オーバーロード〜魔を狩る者の来訪〜
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―――ログイン

 

淡い光と共にログイン画面が切り替わり、次の瞬間には俺は薄暗い部屋に立っていた。

ゆっくりと、懐かしむように周囲を見回す。

 

「……久しぶりだな、2年ぶりか?」

 

久しぶりに舞い戻ったここは、少し前まで毎日のように遊んでいたユグドラシルの世界。

ここは最後にログアウトした俺のギルド拠点……といっても、俺一人しかメンバーのいない零細ギルドだが。

しかし、小さいからこそギルドの維持費にそれほど金をかけなくてもいいというメリットがある。

モンスター退治やらイベントやらと、引退するまでに稼いで使ってもまだ余りあった金貨の山。

それをまたいつか来るかもしれないと思い、ギルド維持費に先払いという形でほぼ全額投資したのだが、そのおかげで2年経った今でもまだギルドが存続していてくれたようだ。

そこまで広くない木造建築の二階建て。今俺がいるのはその一階。

そこにはガチャで引いた何十年も前に作られたようなジュークボックスや木製で重量感のある机、他にもビリヤード台等々、その場に関連性のないものも含めていろいろな物がそこらに置かれている。

もう2年も誰も立ち入っていないというのに、流石ゲームといった所か埃一つかぶっていない。

 

俺は棚の中からウィスキーとグラスを取り出し、冷凍庫から氷を入れて注ぎ一口飲み込む。

別段年代物というわけでも高い酒でもなく、ショップで安価で購入できるただの酒だ。

ゲームで酔いを味わうことはできないし、ステータス上の状態異常なども“上位ステータス異常無効化”のパッシブスキルがあって掛かることはない。

 

「……できれば、味覚も実装されて欲しかったがな」

 

そして味覚に関しても、なんでもゲーム世界から戻らなくならないようにということで、法律で実装禁止の項目の一つとされているらしい。

テキスト内ではあるがリアルでは決して味わうことができないような美酒や美食が数多くあるこの世界、味覚が実装されていればどれほどよかったことか。

そう残念に思いながらもう一口、味の感じない酒に口をつける。

では何のために飲むのかというと、ただただこの静かな空間で酒を飲むというシチュエーションが好きなだけという単純なものだ。

少しだけこのシチュエーションを楽しんでいると、まだ酒が残っているグラスを机に置く。

椅子を引きドサッと座ると、乱暴に足を机の上に載せる。

行儀が悪いだろうが、俺しかいないこの場所で気にする奴などどこにもいない。

体重で背もたれが傾斜し、天井で静かにゆっくりと回るシーリングが目に入る。

クルクルと回り続ける様子をボーッと眺めながら、ここでこうした時間を過ごすのも今日で最後なんだなと、少し柄でもないセンチメンタルな感情を感じていた。

 

大体2年前、俺は大学を卒業後に就職して仕事が忙しくなり始めたことを切っ掛けにユグドラシルを引退していた。

俺が高校の時からユグドラシルを始めて、大体7年くらいプレイし続けてきた。

色々とゲームをやってきたが、このユグドラシルは他のゲームなんて目じゃないくらい楽しかった。

普段なら課金をせずに無料で遊んでいるところなのだが、いろいろと自由度も高くてキャラメイクにも力を入れていたらいつの間にかバイトで稼いだ金の大半を投入していたというのめり込み具合だった。

その慣れ親しんだ場所が終わりを迎えるということを通知で知り、せめて最終日くらいはとこうしてログインをしているという訳だ。

 

「さて、時間までもう少しあることだし。 ……なにするかねぇ」

 

このままこの部屋で、サービス終了のサーバーダウンまで寛いでいるのも悪くはない。

なにしろサービス終了まで時間もそれほどないのだ、やれることもそう多くはない。

これならば今日は仕事を休んで朝からログインしていればよかったかと、今更ながらに少し後悔する。

とはいえ、何かやっておきたいことというのも、早々思い浮かんでこないが。

 

「……そういやぁ、あれ使ったことなかったな。どうせ最後だし、思い切って使うか」

 

なにかないかと考えていると、まだゲームをしていた時期に、とあるイベントで手に入れたアイテムを思い出す。

レア度としても効果としても極上だが、特に使う機会もなく今まで倉庫の肥やしと化していた一品。

どうせゲーム終了するなら、それを使って昔の知り合いにちょっとしたドッキリを仕掛けるのも悪くない。

 

「……ってか、あいつ今インしてるのか?」

 

ふとした疑問、だがその疑問は無用だろうと思い直す。

一応フレンド登録をしていたから確認してみると、どうやらちゃんとログインしてるようだった。

……むしろ、俺がフレンド登録している中で今ログインしているのがそいつしかいないという。

思い出した昔の知り合いは、知り合いの知り合いという間柄。

俺が引退する時にはまだプレイしていたし、本人もかなりユグドラシルにのめり込んでいたからまだプレイしている可能性は高いと考えていたが、どうやら予想通りだったようだ。

