律子「私の麻雀は!」小鳥「気付いて……」 第5話後編(下) |
――築牌中――
律子『……うん。ちょっとすっきりしたわ』
律子『小鳥さんは、遥か遠いところにいるってことが確定した。どう足掻いたってすぐには追いつけやしない』
律子『それでもいつかたどり着こうと思ったら、例えばどんなことができる?』
律子『時間をかけて努力を重ねること。思考を鍛えて形作っていくこと。そうして自分なりの解答を洗練させていくこと』
律子『……でもきっと、人によって違うモノになるんでしょうね。だからこそ、上級者でも打牌が全く違ってくる』
律子『小鳥さんが説明を拒むのも当然か。だって、今の私には、小鳥さん独自の理論を受け入れる地力が無いんだもの』
律子『実力不足だから話しても混乱するだけよ、って。そう言わないのは、小鳥さんの優しさ?』
律子『それにしても……なんだかなあ』
律子『この半荘が進めば進むほど、麻雀がわからなっていくわ』
律子『今までずーっと求め続けてきた私の麻雀が、とてもとてもちっぽけなものに思えてくる』
律子『あんなに時間をかけて研究してきたのに。作り上げたつもりの薄っぺらな理論が、安物のガラスのように次々と割られていく』
律子『積み重ねた努力の全てが無駄だった、とまでは言わないけれど……』
律子『実力者に教わっていた伊織は仕方がないとしても、意識的にズレた打ち方をしている雪歩にすら届いていないのよねえ』
律子『今だって、小鳥さんみたいな打ち手なら、簡単に玩べる程度の力しかないってことを見せ付けられている』
律子『これが現実ってことなのかな。厳しいわ、ホントに』
律子『……でも、不思議と悪い気分じゃない』
律子『本来ならショックでも受けるべきところだと思うんだけど。なんでだろ。自分でもわからない』
律子『私いま、ワクワクしてる』
律子『この半荘をもっと続けていたいって、思ってる』
【南三局】
西家:小鳥 18800
北家:美希 68500
東家:春香 32200
南家:律子 500
律子「……500点じゃなかったらなあ」
美希「小鳥、律子が壊れたの。なんとかならない?」
律子「はあ?なによ、急に」
美希「急なのは律子の方だよ。500点なのはミキに振ったからで、仕方のないことなの」
律子「ん……あ。ひょっとして私、何か言ってた?」
春香「えっと、あの、500点じゃなかったらなーって、言いましたよね?」
律子「うわっ、ごめん。思ってたことが口に出ちゃったみたい。何でもないから、気にしないで」
美希「飛ばされたくないってこと?」
律子「あはは。まあ、そうね。正直、それもあるわ。だけど」
春香「たけど?」
律子「それよりも、もっと打っていたいって感じ。なんだかすごく、いい気分なのよ。あと、美希はさんをつけなさい」
美希「むー……ほんとにチョーシ、出てきたみたいだね」
律子「だといいんだけどねえ。なんとかして一矢くらいは報いたいわ」
春香「私、東場の親を律子さんに流されたんですけど……」
律子「じゃあ春香はもういいわね」
春香「やった!じゃあ、もう親を流したりはしないってことですよね?」
律子「うーん。500点だと、飛びが怖い上にリー棒が無いから……配牌次第だけど、スピード重視でいく可能性も十分にあるわ」
春香「厳しいなあ、っと」
律子「積めたわね。はいサイコロ。まあだから、不本意だけど軽く流しちゃうかも。その時はごめんね」
春香「いえいえ。私が律子さんの立場なら、親を持ってくることに全力ですから。他の事なんて気にしている余裕はないと思います」
律子「できれば美希から直撃でも奪いたいところなんだけど」
美希「いいよ。でもミキ、まだ振ったことないから難しいんじゃないかな」
律子「そうなの?」
春香「そりゃそうだよね。これが初マージャンなんだから」
美希「ネタばらしが早いの」
律子『そういえば、美希が麻雀を打ったって話は聞いたことがなかったわね』
律子『初麻雀で初トップなんて、羨ましい限りだわ』
律子『私は、どうだったかしら。確か何もわからないまま親戚と打って……ああ、そうだ』
律子『負けたから。悔しくて、勝ちたくて、それで勉強をし始めたんだった。一緒に負けた涼を巻き込んで』
律子『あの頃は、麻雀が楽しいとか思っていなかったのよね。ただ、見返してやりたいって気持ちだけだった』
律子『そのまま今まで来ちゃったけど、そういえば麻雀を好きになったきっかけってなんだっけ?』
