バカと国子と政府恋愛 第1話 |
突然始まった3年生との試召戦争の最中、姫路さんの海外留学の話があるのを僕は知り、良い経験だと思ったんだ。けど、姫路さん自身が望んでいない事を知り、阻止する為に協力して3年生を倒した。
そして僕は、その戦争の最中2人の女の子から告白をされた。僕は悩みに悩んで、姫路さんを選んで、付き合った。そんな恋人生活を歩もうとしていた矢先の事。
そんなぼくに、突然降りかかった事態。そう、それは……政府から来たお見合い、((政府通知|アカガミ))を受け取ったんだ。お見合い相手の詳細は載っていない代わりに、断った場合の((罰則|ペナルティ))が書かれていた。僕にはよく分からなかったので、姉さんに説明をお願いした。
「これはアキ君にとっては、とても厳しい罰ですね」
「えっ、そん何?」
「はい。そうですね……まず、アキ君が受けなかった場合の罰則について、説明しますね」
「うん、お願い」
「アキ君は放校処分を受け、特殊刑務所行きです」
「何、最初からその突っ込みドコロ満載の罰って」
まさか、その社会的罰について僕が突っ込む羽目になるとは……。
「アキ君、放校処分が何か、分かりますか?」
「ええと、確か…………退学より厳しいとしか」
「はい、その通りです。詳しく言いますと、アキ君で例えますと、文月学園に在籍していた期間や成績等が抹消され、居なかった事にされてしまいますね」
「うわあああああああっ、最悪だああああっ」
「はい、ただでさえバカで不細工なアキ君なのに、最終学歴が中卒、という救いようの無い状態ですね」
「そん何はっきり、言わないでぇぇぇぇっ」
「では次に、特殊刑務所について、話しますね」
「うん、お願い……」
「実は、あんまり良く分からないんですよ、この刑務所について」
「えっ、そうなの?」
「はい、そもそも本当に実在するのか、怪しいですからね。ただ……」
「ただ……?」
「出所者は全員、洗脳されたみたいにお相手の国子に夢中になる洗脳施設だとか、入所したが最後、身も心もボロボロの穢れ雑巾になるまで出所できないこの世の地獄、だとかでよくない噂が……」
「最悪だぁあああぁっ」
何それ、如何して刑務所が地獄になっちゃうのう?
「更に、私達家族にまで塁が及びます」
「えっ、姉さんにまで?」
「はい。まず、姉さん達は監督不届き行き等の責任で仕事を失い、財産の殆どを没収され、国外に出る事も亡命する事も出来なくなります」
「……えっ?」
それって……えぇぇぇぇぇええぇぇぇっ。
「如何して其処までっ?」
「その位、国子という存在が、この国に貢献しているのですよ。国子特有の問題点を改善出来るのが、この政府通知で、国子がより良く働き・心身健康に過ごせる素晴らしい法案なのですよ」
「でも、それって……僕が、好きでも無い人と結婚しろ、って事だよね。どうして僕がっ」
「アキ君、一つ、言っておきます。其れは彼等、彼女達…国子も同じですよ。いえ、国子の方が、その潜在的な……いえ、押し殺している感情が強いですよ」
「如何して?」
「国子は元々、親や周囲からの悲惨で、酷い虐待を受けた過去を持つ、子供達だからです。その中でも、とても酷い親から子供達を守る為の制度なのですよ。虐待した親の中には、出所後に子供を襲撃や暴行の末の殺害にお金をせびりに来るというケースもあった事から、親権を取り上げられた親は、子供に近付けさせない接近禁止令もあります」
「えっ……」
「国子は親から受けたのは、愛情では無く理不尽で悲惨な虐待です。国子の中には小学校に通う前も、通い始めても周囲から助けて貰えずに孤立して陰湿な虐めに発展し、たまたま通りかかった、事情を知らない遠くから来た人が瀕死の状態の子を発見した事で、ようやく判明したケースもあるんですよ。
そんな子達が家庭を持ち、子供を産んで……自分を虐待した親と同じ立場になって、自身の((心の傷|トラウマ))に正面から向き合って、混乱しない筈がありません。どうすれば良いのか、分からないのですから。それでも何とかしようと、考えて努力して、そんな事をしてストレスが溜まり、それが……虐待・DVの連鎖になってしまうのですよ。それに加えて、更に周囲の環境や人間関係等が重なれば、限界なんて訪れます。
………最も、この事に関しては、擁護すべき事ではありませんがね。そういった精神面のケアを怠ってしまった件に関しては、ですが…」
「………」
国子の特有の問題点について、考えた事はなかった。国子は国が保護者になって居る、つまり……国の為に居る、という感じだった。
本当は違った。国子を守る為に、国が保護者になっているんだ。自分達の未来を切り開く為の能力を身に付けさせる為の高度な教育で、この赤紙も国子の為にあるんだ……って、
「結局、国子の為じゃないか」
「いえ、国子の為だけではありませんよ。この法案には、国の……いえ、政府の思惑込みです」
