仮面ライダー剣×ゴッドイーター ?掴み取る運命? 第12話 |
『もういいかい?』
誰かの声がする。誰かが誰かを探している。
十真
「(何だここ……クローゼットの中…みたい…?)」
『まぁだだよ』
その声に、自分の口が勝手に答えた。
自分の声は明らかに自分の物とは違った。それは幼い少女の声をしており、また意思とは関係なく何故かクローゼットの中に隠れている。
それはまるで何かの映像を、他人の視点で見ているかのような気分だった。
十真
「(もしかして…これは…)」
『もういいかい?』
『まぁだだよ』
再び、自分の口が答えた。
『もういいかい?』
『もういいよ』
その返事を最後に、息をひそめる。
やがて自分を探している声の主が現れた。大小2つの人影がキョロキョロと辺りを見回している。よく見ると、どうやら夫婦のようだった。
だが、十真がその姿を捉えたのはほんの数秒だった。
突如、視界を黒い巨体が覆う。小さく短い悲鳴の後、血の匂いが立ちこめる。
黒い巨体はのそりと辺りを見回し、その全身を露わにした。
そこで十真は、自分と一体となっている主の正体、そして流されるビジョンに気づいた。
十真「(アリサの…過去だ)」
獣の口元からは、真っ赤な鮮血が滴り落ちていた。
十真の意識は元に戻り、再び医務室の中にいた。
第六感とでも言うのだろうか、根拠はないが、間違いなく今のビジョンはアリサの過去だと確信できる。
おそらくあの夫婦はアリサの両親か、それにあたる人物には違いない。それをアリサは目の前で失ったのだ。
何もできず、ただ隠れることしかできず。
十真
「そうだよな…俺だけじゃない…」
孤独を噛み締めていたのは自分だけじゃない。
こんな世界には、大切な人を失い、たった1人で生きねばならない人間が数え切れないほどいる。
その辛さを、悲しさを、苦しさを、もう誰にも味わわせないと誓ったことを、十真は焦りの中で忘れていた。
アリサ
「…今のは…あなたの…?」
アリサが目を覚ましていた。十真を見つめる両の瞳に鋭さはなく、普通の女の子に見えた。
アリサ
「あなたも、私と…」
言い終える前に、再び深い眠りの中へとアリサは落ちた。
瞬間だったが、十真はその白い顔に小さな驚きを見た。おそらく、彼女も同じ現象に遭ったのだろう。
アリサも自分と同じ心情なのだろうか。
自分だけが苦しんでいるわけじゃないと、気づけたのだろうか。
きっと2人は同じ世界を見てきた。ならば、わかりあえないはずがない。
十真は再びアリサの手に自分の手を重ねた。今度は何も起きなかった。だが、アリサの温もりは、ひしとその手に伝わってきた。
ヨハネス
「リーダー就任おめでとう…と言うのは酷な言葉になるのかな?」
ツバキからリーダー就任の報せを受けて数日後。十真は正式な任命を受けるため、支部長室に呼ばれていた。
十真
「いえ。光栄に思います」
ヨハネス
「実にいい返事だ。リンドウ君がリーダーに就任した時と同じ目をしている。やはり君になら『特務』を任せてもよさそうだ」
十真
「特務…?」
初めて聞く言葉に一瞬戸惑う。
ヨハネスはコンピュータのキーボードを数回打ち、画面を展開させた。
そこに記されているのはとある任務の概要だったが、その内容に十真は目を見開いた。
十真
「接触禁忌種の…単独討伐…??」
ヨハネス
「驚いたかね。だが、君ならできると見込んでの相談だ。どうか、引き受けてくれないだろうか」
誰かがやらねばならないこと。みんなを守るために。
だが、まだ恐れを感じている。
本当に自分にやりきれるのか。
本当に自分の力でみんなを守りきれるのか。
ヨハネス
「以前まではリンドウ君に一任していたのだが……彼がいなくなった今、それを引き継ぐ人材が必要となった。実はソーマには既に依頼している」
ソーマの名を聞いた瞬間、十真の決意は固まった。
十真
「…やらせてください」
逃げられない。逃げてはいけない。
今までリンドウが守ってきたもの、それをソーマは守り続けようとしている。