律子『……思い出せない。まあいいわ。今はいい配牌が来ることでも祈っておきましょう』
律子『さて、どうかな?』
――律子・配牌――
一二45899(246)北発発 ドラ:1
律子『あ、これダメだ』
律子『タンピンも色も端手も無理。もうほとんど形が出来ちゃってるから、ドラを引いても手牌に残しにくくなりそう』
律子『リーチができない今の点数で、この手か。何かを狙えるなら、スピードを落とすという選択肢もあったんだけど……』
律子『面前で頑張っても発くらいしか役をつけられない可能性が濃厚。なら、スピードを上げてリスクを減らす一手』
律子『ごめんね、春香。こんな点数状況にした張本人なのに』
――4巡目――
律子「ポン」
――7巡目――
律子「ロン。1000点」
春香「うわっ!本当に早くて安い手なんですかあ」
律子「ごめんね。配牌がこんな感じで、もう狙える役がなかったのよ」
――律子の手牌変化――
配牌時 『一二45899(246)北発発』
和了時 『一二三55599(67) 鳴き:発発発』
捨て牌 『北(2)(4)西8一4』
春香「あー。この手じゃどうしようもないですね」
律子「配牌を取った時に、もう仕方がないかって感じだったわ」
小鳥「……」
美希「ねえ、小鳥ならどうしてた?」
小鳥「美希ちゃんがそんなことを聞くなんて、珍しいわね」
美希「だって、今なにか考えてたでしょ?ミキにもイイコト、教えてほしいな。こういう時って、どうしたらいいの?どうしたら逆転できる?」
律子「この手からじゃ無理よ」
小鳥「うん。まあ、そうね。私も律子さんの状態なら、同じようにあがりにいくと思うわ」
美希「ふーん。じゃあ考えてたことって、なに?」
小鳥「状況が違ったらってことを、ちょっと考えてみただけよ」
美希「そのちょっと、教えてほしいな」
小鳥「……もし、もう少しだけ点数があったら。そうね、5000点くらいあったら、違う手の進め方をしていたかもしれない、かな」
律子「この手で何かを狙う、ってことですか?」
小鳥「狙うってよりも、降りながらカウンターの隙を窺ってみる手もないことはないと思うのよ。守り重視の高得点打法」
美希「じゃあ、その時はどう打つの?」
小鳥「……律子さん。5ソウって、鳴く前に引いた牌?」
律子「ええ。一枚だけですが」
小鳥「それなら、こんな風に打っているかもしれないわ。発を鳴かないから、ツモがズレて意味のない仮定になるけれど」
――小鳥さんの仮想手順――
配牌時 『一二三45899(246)発発』
捨て牌 『(2)(4)(6)(7)三二』
仮想手牌 『一一4555899西北発発』
律子「えっと……何ですかこれ」
小鳥「何って、一色手とトイツ手の両天秤よ」
美希「ぜんぜんテンパりそうにないの」
小鳥「そうね。でも降りるのは簡単そうでしょ?それに、あと一個でも暗刻やトイツができたら見違えるわよ」
律子「確かにそうですけど……」
小鳥「まあ、そんなにオススメするやり方じゃないから気にしないで――」
美希「うん……ミキ、わかるよ。それってきっと、ミキにはすごく大事なことだと思うの。だからもっと聞きたいな。時間、いいよね?」
春香「あれ?なんか真剣なカンジに」
小鳥「美希ちゃん、コレはまだ早いわ。きちんと普通に打てるようになってから、その上で自分なりに見つけるものなのよ」
美希「いいよ。たぶん大丈夫!」
小鳥「……わかったわ。じゃあせめて、ゆっくり説明させて。約束している特別講習の時にやるから」
美希「えー!今がいいのにー」
小鳥「今は私の方が無理なのよ。美希ちゃんが勘違いしないような説明を考えるための時間を頂戴」
美希「なーんかミキの時だけ対応悪いの」
小鳥「それは違うわ。美希ちゃんの要求だけレベルが違うの。ああ、こうなるかもしれないから黙っていたのに」
美希「でも、聞いたら答えようとしてくれるんだね」
小鳥「麻雀で嘘は吐きたくないの。それに、みんなに強くなって欲しいし……まあ他にも色々と考えていたりして」
春香「いろいろ、考えてくれているんですか?」
小鳥「なるべく早く、みんながもっと楽しく打てる状況を作りたいって思っているわ。実は、ちょっとだけ頑張っているのよ」
春香「うわあ、全然知らなかった。私も何かお手伝いした方がいいですか?」
小鳥「大丈夫。それよりも、春香ちゃんたちは自分が楽しむことを優先して欲しい。環境作りはプロデューサーさんと私でやっていくから」
