本編補足 |
疫病
C1 密談
C2 挑発
C3 訃報
C4 台頭
C5 疫病
C6 不法入国者
C7 併合
C1 密談
ユランシア大陸テウシンの地。ミゼ王国。首都キョン。郊外に建つ小さなユミルの家の前にミゼ王国の文武官のユミルとその弟で文武官のユラル、その妹のユヅル。ユヅルは小さな家を見つめる。
ユヅル『小さなお家…。』
ユヅルの方を向くユミル。
ユミル『ユヅル。本当にすまない。私の不手際で、都心部の邸宅と使用人を手放さなくなってしまって…。』
ユヅル『いえ、とてもかわいらしくて。』
ユヅルを見つめる
ユミル『そうか。無理をさせてしまって…。』
首を横に振るユヅル。
ユヅル『いえ、前のお屋敷とは違った風情があります。』
ユミルを見てほほ笑むユヅル。
ユヅル『それにお兄様たちと一緒に暮らせるなら…私は何処でもかまいません。』
ユミル『ユヅル…。』
ユヅルを見つめるユミルとユラル。一歩前に出て小さなユミルの家を見つめるユヅル。ユラルの方を向くユミル。
ユミル『今回は少しやりすぎた。』
ユラル『いえ、ガゴゴ殿の追及すさまじく。』
首を横に振るユミル。
ユミル『キバシシは名将の弁も通じなかったな。』
腕組みをするユミル。
ユミル『対処しなければならない問題は山積みだ。』
ユヅルの後姿を見つめるユラル。
ユミル『だが、我々の歩みは止めぬ。』
頷くユラル。ミゼ王国の漢方会社で暗黒大陸連邦のドメティック製薬会社の子会社のバ漢方株式会社の社長のドンジェが現れる。
ドンジェ『こんにちわ。』
ドンジェの方を向くユミル、ユラルにユヅル。
ユヅル『これはドンジェ様。お久しぶりです。』
ドンジェ『越されたのですね。』
ユラル『ええ。』
ユヅル『ところで、ドンジェ様はなぜここに??』
ドンジェ『はい。今回、我が社は暗黒大陸連邦のドメティック製薬会社の傘下におさまることに決定したのでそのご報告に…。』
眉を顰めるユミルとユラル。
ユミル『暗黒大陸連邦…と?』
ドンジェ『はい。何分、私共小さな漢方会社ではこの先やってはいけませんので、最新鋭の知識と技術を導入するために…。』
ドンジェの目を見つめるユミル。
ユミル『…ふむ。』
一歩前に出、一礼するドンジェ。
ドンジェ『それにユミル様。久々なので積もる話もございます。』
ドンジェの眼を見つめるユミル。
ユミル『そうだな…。』
彼はユヅルを見た後、周りを見回してドンジェの方を向く。
ユミル『自宅に招きたいところだが、まだ引っ越しの最中でな。この先にリマ教の寺がある。そこで話をするとしよう。』
ユミルの方を向き、頷くドンジェ。
ドンジェ『分かりました。』
ユミルはユラルとユヅルの方を向く。
ユミル『少し出かけてくる。ユラルにユヅル。留守中のことを頼む。』
頷くユラルとユヅル。去っていくユミルとドンジェ。
C1 密談 END
C2 挑発
ユランシア大陸テウシンの地。ミゼ王国。首都キョン。ジュ宮殿。政の間。玉座に座るミゼ王国の女王ユズルハ。両脇にはミゼ王国の女性護衛官が立つ。中央の通路の左側にはミゼ王国の文武官ユミル、ユラルにシンノパクマンを含む文武官たちが並び、左側には文武官のガガゴをはじめとした文武官たちが並ぶ。彼らを見回し、ユズルハは口を開く。
ユズルハ『皆様。今日、残念な報が届きました。バカイのソゲンどのが逝去されました。
ざわめき。顔を見合わせる一同。ユミルはユラルに目配せした後、顎に手を当てる。
ユズルハ『亡き名将を偲び、黙祷をささげます。』
暫し、目を閉じる一同。目を開くユズルハ。
ユズルハ『ではこれより朝議をはじめます。』
一同を見回すユズルハ。
ユズルハ『現在、我が国の国境付近にはユランシアの争乱で行き場を失った難民であふれかえっています。』
ユミルはガゴゴの方を一瞬見た後、ユラルの方を向く。
