Dear My Friends! ルカの受難 第21話 もう一つの決戦・前編
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<第20話末文より>

 

アペンド「ふぅ〜、これでようやっと最終段階まで来たな? テル?」

テル「まったくだ。これから、色々後処理満載だからな。とにかく完成魔法陣がユキの手に渡らなくて、本当によかった」

 

 こうして、1つの試合、というより闘いが終わり、これから、取り決めの通りの“山積みの後処理”が、襲ってくるのだった。

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<Dear My Friends! ルカの受難 第21話 もう一つの決戦・前編>

 

 ミクvsルカコピーの最終決戦は、ミクの勝利で幕を閉じた。しかし、イロハ達には、大事な“もう1つの決戦”が待っていたのだった。

 

『法廷決戦』

 

だ。

 

 ある意味、コレまでの事件、そしてミクの最終決戦の後始末とも言える、本当の最後なのかも知れない。

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 今回、この法廷で闘うのは、クリプトン王国サイドでは、ルカ姫、アペンド。アフス帝国サイドでは、テル、神官ユキ、皇帝イロハ、(ミリアムの魂が入った)ミキ、ルカコピー。フォーリナー軍政国家サイドでは、皇帝アル、ソニカ。そして被害者的な立場として、異世界の民間人である、初音ミクと巡音ルカも出廷することになった。

 

 試合をしただけの、学歩、リン、レン、アフス帝国の戦士達は、今回は不問とし、事実の確認をするためだけに、参考出廷してもらうことになった。

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 さて、ここで1つの問題が生じてしまった。“クリプトン王国、アフス帝国、フォーリナー軍政国家、どれも弁護士でもなく、検察側でもない。まさに言論を闘わせる立場にあったことだった。これではその全ての国から”裁判官“を選出する事が出来なくなってしまったのだ。イロハもユキも、自国の裁判官を使うことを念頭に置いていたのだったが、そうは行かなかったのだ。

 

 結果、学歩が不問となったので、中立的な立場で裁ける“インタネ共和国”に全員が移動し、その国の裁判官である、“勇気めぐみ”と数名の法廷関係者によって、裁判が行われる事になった。

 

 尚、先にも述べたとおり、法廷に出廷している全員が、弁護側でも検察側でもない。よって進行は、法廷で事実を照らし合わせる事を利用し、裁判官や関係者の合議により罪を言い渡す事になった。

 

 この“完成魔法陣事件”は、クリプトン王国、アフス帝国、フォーリナー軍政国家、いずれの法律も適用できない程、大きな事件だったのである。

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(某日 インタネ共和国 第1法廷)

 

 ザワザワザワ…

 

 コンコンコン!

 

 めぐみは高らかに木槌を叩き、法廷を開廷することになった。

 

めぐみ「はい、これから、この一連の事件の法廷を開廷致します。異論ないですね?」

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カイト王「異論大ありだ! 我が娘が何でこんな法廷に出廷せねばならんのだ! 姫だぞ!?」

めぐみ「残念ながら、ルカ姫はこの事件に関わってます。我慢して下さい」

カイト王「うううう、なんでこんな事に…」

メイコ王妃「あなた、ここは堪えるのですよ アペンド達がなんとかしてくれますよ」

カイト王「そう願いたいところだ…」

 

めぐみ「他に何かイチャモン付けたい方、いませんか?・・・・・・・いないようですね、では開廷します」

 

 コンコン!

 

めぐみ「さて、今回の事件はこの世界とミクさんやルカさんの異世界までをも揺るがしかねない、大事件になる所を、異世界の人間であるミクさんとルカさんの活躍で未然に防がれました。しかし解決に至るまでに、それぞれの国家内、及び、国家間で色々問題になることが多数起きてました。そこで中立的な立場であるインタネ共和国での裁判となりました。しかし、当国家の法律を参照して進めるのではなく、事実を確認していくことと、我々の合議により、国際的な罪状を言い渡す事にします」

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 コンコン!

