恋姫外史医伝・華陀と一刀 五斗米道の光と影 第15話 |
上の人間の許可が降り、一刀たちは帝の寝室へとやってきていた。
中にいたのは青白い顔で寝台に臥せる霊帝、そして十常侍の一人張譲。
最初、貂蝉と卑弥呼を見た二人は明らかに動揺していたが、一刀と華陀が何とか落ち着かせ、治療の話へと入った。
「それで、おぬしたちは帝の命を救う事が出来るのか?」
「可能性はあると思いやってきました。どうか私達の治療を受けていただきたい」
「・・・・・・いかがですか?帝」
張譲の言葉に帝は弱々しく答えた。
「・・・・・・受けよう」
「そうですか・・・・・・分かりました。おぬしら、必ず帝のお命を救うのだぞ」
治療の許可を得た一刀たちは、一通り帝の体の状態を調べた後、治療の相談をすると言って部屋の隅へと移動した。
移動した直後、一刀と華陀は改めて横目で帝を見た。
彼らの目には魔というより魔王と形容するべき強大で禍々しい病魔の姿が映し出されていた。
「まさかあれほどの病魔が巣食っていたとはな・・・・・・」
「俺も、あんな強大な病魔は初めて見た」
「しかし、他の医師たちの言う通りだ。あの帝の状態からして外科手術であの病魔をどうにかできる可能性なんてありはしない」
「となると、当初の考え通り五斗米道で倒すしかないが・・・・・・そうなると俺は・・・・・・」
「何か問題があるの?ご主人様も五斗米道は使えるんじゃ・・・・・・」
貂蝉の疑問に一刀は首を横に振って答えた。
「使えるさ。だが、俺には華陀ほどの力を出す事は出来ない。生まれながらの気の量に差があるんだ。俺の気で出来るのは軽い病魔を倒す事か、あるいはそこそこの病魔を弱体化させることくらい。あんな強大な病魔には傷一つ付けられないだろうな・・・・・・」
心底情けないといった様子で唇を噛む一刀。
「いいや。そんな事は無い」
そう一刀に向けて言ったのは華陀だった。
「下手な慰めはいらないぞ華陀。お前だって知っていた事だろう」
「一刀。お前に足りないのは気だけだ。気さえあればお前も強大な病魔を十分に打ち倒す事が出来る」
「だから、その気が無いのが致命的だと・・・・・・」
「ある」
断言した華陀の視線は貂蝉、卑弥呼に向かっていた。
「華陀ちゃんったら♪そんなに見つめられると・・・・・・」
「胸が熱くなるではないか」
華陀は一刀に馬騰の病魔を倒す時に使った方法について話した。
「そんな方法あったのか・・・・・・」
「知らないのも無理は無いな。この技は気の制御が難しいために五斗米道の中でも限られた者にしか伝えられないものだからな。実際、俺も完全にモノにしたとは言えない技だ」
「お前でも扱い切れない方法をやれと?いや、それ以前に俺がやらなくても馬騰・・・・・・だったか?その患者にやった時と同じようにお前がそこの二人の気を貰ってやったほうが・・・・・・」
「いや、あの気の量は俺一人では扱いきれなかった。そのために余分な気が患部以外の場所にまで行ってしまい、結果、馬騰を肥満体にしてしまった。だが、気の量を俺と一刀にそれぞれ分割して使えば制御の難度も負担も軽減され、気を無駄なく使用する事が出来る。そうすればあの病魔をも打ち倒す事が出来るかもしれない」
「理屈は分からないでもないが・・・・・・俺にそんな大量の気を扱えるかどうか・・・・・・」
戸惑う一刀に対し、華陀は頭を下げた。
「頼む一刀。はっきり言って俺一人では奴に勝てる可能性は良く見ても極僅か。だが、お前の協力があれば可能性はまだ上げられる。患者の為に、お前の力を貸してくれ」
「華陀ちゃん・・・・・・」
「だぁりんにここまで言わせて、お主は何も感じぬのか?」
「・・・・・・」
数秒後、一刀は大きく息を吐いた。
「分かった。やってみよう」
「ありがとう一刀」
「礼を言われるような事じゃないだろう。むしろこちらが礼を言いたいくらいだ。こんな俺でも役に立てる方法を教えてもらったんだからな」
「それじゃあ、時間も無い事だし早速治療に入ろう。だが、気の問題が解決したとしても不安が残るな。もっと力を増幅する方法があれば・・・・・・そうだ!一刀、あれをやろう」
「あれ?」
「修行時代に練習した合体技だ」
「あ〜〜・・・・・・待て。あれの修行時代の成功率は一割以下だったはずだろ?それをぶっつけ本番でやれってか?」
「今の俺達ならやれる!」
「どこからその自信が・・・・・・まあいい。今回はとことんお前に付き合うとしよう」
治療法の打ち合わせを終えた後、四人は再び帝の前に立った。
上着を脱ぎ、仰向けに寝転ぶ帝に対し一刀と華陀は隣り合わせに立ち、一刀の後ろには貂蝉、華陀の後ろには卑弥呼がそれぞれ立っていた。
「始めるぞ!」
「おう!」
華陀は懐から奥の手である金の鍼を取り出し、一刀は鍼を持つ華陀の左手に自分の右手を添えた。
「ふんぬ!」
「ぬふう!!」
貂蝉と卑弥呼は華陀と一刀の背中にそれぞれ手を添え、気を送り込み始める。
時間が経つごとに少しずつ、一刀と華陀の身体は金色の光を放ち始めた。
「な、何なのだこの光は!?」