 

「それじゃ、時間もないことだし……」

 

俺は目的のアイテムを取り出し、発動させる。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

「……コマンドは、“待機”だっけ?」

 

指示に恭しく礼をすると、後ろに従わせていたセバスや戦闘メイドプレアデスたちは数歩下がり待機状態に入った。

 

「……ふぅ」

 

それを見届けると、モモンガは玉座に腰を下ろす。

 

今日はこのDMMO-RPG、ユグドラシルのサービスが終了する日。

2126年にサービスが開始され、日本国内に爆発的な人気を博していたゲームであったが、始まりがあれば終わりがあるようにこのゲームも終了する日が来てしまった。

その最後の瞬間を他のメンバーと共に迎えようと連絡をしたのだが、結局ログインしたのは数名のみ。

先程、仕事疲れの限界が来たらしいヘロヘロさんがログアウトしたのが最後で、結局はモモンガと自分たちが作り出したNPCたちがこのナザリック地下大墳墓に残るのみ。

 

最後の瞬間を仲間たちと共に迎えたかったと悲しみ、同時に憤る。

なぜ? どうして? 皆にとってはこのナザリックはどうでもいい場所だったのか?

このまま円卓の間で最後を迎えるのもいいが、どうせならば悪の王らしく玉座の間でというのも悪くない。

そう思い、この玉座の間にやってきていた。

 

「……アルベド」

 

傍らに控えるNPCを見やる。

彼女はこのナザリックの最上位NPCで守護者統括をしており、ずっとこの玉座の間を守ってきた。

結局、この玉座の間まで敵の進行を許したことはなかったが……。

 

「どんな設定だったかなぁ?」

 

サーバーダウンまではまだ時間があり、そういえば今まで見てなかったと彼女の設定画面を開く。

……長々と書かれたアルベドの設定。

そう言えばアルベドを作ったのは設定魔のタブラさんだったかと思いだし、モモンガは軽く読む程度で最後まで飛ばす。

 

「……ビッチって」

 

そして、最後の行に書かれたその文字。

そう言えば彼は設定魔であると同時にギャップ萌えでもあったと思いだす。

いくらなんでもこれでは可哀相ではないだろうか?

そう思いギルド武器、“スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウン”を使う。

本来ならば専用のツールがなければ他人が設定したものを変えることはできないのだが、これがあれば話は別だ。

仲間の作った物を勝手に変更するというのは少し気が引けたが、どうせ最後だしきっと許してくれるだろう。

 

「……なにか、いれたほうがいいいかな?」

 

ビッチという最後の行を削除し、その開いた行を見て少し考える。

そして、少しの悪乗りが入り。

 

「……モモンガを愛している」

 

と入力する。

 

「……うわぁ、恥ずかしいぃ!!! 馬鹿じゃない俺!?」

 

入力してから急に恥ずかしくなり、身もだえしてしまう。

 

「いやいや、わかるよ? 男ってのは誰だって美女に飢えてるもんだ」

 

「いやでも、タブラさんが作ったNPCに勝手にこんな設定付け加えるなんて!」

 

「最後にいない奴が悪いさ。まぁ、こんくらい可愛いもんだろ」

 

「そうですかねぇ? タブラさん、許してくれますかねぇ?」

 

「俺はタブラって奴じゃねぇからわからんが、たぶん大丈夫だろ」

 

「だと、いいですけど……」

 

と、そこまで言ってモモンガはハッとなる。

今ここにいるのは自分を含めてアルベドとセバス、それにプレアデスたち。

……じゃぁ、今自分が話しているのは?

 

「……あ、あなたは」

 

恥ずかしさに手で覆っていた顔を上げてみると、そこには一人の男がいた。

綺麗な銀髪に碧眼で中世的な顔立ち。血のように真っ赤なロングコートを着込んで、背中には鍔の所にドクロが彫刻された綺麗な銀色の大剣を背負っているその男。

 

「だ、ダンテ、さん?」

 

「よぉ、モモンガ。久しぶりだな」

 

そう言い軽く手を振るその男、ダンテ。

彼はかなり昔に発売されたデビルメイクライというゲームで、主人公を務めた男をリスペクトしているといっていた。

その外見は、以前ネットのイラストで見たが、かなり酷似していると思えた。

 

「お久しぶりです! もう引退されたと聞いていたんですけど、戻ってきたんですね!」

 

「ユグドラシルのサービスが終了するって知ってな」

 

