英雄伝説〜焔の軌跡〜 リメイク 改訂版 |
〜アクシスピラー第五層・外〜
「ど、どうして……どうしてエステル達なんかに”パテル=マテル”が負けるの!?」
「ゴルディアス級の人形兵器はまだ制御系が不安定らしいからね……関節部分に負荷がかかって作動不能になったのかもしれない。」
パテル=マテルの敗北が信じられないかのように悲鳴を上げたユウナの疑問にヨシュアは自身の推測を口にした。
「………そんな………”パテル=マテル”!ねえ、早く立ち上がって!早くエステルやレン達を皆殺しにしちゃってよぉ!」
ヨシュアの推測を信じられない表情で聞いていたユウナはパテル=マテルを見つめて声を上げた。
「――――――」
ユウナの希望に応えるかのようにパテル=マテルは立ち上がろうとしたが、足の関節部分がルーク達の戦闘によって使い物にならなくなっていた為立ち上がる事ができず、ユウナの指示に従うのを止めたかのように止まった。
「……あ………………………」
それを見たユウナはパテル=マテルは立ち上がれない事を悟り、地面に崩れ落ちた。
「ユウナ……」
「なによぉ……エステル達の勝ちなんだからもうどうでもいいじゃない……さっさと端末を解除して上に行っちゃいなさいよぉ……」
自分に近づいてきたエステル達にパテル=マテルの敗北によって戦意を失っていたユウナはエステル達に視線を向けることなく、自分の敗北を認めてエステル達にさっさと自分達の元から去るように促した。
「……そっちも大事だけど後回しにする事にするわ。今はあんたの方が大事だからね。」
「なによぉ……エステルなんてユウナのこと何も知らないくせに……!”ユウナと同じ”おねえちゃんが傍にいるのに、どうしてそんなに……ユウナに構ってくるのよぉ……!」
「フフン、決まってるじゃない。あたしがユウナのこと、好きだからよ。勿論ユウナがレンの妹だからとかそんな失礼な意味じゃなくて、ユウナ個人として好きよ。」
悲鳴を上げたユウナにエステルは胸を張って答え
「!!」
エステルの答えを聞いたユウナは信じられない表情で目を見開いた。
「だからこそ……あたしはユウナにやっておかなきゃならない事がある。悪いけど、軽く行かせてもらうわよ。」
「え………」
そしてエステルはユウナを立ち上がらせてユウナの頬を軽くビンタした。
「あら……」
「………あ……………………ぶった…………」
エステルの行動にレンが目を丸くしている中、ユウナは呆けた表情でビンタされた頬を手で抑えた。
「悪いことしたらぶたれるのは当たり前よ。じゃないと、他の人の痛みが感じられなくなっちゃうからね。あたしも小さい頃は父さんに散々ゲンコをもらったんだから。」
「むう、ユウナはビンタでレンはゲンコツなんて、不公平よ。レンは法律違反ギリギリな事をやっただけで、実際に犯罪を犯しているユウナの方がレンより明らかに悪い事をしているのに、何でレンの方が痛い方なのよ。」
「レ、レンちゃあん……」
「今は黙ってろって……」
頬を膨らませてエステルを睨むレンのエステルに対する指摘を聞いたティータは脱力し、ルークは呆れた表情で指摘した。
「エステルも……同じなんだ……痛がってるのに……ぜんぜん止めてくれなかった……ユウナを……ユウナに酷いことをした……あの人達と同じ……」
「同じかどうかはユウナが自分で考えてみて。どう……本当にそう思う?」
”生き地獄”同然の場所で生きていたかつての自分と周囲の人物達の事を思い出して呟いたユウナにエステルは優しい口調で問いかけた。
「…………………わから……………ない…………」
「だったら……これならどう?」
「………あ………」
エステルに優しく抱きしめられ、エステルのぬくもりを全身で感じていたユウナは呆けた表情をしていた。
「あたしは何も言わない……ユウナが自分の心で感じるままに判断しなさい。」
「…………………頭がモヤモヤしてなんだか良くわからないけど……こんな風に抱きしめられるのは……キライじゃない……かも……」
