リリカルST 第14話
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「あーくそっ!ビチョビチョだよ!」

 

「士希さん、今こそユニゾンの時です!」

 

「何言ってやがる?そこはこのあたしとユニゾンだろ!」

 

「君達は濡れたくないからユニゾンしたいだけだろ!?」

 

俺とレーゲン、アギトはとある海底遺跡へとやって来た。ここに眠っているとされるイクスヴェリアを探して。だが、流石海底遺跡なだけあって、洞窟内は薄暗く湿気っており、こちらの体温をガンガン下げていった。

 

「それにしても、こんなところに手付かずの遺跡があるなんてな」

 

「ですねー。結構潜らないとわからないくらいですし。リゾート施設が建つ前に調査に来れてよかったですね」

 

レーゲンの言う通りだ。なんの拍子でイクスヴェリアのマリアージュが暴走するかわからない。歩く爆弾がリゾートウロウロしてちゃあ、気が気じゃない。

 

「オーナー!あれ!」

 

先行していたアギトが指をさす。そこには巨大で重厚な鋼鉄のドアがあった。どうやらビンゴを引いたらしい。

 

俺は扉に手を当て、グッと力を込めて押す。大型トレーラー波の重量を感じるが押せない訳じゃない。扉はゆっくり、ゆっくりと開いていった。

 

「これは…」

 

俺は目の前の光景を疑った。中は先程までの洞窟とは打って変わって暖かく、そして見た事もないような機器があちこちにあったのだ。近未来的って言えば通じるのか?古代ベルカってのは、相変わらずオーパーツの塊だな。

 

『生体反応を確認。システム、起動』

 

「っ!?」

 

俺が中に入ると同時に、内部からアナウンスが流れる。俺は咄嗟にレーゲンとアギトを下がらせ、様子を伺った。

 

内部に電源が入ったのか、遺跡内の灯りがつく。中は黄金色に輝き、その奥で威圧的に黒光りする無数の銃身が顔を覗かせた。

 

あれは…セントリーガン!?

 

『侵入者を排除します』

 

「!?戻れ!」

 

俺は咄嗟に振り返り、中に入ろうとしていたレーゲンとアギトを掴んで外へと出た。

 

 

ズガガガガガガッ!

 

 

直後にウィーンという機械音と共に発射された弾丸の嵐。俺は扉を盾にして何とかやり過ごす事が出来た。

 

「し、死ぬ…死ぬところだった…」

 

「蜂の巣どころか、ミンチになる所でしたね…」

 

「あれでミンチにゃあなりたくねぇ…」

 

程なくして弾丸の嵐は止み、静けさを取り戻していく。とりあえず、終始動きっぱなしって訳ではないらしい。今は銃身も下を向いている。

 

「………」

 

俺はもう一度中に入ろうと試みる。立ち上がり、扉から出ると…

 

 

ウィーン

 

 

銃身と目が合った

 

「っ!?」

 

さっと身を引き、再び扉の内側へと隠れた。アレと目が合う度に寿命が縮む思いだわ…

 

「さて、どうするかな」

 

まずは見極めないといけない。あれが実弾なのか、それとも魔力弾なのか。それ次第で対応も変わって来るが…

 

「アギト、ユニゾンだ」

 

「よっしゃ!任せろ!」

 

俺の中にアギトが入ってくる。その瞬間に俺の魔力に熱がこもり、熱くなる。アギトとユニゾンすると、髪が赤みがかるらしいのだが、今は確認出来ないな。

 

『んで、ユニゾンはいいが何するんだ?』

 

「あぁ、とりあえず炎剣とファイアーウォールを出すぞ」

 

俺はアギトの力を借り、右手に氣と魔力で作ったエナジーソードを取り出す。そこにアギトの炎を借り、炎を纏わした。

 

さらに目の前に、炎の壁を作り出す。この炎の壁は、実弾なら貫通する事なく溶ける程の熱を有している。これで防げるのが一番だが…

 

俺はファイアーウォールの後ろに行き、剣を構える。それと同時にガトリングが俺に標準を定めた。

 

もし、貫通するようなら、剣で斬るが…

 

 

ズガガガガガガッ!!

 

 

無数の銃弾が飛んで来る。その銃弾はファイアーウォールに直撃すると…

 

 

パシュン!