 

めぐみ「事前に大きな流れだけは、アペンドとテルとユキとアルとイロハから聞いているので、その調書を元に進めていきます。それでは、まずは、ルカ姫とアペンド、貴方達からです」

 

 ガタッ

 

 ルカ姫とアペンドは緊張した趣で、別の目的に使われるのだが、証言台に移動した。普通は証言台には“一人“なのだが、今回の場合、”複数人が1つのイベントに同時に関わっている“ケースが多いので、こういうシステムを特例で取り入れたのだ。

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 それにしても、あの“おてんばルカ姫”も、アペンドから顛末を色々聞かされたため、その顔に笑顔はなく、少し青ざめていた。アペンドは、もう全てを受け入れるつもりで開き直っていた。

 

めぐみ「アペンドからの調書によると、まずこの事件のそもそもの発端は、ルカ姫、あなたがアペンドが研究中だった“未完成の転送魔法陣”に興味本位で飛び込んだ事だと把握してますが、間違いないですか?」

 

 ルカ姫はガタガタ震えて、今にも泣き出しそうだった。

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ルカ姫「は・・はい・・・ま・・・間違い・・・・ないです・・・冒険心と・・・興味本位で・・・」

アペンド「間違いないです。現場の色々を調べました。その結果、異世界のルカさんが、未完成の魔法陣のシステムによって、代わりにこっちに送られてしまいました。しかし、これについては私に責があります。研究中の危険な魔法陣があるのに、セキュリティをおろそかにしてました」

 

めぐみ「そうですね。残念ですが、この件については、アペンドの方の罪が重いと思います。ルカ姫が“おてんばで冒険心旺盛”である事は身に染みてわかっていたのに、セキュリティチェックが甘過ぎでした。同時にテルからの調書でわかりましたが、あの時点で潜り込んでいたテルに“その情報”を盗まれていたそうですね」

 

テル「済まないが、事実だ」

 

めぐみ「だが、その事態を解決するために、早急に魔法陣を完成させ、最近の試合で勝利するまで、アペンドは努力し奮闘しました。その事は十分に考慮できる物と思えます」

アペンド「有り難うございます」

めぐみ「よって合議の結果、ルカ姫は全ての国にある魔導研究施設への出入りを禁じます。また、行動に関しても“姫”という立場を超越して、冒険などを制限します。この監督は、両親では甘くなるので、家庭教師のピコさんに任せます。より厳しく管理して頂きたいです」

 

ピコ「はい、頑張ります」

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めぐみ「次にアペンドですが、魔導研究室内の魔法陣に関する研究を取りやめ、書類を焼き払い、未完成魔法陣を全て消滅させて下さい。同時に部屋のセキュリティを最大まで引き上げ、よほどのことがない限り、自分以外を入室させることを取りやめて下さい。我が国の方で時々、監査に入ります」

 

アペンド「はい、わかりました」

 

めぐみ「それでは、次に、テルとソニカ、証言台へ」

 

 テルとソニカは、もう自分がどういう刑を受けるのか、ある程度把握した状態で、証言台に向かったのだった。

 

めぐみ「まずソニカから行きます。貴方はテルが完成版魔法陣を手に入れるための道具として、闘いに身を投じ、その後、アペンド側に転じたテルと共に、魔法陣の事件を解決するために、やはり奮闘致しました。直接は関わっていないのは把握してます」

ソニカ「ですが、私は自分の能力とはいえ、異世界のルカさんの姿に変身した経緯があります。それなりの刑は覚悟してます」

めぐみ「よろしい。では、その後の努力奮闘を加味し、これ以降、フォーリナー軍政国家への戦士登録を抹消し、個人での入国も禁じます。テルの監督及び補佐官として、別の人生を歩みなさい」

 

ソニカ「は、はい」

 

 ソニカはもっと重い刑を覚悟していたのか、目を潤ませて、返事をした。

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めぐみ「さて、テルですが・・・・覚悟は出来てますね?」

テル「解っている、覚悟の上だ」

めぐみ「よろしい。貴方には、1)アフス帝国での秘密の研究、2)クリプトン王国への密入国とスパイ活動と機密の個人的取引計画、3)ルカさんの誘拐、4)フォーリナー軍政国家の3人の兵士の殺害、5)アフス帝国への反逆行為、等、細かい物を削除しても、これだけある。言ってみれば、前半の首謀者ですね」

テル「ああ、間違いない。私の調書と他の調書に書かれている事は事実だ」

めぐみ「だが、後半、自分以外に魔法陣を悪用する計画を立てていたアフス帝国とフォーリナー軍政国家の面々から、アペンド達と協力して、魔法陣を守った事も事実だ。更に我が国の戦士や他の戦士達を建物の倒壊から守ったのも事実。それは努力奮闘に値すると、こちら側は考えてます」

