ALO〜妖精郷の黄昏・UW決戦編〜 第38-2話 故郷への帰還 |
第38-2話 故郷への帰還
ユージオSide
「んっ、朝か…」
「あ、起きたのね、ユージオ」
「アリス……あぁ、そっか…。おはよう、アリス」
「ええ。おはよう、ユージオ」
人の動く気配がして目を覚ましたら鏡台の前で既に着替えて髪を整えているアリスの姿が目に映って、
夜のことを思い出してそれを察したからなのかアリスは顔を紅くしながら鏡に向いてまた髪を整え始めた。
可愛いなと思って、込み上げてくる嬉しさが堪らない。
そこで外を見てみればようやく日が昇り始めたという感じだった。
「ユージオも朝は早く起きるのね」
「キリトと一緒に早朝に鍛錬をしていたからね、学院の前は住み込みで働いて衛士もしたし、
朝に強くないといけなかったっていうのが大きいかな」
キリトと行動を共にし始めてからはとにかく朝が早かった。
夜が明ける前というほどではないけど、日が昇り始めたら起きて身支度を整えて朝の稽古、
それから仕事やら勉強やら、夜には門限になるまでキリトともう一度稽古、そして夜はぐっすり眠る……うん、大変だ。
「ところでアリス」
「なにかしら?」
「僕も着替えたいんだけど、いいかな?」
身支度を整え終わっているアリスはいいけれど、僕は布団で隠しているとはいえ裸のままだ。
朝食を取ったら出発なわけだし、そろそろ着替えたいかな。
「え……あ、ご、ごめんなさい//////!」
今度こそ顔を真っ赤にしてアリスは走って出て行ってしまった。からかい過ぎたね。
「とにかく、着替えるとしよう」
アリスが畳んでくれたらしい自分の服を取って僕も着替えを始めた。
みんなで朝食を取り、僕とアリスは最後の準備と確認の為に部屋へ戻った。
貴族が普段着として着るような服はさすがにお断りだけど、
それなりに良い服を着なければ行く先々で対処が難しくなるから変にならないようなものを選んで着ていくことにした。
アリスは服に着られることなくお嬢様という感じだけど、多分僕は服に着られちゃっているんだろうなぁ。
「似合ってるよ、アリス」
「ありがとう。ユージオだって似合ってるわよ」
「はは、お世辞でも嬉しいよ」
「(もぅ、お世辞じゃないのに/// ユージオはこういうところが鈍いんだから…///)」
変じゃないといいんだけど、アリスが似合っているから僕の格好が不相応だと恥ずかしいよな。
かといっていつまでも気にしていても仕方が無い、そういうのはこれからなんとかしていけばいい。
僕達は荷物を持ってカセドラルの入り口まで移動した。
入り口に到着すると大きく立派な馬車が一台と立派な馬が二頭、カーディナルさんと数人の整合騎士達が待っていた。
ベルクーリさんとファナティオさん、デュソルバートさんにエルドリエさんだ、みんな見送りに来てくれたみたいだ。
「ユージオにもアリスにもこれからしっかりと働いてもらわねばならぬからの、しっかりと心身共に休んでこい」
「こっちのことは俺達に任せておけ。まぁ二人の力が必要になった時はすぐに呼ぶからよ」
「子供扱いするわけではないけれど、大人である私達に任せなさい」
「家族や故郷の者達と仲良くしてくるのだぞ」
「アリス様、ユージオ、道中お気をつけて」
馬車の中には僕とアリスの鎧と剣、着替えなども既に積み込まれていた。
みんなからの見送りの言葉を受けて馬車に乗り込み、馬の手綱を握る。
改めて見るとカーディナルさんの方には僕とキリトを見守ってくれていたシャーロットさんという妖精がいて、
