英雄伝説〜焔の軌跡〜 リメイク 改訂版
[全1ページ]

〜琥珀の塔・屋上〜

 

「もう……待ちくたびれちゃったわ。」

エステル達が屋上に到着するとユウナが”ゴスペル”が装着された装置の前で待ち構えていた。

「ユウナ……!」

「うふふ。エステルってば悪い子ね。ユウナが留守にしている間に”方舟”から逃げちゃうなんて。でも、まあいいわ。こうして遊びに来てくれたんだし。」

「ユ、ユウナちゃん……」

「うふふ、ティータもわざわざ遊びに来てくれたのね?アイスクリームは御馳走できないけどゆっくりとしていくといいわ。」

「あ、あう……」

勇気を出してユウナに話しかけようとしたティータだったが、ユウナに意味ありげな笑みを浮かべて答えると次に何を話せばいいかわからず、口ごもった。

 

「うふふ、王都以来ね、レン。あの時は遊んであげる時間はなかったけど、今回はたっぷりあるから楽しみにしていてね?」

「うふふ、それは楽しみね♪―――それよりもエステルから聞いたわよ?レンからエステルを取り上げる為にユウナがレンの代わりになる事を条件にエステルを”結社”に入るように誘ったって。幾らエステルがヨシュアを連れ戻したいからって、エステルの性格を考えたら”結社”に入る訳ないし、そもそもそれ以前に幾らユウナがレンそっくりになったとしてもエステルがユウナをレンと思える程器用な性格をしている訳がないでしょう?随分と浅はかな事を考えたものね?」

「むう、確かに言われてみればそうね。悔しいけどその点についてはレンの言う通り、そんな単純な事に気づかなったユウナの落ち度ね。」

レンの正論を反論することなく認めたユウナは疲れた表情で答え

「互いを嫌い合っているくせに、何であたしの事になると息ピッタリになるのよ。あんた達、本当はやっぱり仲が良いんじゃないの?」

「ア、アハハ……ま、まあ二人は双子ですから考えも一致してもおかしくありませんよ。」

「フッ、そういう意味ではお前とモースの手下であった導師守護役(フォンマスターガーディアン)も同じではないか?」

「失礼、です。アニスとアリエッタ、全然違い、ます。」

ジト目になっているエステルにイオンは苦笑しながら指摘し、口元に笑みを浮かべているバダックに視線を向けられたアリエッタは表情をわずかに歪めて答えた。

 

「それから……うふふ。やっと姿を見せてくれたわね。会いたかったわ、ヨシュア。」

「……まさかこんな所で君と再会するとは思わなかったよ。大きくなったね……ユウナ。」

「うふふ、当然よ♪ユウナはもう11歳なんだもの。ヨシュアも、しばらく見ない内にすごくハンサムさんになったのねぇ。冷たい瞳をしていないのはちょっと変な感じがするけど……でも、今のヨシュアも悪くないわ。」

懐かしそうな表情をしているヨシュアに話しかけられたユウナは嬉しそうに答えた。

「そうか……ありがとう。」

「まったくもう……姉妹揃って相変わらずマセてるんだから。……あのね、ユウナ。あたしたち、”結社”の計画を阻止するためにここに来たのよ。」

「うふふ、そうみたいね。ユウナも退屈なのはイヤだし、付き合ってあげてもいいわよ。」

エステルの話に頷いたユウナは大鎌を構えた!

 

「クスクス……楽しませてちょうだいね?」

「……ユウナ……」

「悪いけど、あたしはユウナと争うつもりはないわ。それよりも……話をしに来たの。」

「お話?わあ、ひょっとしてお伽話でも話してくれるの?」

「ううん……”結社”の仲間になるって話。せっかく誘ってくれたんだけど、改めて断らせてもらおうと思って。」

「ま、ヨシュアと再会できたし仕方ないかもしれないわね。でも、考え直した方がいいわよ?エステル達が頑張ったって”身喰らう蛇”は止められない。それはヨシュアが一番よくわかっているはずよね?」

”結社”入りの話をエステルが断る事をある程度予測できていたユウナは溜息を吐いた後エステル達に忠告し、自身の忠告が正解である事をヨシュアに問いかけた。

 