春香「そんな言い方されたら気になっちゃいますよ。教えてくれないんですか?」
小鳥「今はまだ内緒。そのうち意外なことも起こると思うから、楽しみにしていてね」
【南四局】
南家:小鳥 18800
西家:美希 68500
北家:春香 31200
東家:律子 1500
律子『小鳥さんの言葉。詳しくはわからないけれど、”これからはもっと打つ機会が増える”ってことは間違いない』
律子『でも、麻雀を打てる人は少ないし、その中で四人揃えて打つ時間を確保できることなんて、そうそう無いと思うんだけど……』
律子『なんとかしてくれる、ってことかな?だったらきっと、私には早い段階で相談がくるはず』
律子『一番予定が合わせ難いのは竜宮小町だもの。プロデューサーの私は、むしろ調整する側に回る必要がある』
律子『でも、私や伊織の予定調整だけで、そんなに打てる回数が変わるのかしら』
律子『例えばプロデューサー。お役所に知られてはいけないほどの働きっぷり』
律子『小鳥さん。アイドルたちが売れていくにつれて、加速度的に忙しくなっている真っ最中』
律子『私。竜宮が当たりの気配を見せている今が一番大事な時。プロデューサー業はまだまだ未熟で時間はいくらあっても足りない』
律子『普通に考えたら無理、なのよね』
律子『でも、きっとなんとかなるんでしょう。あの二人の企みで口にも出せる状況なら、もう社長の承認は取れているはず』
律子『打てる機会が増えるなら……私にとって、オーラスの意味を変えるほどの大きな情報になるわ』
律子『次の機会がいつになるのかがわからないからこそ、この半荘に何かを残したかった。何もできないまま負けたくなかった』
律子『でも、次が保障されるのであれば』
律子『私は、このオーラスを自分の成長に費やすこともできる』
律子『私に一番足りていないものは、経験』
律子『この局を普通に打つことはいつでもできる。ただ私の理論に従って打つだけなら、普通の経験しか得られない』
律子『だったらいっそ、今のこの”いい感覚”に従って打ってみたい』
律子『今までに学んできたことをフルに活用しながらも、さっきみたいなギリギリの判断に身を任せてみたい』
律子『私の、私なりの、私だけの一打を打ってみたい』
律子『今の自分を越える一打を、もう一度打ってみたい』
――律子・配牌――
二三五五八九448(346)発西 ドラ二
律子『良くもないし悪くもない。ごく普通の手。比較的まとまっているかな、って程度ね』
律子『もちろん連荘を狙うんだけど、できれば点数も欲しい。ツモ次第では、うっかり小鳥さんをまくってしまう可能性もなくはない』
律子『だけど……』
――4巡目――
小鳥「チー」 鳴き:8−67
律子『早仕掛け。まあそう来るわよね。小鳥さんは早上がりの三着維持でかまわないんだから』
律子『とはいえ。さっきの局では、美希が私を飛ばす展開を差込みまでして防いでいる』
律子『意図が掴めないままだったのだけれど、どうやらこのオーラスは普通に勝ちにくると思ってよさそうね』
律子『美希もあがりトップなんだから、素直にあがりに来る?』
美希「ふ〜んふふ〜ん♪」
律子『油断モードね。最後もかっこよく決めるつもりってわけか。キラキラ、だっけ?まあ美希らしいんだけれど』
律子『近いうちにその油断を突いてあげるわ。いい情報をありがと』
律子『春香は……ある意味では一番読めない。トップをじっくり狙う打ち手っぽいんだけど、諦める基準がわからない』
律子『美希から倍直でも届かないから、さすがに二着確保でくるか。軽くあがろうとする気配を感じたら対応した方がいいわね』
律子『速度的には”小鳥さん>春香>美希”だと思う。小鳥さんの鳴きは要注意』
――律子・6巡目手牌――
二三五五八九445(346)発 ツモ四 ドラ二
打:発
律子『早くはないけれど、手の進みはまあまあね。小鳥さんは』
――小鳥・捨て牌――
(9)一北東中
律子『発が鳴かれなかったから、役牌バックの可能性は白だけ。たぶんこれ、喰いタンと見ていいわ』
律子『ツモが悪いのか、それとも苦しいところから鳴いたのか。まだ捨て牌は老頭牌ばかり』
律子『これなら真っ向勝負でもいいかな。もう一つ鳴かせるまでは、あまり気にしないでいけそうね』
律子『美希は、もうリーチが来るまで無視でいいか。どうせ私は降りられないんだから、テンパイに向けて全力で行きましょう』
律子『春香は』
――春香・捨て牌――
南北1中三