テル「同情は無用だぞ」

めぐみ「同情ではありません。国際評価です。なので、貴方をアフス帝国から追放し、再入国を認めません。研究施設は全て抹消し、アフス帝国関係者との会合も許しません。その代わり、監督役のソニカと共に、クリプトン王国のアペンドの補佐に任命します。自らの研究は許しませんが、ソニカの監督の範囲内でアペンドの研究を手伝いなさい。それをコレまでの事への罪滅ぼしとします。これで宜しいですか? ミリアムの魂が入ったミキさん?」

 

ミキ「ああ、正直一度私を殺している人物は、私の手でとどめを刺したいと思ったのだが、ルカさんとミクさんの事を考えて、正直、この事件の怨恨は、もうやめようと思った。幸か不幸か、私はミキのボディで生きている。私はこの体で生きていくのだから、もうそれでいいと思った。だから、そう言うことにした。テル、自分の研究が出来ないのは研究者としては、かなりの痛手だと思う。それが私からお前への求刑だ。もう、二度とあんな事するなよ?」

 

 それは信じられない光景だった。テルの目から一筋の涙がこぼれ落ち、そして、テルは後ろを振り向き涙を拭いて、再びミキの方を向き直った。

 

テル「・・・・・・ありがとう・・・・・・」

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めぐみ「それでは、この裁判のメインイベントに移ることにする」

 

 こうしてソニカとテルは席に戻り、代わりに、ミキとイロハとルカコピーの3人が証言台に移動したのだった。

 

めぐみ「さて、何故、ユキとアルまで、一緒にそこに立たせなかったか、わかりますか?」

 

イロハ「・・・・立場の違う二組に分かれて、別の場所で、事実の確認をさせるためだ。実質、証言台は2つあると把握している」

めぐみ「わかっているのなら、結構。今回に関しては、私の方から“一方的に”事実と罪状を読み上げません。私への意見も含めて、闘いなさい。正直な話、この件は画一的に裁けない面があるので、君たちの“真実の言葉”を聞いて、それで決めようと思う」

 

イロハ「了解した。闘おう」

ユキ「望むところだ」

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 こうして、最後の最後、イロハvsユキの闘いが始まったのだった。

 

(後編に続く)

 

CAST

 

ルカ姫、巡音ルカ(ルカ):巡音ルカ

初音ミク(ミク):初音ミク

 

<クリプトン(Cripton)王国サイド>

魔導師アペンド:初音ミクAppend

 

僧侶リン(リン):鏡音リン

勇者レン(レン):鏡音レン

 

家庭教師ピコ(ピコ):歌手音ピコ

 

<インタネ(Interne)共和国サイド>

異国の剣士 神威学歩:神威がくぽ

 

裁判官 勇気めぐみ:GUMI

法廷関係者 カル:CUL

法廷関係者 リリィ:Lily

法廷関係者 リュウト:リュウト

 

<アフス(A-Hu-Su)帝国サイド>

魔導師テル:氷山キヨテル

 

皇帝イロハ:猫村いろは

神官ユキ:歌愛ユキ

クグツロボット(コードネーム)“ミキ”の外観:miki

(ミキの中身=ミリアム:Miliam)

 

ルカコピー:巡音ルカ

 

<フォーリナー(Foriner)軍政国家サイド>

変身兵士 ソニカ:SONiKA

 

皇帝アル:Big-AL

重機動兵器アン:Sweet Ann

剣士レオン:Leon

圧殺兵士ローラ:Lola

導士オリバー:Oliver

拳闘士シユ:SeeU

 

その他:エキストラの皆さん

説明
☆当方のピアプロユーザーネーム“enarin”名義で書いていました、ボーカロイド小説シリーズです。第15作目の第21話です。
☆今回は1話分を短めにした、ファンタジーRPG風味の長編です。

☆当時は2期を意識してなかったのですが、本作は最新シリーズ“Dear My Friends!第2期”の第1期という作品になり、第2期のシナリオやカラクリに、第1期となる“本作”の話も出てきますので、長い長いお話ですが、長編“Dear My Friends!”として、お楽しみくださいませ。

☆法廷対決全部が約12000文字にもなってしまって長くなりすぎたので、前編後編にわけました。今回と次回が法廷、次の次がミクとルカの帰還、としました。
☆全体的にかなりはしょった裁判でしたが、“罪の重さ”だけは伝わったと思います。
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巡音ルカ 初音ミク Append 鏡音リン 鏡音レン 歌手音ピコ 年長組 インタネボカロ AHSボカロ 海外組 

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