リリカルST 第13話
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「おいおい、一体どうすりゃこんな事になんだよ…」

 

官邸を制圧し、正面玄関を堂々と出て来た俺の目の前には、ポッカリとバカデカイクレーターが広がっていた。俺の記憶が間違ってなきゃ、ここは大通りで、そこらかしこに戦車やらが停まってたと思ったんだが…

 

「よう、遅かったじゃないか」

 

恐らくこんな馬鹿げた事を仕出かした張本人、咲希が軽い足取りでやって来た。

 

「やり過ぎだ馬鹿。復興費用いくら掛かると思ってんだよ」

 

「フッ、安心しな。誰一人殺していません」

 

こんだけの大災害で死者ゼロとか、本当に化け物かよ…

 

「ビリー、悪いな、街を消し飛ばしちまって」

 

「いや、いいさ、戦争が終わるんだ。この街一つくらいなら安いものだ」

 

安いのかなぁ…

 

「士希、あれ…」

 

ユキがクレーターの奥を指差す。そこにはこちらへ走ってくる数人の姿が目に入った。その中には父さんや、この件に協力してくれたロッサ、恐らくクレーターを見てドン引きしているレーゲン、そして…

 

「士希さん!ユキさん!」

 

涙を流しながら走るルネッサの姿があった。

 

ここにルネッサとレーゲンがいるという事は、恐らく俺たちがしていた事もバレたのだろう。終わるまで黙って、サプライズで故郷を救いましたって言おうと思っていたのに、本当に残念だ。まぁでも仕方ない。きっとこれで、ルネッサも喜んでくれる筈だ

 

「ルネー!」

 

俺はルネッサの名を叫び、両手を広げて彼女を迎え入れる準備をした。

 

きっと彼女は嬉しさのあまり抱き付いてくるに違いない。うん、悪くないな。

 

ルネッサは走り、そのまま俺の元へと真っ直ぐやって来た。ルネッサは速度を落とさず、俺の体に飛び込んできた

 

 

バキッ!

 

 

「ごふっ!?」

 

うん?おかしいな?俺はてっきり、ルネッサの体が飛び込んで来るものだとばかり思っていたが、飛び込んで来たのは彼女の拳だけで、しかもその拳が綺麗に俺の右頬を貫いた。俺は突然の衝撃に耐え切れず、体が宙を浮く感覚を覚えた。

 

おやおや全く…どうしてこうなった?

 

気が付けば、ルネッサはユキと抱擁しており、泣き?るルネッサをユキがなだめるという構図が出来上がっていた。

 

「全く……人が……えぐ…どれだけ……心配したと……」

 

ユキはすすり泣きながら呟いた。どうも俺たちは、ユキを喜ばすどころか、泣かせてしまう程心配させてしまったらしい。それに対して罪悪感もあるが、どちらかと言うと、嬉しさがあった。つまりは、それだけ彼女の心に、俺たちが居たという事だから。

 

「ごめんな、ユキ。心配かけたみたいで。でも、もう大丈夫だから。私達も、お前も、お前の故郷も」

 

おかしい。本来その役目は俺のだろうというものを、ユキがこなしている。しかも、ルネに見えないのをいい事に勝ち誇った笑みを俺に向けてやがる。なんか腹立つな。

 

「本当に、終わったのか…?」

 

その隣で、官邸のある方向やクレーターの出来ている所を、ただ呆然と見ているドレディア・グラーゼが、涙を流し、ゆっくりと膝から崩れていった。

 

「君が…士希君だね?ルネッサから聞いているよ。あの子を保護してくれたと。本当に感謝している。そして、同じくらい罪悪感も…」

 

グラーゼは俺の方を見ない。ただルネッサを、慈愛に満ちた瞳で見つめていた。

 

「私は…このオルセアを救う為に何でもやって来た。多くの人間を殺め、この手を血で染めてきた。血は繋がっていなくとも、本当の我が子の様に愛していたルネッサをも利用した。おおよそ、父親らしくはない。それでも、もしルネッサが他の道を歩みたいのであれば、それを止めるつもりもなかった。しかし、ルネッサの優しさに甘えてしまい、結果君の持つ神器を狙った。戦争の終焉を願って…」

 

グラーゼは深々と頭を下げた。彼の言葉から、ルネッサに愛情を注いでいたのは伺える。ただ、国を思う気持ちが強過ぎて、それを蔑ろにしていたのだろう。人間、いや指導者としては良いかもしれないが、親としては確かに…な?