ユズルハ『我々は彼らを受け入れ、共に歩むべきだと思うのですが…。』
一歩前に出るユミル。
ユミル『難民などを受け入れれば治安は悪化し、優遇政策をとるようであれば国家は蹂躙されます。大陸では強姦や略奪、まさに受け入れた国の恩を仇で返す暴徒ども。そのような悪辣な者どもを受け入れるという女王意向には賛同できません。』
眉を顰めるユズルハ。ユミルを睨み付け、一歩前に出るガゴゴ。
ガゴゴ『ユミル!口を慎め!女王陛下は弱きものに救いの手を差し伸べようとされておるのだ!そのお気持ちが酌めんのか!貴様は!!』
ユミル『ガゴゴ殿。女王陛下は優しいお方です。その気持ちは十分に理解できますが、厳しいようですが大陸はひどい惨状です。それが現実です。』
ガゴゴ『それは難民の民度を国家が育成していないからだ!大陸の国家の対策が甘いに他ならん!』
ユミルはユラルに目配せする。一歩前に出るユラル。
ユラル『そこまで言うのならば、ガガゴ殿は我々の懸念を払しょくする難民に対しての対策がおありのようだ。』
目を見開くガゴゴ。
ガゴゴ『…む。』
ユミルはユズルハの方を向く。
ユミル『女王陛下。私は難民対策にガゴゴ殿を押します。ガゴゴ殿の言葉にこのユミル深く感動いたしました!』
微笑んでガゴゴの方を向くユズルハ。
ユズルハ『ガゴゴ。やってくれるのですね。』
暫し目を見開くガゴゴ。笑みを浮かべるユミルとユラル。ガゴゴを見つめる一同。喉を鳴らし、跪くガゴゴ。
ガゴゴ『…このガゴゴ!喜んで承ります!!』
跪くガゴゴ。目配せしあうユミルとユラル。眉を顰めるシンノパクマン。
C2 挑発 END
C3 訃報
ユランシア大陸テウシンの地。ミゼ王国。首都キョン。郊外に建つ小さなユミルの家。ユミルの部屋から出るバカイ王国の元医務官オント。
オント『では、例の件よろしくお願いします。』
ユミル『分かっている。バ漢方へはよろしく伝えておく。』
笑みを浮かべるオント。彼は馬に乗り、ユミルの小さな家から駆け去る。ユミルは彼の背を見つめながら口角をあげる。
ユヅル『こんな時間にお客様ですか?』
ユミルは目を見開いてユヅルの方を向く。
ユミル『ユヅル…。』
ユヅルは騎乗して去っていくオントの背を見る。
ユヅル『バカイの…医務官の方ですか?』
目を見開いてユヅルの方を向くユミル。
ユミル『…なぜ、医務官…と?』
ユヅル『薬品の匂いです。でも、極めて薄く、医務官を辞められた方ではないかと…。』
眉を顰めるユミル。
ユミル『いつからそこに?』
瞬きをしてユミルを見つめるユヅル。
ユヅル『馬の蹄鉄の音がしたので何事かと思い…。お兄様の身に何かあったらと。』
ユヅルはユミルの顔を見つめて、目を見開く。
ユヅル『はっ、政務の方であらせられたのですね。私はまたお兄様にご迷惑を…。』
俯くユヅル。首を横に振るユミル。
ユミル『そんなことはない。』
ユミルは肩に手を回す。ユミルに寄り添うユヅル。
ユランシア大陸テウシンの地。ミゼ王国。首都キョン。ジュ宮殿。政の間。玉座に座るミゼ王国の女王ユズルハ。両脇にはミゼ王国の女性護衛官が立つ。中央の通路の左側にはミゼ王国の文武官ユミル、ユラルにシンノパクマンを含む文武官たちが並び、左側に並ぶ文武官たち。彼らを見つめ、ため息をつくユズルハ。
ユズルハ『皆様。朝議を始める前に…誠に遺憾な報があります。バカイのダンジョン王が…。』
ため息をつくユズルハ。
ユズルハ『急逝致しました…。』
顔を見合わせるミゼ王国の文武官達。
ミゼ王国の文武官A『ソゲン殿に続き、ダンジョン王までも…。』
眉を顰めるミゼ王国の文武官B。
ミゼ王国の文武官B『…これは非常にまずい。バカイの王は世継ぎを決めずに急逝した…。』
ミゼ王国の文武官C『荒れるな…。』
ため息をつく一同。
口に手を当て、目を細めてざわめくミゼ王国の文武官達を見るユミル。目を細めて周りを見るユラル。政の間の扉が開き、現れるミゼ王国の伝令官A。