 

 

見事に貫通した

 

「ちっ!アギト!ギア上げるぞ!」

 

『了解!』

 

アギトの魔力が強くなり、熱く流れてくる。それが俺の細胞に熱を与え、動きを軽くさせる。

 

貫通して来た銃弾を剣で叩き落としていく。1発、2発、10発、20発、そして100発…

 

「むりむりむり!!?秒間100発以上なんざ捌けるか!?」

 

運が良いのか悪いのか、銃弾は集弾性が悪く、案外真っ直ぐは飛んで来ず、直撃するものだけを選んで斬って落としていったが、いかんせん数が多過ぎる。早々に扉の内側へと避難した。

 

「し、死ぬ…死んじまう…」

 

息も絶え絶えに、扉にもたれかかる。それをレーゲンが心配そうに眺めては、奥のガトリングを気にしていた。

 

「あれ、エネルギーを媒介にしてますね。恐らく魔力弾かと」

 

レーゲンが冷静に分析していく。俺もその考えには同意なのだが、動力炉を潰さない事には、アレを止める事は出来ない。

 

「セントリーは全部で2門。集弾性が悪いのはメンテ不足もあるでしょうけど、それ以上に古過ぎる。恐らく、弾丸1発でも当てたら止められると思うんですけど…」

 

「アレの前に立つのは自殺行為だ。ゆっくり狙う暇もねぇ」

 

だとしたら、ゆっくり狙う時間さえあれば…

 

「アギト、ユニゾンアウト。レーゲン、ユニゾンインだ」

 

『あいよー」

 

「了解です』

 

アギトとレーゲンが入れ替わるように、俺の体を行き来する。先程までの燃えるような魔力が、今度は無機質で重々しい魔力へと変換されていく。まるで…いや正に、体内に武器を何百と仕込まれたかのような感覚だ。

 

「クロノス、アーレス」

 

俺が2つの名を唱えると、右手には銀色の籠手、左手には黒い拳銃が出現した。

 

銀色の籠手は時を司る魔手クロノス。これは使用者の時を加速、もしくは減速させるというもの。例えば加速すると、その度合いによって見える風景が異様に遅くなり、減速すると逆に速くなる。これを使えば、擬似的な静止世界を作り上げる事も出来るのだ。実際は使用者が単純に速くなるだけなので、止まっているわけではないが。

 

っと、ここまでならとんだチートアイテムだが、相応にリスクも大きい。クロノスを使う分の魔力にしても、ほぼ無尽蔵に近い俺の魔力量を持ってしても下手をしたら枯渇しかねない。さらに言えば、使用者の時を加速させると言うことは、その分使用者が本来持っている寿命までの時間を削るという事。使い続けると一気に老いるという仕様なのだ。

 

レーゲン曰く、一回使う分の目安は、大事をとって最大5秒間。それ以上は危険だから使えないらしい。そして、使った分はしっかり減速もさせる事。それがクロノスの絶対条件だった

 

そして、黒銃アーレス。これは対照的に消費魔力が神騎中最も少なく、それでいて威力も申し分ない、使いやすい銃だ。連射も効くし、デザインも俺好み。言うことなしだ。

 

「さぁ、いくぞ。クロックワイズ、4th!クッ!」

 

クロノスを起動させ、自身の時を4倍速にする。その瞬間に辺りの速度が一変して遅くなる。滴る水滴はまるで止まっているかの様に、アギトが瞼を閉じる速度でさえ遅くなる。

 

体に負担が掛かる。0.1秒毎に魔力を馬鹿みたいに持って行かれる。まるで、水中で大岩持って歩かされるかの様な、そんな感覚だ。

 

「フッ!」

 

俺は扉から飛び出て、アーレスを構える。目の前にある一門、そしてその奥にある二門目を視認し、狙いを定める。セントリーは未だに下を向いたままだ。俺はその結果に満足し、アーレスの引き金を二度引く。漆黒の拳銃から弾丸が発射され、それは見事に2門のセントリーを撃ち抜いた。

 

「リリース!」

 

俺はセントリーを撃ち抜くと同時にクロノスの制御を解除する。先程までのほとんど静止していた世界が時を取り戻したかのように回り始める。セントリーも煙を上げ、沈黙した様だ。

 

「カウンタークロックワイズ、4th」

 

俺は脅威が去った事を確認し、安堵して時を戻した。先程とは間逆で、今度は見える風景がとことん速くなる。落ちる水滴もまるで雨のようで、アギトの動きもチョコチョコと速い。

 

「リリース。アギト、護衛サンキューな。レーゲン、ユニゾンアウト」

 

『了解です」

 

「問題ねぇ、もう何もねぇみたいだな」

 

アギトは近くにある端末を調べ始め、周囲に防衛装置がない事を確認していった。

 

「この施設のマップはありそうか?」

 

アギトに問いかける。アギトはそのまま端末を操作し、調べていくが…

 