庭園の柱の陰にリネルとフィゼルの二人まで来ていたことにはさすがに驚いた。
「ユージオ、これを渡しておく。お主らの身分を保障するための手形と紹介状、道中の資金じゃ。
最高司祭としての印章と術式を施してあるから道中は問題ない」
「なにからなにまで、ありがとうございます。それでは、行ってきます」
「みなさま、しばらくの間よろしくお願いします。行って参ります」
カーディナルさんから手形と紹介状を受け取り、入口が開門されたので門を通り抜け、僕とアリスは故郷への旅路に着いた。
セントラル・カセドラルから一歩でも出ればそこは央都セントリアであり、
これくらいの時間ともなると各通りには市場が出ていたりするけれど、大通りは僕らの乗る馬車でも通り抜けることは問題ない。
ただ、やはり教会の印章が刻まれた馬車ともなれば大勢の眼を引くし、貴族らしい人達ですら道を開けていく始末だ。
これは慣れないと思う。
「ユージオ。このままルーリッドへ直行するの?」
「確かに直行すれば早くて丸一日、馬をしっかり休ませても一日と少しでルーリッドに着くね。
ただ、個人的にちょっと学院に寄りたいんだけど、寄ってもいいかな?」
アズリカ先生やロニエとティーゼにも心配をかけてしまったし、交流のあった同期達も何事かと思っているだろう。
せめて顔を出して安心させてあげたい、ただ事情があったとはいえ僕も大罪人だからなぁ…。
「いいわよ。そうだ、折角だから一日くらいは近くの宿に泊まりましょうよ。
わたし、ユージオとキリトが過ごした場所を見てみたいわ。話も色々と聞きたいし」
「そう、だね。うん、そうしよう。今日は学院によってその近くの宿を取ろう」
僕は手綱を操り馬車を北セントリア帝立修剣学院の方へ向け、進みだした。
当然だけど学院の門には警備の衛士がいる。
しかし普段は特別に何かが起こることはないし、そもそも戦闘になったのだってこの前の僕とキリトの行動が多分初めてなはず。
それに内部でのものだから衛士にはどうしようもないことだ。
少しは厳しくなった警備の前に学院生であった僕が立派な馬車に乗って大層な服に身を包んでいれば、驚きもするか。
「帝立修剣学院次席上級修剣士ユージオです。
アズリカ女史との面会を希望したいのですが…あぁ、こちらは整合騎士のアリス・シンセシス・サーティ様になります。
それと最高司祭様からの紹介状もあります」
「す、すぐに確認してきます!」
一人はすぐさま門を通って学院内へ走っていき、もう一人は恐縮しきりな様子で待っている。
それもそうか、なにせ人界最高戦力の整合騎士、
権力においては最高司祭があの女からカーディナルさんに変わり、元老院が無くなったいまその次だからね。
しかし、そのアリスはというとなんとも可愛らしくジト目で僕を睨んでいる。
「どうして自分だけ整合騎士を明かさないって顔だね?
アリスはアズリカ先生やロニエとティーゼ、一部の生徒に顔が割れているからね、そうした方が話も通しやすいんだよ。
それに一時の間は僕が整合騎士になったことは明かさない方がいい、時が来るまではね」
「解ったわ…でも、わたしはユージオの、こ、恋人、なんだからね…///」
「う、うん、解った。ちゃんと、紹介するよ///」
そうだよな、さすがにアリスもあの連行の時の人達が全員女性だっていうのは知っているよね。
でも、さすがに紹介するとなると恥ずかしい、もしかして早まったかな?