ミゼ王国の伝令官A『急報があるので朝議の最中失礼いたします。一大事です。バカイのダンヅー王がクド王国と協力し、王を僭称しました!』
唖然とする一同。ユミルは手で口を強く抑える。
C3 訃報
C4 台頭
ユランシア大陸テウシンの地。ミゼ王国。首都キョン。ジュ宮殿。政の間。玉座に座るミゼ王国の女王ユズルハ。両脇にはミゼ王国の女性護衛官が立つ。中央の通路の左側にはミゼ王国の文武官ユミル、ユラルにシンノパクマンを含む文武官たちが並び、左側に並ぶ文武官たち。
ユズルハの前に立つクド王国の使者bn。
クド王国の使者bn『ダンガン王子とダンファン王子は中央府で虐殺をしております。この暴挙を止めるためには、貴国のご協力が必要です。是非ともダンヅー王子にご協力をお願いします。』
ため息をつくユズルハ。
ユズルハ『先刻の使者殿にも申し上げた通り、虐殺の引き金を引いたのはダンヅー王子の愚かな行いです。私たちはダンヅー王にはご協力することはできません。』
眉を顰めるクド王国の使者bn。
クド王国の使者bn『む…。我々の嘆願を拒絶するのですか。バカイの民が嘆き悲しみますぞ。』
眉を顰め、俯くユズルハ。政の間から去っていく使者bn。彼の後姿を見る一同。
ユズルハ『はぁ…。』
政の間の扉が開き、現れるミゼ王国の伝令官B。
ミゼ王国の伝令官B『パノパスからの使者殿が参っています。』
ため息をつくユズルハ。
ユズルハ『はぁ…今度はまたパノパス…。分かりました。通しなさい。』
ユズルハの前に跪くパノパスの使者bz。
パノパスの使者bz『パノパスの使者でございます。本日はダンガン王子にご協力をお願いしに来ました。ダンヅー王子は愚かな行為をし、ダンファン王子は配下に略奪をさせ、その罪を我々にかぶせようとしております。なにとぞ、ご協力を。』
ユズルハ『パノパスの使者殿。先程の使者殿にも申し上げましたが、ダンガン王子は民の虐殺をしたとユ王国の使者から聞いております。あなたがたからは略奪はダンファン王子が行ったもの…と。真実を明白にしなければどちらも支持することはできません。』
眉を顰めるパノパスの使者bz。
パノパスの使者bz『そうですか。ダンファンは志が高いが、押し付ける理想像も高く民は窮屈しております。それに辟易した者達が略奪を先導したに違いありません。』
ユズルハ『何と言おうと確たる証拠がなければ我々はどの王子にも協力いたしません。』
ユズルハを見つめるパノパスの使者bz。
パノパスの使者bz『ユ王国の血縁だからですか。ユ王国の肩を持つのですか。ユ王国もダンファンにはめられているのですぞ。』
去っていくパノパスの使者bz。彼の背を見つめ、額に手を当てるユズルハ。
政の間の扉が開き、現れるミゼ王国の伝令官B。
ミゼ王国の伝令官B『ユからの使者殿が参っています。』
唖然とするユズルハ。
ユズルハ『はぁ…今度はまたユですか…。分かりました。』
ユズルハの前に跪くユ王国の使者bk。
ユ王国の使者bk『ユ王国の使者でございます。バカイを立て直すために是非ともダンファン王子に協力して頂きたい。ダンヅー王子は大それた行いを。ダンガン王子は略奪と虐殺を行った。二王子の暴走を止めるために、貴国のご協力が必要なのです。』
眉を顰めるユズルハ。
ユズルハ『パノパスの使者からは理想像を押し付けられた一部の民の不満が爆発したと。あなた方からはダンガン王子の配下が愚かな行いをしたと。先刻の使者殿にも申し上げましたが、真実がはっきりとするまでどちらにも加担することはありません。』
ユズルハを見つめるユ王国の使者bk。
ユ王国の使者bk『ダンガンは軍事を強化しておりますが、その統治下は恐怖政治そのもの。どの王子が王にふさわしいのか、聡明な女王陛下なら分かるはずだ。』