「そっか……」
ユウナの口から出た答えを聞いたエステルはユウナに自分の気持ちが少しは伝わった事に嬉しい気持ちになった。
「…………………………帰る…………」
「え……」
「”パテル=マテル”!関節部のアクチュエーターを止めてブースターのみで姿勢制御して!」
ユウナの指示によってパテル=マテルはブースターを起動させて滞空した後着地し、ユウナはパテル=マテルの片手に乗った。
「ユウナ……!」
「頭がこんがらがっちゃったから一人でゆっくり考えてみる……エステル達はこのまま屋上まで登っていけばいい……レーヴェが待ってるはずよ……」
「あ……」
「……そうか。教えてくれてありがとう。」
「大丈夫なの……ヨシュア?レーヴェってば本気で通せんぼするみたいだけど……」
「うん……わかってる。でも、僕の方ももう覚悟はできているから……だから、心配はいらないよ。」
ユウナに心配されたヨシュアは優し気な口調で答えた。
「そう……じゃあ、ユウナは行くわね。」
ヨシュアの答えを聞いて頷いたユウナが呟くとパテル=マテルは離陸し始めた。
「ユウナちゃん!?」
「ユウナ……待って!」
「………………」
それを見たティータとエステルはユウナを呼び止めようとしている中、ユウナと血が繋がっている双子の姉であるレンは呼び止める事はせず、静かな表情でユウナを見守っていた。
「……じゃあね。エステル、レン、それにティータ。ユウナはもう行くけど……死んだりしたら許さないんだから!」
そしてユウナはパテル=マテルと共に”アクシスピラー”から去って行った。
「………………………これで……良かったのかな?」
「うん……大丈夫。色々なことが起こり過ぎてあの子も混乱してるだけだと思う。すぐには無理だと思うけど……いずれ自分で答えを出せるはずだ。」
去っていくユウナを見守っていたエステルが不安そうな表情で呟くとヨシュアが優し気な微笑みを浮かべて答えた。
「そっか……」
「えへへ……また会えるといいな。」
「ま、いやでもその内また会えると思うわよ?何せ”元”とはいえレンの妹なんだから、レン達から逃げ続けるなんて情けない選択はとらないと思うし。」
「ふふ、ユウナの考えがわかる貴女が言うと信憑性がありますね。」
「ハハ、実際レンはユウナの考えや行動を読みまくっていたから、マジで洒落になってねぇもんな。」
「うん……そうね。………………さてと……気持ちを切り換えなくちゃ。端末を停止させて先に進みましょ。」
「うん………そうだね。」
気を取り直したエステルの言葉にヨシュアは複雑そうな表情で頷いた。
「あ、そっか……屋上でレーヴェが待っているって言ってたわね。」
ヨシュアの表情を見て、ヨシュアの心境を悟ったエステルは真剣な表情で去り際のユウナの言葉を思い出した。
「うん……執行者No.U。”剣帝”レオンハルト。”執行者”たちの中でも一、二を争う戦闘力の持ち主だ。万全の準備をして屋上に向かおう。」
「……了解!」
その後エステル達は端末を操作した後、一端アルセイユに戻って休憩をしてメンバー編成をしなおし、エステル、ヨシュア、ルーク、ステラ、レイス、アガット、アーシアのメンバーで先を進み、ついに屋上に到達した。
〜アクシスピラー・屋上〜
「……来たか。」
エステル達が屋上に到達すると執行者――”剣帝”レオンハルトが待ち構えていた。
「レーヴェ……」
「……意外と早かったな。もう少しばかり待たされるかと思っていたぞ。」
「ま、あたしたちも少しは成長してるってことよ。さすがに、あなたのお仲間にはかなり手こずらせてもらったけど。」
感心している様子のレーヴェにエステルは口元に笑みを浮かべて答えた。
「(仮面のシスター………奴がエステル・ブライトの話にあった……―――!?)フフ……言うじゃないか。だが、この”剣帝”を彼らと同じには考えないことだ。正面からの対決において俺を凌駕する者はそうはいない。たとえS級遊撃士や”蛇の使徒”といえどな。」
