ポケットモンスター トライメモリーズ 第24話 |
第24話 いつか、強く
目の前はほのおの洞窟。
ラカイは目の前の光景にぽかんとしていた。
「話に聞いていたけど、本当に暑いわね・・・」
迂回路を捜し当てていた彼女はそっちの道を進もうとしていた。
入り口にいるだけでも汗をかく空間に長居できるかと聞かれれば、大丈夫といえる自信も保証も、さすがになかった。
迂回路は遠回りになるのだが仕方ない。
ラカイが入り口を離れようとした、そのとき。
グゥゥ・・・
「なんの声かしら?」
洞窟の中からポケモンのものらしき鳴き声がする。
気になった彼女はすぐにひきかえせばいいだろうと声のした方向へ走っていった。
「・・・はぁっ、きついわね」
鳴き声を頼りに洞窟の中を探るラカイ。
迂闊に壁にはさわれない。
こんな中でも地面が平温を保っているのが幸いだ。
側にはこの洞窟に生息する炎や岩のポケモンに有利なヌマクローのラグジーがいる。
「ラグジー、どう?」
「マクロゥ」
「あっ!!」
崖の下に一匹のポケモンの姿が見えた。
堅い羽を持つ、鎧鳥ポケモンのエアームドだ。
遠目だが弱っているのがわかる。
「助けないと・・・!
でもここからボールを投げて、正確に狙うのは難しいわね。
こうなったら直接あそこへいってエアームドをひきあげるしかないわ」
「まくっ!?」
それは危険だよ、と言いたげにヌマクローは驚く。
彼の言葉を理解してるのか、ラカイは返答する。
「あなたが驚くのも無理ないわ。
一人であそこまで降りることだけじゃなく、途中で野生ポケモンの奇襲にだってあう可能性もある。
でもあの子を放ってはおけないわ。
ここには鋼ポケモンの天敵ともいえる炎のポケモンがたくさんいる。
無視してしまったらあの子も、おそらく・・・」
「マク・・・マクロゥ!」
「え、ひょっとしてラグジー・・・協力してくれるの?」
「マク!」
まかせろ、とラグジーは自分の胸を強くたたく。
そんな頼もしいパートナーをみて、ラカイはほほえむ。
「ありがとう」
ラカイはリュックからロープを取り出すとラグジーにそれを渡して自分の腰にロープをきつく巻く。
「よし、いくわよ!」
慣れた動作で崖に足をかけ岩壁を蹴りながら降りていく。
エアームドは彼女が近づいてくることに気付いてにらみつけてきたが、今の彼に抵抗するだけの力は残ってないのか微動だにしない。
「エァーウ!」
「エアームド、大丈夫よ!
今すぐに私たちが助けてあげるからね!」
「エェアァウ・・・」
「とりあえず動いちゃだめよ」
そういいエアームドを抱える。
エアームドは未だ疑いの目をラカイに向けているがやはり怪我のせいか動けないでいるようだ。
そんなとき、野生のマグマッグが自分達に気づいたのか向こう岸にたくさん集まってきた。
「マグゥ!」
「やっぱりきたわね・・・ラグジー、マッドショットでむかえうって!」
マグマッグの大群に向けてラグジーはマッドショットを放ち威嚇する。
そのとき、マグマッグが反撃ではなったひのこの一部がエアームドの羽にあたりその影響でエアームドが騒ぐ。
「うわっ、暴れないで!」
必死にエアームドを押さえるラカイ。
素早くベルトからボールをはずしラグジーの側にキッサを出した。
「キッサ!
私たちをひきあげるのを手伝って!」
「ガッサ!」
キッサはロープを掴みひっぱる。
かくとうタイプを持つだけあって♀ながらも力が強く、あっさり持ち上げられた。
「はぁ・・・はぁ。
なんとかなったみたいね」
ロープで地上にあがりエアームドを解放する。
ダメージが大きい彼に傷薬を使うことにする。
そのとき、遠くから鈍い音が聞こえた。
「な、なに!」
エアームドも警戒してることから、野生の炎ポケモンだと察した。
やがて姿を見せたのは硬質な体の炎ポケモン達だった。
「コータスにマグカルゴ!?