去っていくユ王国の使者。彼の背を見つめ、額に手を当てため息をつくユズルハ。
政の間の扉が開き、現れるミゼ王国の伝令官B。ユズルハは彼の顔を見て、首を横に振る。
ユズルハ『もういや!早朝からひっきりなしに使者ばかり、同じことをいって同じことを繰り返して、もう本当にいい加減にしてよ!!!もう、疲れた。もう今日はこれまでと…。』
ミゼ王国の伝令官B『は…そ、そうですか。ヂョルガロン王国の使者が来ておりますが…。』
目を見開くユズルハ。顎に手を当てるユミル。
ユズルハ『ヂョルガロン。ヂョルガロンが…。分かりました。通してください。』
一礼するミゼ王国の伝令官B。
ミゼ王国の伝令官B『はっ。』
ユズルハの前に跪くヂョルガロン王国の使者シンタクとガンタマ。彼らはユズルハを見つめ、一礼する。
シンタク『今日一日、とてもお疲れになったでしょう。』
ガンタマ『早朝からのクド、パノパス、ユの使者三昧…。貴国も我が国もツァ王国、カヤン王国も非常に迷惑しております。』
深くうなずくユズルハ。
ユズルハ『まったくです。バカイ王国の三王子の使者ならば門前払いもできたでしょうが、クド王国、パノパス王国、ユ王国ならばこちらは使者を通さなければなりません。』
頷くシンタクとガンタマ。
ガンタマ『ご安心を。我が王が三王子の仲介を致します。』
一瞬眉を顰めるユミル。目を閉じて胸に手を当て、息を吐くユズルハ。
ユズルハ『良かった…。』
ユズルハはシンタクとガンタマの方を向く。
ユズルハ『それにギュウジュウ殿も立ち直ったようで。』
頷くシンタクとガンタマ。
シンタク『はい。王に仕える身としてはうれしい限りでございます。』
ガンタマ『王子にこのままのヂョルガロン王国は残せぬと。懸命に頑張っております。』
ユズルハ『父として自覚を持ったのですね。ギュウジュウ王…。良かった。本当に良かった。』
顎に手を当て、瞳を上に向けるユミル。
C4 台頭 END
C5 疫病
ユランシア大陸テウシンの地。ミゼ王国。首都キョン。ジュ宮殿。政の間。玉座に座るミゼ王国の女王ユズルハ。両脇にはミゼ王国の女性護衛官が立つ。中央の通路の左側にはミゼ王国の文武官ユミル、ユラルにシンノパクマンを含む文武官たちが並び、左側に並ぶ文武官たち。青ざめた顔のユズルハ。
ユズルハ『…難民視察に赴いたガゴゴが。なぜ、毎回こんな悪い報しか…。はぁ、ガゴゴが病に倒れました。今、治療を受けております。』
顔を見合わせる文武官達。シンノパクマンを見つめる。
ユミル『回復なされるとよいのですが。』
シンノパクマン『…ああ。』
扉が開き、現れるミゼ王国の伝令官C。
ミゼ王国の伝令官C『女王陛下。バ漢方のドンジェと…暗黒大陸連邦のドメティック製薬会社のアンルというものが来ております。』
ミゼ王国の伝令官Cの顔を見つめるユズルハ。
ユズルハ『暗黒大陸連邦??』
ミゼ王国の伝令官C『ええ、急を要するということです。なんでもガゴゴ様のことで。』
目を見開き、頷くユズルハ。
ユズルハ『分かりました。通してください。』
ミゼ王国の伝令官C『は。』
ユズルハの前に跪くドンジェと暗黒大陸連邦大手ドメティック製薬会社のユランシア東方支部長のアンル。深々と頭を下げるアンル。
ドンジェ『事は急を要するため、お目通りをお願いしました。』
ユズルハ『一体、何があったのです?』
頷くドンジェ。
ドンジェ『…結論から申し上げますと…ガゴゴ殿は手遅れです。』
目を見開き、口を広げ、手で覆うユズルハ。
ユズルハ『そんな…。』
アンルの方を向くドンジェ。アンルは頷き、ユズルハの方を向く。
アンル『女王陛下。私は暗黒大陸連邦のドメティック製薬のアンルと申します。』
アンルの方を向くユズルハ。
アンル『とてもまずい状況です。今回ガゴゴ殿がかかった病気は新型の疫病で、治療法がまだ確立しておりません。国境付近に集う難民たちの衛生状況は極めて悪く、その疫病が蔓延しております。』