律子『もう捨て牌に三マンが出てきてる。早く仕上げてきそうな感じね。普通に考えれば、対応した方がいい』
律子『でも、春香がオーラスにそんな普通の手を狙う?765の初麻雀で、オーラスにフリテンメンチンをツモりあげた、あの春香が』
律子『一発逆転はまず無理だけど、それでも何かを企んでいそうね。安手で終わらせにいくなら』
春香「…………」
律子『ここまで真剣に人の捨て牌を見てこないもの』
律子『いいわ。もし春香が私からダマであがるようなら、お手上げね。私の読み違いだから、その時は素直に負けを認めましょう』
――律子・8巡目手牌――
二三四五五八九445(346) ツモ(2) ドラ二
律子『イーシャンテン。ちょっと時間がかかったけれど、まあ許容範囲内』
律子『単純なテンパイまでの効率なら(6)ピン切り。だけど、七マン待ちの愚形テンパイはあまり嬉しくない』
律子『たぶんだけど、みんな親のリーチに降りてこないのよね』
律子『小鳥さんはきっちり読んでくる。美希や春香は、私がよほど高い点数でない限りはまくられないから自由に打てる』
律子『基本的には、親なら愚形でもリーチをかける方がいいと思う。でも、相手が向かってくるこの局面では分が悪すぎる』
律子『絶対に落とせない局だからこそ、あがる確率の高い好形で勝負したい』
律子『だからここは』
打:4
律子『4ソウを切って、(6)ピンを浮かせる。(6)ピンのくっつきを狙いながら、イーシャンテンは維持』
律子『これでも先に七マン待ちでテンパった場合は、不本意だけどリーチね。流石にテンパイを崩して一手追加するのは遅すぎる』
律子『さて、どうなるか』
小鳥「……」 打:3
律子『内よりの牌が出てきた。そろそろ形が整ってきたのかも』
美希「……」 打:(9)
律子『美希はまだね。捨て牌だけじゃなくて、表情からもよーく伝わってくるわよ』
春香「……」 打:(8)
律子『春香は、また難しい顔をして打っているわね。ふふふ、可愛い顔が台無しじゃない。眉間にしわができているわよ』
――律子・9巡目手牌――
二三四五五八九45(2346) ツモ白 ドラ二
律子『嘘でしょ!ここで生牌の白を持ってくるなんて。食いタンだと思うけど、これを小鳥さんに鳴かれたらかなり厳しくなるわ』
律子『オーラスで皆が降り難いような状況なら、役牌バックは戦術として十分に機能する』
律子『くっ……でも、あがりが必須のオーラスで、この手牌だもの。邪魔になるだけよね。前に出るって決めたんだから』
打:白
律子『当然こう打つっ!……どう?』
小鳥「……」 打:(1)
律子『鳴かれなかった。よかった……役が付いてなんでも有りにされるのはキツい場面よね』
律子『これで食いタン確定。最低限のケアで押していける』
美希「……」 打:(2)
律子『手が進んだか。わりとまとまってきたみたい。でもまあ、四人の中で一番遅いことに変わりはない』
律子『捨て牌はタンピン系の手順っぽい。どこまで入っているんだか。まあ、基本無視は継続』
春香「……」 打:……
律子『春香が何かを考え始めている。切る速度がどんどん遅くなって、その分だけ捨て牌を見ることが多くなっている』
律子『自分の手よりも捨て牌を見ているのは上級者っぽいけれど、いったい何が見えているのか』
律子『ふふ。なんだか、考えたことがないようなところにまで考えが行き届いている』
律子『間違っていてもいいから、この思考に身を任せてみよう』
春香「……」 打:8
律子『正しくなくてもいい。今はただ、この感覚を信じるだけ』
――律子・10巡目手牌――
二三四五五八九45(2346) ツモ(5) ドラ二
律子『よしっ!タンピン形への移行ができる上に三面張。理想的な変化』
律子『いざって時には仕掛けることもできる。この受け入れを残せたのは大きい』
律子『これはもう八・九マン落とししかない。小鳥さんをケアして、鳴かれないであろう端牌から』
打:……
律子『――――あれ?』
律子『あれっ?この九マンを切りたいのに』
打:……
律子『手が上手く動かない。なんだかやけに重い。えっと、なにこれ』
律子『他の牌は……持ち上がる。なんでこの九マンだけ?』
律子『重い。手が固まって動いてくれない。まるで、私の指示を体が拒否しているみたいに』
律子『でも、八マンを切って小鳥さんに鳴かれる可能性を考えたら、少しでも切るのを遅らせた方がいいと思う』