 

「貴方の気持ちはわかるが、それでも頼った相手が悪かったな。よりにもよってスカリエッティに頼るとは…」

 

俺は今回、ルネッサの為に戦ったが、それは俺個人というだけ。俺の職業的に、グラーゼを見逃す訳にはいかなかった。その為にロッサも連れてきたんだ。

 

「時空管理局本局査察官、ヴェロッサ・アコースだ。貴方にはスカリエッティの情報を洗いざらい吐いてもらわなければならない。同行してもらえますか?」

 

ロッサがゆっくりと前に出た。グラーゼはただ何も言わず、立ち上がって手を取った

 

「もちろんだ。この世界を救ってくれたのだ。それくらい安いものだ」

 

グラーゼは通信デバイスを取り出し、幾つかのデータファイルを提示してくれた。そこには、神器ゼウスの情報と、冥府の炎王イクスヴェリアの情報が載っていた。

 

「私がスカリエッティから得た情報は3つ。まずは神器ゼウス…ありとあらゆる武器となる戦う事に特化したロストロギア。それでいて、全ての魔を絶つとも言われる魔剣。かつてのベルカで、その力を振るわれたという記録はないが、それでも、その力は強力無比だったとされる。2つ目はイクスヴェリア。彼女のもつマリアージュコアと呼ばれる、死体に魔力を宿して操り、無限に等しい軍隊を作れる力。そして3つ目、神器はイクスヴェリアの為に作られたという事」

 

レーゲンが苦虫を噛み潰したかのような表情になる。俺もレーゲンからその話を聞いていた分、あまりいい気分はしなかった。

 

マリアージュという無限の軍隊に、神器を持たせる。製作者本人にその気はなかったらしいが、国は神器のもつ力に目を付けた。破壊と殺戮に特化した神器と無限の軍隊マリアージュ。この2つを組み合わせたら、戦争は確かに終わったのかもしれない。ただその場合そこには草木も生物も残らないだろうが。

 

だからこそ、レーゲンは封印された。彼のマイスターと、冥王イクスヴェリアの手によって。

 

レーゲンが封印されていた無人世界は、イクスヴェリアが用意したものらしい。イクスヴェリアも怖れたのだ。神器の力が悪党共に使われる事を。だからこそ、神器のマイスターと共同し、神器を封印。その後は自身も封印、イクスヴェリアが治めていた国は程なくして滅んだ。

 

そして千年の時が経ち、彼らを目覚めさせ、使おうと考える者が現れた。そいつはまずレーゲンを見つけ出し、レーゲンを封印から解いてしまい、紆余曲折を経て今に至る。

 

「私は神器と冥王に、この戦争終結の為の抑止力になってもらおうと考えた。絶大にして圧倒的な力を誇示し、降伏を求めようと考えていたのだ」

 

それが正しいとは思えないが、否定する気もなかった。俺が戦争終結の為に使った手段もまた力だからだ。戦争を止めるというただ1つの手段の為には、なりふり構っていられなかったのだろう。それこそ、自身の子や悪党を使うくらいに。

 

「だが、それももう意味はなくなった。これからは、平和の為に殉じ、死んでしまった者へ償っていこう。その為の第一歩として、管理局の貴方方の力となります」

 

そう言って、グラーゼは通信デバイスから1つの連絡先を提示した。そこに映っていたのは科学者風の男と『ジェイル・スカリエッティ』の名前だった

 