眉を顰めるユズルハ。眼を見開き、口を開くがすぐに閉ざすシンノパクマン。ユミルとユラルは細めでシンノパクマンを見つめる。シンノパクマンは少し拳を震わすと額から汗を流し、青ざめながらも平然とした顔をする。
ユズルハ『…まあ、ど、どうにかならないのですか?』
ざわめき。ゆっくりと頷くアンル。
アンル『我が社がバ漢方と協力して特効薬を作ることができます。』
顔をしかめるアンル。
アンル『ただ、ワクチン開発には…多額の資金が必要です。』
アンルの顔を見るユズルハ。
ユズルハ『多額とは…いくらぐらいなのですか?』
頷くアンル。
アンル『6億は必要です。』
目を見開くユズルハ。
ユズルハ『そ…そんなに!』
一歩前に出るミゼ王国の文武官D。
ミゼ王国の文武官D『とは国家予算の5分の1!おいそれと返事はできません!』
ミゼ王国の文武官Dの方を向くユズルハ。頷くアンル。
アンス『それは重々承知です。しかし、資金提供がなければワクチンの開発はできません。』
一歩前に出るミゼ王国の文武官E。
ミゼ王国の文武官E『資金を低く抑えることはできないのですか?』
アンル『よろしいですが…資金提供が少なければそれだけ開発は遅れます。』
一歩前に出るユミル。
ユミル『疫病がこちらへ入ってくる前に手を打たなければ、ミゼは金銭を惜しんで民を顧みなかったという悪評が立つでしょう。』
一歩前に出るシンノパクマン。
シンノパクマン『わ、私もユミル殿に賛同する。病が流行る前に手を打つべきです!』
一歩前に出るミゼ王国の分武官C。
ミゼ王国の文武官C『とはいえ国家予算の5分の1…。おいそれと渡せる額では…。』
シンノパクマン『金銭を惜しむのですか!』
ミゼ王国の文武官D『そうではない。だが、今は難民で止まっている…。まだ、時間は…。』
シンノパクマン『早急にすべきです!』
シンノパクマンはユミルの方を向く。
シンノパクマン『のう。ユミル殿。』
シンノパクマンの方を向き、頷くユミルとユラル。一歩前に出るミゼ王国の文武官E。
ミゼ王国の文武官E『ならば、貴公達は難民を見捨てるというのですか!弱いものを見捨てたとあらば、我々は非難されましょう!』
眉を顰めるシンノパクマン、ミゼ王国の文武官Eの方を向くユミルとユラル。
シンノパクマン『なっ!ただでさえ、国家予算の5分の1を投入しなければならんのだぞ!』
ミゼ王国の文武官E『弱者を助けることは天下の道でございます。』
シンノパクマン『本当の弱者ならば幾分かましだ。あれは弱った狂犬である!』
ミゼ王国の文武官F『狂犬とは…。彼らを使い、ユランシアの貴族の技術を得ることができるはずです!』
シンノパクマン『分からん奴ら共だ!裕福で技術を持った人材ならばすでに他国に亡命しとるわ!』
ユズルハは彼らを見つめて眼を閉じる。
ユズルハ『ええい!皆、静まれ!静まれ!』
口を閉ざしユズルハの方を向く一同。彼女は眼を開き、ミゼ王国の文武官達を見回し、眉を顰めてドンジェとアンルの方を向く。
ユズルハ『…す、少し時間を下さい。』
頷くアンル。
アンル『分かっております。重要な事項で熟考したくなるのもよくわかりますが、なるべく早めにご決断なさるべきでしょう。』
ゆっくりと頷くユズルハ。
C5 疫病 END
C6 不法入国者
ユランシア大陸テウシンの地。ミゼ王国。首都キョン。ジュ宮殿。政の間。玉座に座るミゼ王国の女王ユズルハ。両脇にはミゼ王国の女性護衛官が立つ。中央の通路の左側にはミゼ王国の文武官ユミル、ユラルをにシンノパクマン含む文武官たちが並び、左側に並ぶ文武官たち。ユズルハは眼を閉じ、深呼吸して眼を開け、一同を見る。
ユズルハ『我が国はバ漢方に投資を致します。その金額について迷っているのですが…。』