そうこう考えている内にこっちに走ってくる人影が、アズリカ先生だ。
「ユージオ修剣士!」
「アズリカ先生、ただいま戻りました。ご心配をおかけして、すみませんでした」
「いえ、無事なようでなによりです」
驚きながら来たアズリカ先生に挨拶してから頭を下げると優しい声音で返されて、頭を撫でられた。
やっぱり相当心配掛けちゃったんだなぁ…。
「そういえば、キリト修剣士は一緒ではないのですか?」
「キリトは故郷へ帰りました。僕の目的が達成できたので、彼は婚約者の許に」
「そうでしたね。彼には彼の帰りを待つ、愛する女性がいるのでしたね。それならば良しとしましょう」
キリトのことも心配していたようだけど彼の強さはアズリカ先生も知っているから、もう大丈夫だと判断したんだろう。
「それにしても、事情があったとはいえ故意に天命を傷つけるという行いにも関わらず、どうして戻れたのですか?」
「そのことに関しては私、アリス・シンセシス・サーティがお答えさせていただきます」
「せ、整合騎士様っ!? 私はこの学院の教官を務めさせていただいております、アズリカと申します」
「ユージオから少しですが話は聞いております。まずは場所を変えましょう、学院内の何処かをお借りできますか?」
「はい、こちらへどうぞ」
突然の整合騎士の訪問に驚いたもののさすがのアズリカ先生、すぐに冷静さを取り戻して応じてくれた。
馬車を衛士に任せて僕とアリスは先生の後に続き、学院の中へ向かった。
先生によって案内されたのはなんと僕とキリトが使っていた共同部屋だった。
僕達が連行されてからまだ三日が経過して四日目になったくらいだから他の使用者はいないらしい。
「ではユージオ修剣士とキリト修剣士のことについて、説明させていただきます」
そこからアリスが事前に僕と打ち合わせした真実と虚構を交えた内容を話し始めた。
最高司祭アドミニストレータが不慮の出来事で亡くなり、後を継いで新たな最高司祭カーディナルが就任し、
その際に今回の一件が完全に不当なものとは出来ず、数日間の公理教会への奉仕活動という形の処分になった、というものだ。
アドミニストレータが死んだのは不慮の出来事、キリトという存在を甘くみてなにもせずにいたからだ、
対処して手を打っていれば死ぬことはなかったかもしれない。
カーディナルさんのことは近日中に公表されるので問題なし。
ライオスとウンベールのことに関してはアイツらがやってきたことを考え、ロニエとティーゼと僕自身の命を守る結果だ。
彼らも自重していればキリトの逆鱗に触れることはなかったんだし。
まぁこんな感じで説明がなされ、僕は基本無罪放免、アリスは立場上で言えば僕の監視ということになる。
「……ということになりますが、何かお聞きしたいことはありますか?」
「ユージオ修剣士もキリト修剣士も罪に問われることはないのですね」
「はい。婦女子に罰と称して淫らな行いを迫ろうとした輩から、
彼女らを守ろうとした彼らの行動を注意はすれども罪とすることはありません。特にこの世界では…」
「わかりました。これ以上はございません、ありがとうございました」
ふぅ、一先ずはこれでよしだね。
「改めまして、わたしの個人の名前はアリス・ツーベルクと申します、アズリカ先生。
先日より、ユージオと男女の交際をしております///」
「え…?」
あの、アリスさん、紹介してと言いつつ自分で言っちゃうんですか? 先生も目を開いて声を出して固まった。
そうだ、こういう時は開き直るのが一番だぞってキリトが言っていた。
「あの、ユージオ修剣士、一体どういうことなのですか…?」
「はぁ……元々、僕の目的は整合騎士になったアリスに会いに行くことでした。
ただ、王族や一等爵家などの貴族ならまだしも、
僕のような普通の市民がカセドラルに入るには統一大会などで優勝して整合騎士になるくらいしか手段がなかったもので。
ですから、先日のアリスは公人として僕とキリトに対応したのです」
「なるほど、整合騎士としての務めで……ユージオ修剣士とキリト修剣士に関しても納得しました」
自分でもよくもまぁここまで真実と嘘を混ぜられたと思った、これもキリト仕込みか…。
「そういうわけですので僕とアリスは再会してから想いを伝えて、一度故郷に帰る許可を最高司祭様から得ました」
「ユージオや家族とは久しく会っていませんでしたから、
折角なのでユージオとキリトの過ごしてきた場所を廻ろうと提案したのです」
「それで学院に……解りました、彼らの話でよければ喜んで。
それとユージオ修剣士、ロニエとティーゼや他の皆にも顔を見せてあげなさい」
「勿論です」
僕とキリトの学院生活を話すことになるけど、問題もそれなりにあったから心構えはしておこう。
アズリカ先生は他の教官に伝言をしてから、僕と一緒に学院のことを話し始めた。
キリトが先輩のソルティリーナ・セルルトさんに剣術指南を行ったこと、