「彼の連絡先だ。昨日まで連絡が取れていたから使えるはず…!?丁度彼からだ」

 

グラーゼの通信デバイスにコールが掛かる。相手は件の人物、スカリエッティからだった。

 

「出てくれ。逆探知を仕掛けてみる」

 

ロッサがグラーゼの通信デバイスにプラグを差し込み、逆探知の準備をする。そして準備が済み、直ぐにコールに応答した。

 

………違和感が拭えない。タイミングが良過ぎないか?あのジェイル・スカリエッティが、こんな軽率に連絡をするとは思えない。常に逆探知に対しての処理はしている筈だろうから、あまり期待は出来ないな。

 

「グラーゼだ。何の用だったかな?ジェイル」

 

スピーカー設定にして応答する。俺達はアイコンタクトで黙り込み、様子を伺うことにした。

 

『やぁトレディア・グラーゼ。そして管理局の諸君。まずはそうだな、戦争終結、おめでとうとでも言っておこう』

 

チッ!バレていやがった!どこかで見てるのか?それともこの通信デバイスに細工してやがったか?

 

「バレてるんなら仕方ない。初めまして、ジェイル・スカリエッティ。俺は時空管理局特務隊の…」

 

『東士希…いや、外史の住人、司馬昭とでも呼ぶべきかい?そして君の姉の東咲希と、父親であり地球史上最悪の犯罪者東零士か。おっと、君の側近、ユキ・ブレアも外史の住人だったね』

 

この場の誰もが凍りつく。こいつは、どうして俺達の事情まで知っている?百歩譲って俺や父さんの事ならまだわかる。だが、咲希やユキは?普通ならまず間違いなく分からない筈だ。こいつらの居た世界とは、そういうある意味拒絶されている世界なのだから。

 

「おいお前、父様を悪く言ったな?殺してやるよ出てこい」

 

スカリエッティの言葉に咲希がブチ切れる。今にも通信デバイスを叩き割りそうな勢いだ。

 

「咲希、落ち着きなさい」

 

「………はい」

 

父さんが居なかったら、マズかったかもしれないな

 

『怖い怖い。だが君が私を見つける事はまずないだろう。逆探知しようとしても無駄さ。そんなものさせるほど、話す気もない』

 

《奴の言う通りだ士希。何重にも中継地点を通っていて、とてもじゃないが追いつけない》

 

チッ、やはり逆探知対策はしっかりしてやがったか。そう上手くはいかねぇな

 

「で?そんな用心深い奴が、なんだってこんな真似を?世間話でもしに来たのか?」

 

『ふむ、それも悪くない。だが私もそれなりに忙しい身でね。現神器のマスターがどんな人物なのか、ついでに話してみたいと思ったのだ』

 

「ついで扱いか。ずいぶん舐めているんじゃないか?」

 

『そうでもないさ。むしろ、私は君を高く評価している。君の能力も、その頭脳も、魅力も。流石王の素質を持つものだ。だからこそ、先手は取らせてもらう』

 

「!?伏せろ!」

 

咲希が何かを察したらしく、突然大声を上げた。俺や父さん、ユキはその声に直様反応し、反射的に伏せたが、ロッサ、ルネッサ、グラーゼ、ビリーは戸惑っていた。それが仇になる。

 

 

パシュン

 

 

1発の弾丸が空を切り裂き、飛んでくる音が聞こえる。それと同時に、聞き慣れてしまった、肉を貫く音も…

 

「は?よ、養父…?」

 

弾丸はグラーゼを貫いたのだ。それも脳天を、綺麗に。グラーゼは声を上げる間も無く、静かにゆっくりと倒れていった。

 

「い、イヤァァァァァ!!!!?」

 

ルネッサが目の前で起こった事を理解し、パニックを起こしながら叫んだ。

 

「テメェ!?」

 

俺はグラーゼの持っていたデバイスを拾い、スカリエッティに向けて叫んだ。デバイスから聞こえるのは、笑い声だけ。

 

『クククッ、そいつが生きていると、私の隠れ家の1つが割り出されかねないのでね。まだあそこには資料を残しているから、それを回収するまでは待ってほしいんだ。なので残念だが死んでもらったよ』

 

「人の命を何だと思ってやがる!?」

 

『サンプルか道具か、そんなものだろう。それに、それを君が、君達が言えるのかね?目的の為なら殺す事も厭わない君達が』

 

チッ、その点で言や、確かに何も言えねぇ。やってる事はこいつと一緒だ。だがな!