一歩前に出るミゼ王国の文武官A。
ミゼ王国の文武官A『ユランシアの戦争難民は、我々だけの問題ではありません。ここは他国に協力を求めるべきでしょう。』
ミゼ王国の文武官Aの方を見つめ頷くユズルハ。
ユズルハ『そうですね。国家予算の5分の1を我が国だけで負担する必要はありませんね。』
一歩前に出るシンノパクマン。
シンノパクマン『バカイの三王子にそれぞれ使者を建て、賄うという案はどうでしょうか。』
シンノパクマンを見つめ、眉を顰めるユズルハ。
ユズルハ『それはなりません。バカイの三バカ…三王子とは関わりあいになりたくないです。…絶対に!!!』
一礼して後ろに下がるシンノパクマン。一歩前に出るミゼ王国の文武官H。
ミゼ王国の文武官H『この難民は元とは言えば貴族連合の責任でしょう。ツァ王国を通して貴族連合盟主国シュヴィナ王国に抗議し、支援金を得るべきです。』
首を横に振り、一歩前に出るユラル。
ユラル『それは無意味です。テウシンの地の軍事技術、国力は貴族連合には敵いません。門前払いされるだけでしょう。』
舌打ちするミゼ王国の文武官H。
ミゼ王国の文武官H『なぜ、我々が貴族連合の尻拭いをせんとならんのだ!』
政の間の扉を開けるミゼ王国の伝令官E。
ミゼ王国の伝令官E『…急報にてございます。非常に悪いお知らせです。』
ミゼ王国の伝令官Eの方を向く一同。
ユズルハ『な、何か?』
ミゼ王国の伝令官Eは跪く。
ミゼ王国の伝令官E『はっ。ヂョルガロンのギュウジュウ王がバカイの三王子の仲介ができなくなりました。』
唖然とする一同とユズルハ。ユラルに目配せするユミル。頷くユラル。
ユズルハ『じょ、冗談はやめなさい。ヂョルガロンの使者は我々を愚弄したとでも?ギュウジュウ王は私達をからかったとでもいうの。』
首を横に振るミゼ王国の伝令官E。
ミゼ王国の伝令官E『いえ、今、ヂョルガロン王国は深刻な事態に陥っております。』
眉を顰めるユズルハ。
ユズルハ『それは…どういう…。』
ため息をつくミゼ王国の伝令官E。
ミゼ王国の伝令官E『今、この国で取りざたされている疫病が…ヂョルガロン王国で蔓延、宮廷内にも入り込み…まだ幼いギュウジュウイチ王子を蝕んでおります。』
ユズルハ『な、何を言っているの???え、疫病はまだ難民の、いえ、ガゴゴもバ漢方の、えっ、いったい、どうして…その…。あの…。すみません。病はどうしてヂョルガロンを…。』
頷くミゼ王国の伝令官E。
ミゼ王国の伝令官E『…検疫を受けぬ不法入国者が国内に入り込み、病をまき散らしたのです。』
唖然とするユズルハと一同。額に手を当て、俯くシンノパクマン。ユミルに目くばせするユラル。
ユズルハ『えっ…不法入国。不法…入国…。』
震えだすユズルハ。
ユズルハは青ざめ各文武官達を見回す。
ユズルハ『こここ、この国は大丈夫ですよね。そそそんな不法入国なんて、な、難民の、疫病を持った難民の不法入国なんて、あ、あああ、あり、な、ありませんよね。』
一歩前に出るシンノパクマン。
シンノパクマン『じょじょじょ、女王陛下!お、落ち着きください。ミゼの民がその様なだいそれたことをするわけがないではありませんか。ここはすぐさま6臆投資…。』
ユズルハの方を向くユミル。
ユミル『女王陛下。現にヂョルガロンでは難民の不法入国が起こり、病が蔓延しております。しかし、難民だけの力では不法入国することができません。』
ユミルの傍らに立つシンノパクマン。
シンノパクマン『おい!お、ユミル!…殿。貴公は何というものいいだ!まるで誰かが手引きしている様な言い方ではないか。』
頷くユミル。
ユミル『ええ。そうですよ。』
後ずさりするシンノパクマン。
ユミル『必ず難民が金になることに目を付けた無法者の業者がいる筈です。でなければおいそれと国境は越えることはできません。』
ユミルの周りを回るシンノパクマン。