狼狽する張譲を尻目に、一刀と華陀は目を閉じて精神を集中していた。
二人の気を完全に同調させ、瞬間的に力を何倍にも増幅する合体技。
修行時代、まだ華陀と一刀が未熟で力の開きがそれほど無かった頃に、どうにか強力な病魔を倒せるようにと試行錯誤を繰り返していた中で編み出した技である。
しかし、制御する力も未熟だったために成功率は極めて低く、時が経って華陀の放出する気が一刀のそれを明らかに上回るようになると、華陀の本気に合わせられなくなった一刀はこの技を練習する意味を見出せなくなり結果、この技は事実上封印される事となったのだった。
「う・・・・・・」
貂蝉が体勢を崩しかける。
「しっかりせい!」
「わ、分かってるわん・・・・・・」
ふらつきながらも体勢を立て直す貂蝉。
今回、貂蝉と卑弥呼は馬騰の時以上に気を送り続けていた。
特に気の総量が少ない一刀の力を補うべく、貂蝉は卑弥呼以上に気を送っていたのだ。
しかし、一刀も華陀も振り向かない。
何より、華陀はともかく一刀には貂蝉を気にする余裕など一欠片も残されていなかった。
自分の中に流れ込んでくる大量の気。
初めて扱うには大きすぎる力の制御に全神経を傾けていたのだから。
少しでも気を抜けば気は暴走し、一刀の肉体すら破壊しかねない。
顔に汗を滲ませながら、一刀は必死に華陀との気を同調させようとしていた・・・・・・
どれほど時間が経っただろうか。
おそらく五分足らずであろうが、四人にはその十倍以上に感じられたに違いない。
「あ、後は・・・・・・」
「頼んだぞ」
貂蝉がグラつき、後ろに倒れこみそうになる。
その巨体を卑弥呼が受け止めるが、卑弥呼も限界が近いらしく、バランスを崩して膝を地に着けた。
「馬鹿弟子め、よくやったわい」
「・・・・・・」
卑弥呼の言葉が届く前に、貂蝉は既に意識を失っていた。
一方、華陀と一刀はその身体を金色に輝かせ、最後の仕上げにかかろうとしていた。
「「・・・・・・」」
目を閉じた二人の気が寸分の狂いも無く同調したその時、二人はカッと目を見開いた。
「「二人のこの手が光って唸る!!」」
「病魔を滅せと!」
「輝き叫ぶ!!」
「「五斗米道合体奥義!金光破砕撃!!」」
そう叫ぶと、一刀は華陀の手に添えていた右手を天に掲げた。
「「我等、今、鍼と一つとなり!一鍼同体!全力全快!必察必治療……病魔覆滅!」」
華陀は金の鍼を帝の腹部の直前で寸止めした。
瞬間、一刀は華陀の手目掛けて握り締めた右手を力の限り振り下ろした。
「「元気になぁれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」」
一刀と華陀の雄叫びと共に鍼が帝の腹部に刺さった瞬間、金色の光が部屋を満たした。
「グギャァァァァァァァァァ!!」
断末魔の叫びを上げて光の中に飲み込まれていく病魔。
そして三十秒ほど経っただろうか。
光は徐々に治まっていき、光が完全に消えた時、全ては終わっていた。
「み、帝!大丈夫ですか!?」
「う、うむ。大丈夫どころか嘘のように体が軽い」
張譲の心配をよそに、帝は身を起こし、腕を回したりして元気ハツラツと言った様子だった。
「やったみたいだな・・・・・・」
「そのようだ」
力を使い切った一刀を華陀が支えている。
「しかし、もう限界だ。後は・・・・・・任せる・・・・・・」
一刀の意識はそこでぷっつりと途切れた。
帝の命を救う事に成功した一刀達
しかし、その行為がこの国の行く先にどのような影響を及ぼすのか
一刀達はまだ知らない・・・・・・
どうも、アキナスです。
帝の命、救いはしましたが歴史はどう変わってしまうのでしょう?
そして一刀たちの今後は?
次回へと続きます・・・・・・
説明 | ||
治療開始です | ||
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コメント | ||
ミヅキさん:翻訳が的確!(アキナス) 神余 観珪さん:それは言わない約束!(アキナス) アストラナガンXDさん:緊急措置ということでここは一つ・・・・・・(アキナス) mokiti1976-2010さん:二人がどう立ち回るかですね(アキナス) 未奈兎さん:ぐう・・・・・・その話題は詳しくないから答えが返せない・・・・・・(アキナス) 現在風に翻訳すると、「石破天驚ゴルディオンクラッシャー拳」となる…腹筋が光になるわ!(ミヅキ) 合体技は憧れ。 一刀くんと華佗が修業時代にそんな技を編み出していたとは……五斗米道でなかったら黒歴史だったかもしれませんねww(神余 雛) 破門になった人間に奥義的な技を教えて良いのか?....まぁ、人命を優先したら有りなんだろうけど。(アストラナガンXD) ここまで鮮やかに病を治癒する力を持った二人を張譲がこのまま普通に帰すわけがないような気がする。(mokiti1976-2010) 別ゲーですが運命石で病に打ち勝った皇帝を思い出しました(未奈兎) |
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