 

「俺らが殺すのはテメェみてぇな悪党だけだ。だがテメェはこの世界を憂いていた奴を殺した。必要とされてる奴を殺した!テメェみてぇな奴がいるから平和にならねぇんだ!」

 

『なるほど、大した正義感だが、その正義感は身を滅ぼしかねないぞ。君の父親が良い例ではないか』

 

スカリエッティの言葉に再び咲希が殺意を見せる。それを敏感に察知した父さんが咲希の肩に触れ、宥め始めた

 

「ジェイル・スカリエッティ…だったね?確かに君の言う通り、僕は僕の偽善という我儘を貫く為に幾人もの人々を殺め、その結果世界に追われた。だけど、それで成し遂げれなかった訳ではないし、ましてや身を滅ぼしてもいない。それに、僕は僕で、士希は士希だ。この子は優秀だからね。僕の様に間違ったりはしないさ。だから、士希は必ず、君のもとに辿り着く。これは予言でもなんでもない。確定された未来だ」

 

父さんは感情の感じられない声で、だけど俺を思って言ってくれた。それが少しこそばゆいが、とても嬉しく、そして期待は裏切れないという思いが、俺の中で芽生えていた。

 

「父さんの言う通りだ。俺はお前を捕まえる。必ず、必ずだ!」

 

『クハハハハ!そうかそうか。なら私も、全力で逃げなければならないな。さて、君に私を追い詰める事が出来るかな?』

 

「やってやるさ。首洗って待ってな」

 

『正義の為ならどんな手段でも取る。素晴らしい。私は嫌いじゃないぞ。流石は過去の英雄だ。そんな君に、1つ面白いものをやろう』

 

通信デバイスにデータを受信した通知が出る。そのデータには…

 

「おい…こいつは…」

 

『さぁ、君の正義は、これをどうする?精々私を楽しませてくれたまえ』

 

「!?ちょっと待て!」

 

通信が切られた。俺は再度掛け直すも、その番号は既に使われていないというメッセージが出るだけだった。

 

「すまない士希。追いきれなかった」

 

ロッサがすまなそうに謝ってくるが、俺はそれどころではなかった。奴から送られてきたデータに釘付けになっていたのだ。

 

「あいつ、もし見かけたら殺してやる」

 

「同感だ、ルネの親をよくも…」

 

咲希とユキが静かに殺意を滲み出していた。その側には、グラーゼの亡骸の横で泣き崩れているルネッサがいる。

 

してやられた。この場にいる全員が脅威は去ったと気を抜いた。その結果、グラーゼが犠牲になった。

 

俺は…

 

「士希、あまり思い詰めるな。何でも自分で抱え込もうとするのは、君の悪い癖だ」

 

父さんに声を掛けられ、動転していた思考が落ち着きを取り戻す。今回、父さんには助けられてばっかりだ

 

「士希、スカリエッティから何のデータを送られてきたんだ?」

 

ロッサが警戒しつつ、尋ねてきた。こんな状況でも、既に冷静さは取り戻したらしい

 

「あぁ…こいつを見てくれ」

 

「………これは!?これが本当なら、管理局は…」

 

スカリエッティから送られてきたデータの中身は、端的に言えば管理局の上層部の一部が行ってきた横領や賄賂のデータだった。

 

オルセア政府が質量兵器を得ていた組織から、その売り上げの一部を管理局に献上していたのだ。恐らく、密輸を黙認する為の金だろう。端金なんて金額じゃない。このデータが本物なら、管理局は何年も前からこんな事をしていた事になる。