「政府の? 一体、どんな思惑があるっていうのさ?」
「今の日本は、少子高齢化社会だからですよ」
「少子高齢化社会? ええと、確か…………生まれてくる子供の数が減って、高齢者の数が増えているんだっけ?」
「はい、そうです。その為に当時の政府は全国民に、科学で総ての相性が合っている者同士での結婚前提のお見合いを考案、その法律を制定しようとしたんです。それが、超・少子化対策基本法,通称「ゆかり法」というモノですが、当時の国民からの大反発により、廃案にされました。アキ君は如何してだと思いますか?」
「ええっとお………自由に恋愛が出来なくなる、から?」
「その通りです。それ故の大反発に暴動でした。
しかし、政府はこのままでは少子化が進み、事の次第によっては国が沈む事になる恐れがあると、ある存在に白羽の矢を立てたのです」
「その白羽の矢が、国子…」
「片方が国子ならば、問題にはならない。何より、国子の問題点をえおうにか出来る、と踏んだんですね。実際に、その法案は可決されました。……当の国子の後押し付きで」
「国子が後押しを? 如何して?」
「自分達の為、ですよ。親から身の安全が保障され、政府の元とはいえ高度な教育を受けれる。そんな今の立場を、失いたくないからです」
「身の安全と高度な教育……」
「国子からすれば、 身の安全を捨ててまで 自由の恋愛に走りたくは無いのでしょう。……殺されたくはありませんし、親に見つかられるのも会うのも、嫌でしょうから」
何でだろう、国子ってそん何……。
「だからといって、憐れんでは行けませんよ」
「えっ?」
「彼等からすれば、憐れられる程落ちぶれていないのに、可哀想な人でも無いのに、勝手にそう判断されるのを毛嫌うんですよ。何も知らない癖に、って。
アキ君も、バカっていうだけで、何も知らない人から憐れられたり、可哀想な子扱いされるのは如何ですか?」
「凄く、嫌だ」
「それと同じです」
そういえば、国子の場合はどうなる…………いや、何と無く想像出来る。
「姉さん、国子の場合は…?」
「特にありません」
「えっ? 何でさっ」
「簡単です。国子達には何の利が無く、寧ろ、害ばかりだからです」
「でも、それって…如何なのさ」
「勿論、そんな意見が出ましたよ。結婚相手の国民や国子自身からも、それではフェアでは無く、何の解決になっていない、と」
「解決?」
「国子の中にも、恋人や婚約者がいる者が居たんです。……政府が仲介した相手では無い人物が」
「なら、如何して後押ししたの?」
「条件付きで、ですよ」
「条件って……まさか!!」
「アキ君の予想通り、国子の方に恋人や婚約者がいる場合、この法律は適応されない。両者に恋人や婚約者がいる状態で互いの同意の有る場合に限り、担当者の前で「少子化対策国子国民婚姻法,通称「準ゆかり法」破棄同意証」にサイン、拇印等の様々な手続きを行う事によって、この法律を破棄しても互いへの罰則はなくなる決まりが新たに作られました。………当時の政治家では無く、国子自身が、嫌々、仕方無く」
「……嫌々で仕方無く、何だ……」
「この件に関しては、当時の政府が約束を守らず、国子同志の団結を利用するだけ利用しましたからね。……最も、その後で国子自身が当時の無能で約束破りの政治家を次々と、スキャンダルや犯罪行為をきっかけとして、表舞台から退場させ続けました」
「…兎に角、敵に回さないようにするよ…」
国子って恐い……。
「国子自身が作ったペナルティは、国子剥奪です」
「国子剥奪………随分、キツイね…」
「コレが妥当だろう、という感じだったみたいですよ。彼等の場合、国子で無くなった翌日に死体で発見される事もあり得ますからね」
「否定、出来ないね」
「アキ君、次の金曜日の午前中、結婚相手の国子とお見合いです。付き添いは姉さんですので、着る物は制服でお願いしますね」
「次の金曜って……明日じゃ無いかっ」
「瑞希ちゃんに説明して、別れる確率が99.9%以上なので、別れてお見合い相手の国子と結婚するかもしれない、と」
「嫌だよっ、………って、言いたいけれど……国子じゃ無くて姫路さんと結婚したら。姫路さんにも、罰則ってあるの?」
「……アキ君とほぼ同じで、家族に対しては同じです」
「ほぼ同じって?」
「……特別刑務所行きでは無く、戸籍を喪う『非国民刑』に処され、……消息を断つそうです」
「それって、つまり…」
「居なくなる、存在を……生存すら、確認できなくなるんです」
何だよ、それ……おかしいじゃないか。その場合、悪いのはぼくじゃないか。姫路さんは悪く無いのに、如何して……何でだよ、何でっ…。
説明 | ||
明久に政府通知が届き、その理不尽さに憤りし、苦悩する。 | ||
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