真恋姫無双〜年老いて萌将伝〜 三
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「それでは、今回は特例として、三国対抗軍事演習を行うこととします。」

 

雪蓮が桃香を丸め込み、先日の一件をだしにして華琳に提案したのは、これだった。

 

「今回は魏で開催することにともない、三国間の兵数の不均衡もあるからそこまで大規模なものには出来ないわ。

 突発で、しかも実験的におこなうから多少の不備はあろうとは思うけれど…」

 

そういって華琳は軍事演習の規則を発表していった。

一つ、各国の最大兵数を同一にすること。

一つ、その兵数を任意の将に任意に割り振り、部隊を編成すること。

一つ、編成した部隊を指揮し、敵大将の牙門旗を引き倒したほうが勝利とする。

一つ、武器はすべて刃引きしたものを使用する。

 

 

「時間や損害、準備にどの程度かかるか予想もできない、極めて例外的で突発的なものであることから、不測の事態には備えておくように。

 そして、やはり、これも試合時間の予測がたたないことから、今回は総当り戦ではなく勝ち抜きとします。

 戦闘不能まで闘うことは許可するけれど、人死にの出ないよう十分に気をつけて試合をすること。

 この条件で、どうかしら?」

 

華琳が発表を終える頃には、その場にいた全員の眼が戦の炎をたたえていた。

これまで行われてきた武闘大会とは異なり、今回は武官だけではなく文官にも活躍の場が与えられていることになる。

さらにいえば、あの時負けた借りを返せるのだから、血が滾らぬわけがない。

戦の準備だ。

彼の大戦を乗越てきた歴戦の猛者達は、俄に色めき立つ。

 

だが、その興奮状態はいまだ最高潮ではなかった。

 

「そして、今回は特別に…」

 

その一言によって、各国の武将たちの心炎は、真っ赤に燃え上がるのであった。

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………

…………………

 

それぞれが来るべき演習に備え準備に向かう中、北郷だけはその場に残り呆然としていた。

 

「…まじかよ。」

 

彼の頭の中は先程の華琳が放った一言に支配されている。

 

「今回は特別に、数を合わせる目的で、一刀。

 あなたに一軍を率いてもらいます。もちろん、条件付きだけれどね。あなたは残りなさい。詳細を別で伝えます。」

 

並び立つは英傑。

そこに身一つで放り込まれる緊張感は並大抵のものではない。

ここ何日かで痛いほどわかっている。

『品定めされている。』

そうとわかっていてあえて、華琳は俺を将としてたてた。

条件とは何かわからないが、自分は王と並ぶものとして、そこに立てと言われていると感じた。

その重さに、呆然と、立ち尽くしていた。

 

「遅くなって申し訳ないわね。」

 

そんな、放心した北郷など歯牙にもかけない様子で、華琳は戻ってきた。

ある者を、者達を連れて。

 

「あぁは言ったものの、私だってけしかけられてはいそうですかなどとはいえないわ。」

 

クツクツと喉を鳴らし、イタズラいっぱいの笑顔で華琳は言う。

 

「確かに私達の落ち度で武芸大会は中止になったわ。

 だからこの代案であるのだけれど。

 私としてはもちろんあなたと共に戦いたかったのだけれど、雪蓮がどうにもそれを許してくれそうになくてね。

 桃香と雪蓮の二人に押し切られる形で、あなたが一軍を率いることを確約させられたわ。

 どうしても、あなたと一戦交えたい様子ね。

 でも、それに乗っかってはつまらないじゃない?

 第一あなたにできるのは”隊長”であって、王ではない。もちろん、王の器ではない、とは言わないけれど。

 一泡吹かせてやらなければ気が済まないわ。

 だから、一刀。あなたは、この者達とともに戦いなさい。

 桃香も雪蓮も、これしきのことであなたを表舞台に引き釣りだした気でいるけれど、そうは問屋がおろわないわよ。」

 

爛々と輝く瞳で北郷を見つめる一人の少女。

王たる覇気などかなぐり捨てて、大好きなものの価値を微塵も疑わない様子で。

 

「あなたを、手放す気も、とられる気だってこれっぽっちもないんだから。

 あなたなら、できるでしょう?」

 

その眼に、思い知らされる。

そんなに思われてるならば。

 

「…そこまで言われちゃ、やるしかないだろ。」

 

応えなかったら男じゃないだろ。

 

「任せてくれ。お望み通り、一泡吹かせてやろうじゃないか。」

 

北郷は、華琳と同じように。

子供のような笑顔で応えた。

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お分かりの方は多いとおもいますが、書き溜めのキリが良くなると動くのです
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