自分にも力があるのに、それをただ見ていることなど許されるはずがない。
ヨハネス
「そう言ってくれると信じていたよ」
ヨハネスは祝福の笑みを浮かべると、椅子の背もたれにゆっくりと体を預けた。
十真
「(俺がやるんだ…俺が…)」
自分は力を手に入れた。
みんなを守るための力を。
戦えない全ての人のため、十真は戦い続けることを再び決意した。
ーー
支部長室を出ると、目の前にサカキがニコニコといつも通りの細目で立っていた。
サカキ
「リーダー就任、おめでとう。リンドウ君のことは残念だが、それで立ち止まっていられるほど私達に時間はない。これからは、君が第一部隊を引っ張っていってくれ」
十真
「はい、頑張ります」
サカキ
「いい意気込みだ。ところで…」
サカキは十真の横をすり抜けるように通り過ぎながら、耳元でささやいた。
サカキ
「…君は好奇心旺盛な方かい?…」
十真
「え…」
十真が振り返ると、サカキは既に支部長室へと姿を消していた。
十真
「…何だったんだ?」
再び帰路に着こうと振り返ると、廊下のど真ん中に一枚のディスクが落ちていた。不自然に。
十真
「何だこれ…?」
拾い上げたディスクケースの表面には、わかりやすく『極秘資料?拾った方はサカキの研究室まで?』と記されている。
その他にも、絶対見るなだとか、禁の字などがわざとらしく書かれている。
十真
「何やってんだあの人…こんな大事なもの落とすなよ」
その時、サカキの言葉が十真の胸を通り過ぎた。
『君は好奇心旺盛な方かい?』
いつも目を細めてニコニコしているサカキは、思い返せば、常に何を考えているかわからない。
何も考えてないのか、それとも底知れない腹黒さを持っているのか。
どちらなのかはわからないが、あの意味深な言葉は明らかにメッセージと捉えて構わないだろう。そう判断した十真はディスクをポケットに入れ、自室へと足を進めた。
十真
「自室のアーカイブで読み込めるよな」
自室のある新人区画へと移動するため、十真はエレベーターへと向かった。
各区画を繋ぐこのエレベーターには、万が一アラガミが進入してきた時のため、二重三重と扉が重ねられている。
そのせいか、任務時に見かけた、まだこの惑星が安泰だった頃のそれとは比べものにならないくらいの重厚感があった。
ゴウンゴウンと音を立てながらゆっくりと扉が開く。
エレベーターの中には既に一名乗っていた。ソーマだ。
ソーマは一度だけ十真と目を合わせると、再び正面を向いてエレベーターを降りた。
そして彼も、すれ違い様に言い残した。
ソーマ
「…今なら間に合う。俺とは関わるな…」
十真
「………」
ソーマ
「………」
十真は無言でソーマの背中を追った。
ソーマはまっすぐに支部長室へと向かい、入り際に再び十真をチラと見た。
何人も近寄らせない、冷たい目だった。しかし、十真には、孤独に震える風前の灯火のようにも見えた。
これからは自分がリーダーとなる。仲間の命も背負って戦わなければならない。
リンドウが守ってきたもの、全て守り切る。それが十真にとってリーダーになるということだった。
十真
「やるしかないか」
パンッと両頬を手で叩くと、エレベーターに乗り込もうとした。
だがソーマの姿を見送る間にドアは閉まり、既にエレベーターは別の階へと移動してしまった。
十真
「…………」
十真は再び昇降ボタンを押すと、エレベーターの到着を待った。
サクヤは自室で1人、冷めたコーヒーを飲んでいた。
今までにも、同じゴッドイーターが命を落とした瞬間をサクヤは何度も見てきた。
その一人一人に何も感じなかったことはない。目の前で仲間が死んでいくのを見れば、心が痛む。
だが、ゴッドイーターは常に死と隣り合わせ。明日の命、今日の命を守るため、立ち止まってはいられない。
それを理解していても、やはりサクヤにとってリンドウは特別な存在だった。
サクヤと雨宮姉弟は幼馴染だった。