シンノパクマン『ぎ、業者だと!テウシンの民を愚弄するつもりか!貴公は!!』
首を横に振るユミル。
ユミル『我が国の国民とは限らない。騎馬民族かもしれず、ユランシアの無法者かもしれない。』
眉を顰めるシンノパクマン。
ユミル『しかし、業者はまだ、ここには来ていないかもしれない。調査が必要だと思います。女王陛下。』
ユミルを睨むシンノパクマン。
ユズルハ『…ちょ、調査をするなら早く、早く…。き、決めました。わ、私、我が国は…バ漢方に6臆投資いますぐします。しなさい。それにユミル。その調査を…。』
首を横に振るユミル。
ユミル『不法入国者とそれを手引きした業者の調査には私より最適任の方がおられます。』
眼を見開くユズルハ。
ユズルハ『それは?』
頷くユミル。彼はシンノパクマンの方を向く。
ユミル『シンノパクマン殿です。』
眼を見開き、周りを見回すシンノパクマン。
シンノパクマン『…は???』
ユミル『不法入国を斡旋する業者はつかみどころがなく、調査するにはやはり情報網が必要かと。シンノパクマン殿は各地に親族がおり、様々な情報網を張り巡らしております。』
2回頭を下げるシンノパクマン。
シンノパクマン『は、はあ。』
ユミル『ここはこのシンノパクマン殿に不法入国者と仲介業者の有無を調査させるべきだと思いますが…。』
ユミルは文武官達を見回す。頷く一同。
ミゼ王国の文武官I『確かに、シンノ一族の情報網は優れておる。』
ユズルハはシンノパクマンを見つめる。
ユズルハ『では、シンノパクマン。調査をお願いします。安心させてくださいね。』
袖で顔を口元の笑みを隠しながら深々と頭を下げるシンノパクマン。
シンノパクマン『は!このシンノパクマン必ずや。不法入国者とその手引きをする者達の有無を確認してきます!』
跪くシンノパクマン。シンノパクマンを見た後、ユズルハの方を向くユミル。
ユミル『それと…病の拡大を防ぐ為、ヂョルガロンも難民も支援しなければならないと思いますが…。』
頷くユズルハとミゼ王国の文武官達。
ユズルハ『ユミルの言う通りです。難民もヂョルガロン王国も支援致します。』
ユズルハはミゼ王国の文武官達を見回す。
ユズルハ『よろしいですか。』
一斉に跪くミゼ王国の文武官達。
ミゼ王国の文武官達『はっ!』
C6 不法入国者 END
C7 併合
ユランシア大陸テウシンの地。ミゼ王国。首都キョン。ジュ宮殿。政の間。玉座に座るミゼ王国の女王ユズルハ。両脇にはミゼ王国の女性護衛官が立つ。中央の通路の左側にはミゼ王国の文武官ユミル、ユラルを含む文武官たちが並び、左側に並ぶ文武官たち。ユズルハの前に跪くドンジェとアンル。ユズルハはドンジェとアンルを見つめて深く頭を下げる。
ユズルハ『この度のバ漢方と暗黒大陸連邦のアンル殿には感謝しております。おかげで疫病は終息しました。』
ドンジェ『いえ、これはすぐにご決断なさったことが大きいでしょう。我々もアンル殿のおかげで早い段階で突破口をみつけることができました。』
アンル『いやはやドンジェ…いや、バ漢方の学ぶという姿勢が大きかったからこそ事を成し遂げることができたのです。ただ、初期の患者は救えなかったことが残念でしたが…。』
ユズルハはミゼ王国の女官達に目くばせする。彼女たちはドンジェとアンルの前に財宝を置く。彼らはそれを見つめる。
ユズルハ『我々からの気持ちです。とうぞ、お受け取り下さい。』
ドンジェ『ありがとうございます。これで、バカイ王国の元医務官殿をはじめ…犠牲になったわが社の社員達も浮かばれることでしょう。』
一礼するユズルハ。
ユズルハ『その犠牲に感謝します。』
深く一礼するドンジェとアンル。彼らは財宝を持ち去って行く。政の間の扉が開き現れるミゼ王国の伝令官F。
ミゼ王国の伝令官F『女王陛下。ヂョルガロンからの使者が来ております。』
