英雄伝説〜焔の軌跡〜 リメイク 改訂版
[全1ページ]

庭園に仲間達と共に戻ったケビンはまず、二つの封印石を解放した。

 

〜隠者の庭園〜

 

「ああやって俺達は解放されたのか………」

「今度は誰が出てくるんだろうね〜。」

「私達は全員揃いましたから、あちらの方々の関係者でしょうね。」

解放されている様子を見つめていたガイは呆け、アニスの疑問を聞いたナタリアはケビン達に視線を向けて答えたが

「ナタリアさん、ご主人様が解放されていませんから、僕達もまだ全員揃っていませんの!」

「…………そうでしたわね。ごめんなさい、ミュウ。それにティアとガイも……貴女達は彼の生存を信じているのに………」

ミュウの答えを聞くと辛そうな表情で頷き、申し訳なさそうな表情でミュウやティア、ガイに謝罪した。

「気にしないで。状況を考えればそう判断するのが普通だもの。」

「ああ。それに死んだはずのラルゴが生き返ったって言う例が出てきたんだから、むしろ希望が出てきたくらいだぜ。」

「「…………」」

ナタリアの謝罪にティアとガイがそれぞれ返事をしている中、ジェイドは真剣な表情でバダックを見つめ、ジェイドに視線に気づいていたバダックだったが何も語らず黙り込んでいた。そして光の球は降りて来て、それぞれから見覚えのある人物達が現れようとした。

 

「あれは………!」

「ハハ、バダックに続いてようやく”同僚”が解放されたな。」

「ええ……フフ、また心強い人が解放されて何よりね。」

光から現れようとした人物達を見たヨシュアは驚き、フレンに視線を向けられたアーシアは微笑みながら答えた。すると光からそれぞれ皇子の服装や髪形をしたオリビエとジンがお互い向かい合い、地面に膝をついた状態で現れた!

「………む…………」

「………くっ………」

現れた2人はそれぞれ唸った後、顔を上げた。

「………ジンさん?」

「皇子………あんたか。どうやら夢………というわけでも無さそうだな。」

「フッ、違いない。シェラ君ならともかく夢の逢瀬に酒呑み友達というのは些かボクの流儀に反するからね。」

「ハハ、お前さんらしいな。しかし、さすがにシェラザードは酒飲み友達にはならないか。」

「シェラ君には呑まれても彼女の酒には決して呑まれるな。リベールで得た教訓の一つだよ。」

「くく、そりゃまた随分と貴重な教訓だったようだな。…………さてと。」

互いに半年ぶりの再会を終えたオリビエとジンは共に立ち上がってケビン達を見つめて問いかけた。

 

「………どういう事なのかできれば説明してもらえるか?」

「久々の逢瀬に感涙して熱いベーゼと抱擁を交わす前にね。」

「まったく………」

「はは、さすがと言うべきか。お二人ともこんな状況でまったく動じてへんですなぁ。」

「みゅっ!?ジェイドさんの声とそっくりですの〜!」

「ハッハッハッ、こんなにも早く噂の人物と出会えて何よりですね。」

ジン同様全く動じていないオリビエの様子にミュラー少佐は呆れ、ケビンは苦笑し、オリビエの声とジェイドの声が同じである事にミュウは驚き、ジェイドは興味ありげな様子でオリビエを見つめた。その後ケビン達は状況を説明した後、初見であるリース達とオリビエ達は自己紹介をし合った。

 

「………ふむ………」

「………むむむ………これはどうしたものか………」

事情を聞き終えたジンは考え込み、オリビエは唸った。

「俄かには信じられないだろうがこれが我々の置かれた状況だ。まずは受け入れたうえで対処して行くしかあるまい。」

「ああ、ミュラー。君は一つ勘違いをしているよ。すでにボクは、この状況を現実として受け入れているのだから。」

「………ならばどうしてそのようなしかめ面をする?」

オリビエの答えを聞いたミュラーは不思議そうな表情でオリビエを見つめて尋ねたが

「フッ、決まっているじゃないか。ヨシュア君、クローディア殿下、ティータ君、カリンさん、アーシアさん、ジョゼット君………そしてユリアさんと初対面のリース君に異世界の麗しきレディであるティアさんにアニス君、ナタリア陛下………いったい誰から、再会の抱擁とベーゼを交わそうと悩んでね。」

「…………………」

酔いしれている様子で語るオリビエの答えを聞いて呆れた。

 

「あ、あはは………」

「え、えっと……そういうのはちょっと……」

「ふふ、本当に相変わらずですね。」

「ねえヨシュア………ホントにこれが帝国の皇子殿下なわけ?」

「はは、一応そうみたいだね。」

いつもの調子のオリビエにティータとカリンは苦笑し、クローゼは懐かしそうに微笑み、呆れた表情をしているジョゼットの疑問にヨシュアは苦笑しながら答え

「ハア……八方美人な事をしていたら、その内痛い目に遭うわよ?」

「それには同感だ。ロイドも気を付けろよ?」

「いや、何でそこで俺が出てくるんですか!?」

溜息を吐いたアーシアの言葉に頷いたフレンに視線を向けられたロイドは疲れた表情で答えた。

 