エステル達のメンバーを見てステラを見つけ、ステラから何かを感じ取ったレーヴェは一瞬驚いたがすぐに表情を戻して静かな表情で答えた。
「ケッ……吹いてくれるじゃねえか。」
「………………」
レーヴェの指摘にアガットが表情を厳しくしている中、アーシアは真剣な表情でレーヴェを最大限に警戒していた。
「……あなたの強さはイヤと言うほど分かっているわ。でも、あたしたちも理由があってこんな所までやってきた。”輝く環”による異変を止めて混乱と戦火を防ぐために……。沢山の人たちに助けられてあたしたちは今、ここにいる。だから……退くつもりはないわ。」
「フ……理由としては悪くない。だが、ヨシュア。お前の理由は違うようだな?」
「え……」
レーヴェの言葉を聞いて驚いたエステルはヨシュアに視線を向けた。
「お見通し……みたいだね。僕は……自分の弱さと向き合うためにここまで来た。あの時、姉さんの死から逃げるために自分を壊したのも……教授の言いなりになり続けたのも……全部……僕自身の弱さによるものだった。それを気付かせてくれた人に報いるためにも……大切な人を守るためにも……。僕は……正面からレーヴェや教授に向き合わなくちゃいけないんだ。」
「ヨシュア……」
(本当に立派になったわね……)
「………………………………。……巣立ちの時か。もうカリンの代わりに心配する必要もなさそうだ。」
ヨシュアの決意にエステルとステラが嬉しそうにしている中、レーヴェは静かな表情で呟いた後剣を構えた。
「……これでようやく手加減する必要はなくなった。本気で行かせてもらうぞ。」
「ちょ、ちょっと!どうしてそうなるのよ!?ヨシュアのことを心配しておいてどうして―――」
「いいんだ、エステル。覚悟を決めただけではレーヴェは納得してくれない。その覚悟を貫き通せるだけの力が伴っていないと駄目なんだ。」
レーヴェの行動を見て反論しようとしたエステルをヨシュアは制した。
「フフ、そういうことだ。」
ヨシュアの指摘に不敵な笑みを浮かべて同意したレーヴェは獅子のような姿をした人形兵器――ライアットセイバーを2体呼び寄せた。
「―――俺にも俺の覚悟がある。もし、お前たちの覚悟が俺の修羅を上回っているのなら……力をもって証明してみるがいい!」
「うん……!」
「……望むところよ!」
「―――平和を望むアリシア祖母上とクローディア、そしてリベールの民達の想いをこの剣に乗せ、全身全霊で挑ませてもらう!」
「ヴァン師匠(せんせい)の”アルバート流”……ユン老師の”八葉一刀流”……二人から学んだこの剣で俺の永遠の罪を償う為にもお前をぶちのめす!」
「立場が変わっても私が夢見た世界に少しでも近づくために、例え貴方が相手であろうと絶対に超えて見せる……!」
「ヘッ、今までの借り、利子付けて返してやるぜ……」
「貴方にこれ以上罪を重ねさせない為にも、本気で行くわよ……!」
そしてエステル達はレーヴェ達との戦闘を開始した!
原作やった人達ならわかりますが、レーヴェ戦に挑むこのメンバーがラスボス戦のメンバーです!……が、ラスボス戦時に更に数人援軍として現れてラスボス戦に参加しますので誰が援軍として現れるのかその時をお待ちください♪
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第102話 | ||
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コメント | ||
d-sword様 確かに人数はレーヴェの相手メンバーの数は多いですけど、質がわずかにユウナの方が上ですね(冷や汗)(sorano) ユウナ「私の相手メンバーの方が手ごわいんですけど・・・」(d-sword) |
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