律子『……うん。やっぱり九マン切りよ。ちょっと気持ち悪いけれど』
打:九
――律子の手牌――
二三四五五八45(23456)
律子『いい形になった。これでいいはずよね』
律子『結局八マンも九マンも切るんだから、後はタイミングだけでしょ』
律子『何をそんなに考え込んでいたのかしら。自分でもよくわからないわね』
律子『どちらから切ろうとあまり変わらないじゃない』
美希「春香、この局はやけに切るのが遅いね」
春香「うえっ?!あ、ごめん。ちょっと集中してて」
美希「ひょっとして、ミキの声も聞こえなかった、とか?」
春香「はい……」
美希「まあいいけど。でもさあ、そんなにじっと捨て牌見てもわかんないって言わなかったっけ?」
春香「わかんないんだけど、それでも、ね。うーん……頑張ってるんだけどなあ」
小鳥「考えることは大事よ。今はわからなくても、後の実力につながるから」
美希「そうなの?」
小鳥「少なくとも、私はすごく大事なことだと思っているわ」
春香「あんまり待たせるのも申し訳ないですね。もうこれにしちゃいます」 打:四
――律子・11巡目手牌――
二三四五五八45(23456) ツモ:九 ドラ:二
律子『春香がまた中ほどの牌を切ってきた。そろそろテンパイかしら』
律子『ん……集中が切れちゃったのかな。さっきみたいに考えられなくなった』
律子『手が止まったからかな。なんだったんだろう。しかもまた同じ牌』
律子『まあ切るけど』
打:九
律子『嫌な感じね』
小鳥「…………」 打:八
春香「うあんっ」
美希「うあん?」
春香「いやっ、ちがっ……うあんじゃないです。なんでもないです。ごめんなさい」
美希「うあんじゃなくて、なんでもないの?じゃあミキ、引いていい?」
春香「いいよ。なんでもないからね。さあ、どうぞ」
美希「じゃあドン引くね。なに、うあんって。今の声、かなりキモいよ」
春香「そっちかーいっ!もういいから進めてよ〜」
美希「進めるけど……でもさ、さすがにちょっと挙動不審すぎないかな?」
春香「うん。正直、ごめん。ちょっとは自覚してる。考えることがいっぱいで、テンパってるんだと思う」
美希「なんかタイヘンそうだね」 打:白
春香「美希は平気そうで羨ましいよ。私なんて、打てば打つほど混乱してきてるのに……」
美希「ひょっとして、また悩んだりする?」
春香「ごめん。少しだけ。お願い」
美希「まあ最後だし、せいぜい頑張って追いついてよ。役満ツモったら追いつくかもね」
律子『美希は、手が進んだっぽいからイーシャンテンくらいなんでしょうね。リーチがなかったもの』
律子『小鳥さんは、八マンじゃわかんないわね。まあ、例えテンパイでも私が切るのも八マン。とりあえずはいいか』
律子『春香は……えっ?この子、私の捨て牌をじっと見てる。なんで?』
春香「だめ、わかんない」 打:六
美希「それ結局ツモ切ってない?」
春香「うん……ごめんね。でも、言えないけど、ホントいろいろあるんだよぉ」
律子『なんなのよ。なんで私を見るのよ。気持ち悪いじゃない』
――律子・12巡目手牌――
二三四五五八45(23456) ツモ6 ドラ二
律子『ああ、やっと来たわ!これはもうリーチしかない』
律子『ツモれたら一気に差を詰められるし、裏ドラが乗れば小鳥さんを逆転できる』
律子『いけるかもしれない。やっと私にも出番が来た』
律子『ツモれますように……お願いっ!』
打:八
律子「リーチっ!」
春香「うえっ!あっ、ちょっ、ちょっと待って!えっと――」
律子「なによ、リーチは待たないわよ」
春香「ああ……もうダメだよね……」
律子「ダメって、何が」
春香「ロン、です」
律子「……えっ?」
美希「はあ?」
小鳥「……なるほどねえ」
春香「タンピンドラドラ、満貫です……」
――春香の和了形――
二二六七456(456678) ロン:八 ドラ二
説明 | ||
律子さんは頑張っています 注1:『一』は一マン、『1』は一ソウ、『(1)』は一ピンです 注2:このお話は、以下から始まるシリーズの続編です。 春香「マージャンですよっ!マージャンっっ!」 P「え?」(http://www.tinami.com/view/593606 ) 注3:第5話前編はこちら(http://www.tinami.com/view/748427 ) |
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