「……呆れた皇子ね。」

「多くの女性達に飽き足らず、既婚者の私にまでそんな事をしようと思っているなんて、皇族以前に人として最低ですわね。」

「いや〜、あのピオニー陛下と同レベルか下手をすればそれ以上の皇族が存在し、しかも私と同じ声の持ち主とは夢にも思いませんでした。さすがは異世界ですねぇ。」

「フッ、異世界の皇族相手でも毒が混じった言葉を平然と吐くとはな。」

ティアとナタリアは蔑みの目でオリビエを見つめ、興味ありげな表情でオリビエを見つめて口を開いたジェイドの毒が混じった感想を聞いたバダックは口元に笑みを浮かべて指摘し

「チッ、これで世界が違っていなければ玉の輿に乗れたかもしれないのに……」

「本性が出ているぞ、アニス。ったく、旦那と同じ声をしているだけあって、旦那同様厄介そうな御仁だな………」

「みゅう〜……ジェイドさんと声がそっくりで紛らわしいですの……」

舌打ちをして若干残念そうな様子で呟いたアニスに指摘したガイは疲れた表情で溜息を吐き、ミュウは唸っていた。

 

「とまあ………それは”半分”冗談として。話を聞いている限り事件の謎も少しずつではあるが明らかになっているようだ。その意味では、ボクも喜んで協力させてもらいたい所だが………」

「………その前に幾つか確認しておきたいことがある。そんなところか。」

「フッ、さすがはジンさん。話を聞いていてボクと同じような疑問を抱いたようだね。」

「………同じような疑問?」

「何か気付いたことでも?」

オリビエとジンの会話を聞いたケビンは不思議そうな表情をし、ヨシュアは真剣な表情で尋ねた。

「そうだな………幾つかあるんだが。まずは、何度か現れたという女の霊という存在についてだ。」

「………『彼女』ですか。」

「たしか………偽のグランセル城の女王宮で最初に現れたんですよね?」

そしてジンの指摘を聞いたユリア大尉は何度も自分達に力を貸した女性の幽霊を思い出し、クローゼはユリア大尉に確認した。

 

「ええ…………殿下の元に至るための鍵を我々に託してくれました。しかし………最初に現れたという意味ではそれより以前のようですね。」

「………確かに。オレとリース、フレンさんとアーシアさんが最初にこの場所に飛ばされた時に聞こえてきた声………どうやらあれも『彼女』だったみたいです。」

「………そうですね。」

「よく考えたら、私達を導くための事ばかり言っていたわね。」

「そうだな……問題は何で俺達に力を貸してくれているかだが……」

ユリア大尉の意見にケビンとリースがそれぞれ頷いている中、アーシアとフレンは考え込んでいた。

「最初は声だけだった存在が姿を見せ始めている………あの黒いお兄さんが言った事を裏付けているかもしれませんね。」

「ああ、”王”に力を奪われた”隠者”という呼ばれ方………そして”庭園の主”という表現か。」

「そして、そこの石碑には『隠者の庭園』という言葉が刻まれているという。それらの話から推測すると………」

「………この”拠点”そのものが『彼女』に関係している何らかの場所だということか。」

「あ………」

「なるほど、ちょっと納得かも。ここってワケがわからないけど他と違って妙に居心地がいいし。」

仲間達が話し合っている中ミュラー少佐の口から出た推測を聞いたクローゼは呆け、ジョゼットは納得した様子で頷いた。

 

「ふむ………少し見えてきましたな。どうやら『彼女』は元々この場所にいた存在らしい。しかし”影の王”のせいで力を奪われてあんな姿になった。そんな状態にも関わらずオレらの手助けをしてくれている。」

「………その意味では各地に点在している石碑も『彼女』ゆかりかもしれませんね。まるで僕たちを導くかのように置かれていますから。」

「そうね。あの石碑がなければ、探索はもっと難航していたかもしれないわ。」

「私としてはできれば、その”方石”がどういう原理になっているのか調べたいのですがねぇ。」

「中将……”方石”は一つしかないとの事ですし、万が一の事を考えると迂闊に”方石”に触らない方がいいですよ。」

ケビンの意見に続くようにヨシュアとカリンは考え込みながら答え、ジェイドの言葉を聞いたティアは呆れた表情で指摘した。

 