「……それは……」

「それに”結社”に入ればエステルはもっと強くなれるわ。そうすればユウナと同じ”執行者”になれるのよ?うふふ、ステキだと思わない?」

「うーん、強くなれるっていうのは心惹かれないでもないんだけど……でも……それは本物の強さじゃないと思う。少なくてもあたしにとってはね。」

「……え……」

エステルの口から出た予想外の答えを聞いたユウナは呆けた表情をした。

「あたしは確かに強くなりたい。お母さんみたいに大切な人を守れるくらいに。ヨシュアを心配させないよう自分自身を守れるくらいに。」

「エステル……」

「でも”結社”に入ったりしたらあたしはあたしじゃ無くなっちゃう。本当の自分として強くなれなくなる。それじゃあ意味がないと思うんだ。」

「……わからない。エステルの言ってる事はユウナにはちっともわからないわ。本当の自分ってなに?それってどういうものなの?」

(あら……うふふ、さすがエステルね。)

エステルの主張を聞いて一瞬黙り込んだ後真剣な表情でエステルに訊ねるユウナを見たレンは目を丸くした後口元に笑みを浮かべてエステルに感心していた。

 

「あたしは……ユウナのことが好きだよ。マセてて、イタズラ好きで意外と思いやりもあって……色々と騙されちゃったけどあんたのことは憎めないのよね。勿論ユウナがレンの双子の妹だからとかそんな二人に対して失礼な理由じゃなくてね。」

「……エステル……」

「ふふっ……」

エステルの言葉にユウナが呆けている中、レンは静かな笑みを浮かべていた。

「でも、だからこそ……だからあたしはユウナに”結社”に居て欲しくない。大人になって、自分自身の意志で選ぶのならともかく……子供のあんたが、そんな場所にいること自体間違ってると思う。このまま大人になったら取返しがつかなくなるから……だから……」

「………………………気が変わったわ。」

「え……」

「「……ッ……!」」

説得の途中に突如呟いたユウナの言葉にエステルが呆けている中、ユウナの殺気を感じ取っていたヨシュアとレンが表情を引き締めたその時ユウナがエステルに襲い掛かり、ヨシュアはユウナの強襲を弾き返し、同時にレンは双銃で牽制攻撃を行ってユウナと自分達の距離を空けさせた。

 

「!!!」

突然の出来事にエステルは目を見開き

「ふふ……さすがねヨシュア。なかなかの反応速度だったわ。後レンも瞬時にヨシュアがエステルを庇う事を悟ってエステルの事をヨシュアに任せた後ユウナに反撃するなんて、ユウナの”元お姉ちゃん”だけはあるわね。」

「君こそ……大したものだ。どうやら”殲滅天使”の異名は伊達じゃなさそうだね。」

「そう、ユウナは強いわ。闇に紛れて動くしかない”漆黒の牙”や一つの事に特化した戦い方ができないから器用貧乏な戦い方で強さを誤魔化している”戦天使の遊撃士(エンジェリック・ブレイサー)”よりもね。」

「失礼ね。レンの場合は”器用貧乏”じゃなくて”完全無欠”よ。レンの強さがわからないんだったら、”格の違い”を思い知らせてあげてもいいのよ?」

ヨシュアの言葉に対して答えたユウナの答えを聞いたレンは不愉快そうな表情で答えた後不敵な笑みを浮かべてユウナを見つめた。

 

「ちょ、ちょっとユウナ!いきなり何をするのよ!?」

「うふふ、気が変わったの。ユウナの仲間にならないんだったらエステルなんか死ねばいいわ。ヨシュアも、レンも、他の人達も全員ね。」

突然の凶行に驚いているエステルにユウナは笑顔で恐ろしい事を答えた。

「っ……死ねばいいなんて物騒なこと言うんじゃないわよ!も〜、アッタマ来た!お尻百たたきにしてやるんだから!」

「エステル、落ち着いて。彼女を甘く見たら―――」

「ヨシュアは黙ってて!子供のしつけと同じよ!」

「クスクス、甘いわね。エステルのそういうところわりと好きだったけれど……今は大嫌い。」

殺されようとしてもなお、自分をしつけるだけにしようとしているエステルの甘さに微笑んでいたユウナだったが膨大な殺気を纏って凍てつくような視線でエステルを見つめた。するとその時人形兵器達がエステル達を包囲した。

 

「No.]X―――”殲滅天使”ユウナ。これより敵集団の殲滅に入るわ。」

そしてエステル達はユウナ達との戦闘を開始した!

 

 

 

説明
第77話
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