僕を傍付きに選んでくれたゴルゴロッソ・バルトー先輩のこと、一年目の学院生活のこと、
キリトが黒剣を手に入れてから主席のウォロ・リーバンテイン先輩と戦って勝ったこと、
キリトが北側では咲くことのないゼフィリアの花を育てて咲かせたこと、
二年目になってキリトが主席になり僕が次席になった時のこと、
僕達の傍付き初等練士であったロニエとティーゼのこと(ここでアリスが不機嫌になった気が)、
一応ライオスとウンベールのことも話したけどその時のアリスは大層怒っていた。
アズリカ先生から見た僕とキリトのことも話されたわけで、騒ぎこそ起こしたものの優等生だと評されたことにはホッとしたね。
一部でアリスの機嫌が変わったけど、楽しそうに話しを聞いてくれていたので良かった。
話し終えた辺りで部屋を教官の人がノックしアズリカ先生が入室を促し、二人の少女が入室してきた。
「失礼します! ロニ……うそ…」
「ロニエ? どう、し……えっ」
「よく来たね。ロニエ、ティーゼ」
「「ユージオ先輩!?」」
あまりのことに二人とも僕の名前を呼ぶとそのまま固まってしまった。
「えっと、ただいま、二人とも。心配掛けてごめん…っ!?」
「ユージオ、せんぱい……ぶじで、よかったです…!」
「わたし、たち……ほんとに、しんぱいで…!」
「ごめんね。それとありがとう、心配してくれて」
二人が泣きながら抱きついてきたけれど、さすがに抱き締めるのは駄目なので頭を撫でて宥める。
本当に二人には悪いことをしてしまった、きっとここ数日は罪悪感で一杯だっただろう、アリスの時の僕のように…。
「あの、キリトせんぱいは…」
「彼なら心配要らないよ、一先ず故郷に帰ったんだ。婚約者の人が心配しているだろうし、それにまた会いに来るって」
「よかった、キリト先輩も無事で…!」
キリトの姿が見当たらなかったことにロニエは心配していたようだけど、本当に故郷に帰っただけだ。
すぐにとはいかないだろうけど、必ず会える予感がする。
そこでティーゼが静かになっていることに気付いて様子を見てみると、アリスの方を見て固まっていた。
「せ、整合騎士様!?」
「え、あ、し、失礼しました!?」
「「御身の前でのご無礼、お許しください!」」
ああ、そうだよね、僕にとっては整合騎士よりも女の子としてのアリスだけど、
みんなからすれば天界から召喚されたということになっている整合騎士様なんだよね。
真っ青じゃないだろうかというくらい顔を青くしているけど、それもすぐに霧散する。
「はじめまして。ロニエ・アラベルさんとティーゼ・シュトリーネンさんですね、ユージオから話は伺っています。
わたしはアリス・シンセシス・サーティ、整合騎士です。
ですが、いまは私事でここにきているのでもう一つの名前、アリス・ツーベルクも名乗りましょう」
立ち上がったアリスが二人に目線を合わせてから整合騎士と個人の名乗りをした。
戸惑うロニエとティーゼの手を握り、アリスは話しを続ける。
「守るべき民である貴方達の心身に傷を与えた者から救うためにその武を示したユージオとキリトを最高司祭様はお許しになりました。
本来ならば我々がその者達を処罰しなければならなかったにも関わらず彼らを疑うような行動を取り、
貴方達にも苦しい思いをさせてしまいました。ごめんなさい」
「そ、そんな、騎士様が謝ることではありません!」
「そうです! 私達が軽率な行動をしなければ、こんなことには…」
「優しいのですね、二人は。友達の為に行動した貴方達だからこそ、ユージオもキリトも助けたのですから。良い後輩ね、ユージオ」
「そうだね、僕らには勿体無いくらいかな」
僕とアリスが笑い合えば、ホッとしたのかロニエとティーゼも笑みを浮かべて、アズリカ先生も微笑を浮かべていた。
その後、交流のあった同期や初等練士、教官達にも再会した。
全員と話すことはなかったけど、親しい面々とはそれなりに話せたし罪に問われていないということもあり歓迎された。
今晩、僕とアリスはこの部屋に泊まることになり、夕食を学院のみんなと食べた。
夜の帳がおり始めてきた頃、僕はアズリカ先生に許可を取り、寮監室でティーゼと会った。
「ごめんね。夜にしかもあんなことの後で二人きりだなんて」
「いえ、ユージオ先輩だから大丈夫です」
気丈に振舞ってはいるけれど、少しだけ震えているのが解る。
この前の恐怖が一つ、期待が一つ、諦観が一つ、その三つが入り混じっているのかもしれない。
つまり、ティーゼはこれから僕が話そうとしていることに気付いているんだと思う。
「改めて、心配をかけてしまったね。整合騎士になって助けに来てくれるって言ってくれたのに、戻って来られちゃったし」
「それは本当にいいんです。ユージオ先輩もキリト先輩も無事で何よりですから」
あの日、僕達が連行される時にティーゼは整合騎士になって助けに行くと言ってくれた。
結果的にそれはなくなっちゃった上に普通に戻ってこられた、色々あったけれど。
「ティーゼは前にこれも言ったよね?