頷くユズルハ。ユミルとユラルは顔を見合わせ、頷く。
ユズルハ『分かりました。通してください。』
頷くミゼ王国の伝令官F。扉が開き、現れるシンタクとガンタマ。彼らはユズルハの前に駆け、跪く。
シンタク『女王陛下。この度のご支援ありがとうございます。』
ガンタマ『おかげで病は終焉し、我々の不安も払しょくすることができました。感謝しております。』
ユズルハ『当然のことをしたまでです。』
一歩前に出るユミル。
ユミル『女王陛下。』
ユミルの方を向くユズルハ。
ユズルハ『ユミル…。どうした?』
ユミル『一つ提案がございます。』
ユズルハ『提案…。』
ユミルはシンタクとガンタマの方を向く。
ユミル『ヂョルガロン王国も関係あること故…。』
ユミルの方を見つめるシンタクとガンタマ。
ユズルハ『…いったい?』
頷くユミル。
ユミル『はい。ヂョルガロン王国を我が国の管轄に置くべきです。』
眉を顰めユミルを見つめるユズルハ。
ユズルハ『ユミル!何を言う。ヂョルガロンは立派な国家。我が国の管轄に置くとはおこがまし…。』
ユズルハを見つめるユミル。
ユミル『御言葉ながら女王陛下。ヂョルガロン王国は疫病で疲弊しております。ここで我が国がかじ取りをしなければ、狼の群れに弱った餌を与えるようなものです!それにテウシンの各国から見て、ヂョルガロンがある地は飛び地。文句を言う国家は一つも無いでしょう。』
ユズルハ『言葉が過ぎるぞ!ユミル!ヂョルガロン…ギュウジュウ王を…。』
シンタクはユミルを見つめる。
シンタク『お待ちください。女王陛下。ユミル殿のおっしゃることは真実です。この度の疫病で我が国は…大きく国力を落としました。国境周辺の騎馬民族も跋扈し、難民ではなく…血なまぐさいユランシアの傭兵団も来ている。とても我が国だけでは対処できません。』
眼を見開くユズルハ。
ユズルハ『えっ、し、しかし、ギュウジュウ王が…。王がそのようなことは許さぬでしょう。』
俯くシンタクとガンタマ。
シンタク『王は…。』
ガンタマ『王は…。』
涙を流すシンタクとガンタマ。
ガンタマ『王子があの疫病で逝去され、床に臥せ、しきりにスリョク、スリョクとうわごとを毎日のように繰り返しては痩せ衰えていきます。もう、とても政務どころではございません。』
後ずさりし、俯いて目を潤ませるユズルハ。
ユズルハ『ギュウジュウ王。お可哀想に…。』
深々と頭を下げるシンタクとガンタマ。
シンタク『是非ともヂョルガロンを貴国の管轄に置いて頂きたい。ヂョルガロンの他の者達も同じ気持ちです。』
彼らを見つめるユズルハ。
ユズルハ『何を言っているのですか。』
顔を上げるシンタクとガンタマ。
ユズルハ『あなた方がヂョルガロンを立て直す原動力とならなくてどうするのですか。』
ユズルハはしゃがみ、シンタクとガンタマを見つめる。
ユズルハ『分かりました。ギュウジュウ王にお伝えください。ヂョルガロン王国は我が国の管轄といたしますが、ギュウジュウ王が回復されればいつでも返還いたしますと。』
眼を見開いてユズルハを見、頭を深々と下げるシンタクとガンタマ。
シンタク『ありがとうございます!女王陛下。』
ガンタマ『ありがとうございます!女王陛下。』
ユズルハを見下ろすユミルとユラル。
C7 併合 END
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・必要事項のみ記載。 ・グロテスクな描写がございますので18歳未満の方、もしくはそういったものが苦手な方は絶対に読まないで下さい。 ・心理的嫌悪感を現す描写が多々含まれておりますのでそれういったものが苦手な方は絶対に読まないで下さい。 |
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