 

それだけじゃない。いくつかの管理局が携わった仕事の中で、費用に明らかに不自然な数値を示しているものがある。その不自然な数値分、上層部の一部の人間の通帳に加算されていた。

 

「ふむ、これを表沙汰にしたいところだが、提供者が提供者なだけに、証拠としては弱いな」

 

父さんはデータを見て、冷静に分析している様子だった。

 

父さんの言う通り、これを証拠には出来ない。このデータの原本を管理局内から手に入れない限りは。だが、そんな事をしてしまえば俺は管理局に狙われかねない。俺は別にいいが、それではやて達が危険にさらされるのは黙認出来ない。

 

「……こいつに関しては保留だな。これをスカリエッティが握っていた事も含めてな」

 

どうやら敵は、思った以上に近くにいるのかもしれない。だが、そいつを突くには、土台が不安定だ。今じゃない。時期が来るのを待つ。

 

 

 

 

その後、俺はビリーと共に反政府派と交渉し、この内戦の終結を締結させた。ビリーはNGOでも広く顔が知れ渡っていたらしく、反政府派の中にも彼に救われた人物は数多くいた事もあり、スムーズに事が進んでいった。後は彼らが、歩幅を合わせて共に再建していくだろう。アドバイザーとして俺の連絡先は渡したが、細かい部分は彼らが何とかしていくだろう。

 

「あぁ…オルセアだ。そこの後始末を頼む。頼んだぜ、カレン」

 

咲希も咲希で、何やら影で動いているらしい。中身まではわからないが、悪い事ではないだろう。

 

オルセアは救われた。もちろん、まだまだ平和とは言えない、不安定な土地だが、それでもこれは第一歩だ。これからのオルセアに期待だな。

 

 

 

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「よかったのか、ルネ?」

 

ミッドへ向かう次元航空機の中には、俺を含めてユキ、レーゲン、ルネッサがいた。父さんと咲希は元の世界に戻り、ロッサは先にミッドに戻っていった。

 

「よかった、とはどう言う意味ですか?」

 

ルネッサは依然として覇気が感じられない。故郷を救ったとは言え、父を失った傷が埋まるわけではないのだろう。逆の立場なら、俺も立ち直れないかもしれない。

 

「お前はあの世界を救いたくて頑張っていた。だから、あの世界に留まるものだと思っていたんだが」

 

「そうですね。私もそのつもりでした。ですが、私にはどうしても、追わなければならない相手が出来てしまいました。そいつを捕まえるまでは、管理局員として働きますよ」

 

感情が一切感じられない冷たい声音。いつものように感じられるが、いつもとは違う雰囲気。スカリエッティへの憎しみは深いようだ

 

「それに…」

 

「……ん?」

 

ルネッサはこちらを向いて微笑んだ。その笑顔は、とても優しくて…

 

「ミッドには家族がいます。大切な、大切な…そこには帰りを待つ子がいますから、帰らないといけません」

 

その言葉に、俺も隣で狸寝入りしているユキも笑みがこぼれてしまう。

 

ルネッサは全てを失くした訳ではない。それが少しでも、俺たちが与えてあげれたものであれば嬉しくも思う。

 

「さて、まずはイクスヴェリアの所在を調べないといけませんね。スカリエッティより先に保護しなければ」

 

「あぁ、そうだな」

 

こうして俺たちは、イクスヴェリアを探す事になるのだが、程なくして俺は管理局を抜ける事になる。その原因は、間違いなく今回の一件が大きいのだろう。

 

ミッドに戻った数日後、俺は本局に呼ばれ、そこでミゼットさんと面会をする事になった。

 

「やぁ坊や。久しぶりだね。君の活躍は聞いているよ。あのオルセアの内戦を止めたらしいじゃないか」

 

「耳が早いですね。結構細工をして、管理局側にもわからないようには動いていたつもりなんですが」

 