『仮に整合騎士になれなかった時は、四帝国統一大会で爵位を得て自分の夫になってほしい』って。
これについても…ごめん、僕は応えられない」
「っ……アリスさん、ですよね…?」
「……うん。僕はアリスのことが好きで、彼女と男女の交際を始めたんだ。
僕が整合騎士を目指したのも、元々はアリスと再会するためだったから」
「そう、ですか…お二人を見て、気付いちゃったんです…。
ユージオ先輩、学院に居る時よりも笑顔が自然なものでしたから。
私が偶に見かけた時、先輩はいつも寂しそうで、哀しそうな顔して、
キリト先輩も似たような感じで、二人ともカセドラルを見ていて。
今日のユージオ先輩とアリス様を見て、全部解っちゃいました…」
きっとロニエも、と言っていたけどアズリカ先生を含めて気付いているのは三人だけか。
でも、ティーゼ達に言えないことが一つ、僕が整合騎士であるということ。
だから僕は約束を破った酷い男でいないといけない、少なくとも彼女が立ち直るまでは。
現に彼女の瞳は潤んでいて、目尻には涙が溢れてきている。
「す、すみ、ません……わた、し…もどります…!」
「ティーゼ!」
立ち上がって走りだし、扉を開けたところでなんとか呼び止められた。ただ、これだけは言っておきたいから。
「僕を好きでいてくれて、ありがとう」
「っ、ずるいです、ユージオ先輩は…」
そのままティーゼは走り去って行き、僕はソファに深く座り込んだ。
「キリトの言うとおり、世の中ってままならないんだね…」
演じようとしたところで((本音|これ))だ、まったくもって酷くて狡い男だな、僕も…。
「おかえり、ユージオ」
「なんで起きて…いや、むしろどうして((こっちの部屋|・・・・・・))にいるのさ」
寮監室から部屋に戻って僕がキリトの部屋を使うことになっているのでそっちに入れば、アリスが椅子に腰かけていた。
アリスには僕の部屋で眠るように言ったし、彼女もそれを了承したはずなんだけど。
「大丈夫? 顔色、良い方じゃないけど…」
「まぁ、ね……女の子を振るのが良い気分になるはずないし」
「え、告白、されたの…?」
「学院に居た時にね。でも、僕にはキミがいるから、当然断ってきた。だから、そんな顔しないで。
学院の時だったんだから、仕方がないよ」
「うん…」
自分がいなかった時に告白されていたことにさすがのアリスも動揺し、不安そうな表情をみせた。
俯いてしまったアリスを椅子から立たせ、僕の部屋へ向かう。
「アリス、眠ろう。僕も学校に来てみんなと話したりしただけなのに疲れたよ」
「あ、えっと、一緒…///?」
「うん、アリスが良ければだけど///」
彼女が小さく頷いてから、僕達はベッドに寝てどちらともなく眠りについた。
朝、今日も僕とアリスは早くに起きた。
朝食は学院で食べることになっているので僕達は剣を用意して早朝の鍛錬を行った。
この前の実践ではアリスに勝てたし、今回も訓練形式とはいえ何人もの整合騎士と戦って勝ったからなのかアリスにまた勝てた。
朝食のあとは盛大に見送り、という風にはしないでアズリカ先生とロニエ、同期と初等練士の何人かという感じになった。
ティーゼは昨日のことがあったからか来てはいない。
「ユージオ修剣士、また来てくださいね。卒業できなかったとはいえ、ここは貴方の母校なのですから」
「ユージオ先輩、騎士アリス様。今度はキリト先輩と一緒に来てください!」
みんなに見送られて、僕とアリスは馬車に乗り込んで門を出た。
一度寮を見た時、窓からティーゼが身を乗り出してこっちに手を振っていたから、僕もそれに応えた。
馬車を進ませて僕達が辿り着いたのは央都セントリアを出て最も北にある街『ザッカリア』、
今日はここで一日を過ごすことに決めている。
ここは僕とキリトが学院に入るために半年間お金を稼いで、半年間は衛士として働いた、僕達が一年間生活してきた街でもある。