「そう、そして同じ事がある重要な品についても言える。ケビン神父………君が持っているその”方石”だ。」

「あ………」

「その”方石”の正体は今の所定かではないが………少なくとも、彼女ゆかりの品である可能性は高いと思う。どうだろう、この読みは?」

「………いや、大したモンですわ。正直、この混沌とした状況でかなり情報が整理できた感じです。」

オリビエの推測を聞いたケビンは感心し

「ハッハッハッ、さすがは私と同じ声を持つ方ですねぇ。」

「フッ、それはこちらの台詞だよ。まさか異世界にこのボクと同じ美声の持ち主がいる事には驚いたが……その持ち主がまさか異世界の英雄で、しかも将軍クラスの人物とはね。フッ、さすがはボクの声の持ち主だね♪」

「何故、そこで声が関係しますの。」

声を上げて笑ったジェイドの言葉に対して髪をかき上げて酔いしれた様子で答えたオリビエの答えを聞いたその場にいる全員は冷や汗をかいて脱力し、ナタリアが仲間達を代表してジト目で指摘した。

 

「はは………しかしそうなると………ただ前に進む以外にも目的が一つ増えましたな。」

そしてケビンは苦笑した後話を戻した。

「『彼女』の力を取り戻して詳しい話を聞かせていただく……つまり、そういう事ですね?」

「ええ、その通りですわ。多分そうでもしないと………あの”影の王”たちにはとても対抗できへんでしょう。」

「………確かに。」

「それと残りの封印石を見つけて、皆さんの仲間を解放して戦力を整える事ですね。」

クローゼの意見に頷いたケビンの推測にユリア大尉は同意し、ロイドは真剣な表情で考え込みながら呟いた。

「フッ………それはそれでいいとして。もう一つだけ、確認したいことがあるんだ。」

「へ………まだあるんですか?」

「ああ………その”影の王”についてさ。単刀直入に聞くが………君、心当たりはないのかい?」

「…………っ……………」

「………どうしてオレに?」

オリビエの疑問を聞いたリースは辛そうな表情をし、ケビンは静かな笑みを浮かべて尋ねた。

 

「いやなに、話を聞いていると君にご執心のようだからね。亡くなられたというリース君の姉上についても知っていたようだし………さらに”悪魔”などという君達の聖典ゆかりの存在すら召喚して使役するくらいだ。」

「ふむ………そう言われると確かに。………ただ残念ですけど特に心当たりは無いですわ。どちらかというとオレより、”星杯騎士団”に敵対してる連中なのかもしれません。」

「「……………………………………」」

オリビエの答えを聞いたケビンは納得した後、首を横に振って答え、その様子をリースは黙って見つめ、アーシアは複雑そうな表情で黙り込んでいた。

「ふむ、こう言ってはなんだが敵が多そうな組織のようだからそれもあり得る話か………まあ、かくいうボクも敵が多いという意味では似たような立場にあるけどね。」

「まったく………何を他人事みたいに。」

「同じ声の持ち主として貴方には同情しますよ。」

「いや、旦那も他人の事は言えないだろ……」

「どう考えても中将の方が人の恨みをたくさん買っていそうだしね〜。」

オリビエの答えにミュラー少佐が呆れている中、オリビエに対して同情の言葉を口にしたジェイドにガイは疲れた表情で指摘し、アニスは意味ありげな笑みを浮かべてジェイドを見つめた。

 

「……敵の正体に関しては引き続き保留になりそうですね。もう少し相手から情報を引き出せるといいんですが………」

「ああ、今度現れたら何とか聞き出してみるとしよう。………そんじゃあ、例によって準備を整えたらさっそく出発するとしますか。目的地は”第四星層”―――合流地点にある転位陣の先やね。」

「………ケビン。」

ヨシュアの提案にケビンが頷いたその時、リースが静かな表情で口を開いた。

「ん………なんや?なんか他に言っとく事でもあったか?」

「………いえ。少し体調が優れないので私は遠慮させて頂こうかと。」

「へ………」

リースの言葉を聞いたケビンは驚いてリースを見つめた。するとリースは仲間達に振り向いて申し訳なさそうな表情でその場にいる全員が驚く事を口にした。

「申し訳ありませんが………ケビンをよろしくお願いします。無茶はしないと思いますが詰めが甘い所がありますので。」

自分だけ探索班に入らない事を宣言したリースは最初に自分達が飛ばされた場所―――巨大な本棚がある場所に向かって行った。

 

「リ、リースさん?」

「え、ちょっと………」

(リース………)

リースの突然の行動にティータとジョゼットが戸惑っている中、アーシアは心配そうな表情でリースを見つめていた。

「………………………」

「……いいのか?追いかけなくて。」

リースの行動を呆けて見つめているケビンにジンは真剣な表情で尋ねた。

「あ………えっと………すんません。ちょっと行ってきますわ。」

そしてジンの言葉に我に返ったケビンはリースを追って行った―――――

 

 

説明
第133話
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コメント
d-sword様&master_doragon様 すいません、ネタが全くわからないです(汗)(sorano)
あー…あー…あー…うん…「月光蝶である!」(master_doragon)
「なんたって不可能を可能にする男だからな」「さあ、殺しあおうよ、タカヤ兄さん」(d-sword)
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