「うちの情報網を舐めちゃいけない。表向きの英雄はビリー・ブースという事になっているけど、その裏で貴方がコソコソしていたのは知っていたさ」

 

「……知っていたのは、何人ですか?」

 

「さてね、私はもちろん、俗に言う三提督は知っているし、恐らく最高評議会も認知しているんじゃないかな?」

 

管理局はあの世界に干渉しない。それを知っていて黙認している。俺は1つ、弱みを握られている立場にあるが、それは向こうも同じだ。

 

「今回呼び出されたのは、何らかの処罰を与える為ですか?」

 

「いやいや、逆さね。戦争を止めるなんていう偉業を成し遂げて処罰だなんて、あまりにも酷じゃないか。だから、最高評議会はあなたの贖罪を完遂したと決定した。貴方はこれで、自由の身になる」

 

!?どう言う事だ?オルセア事件に関係したのだから、最悪消されかねないと思っていたくらいなのに……

いや、だからか。このまま俺が管理局にいる事が、管理局側からしたら不都合になるのか。管理局の内部に入らないと、奴らの汚職の証拠が掴めない。だから、掴めなくさせたと…

 

「ミゼットさん的に、俺がもう一度管理局に入隊できる確率は、どれくらいあると思いますか?」

 

「限りなくゼロだね」

 

確信した。そしてわかった事が2つある。1つ目は、管理局にとって俺が不都合な存在である事。2つ目は、今目の前にいる女性は少なからず俺の味方である事だ。

 

「そうですか。ミゼットさん、ここは防音で、周りに人もいませんね?」

 

「あぁ、そうだよ。だから、これから私が言う事も、絶対に漏れない」

 

俺はニヤリとしただろう。この老人とちょっとした悪巧みをしている事が、少しだけ楽しい。

 

「坊やの知っての通り、管理局は腐敗している。坊やはその一端を知ってしまったせいで、管理局を追われる事になってしまった。でも、神器のマスターというネームバリューが強いお陰で、ルネッサ・マグナス、ユキ・ブレア、ヴェロッサ・アコースの所在は隠し通す事が出来た。この3人は今後も管理局内に居座る事ができる」

 

そうか、あの3人ももしかしたらと思ったが、そこは三提督が上手く秘匿してくれたのだろう。ありがたいぜ。

 

「私達は、現在の管理局をどうにかして立て直したい。だから、はやてちゃんの部隊設立にも貢献しようと思っている。あの子は管理局の未来を照らすと信じているからね」

 

これは俺も予想以上の出来事だ。あの三提督がはやてのバックに付く。それがいかに凄い事なのか、想像に難くない。

 

「私達は今後、ルネッサ・マグナス、ユキ・ブレアと共に内偵をしようと思っている。その間坊やは、外部で独自調査をして欲しい。勿論、行動は限られているから振りで構わない。坊やには今後間違いなく監視の目が付く。でも、だからこそさ。坊やに目が行ってる間に私達が調べる。坊やは好きなように動いたらいい」

 

ふむ、それは願ったりだな。俺は俺でイクスヴェリアを探そうと思っていたし、仮初めとは言え自由の身になるのなら、飲食店を開くのもやぶさかではない。心強い味方もいるのだ。少しくらい、甘えたってバチは当たんねぇよな

 

「わかった。今日限りで、俺とレーゲンは除隊する。ミゼットさん、はやて達の事、任せます」

 

「あぁ、元気でやるんだよ」

 

さて、はやてに何て言おうかな…

 

 

 

こうして俺は、管理局を抜け、喫茶店を経営する事になった。その際、はやてにはかなり怒られたが、海岸沿いに家を建てる事で何とか許してもらえたのは、また別の話だろうな。

 

 

 

説明
Sサイド
サブタイトル:オルセア内戦終戦
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コメント
まさかの脱退。驚きが隠せませんわ。(ohatiyo)
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リリカルなのは オリキャラ ヴェロッサ ルネッサ ミゼット 

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