば、話を聞き終えたら一目散にこの部屋から
飛び出すはずなのですが・・・。もし、このままそこから離れないというのならば私が代わりに、
北郷を迎えに行きます。あなたはそこで・・・私が奴を連れて帰るのを待っていて下さい。」
「「なっ・・・。」」
秋蘭のとんでもない発言に、怒り心頭だった春蘭と桂花は唖然とする。そして華琳は下を俯いてしまった・・・。
「桃香や雪蓮ならともかく・・・、まさかあなたにそこまで罵られようとは・・・。
曹孟徳も・・・随分と舐められたものね。」
下を俯いたまま、言葉を紡ぐ華琳。その言葉には怒りとも悲しみともとれない・・・、表現しがたい感情が
籠っていた・・・。
「華琳様・・・。」
秋蘭が華琳に声をかけると、華琳は顔を俯かせたまま、ゆっくりと席から立ち上がる。
「覚悟は・・・出来ているのでしょうね?」
「如何様にも。」
「・・・・・・。」
「か、華琳様っ!わ、我が妹の失態は・・・姉である私の失態でもあります!ですからここは・・・」
秋蘭を庇うように、彼女と華琳の間に入り込む春蘭。
「誰があなたに発言を許したの、春蘭!?」
「ひぅ・・・っ!?」
しかし、華琳の怒鳴り声によってそれは阻まれた。すると、華琳は後ろの壁に掛けられていた自分の武器『絶』
を手に取った。
「華琳様!?」
華琳の行動から嫌な予感が頭を過った桂花は思わず声を荒げる。しかしそんな桂花に目もくれる事無く、
華琳は絶を持ったまま秋蘭の前に立った・・・。春蘭と桂花に緊張が走る・・・。それに対して秋蘭は
澄ました顔をしている。いや・・・、そう装っているのかもしれない。
「秋蘭・・・。」
「はっ・・・。」
華琳がゆっくりと、顔を上げる。
「私が不在の間・・・、ここの事は全てあなたに任せるわ。いいわね?」
「・・・承知致しました。」
「ありがとう・・・。」
秋蘭の横を過ぎる瞬間、小声でそれだけを言い残し、華琳は一目散に部屋から出ていった・・・。
「うぇ・・・えぇ!?」
「はぁ・・・!?」
春蘭と桂花は、状況がいま一つ理解出来ず頭にはてなを浮かべながら混乱していた。
「・・・・・・。」
―――大変だなぁ、華琳の家臣ってのも。
ふと、いつかの北郷の言葉が秋蘭の耳に蘇る・・・。
「・・・・・・ふぅ、全くだ。本当に世話が掛かるお人だよ。」
一人納得する秋蘭、そんな彼女を囲むかのように、他の二人は秋蘭の目の前に顔を寄せる。
「秋蘭!?一体何を考えているのだ、お前は!!」
「全くだわ!!あんな暴言を華琳様に吐くなんて・・・。あなたもとうとう
春蘭みたいに、頭がおかしくなったの!?」
「何だと!?誰の頭の中身がおぼろ豆腐だぁっ!!」
「誰もまだそこまで言っていないでしょう!!」
「まだとは何だ、まだとは!?」
秋蘭を余所に、二人は鼻と鼻がぶつかるすれすれの所でいがみ合う・・・。
「こら二人とも。私を挟んで喧嘩しないでくれないか?」
そう言いながらも、どこか満足げな顔をする秋蘭であった。
説明 | ||
こんばんわ、アンドレカンドレです。投稿が遅くなったのは・・・、学校の前期試験がまじかに迫っており、その対策に追われているからです。 今月の21日から28日が試験期間で、その前に今日と来週の水曜と木曜にも試験があるというハードなスケジュールにもう発狂寸前です・・・。 そのため、誠に勝手ながら・・・今月の28日まで投稿を停止させて頂きます。今回はそれを報告のために、投稿しました・・・。 それでも・・・この完成版を出したいとは思っています・・・。 28日以降は、改めて力を入れた作品を投稿しますので、しばしの間・・・失礼いたします。 |
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コメント | ||
更新を楽しみにしてますね!(悪来) さすが・・・・秋蘭・・・主の為ならばどんな事でもやりとげる・・・・。本当に、華琳は良い家臣を持っているよなw さて・・・・次回どうなっていくのやら・・・愉しみです^^w(Poussiere) ↓二人・・・真名間違えてるけど・・・秋蘭はGOOD☆( ゚Д゚)b(トウガ・S・ローゼン) 秋欄、あんたはいい女だよ。 春蘭)ジーーーーーーー(最上那智) こんなことがあったとは(もっさん) |
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