「いや、なさそうだな。この端末自体がここの防衛装置ってだけだし」

 

「ま、こんな秘匿された遺跡に、そんなご親切なものはねぇよな」

 

ないならないで、奥に進むだけだ。

 

「ここから先も防衛装置があると見ていいでしょうね。気をつけていきましょう」

 

レーゲンの言う通り、ここから先にも間違いなく何かしらが待ち構えている。だけど、それだけこの遺跡が当たりだとも言えるのだ。この遺跡には、間違いなく何かがある。

 

 

 

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遺跡の奥へと進んで行くと、ある事がわかっていく。まず、ここはかつての研究所だった事。研究棟らしき所や、宿舎棟のような所まで、古び、寂れているが名残はあった。データの殆どは風化して確認出来ないが、いくつかはまだ生きていた。

 

そのデータの中身は…

 

「こいつは…」

 

イクスヴェリアに関する断片的な実験データ。ただ、断片的でもわかる、非人道的な実験記録。イクスヴェリアの攻撃力を試す為に、敵国の捕虜や自国の年寄りや女子供を殺す。それが、幾万ものパターンで行われ、マリアージュを作って死体をさらに活用する。断片的で本当に良かった。吐き気しかしない。

 

ビンゴだが…これをもし、イクスヴェリアが進んで行っていたものだとしたら…

 

 

ガチャ……ガチャ……

 

 

「っ!?」

 

近くで足音のようなものが聞こえた。重々しく、金属音を兼ね備えた足音が段々近づいてくる。アギトもレーゲンも扉に意識を向け、警戒を始めた。そして出てきたのは…

 

「っ!?マリアージュ!?」

 

黒い人影。それは人の形を模しているが、ドロドロとした何かだった。レーゲンはそれを、マリアージュと呼んでいた。

 

これが、マリアージュ…だとしたら、イクスヴェリアのコアは起動しているのか?封印したんじゃねぇのかよ!?

 

「イクスヴェリアを狙う者は…排除する…」

 

マリアージュの腕が変形し、大きな刃の様なものに変わっていく。マリアージュはそれを振りかざし、俺たちに振り下ろした。

 

「散開!」

 

俺達はそれぞれバラバラに飛び躱し、マリアージュを囲む形になった。

 

こいつ一体なのか?他には…

 

「!?魔力反応!?士希さん!多数のマリアージュが接近して来ています!」

 

だよな!?一体いりゃ他にもいっぱいいるって思わないとな!

 

「レーゲン!こいつらの特性は!?」

 

「一体一体が武器みたいなもので、あと爆発します!囲まれたら終わりです!」

 

チッ!厄介この上ないな!オマケに出口は1つしかねぇ。どうやって切り抜ける………

 

「っても、1つしかねぇわな!」

 

俺とレーゲン、アギトはアイコンタクトをとり、一斉に振り返って壁側を向く。そしてそれぞれ手に魔力を溜めて…

 

『せーっの!』

 

 

ドーーン!

 

 

魔力弾を発射し、壁をぶち抜いた。出来上がった巨大な穴の先には通路が広がっており、俺たちは一目散にそこから脱出した。

 

「こいつはプレゼントだ!」

 

俺は持ってきていたC4を去り際に置いていき、十分に距離を取ってから…

 

 

バーン!

 

 

起爆させた。黒煙が部屋から立ち込めると、さらに遠いところで爆発する音が聞こえた。どうやらマリアージュを誘爆出来たみたいだ。

 

「レーゲン」

 

「はい、索敵しています………反応無し。しっかり爆破出来たみたいです」

 

レーゲンの精密索敵にも反応無し。言われるまでもなくしてくれた辺り、流石相棒だな。

 

「んで、オーナー的にもう目処は立ってんだろ?何処に行くんだ?」

 

「あぁ?まぁ、爆破の跡に沿って進もうとは思っていたが、なんでわかったんだ?」

 

「そりゃ、あたしはオーナーのパートナーだからな!顔見りゃわかる!」

 

そんな得意げな顔して言うアギトに、俺は思わず笑みがこぼれてしまった。どうやらレーゲンもアギトも、俺の事はなんでもお見通しらしい。それが、少しだけ嬉しい。

 

「あはは、2人がいると心強いよ!さぁ、奥に進もうか、イクスヴェリアの元へと!」

 

例えイクスヴェリアと敵対する事になっても、2人がいれば何とかなる。そう思えた。

 

 

 

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サブタイトル:海底遺跡
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士希が苦戦するなんて…マリアージュ強し。(ohatiyo)
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リリカルなのは オリキャラ アギト 

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