昨日はほとんど学院だったこともあって、今日は街で過ごすことにしたんだ。
「ね、ねぇ、ユージオ。手、繋ぎましょう///」
「あ、うん…///」
泊まる宿も見つけて手続きを済ませた僕達は街に繰り出したけど、アリスと手を繋ぐことになった。
することは済ませた後だけど、やっぱり慣れていないから恥ずかしい。
でも、アリスが嬉しそうに笑っているから、僕も嬉しくなる。
「ユージオ! 今度はあっちに行きましょ!」
「それじゃあキリトと行ったことのあるお勧めのお店にいこう」
街で買い物をしていて分かったけど、少し前に比べてアリスが明るい。
というよりも昔の、まだ村に居た時の明るくて元気なアリスの一面が見えてきた。
僕としてはどちらのアリスも好きだから大丈夫……直接は言えないけど///
「これ食べてみましょうよ」
「この屋台の串焼きは美味しいんだよ。あ、小父さん、お久しぶりです。
キリトは故郷に、はい彼女は恋人で、ありがとうございます」
アリスが寄った屋台が僕達も贔屓にしていたところで、店主の小父さんが声をかけてくれて、
いまは居ない相方のことを伝えて、そしていま隣にいる女性のことを教えた。
お祝いだと言って串焼きを多めに貰ったけど、短い付き合いだった人がこういう形でも祝ってくれることが嬉しかった。
そこからは露天を見て、色々な店を見て回り、街の中を見ているからこそ分かる問題を二人で騎士らしく意見を交わして、
問題が起きていれば介入して解決、騎士権力って凄いね。
そして夕方になる前に僕はアリスを連れて街の外にある農場へ向かった。
そこは僕とキリトが住み込みの仕事でお世話になったバノー・ウォルデさんが経営する『ウォルデ農場』。
農場を訪れると丁度休憩時間だったようでバノーさんが僕に気付き、奥さんのトリザさんが双子娘のテリンとテルルを連れてきた。
四人とも再会して、アリスのことを紹介すればバノーさんとトリザさんには祝いの言葉を貰って、双子は機嫌が少し悪くなった。
彼らにもキリトのことを伝えておき、明日には故郷に帰ることを言えば夜だけでも一緒にということでここでも夕飯をご馳走になった。
以前は見分けがつかなかった双子の入れ替わりも会っていなかったにも関わらずに見抜けるようになり、彼女達の機嫌も直った。
きっとキリトと過ごして人の変化に気付きやすくなったのかもしれない。
夕食をご馳走してもらったあと、帰る時には寄るように言われて、僕とアリスは農場を後にした。
宿で一晩を過ごし朝食を取ったあと、馬車で街から出て農場に寄ると四人が迎えてくれた。
「お前さん達が手伝って育った牛の乳だ。搾りたてだから上手いぞ、持っていけ」
「それと野菜と肉も持っていきな。今度はキリトも一緒に来るようにね!」
「「ユージオもお姉ちゃんもまたね!」」
バノーさんからは牛乳を、トリザさんからは野菜と肉をお土産に貰って、双子も見送ってくれた。
本当に僕達は良い人達に助けられて、前に進めていたんだ。
そして僕達はザッカリアを後にして、ルーリッドへ向かった。
早朝に出たし、いままでゆっくりだったから馬にも少し頑張ってもらったから、それなりに早く近くまで辿り着いた。
あの日、曇り空のこの街道をキリトと共に駆け抜けて僕らの旅は始まり、一年をかけてセントリアに上がって、
もう一年かけて初等練士から上がり、幾月を掛けて偶然にもカセドラルに到って、戦い抜いて彼女を取り戻した。
途中で友の声が聞こえたような気がして、多分それは気のせいじゃないはず。
きっとまた何かが起こる、それでも今度はアリスを守ってみせる。彼女と一緒なら、信じられる。
本当なら一日とちょっとで着いたところを寄り道して三日、だけど旅立ってから二年以上もの月日を重ねて、
隣の彼女は七年以上の時を重ねて、故郷の村へと辿り着いた。