思い返せば、小さな頃からリンドウはいい加減な性格で、ことあるたびにツバキから説教を受けていた気がする。
飄々としていて何を考えているのかサッパリわからなかったが、時折見せる優しさと心の広さに、いつしかサクヤは惹かれていった。
リンドウとツバキが先にゴッドイーターの適合者となった。それから大分経ってようやく、サクヤに適合する「CHANGE」のラウズカードが見つかり、後を追うようにゴッドイーターとなった。
腐れ縁とはこのことだろう。いつかはリンドウを、一生を共に過ごすパートナーにしたいと心に秘めていた。
だが、別れは唐突に来てしまった。
彼に背中を預け、彼の背中を守る。日々繰り返される死闘の中、それだけが救いだった。
『配給ビール、とっといてくれよ!』
帰還を約束したあの言葉は、嘘だったのだろうか。
嘘つき、と責める言葉はもう届かない。
サクヤは飲みもしない缶ビールを冷蔵庫から取り出した。それだけで、彼が目の前に座っていそうな気がしてーー
カランッ
サクヤ
「っ…?」
缶ビールの底から、何かが落ちたような気がした。
ぐるりと足元をみまわすと、頑丈そうなディスクケースが一枚落ちていた。
もしやと思い、サクヤはケースを開いてディスクを取り出すと、自室に備え付けられたターミナルに読み込ませた。
すぐにモニターが動き出したが、そこにはリンドウのラウズカード[CHANGE]の読み込みを求める表示が現れた。
パスワードではなくラウズカードでの認証が設定されているのは……リンドウのことだ、パスワードを忘れてしまうか、簡単すぎてバレてしまうからであろう。
それを想定しているあたりに、いい加減なリンドウが持つ用意周到ぶりが垣間見える。
しかし、あのリンドウがセキュリティをかけてまで守ろうとするデータ。明らかな怪しさを醸し出している。
しかもそれはリンドウの部屋ではなくサクヤの部屋に。わざわざ缶ビールの裏に貼り付けてあったということは…
サクヤ
「託した…あの人が、私に…」
もしかしたら、リンドウはこの別れを予測していたのかもしれない。そうならば、「あの日」に繋がる真実が隠されているかもしれない。
サクヤ
「…探さなきゃ…」
リンドウのラウズカードを。
リンドウが残した、最後のメッセージを。
サクヤの運命が、動き出した。
少女
「ここがエイジスかぁ…予想通り、嘘の塊だね」
少女は小型カメラを構えると、無音のシャッターを切る。特殊暗視機能がついたそのカメラは、暗闇の中からでも十分に鮮明な写真が撮れる。
少女
「案外チョロいもんだね。ボクの手にかかれば、フェンリルの最高機密なんか簡単に覗けちゃう」
慣れた手つきで何枚か写真を撮る。
もう十分なのか、やがて少女はカメラをポーチに入れて踵を返した。
少女
「また来るね。『ノヴァ』さん」
少女が闇に消えたのは、まさに一瞬だった。
作者&十真 より…
作者
「ネタと時間と金が無い」
十真
「ネタと時間はともかく、金は節約しろ」
作者
「先週、SUPER BEST版 ディケイドライバー買っちゃった。定価5千円」
十真
「また高い買い物を……ってそんなことより本編の話。最後の奴は何者なんだよ?」
作者
「まぁ、皆さんお気づきかと思うんですが、オリキャラです。このままだと話がスムーズに進まなさそうだから予定より早めに投入してみた」
十真
「なんかこのままグダグダになりそうな予感…」
作者
「大丈夫大丈夫。オリキャラ使えばいくらでもご都合展開にできるから。オリキャラってそのためにあるんだぞ?」
十真
「んなわけねぇだろ!」
作者
「さてと、次回は久しぶりのバトルです、お楽しみに!それではこの辺で、さようなら…」
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新キャラ登場。最後にちょびっと登場。 投稿が遅れ気味で申し訳ありません。 |
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