しかもあんなにたくさん・・・・」
戦えないことはない。
でもラグジー一匹に頼るわけにもいかない。
いずれはスタミナ切れになってしまうだろう。
こうなったら、とポケモンを全員だそうとしたとき彼女とポケモンの間に大きいポケモンが割り込んだ。
「な、なにこのメタグロス!?」
「メタグロス、サイコキネシス!」
メタグロスのサイコキネシスの威力に驚き炎ポケモンたちはそのまま去ってしまった。
呆然とする彼女の前に一人の男が現れる。
「大丈夫だったかい?」
「は、はい。
でも今は私よりこのエアームドを・・・」
「そのようだね、これを使ってあげよう。」
そういい男は回復の薬を差し出した。
ラカイはそれを受け取るとエアームドの傷にかける。
「エァアウ」
「しみるけど我慢して!
すぐによくなるから・・・・ね?」
「エア・・・」
先ほど助けてくれたときのことを思い出したのか彼女の顔を見てエアームドはおとなしくなった。
「よし、ここから離れよう。
出口までメタグロスがつれていってくれるから」
「すみません、お願いします」
メタグロスに乗って炎の洞窟を抜けたラカイはエアームドをおろし治療を続けた。
「・・・これで安静にさせておけば大丈夫だね」
「はい。
あ、助けてくれてありがとうございました。」
「なに、気にすることはないさ。
僕はダイゴ、君と同じポケモントレーナーだよ」
「私はラカイっていいます」
彼女の名前を聞きダイゴは目を丸くするがラカイはそれに気づいていなかった。
エアームドの傷は徐々にふさがっていった。
だが、羽が生え変わるには少し時間がかかるだろう。
早くても一日、遅くて一週間というところだ。
「エァー」
「エアームド、もうおそわれる心配はないわ。
あなたが回復して飛び立てるようになるまで私達が側で守っていてあげるからね」
「君はそれでいいんだね?」
「構いません。
確かに私にはホウエンのジムを制覇する目標はあります。
でもポケモンを見捨ててまで制覇なんてしたくありません。
そんなことをしたって意味はないのだから。
だから、この子が回復するまで私はここにいます」
「・・・」
彼女の言葉を聞き、ダイゴはあるものを差し出した。
「これは?」
「聖なる灰だよ。
一度きりだけど、どんな致命傷でも癒してくれる」
「聖なる灰・・・確か・・・」
ジョウトで伝承を聞いたことがある。
死者を蘇らせる力を秘めた、不死鳥の薬のことを。
それが灰と言われてるのは炎と関連付いているからだ。
「へぇ、詳しいね」
「伝承がたくさんある街で修行を受けていたことがあるんです。
そのときに、大人の人たちから聞いていました。
でもダイゴさん・・・なんで、これを私にくれるんですか?」
「君のポケモンへの想いがわかったから・・・かな」
「・・・?」
ダイゴの言葉が気になったが直後彼のポケナビに通信が入る。
「こちらダイゴ・・・ああ、ああ。
わかった、すぐに戻ろう」
「?」
「ラカイちゃん、君には色々話を聞きたかったけど仕事が入ってしまった・・・残念だよ」
「そうですか」
「それじゃあ、そのエアームドのことよろしく頼むよ。」
「任せてください!」
「またね」
メタグロスと共に飛び去っていったダイゴを見送るとラカイはエアームドの方へ向きなおす。
「飛べるようになるまで、私が守るからね」
優しく微笑み、その堅い羽根をそっとなでた。
翌朝。
雲一つない、晴れ渡った空が広がっていた。
「んー!いい天気!」
「エァァウ!!」
「あら、一日で回復したのね!
よかった!」
エアームドは傷も完全にふさがり空を大きく飛び回っている。
たった一日でここまで回復するその生命力にラカイは言葉に表せない感動に満ちあふれた。
「もう大丈夫みたいね。
それじゃあ、ここでお別れよ」
「エ・・・エァァウ」
「え、どうしたの?」
お別れ、といった瞬間エアームドは寂しそうな顔でラカイを見つめる。
もしかして、ひとりぼっちなのだろうかと思ったラカイはエアームドに一つの質問を投げかける。
「それじゃあ、エアームド・・・わたし達と一緒にくる?」
「エァウ!」
エアームドはいく、と即答した。
「うん、決まりね!」
こうしてラカイのパーティーに、新しい仲間が加わった。
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主人公がラカイにうつります。 | ||
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