「やぁ、ジンク、久しぶりだね」
「ユ、ユージオ!? 帰ってきたのか! ん、まさか、そっちは…!?」
「そういうことさ。ジンク、みんなに僕達が帰ってきたことを伝えてほしい」
「わ、わかった!」
ジンクはすぐに駆けていき、村の中で声を上げていた。僕が彼女を連れて帰ってきたと。
村の中が喧騒で溢れだし、みんなが門に集まってくる中、見知った人が走ってきた。
二年ぶりということもあってか、彼女はアリスに似てきていた。
「ねぇ、さま……姉さまぁっ!」
「セルカ!」
アリスの妹であるセルカが駆けてきて、アリスに抱きつき、彼女も抱きしめ返した。
数年越しの約束を果たして、僕とアリスは故郷に帰ってきた。
ユージオSide Out
To be continued……
あとがき
というわけで第二話もこれにて終わり、ようやくユージオとアリスを帰省させてあげられました。
どうしてもユージオとアリスを学院に行かせてあげたく、本作で書いていなかったユージオとティーゼのことも、
原作では彼が居なくなったことでそれも叶わなくなりましたがここではそうはいきませんっと。
そういうわけでケジメというかしっかりと書かさせていただきました、ウチのユージオもモテなぁw
次回からはユーアリのほのぼのイチャラブが書きたいですね、というか書くw
同時にアリスの処遇も書きます、原作では大罪人としてキリトを守りながらでしたがウチでは違うので。
次回を楽しみにしていてくださいね、ではまた〜・・・。
説明 | ||
UW決戦編の2話目です。 今回はほのぼありシリアスあり的な感じです、概ねサブタイ通りかと。 では、どうぞ・・・。 |
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コメント | ||
やぎすけ様へ これまでって結構殺伐とした中での恋愛だったり、別れもあったりだったんですけど思ったらUW編って結構こうしやすかったんですよね〜(本郷 刃) この作品でのユージオ関連の恋は甘酸っぱくていいですね 見てるこっちは微笑んでしまいましたよww(やぎすけ) アサシン様へ まずユージオもアリスも元は一般村民ですからね、倫理観的に……自分は作品によって一夫一妻かハーレムか変わりますw(本郷 刃) 流石にこの世界で多妻は不可なのであった。本郷 刃さんの作品は身持ちが堅い(高_評価)・・・・オヤ?モテない連合軍に動きが?(アサシン) hayato様へ 自分としても書くならこういう感じがいいなぁと思っているのでそう言っていただけると嬉しいです、アバターの方も確認させていただきました(本郷 刃) やはりこういうお互いを大切にできるカップルは良いなぁ。 時に昨日アバターの方送らせていただきましたが受け取っていただけたでしょうか?(hayato) スネーク様へ 素直に羨ましいと認めた方が無難ですよw(本郷 刃) 影図書様へ ユージオも嫉妬深い方なのです、本作ではw(本郷 刃) ディーン様へ 原作でもキリトとユージオは何処か似た部分がありますからね(本郷 刃) │Дo)キーッ、ウラヤマシクナンカナインダカラナ!チクショウメェ!(スネーク) ユージオ君も気をつけないと嫉妬の嵐に……(影図書) ユージオもキリトと同じどこかで誰かを惚れさせる力があるのかもしれませんね、この世界でのキリトは違いますけどね、設定なんですがもしかしたら追加でまた送ります。(ディーン) 真っ黒な炒飯様へ はい、本作ではキリトよりもユージオの方がモテていますw 設定はとりあえずまだ応募可能なので焦らずにどうぞ(本郷 刃) ユージオ君モテモテやなぁ少し前に失恋した自分には… そしてはよ設定考えなければ(真っ黒な炒飯) |
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