本当に残念だ、そう言いたげに肩を竦めるダンテ。

彼とはかつての仲間、たっち・みーさんとの関係で出会った知り合いだ。

その実力はこのユグドラシル内で最強のプレイヤーの一角であるたっち・みーさんをして「初めて本気で敵対はしたくない、そう思えた相手だ」と言わしめるほど。

それを聞いてネットで軽く調べていたらたっち・みーさんとの戦闘が記録されたものを見つけたので見てみたのだが、自分もまったく同意見だと心からそう思えた。

 

正義馬鹿でどこか騎士のような振る舞いをするたっち・みーさんは、これまた騎士のように盾と長剣を用いた近接戦闘が得意なのだが、ダンテはその戦闘に真正面から打ち合うことができる。

それだけでも十分にすごいと思えるのだが、ダンテの怖いところは近接戦闘だけでなく中〜遠距離での戦闘もこなせてしまう上に、さらには空中戦まで仕掛けてくるというところだ。

 

このユグドラシル内でも確かに“フライ/飛行”という魔法があり走るよりも早く空を飛ぶことはできるが、それはあくまでも長距離移動を目的とした魔法だ。

瞬発的な速さが求められるPVPにおいては長距離移動用の魔法の速さなど、相手にとっては狙ってくれと言ってるような速さでしかない。

しかも上位陣にとっては止まっているような物らしく、恰好の的だとか。

 

しかし、ダンテは“エア・ハイク/空中歩行”という飛行ではなく、空中を駆けることができる魔法の使い手だ。

その魔法は空中に浮いている時に魔力で足場を作り、地上で瞬発的に発揮できる最高速度と同等の速度で移動することができる。

だが、“エア・ハイク/空中歩行”は魔法発動のタイミング的にもバランス維持的にもハイレベルで難しく、高レベルのプレイヤーでもミスをして目標を誤り事故を起こしてしまうことも少なくない。

こと一つのミスが命取りとなるPVPにおいては、使うプレイヤーなど滅多にいないようなネタ魔法の一つとなっていた。

 

……ダンテを除いてだが。

 

ダンテはミスをすることなど怖くないかのようにふんだんに“エア・ハイク/空中歩行”を使用して、陸空ともに縦横無尽に駆け回り相手を翻弄するトリッキーなプレイヤーだった。

時には徒手、時には剣、時には双剣、時には二挺拳銃。

他にもその場の状況に合わせて武器を入れ替え、高度な空中戦まで使用して襲い掛かってくるダンテは、常に上位にいるようなプレイヤー達からも畏怖の念を向けられていた。

 

真正面から正々堂々が信条のたっち・みーさんと、様々な手を使い勝利をもぎ取るダンテ。

性格も戦闘スタイルも対極にいるような二人だが、どういう訳か気が合ったという。

そんなダンテを以前紹介されてフレンド登録こそしたものの、そこまで深い付き合いはなかった。

それでも知り合いと久しぶりに会うことができたということに、モモンガはとてもうれしかった。

 

「……ところで、ダンテさんはどうやってここまで?」

 

と、ここでモモンガはふと気になったことを口にする。

そう、ダンテはどうやってここに来たのか。

だって。

 

「……ダンテさんは、うちのギルドのメンバーじゃないですし」

 

そう言うと、ダンテはニヤリと不敵な笑みを浮かべた。

それはモモンガに対するドッキリに成功させたことへの笑みか、それともギルドメンバーではないことから戦闘態勢に入ったまま、モモンガが指示した“待機”によって動けないでいるNPCの様子を楽しんでのものか。

ダンテはアインズ・ウール・ゴウンに所属していない。しかも、同盟ギルドですらない。

 

アインズ・ウール・ゴウンのギルドの加入条件は2つ。

1つは社会人であること。

そしてもう1つは、異形種であること。

ダンテはその2つ目の条件に当てはまっていないのだ。

だからこそ、ダンテがまだゲームをプレイしていた時も個人的なかかわりはともかく、ギルドへの所属に関しての誘いはしたことがない。

……そもそも当時からすでに個人でギルドを立ち上げていたから、勧誘するという意識すらなかったのだが。

 

ダンテが突然現れたことを考えると何らかの方法で転移してきた可能性が高いが、同じメンバー以外でここに直接転移してこれるものなどいないはずだ。

なぜなら、ナザリック内では特定箇所間以外での転移魔法を阻害しているのだから。

唯一の例外はギルドメンバーには配られている、“リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウン”を所持していること。

その効果はナザリック内のほぼ全ての名前が付いている部屋に、回数無制限で転移できるというもの。

かつてギルドで100個のリングが作られ、メンバーの41人に渡したからまだリングが余っているには余っているが、それをダンテには渡した覚えはない。

 

「正解はこいつさ」

 

モモンガが疑問に思っていると、掌を広げて見せてきた。

その人差し指には門のような装飾がされた、何らかのアイテムと思しき指輪がはめられていた。

 

「……それは?」

 

「こいつは“トラベルゲート/旅の扉”っていってな。こいつの効果は“転移阻害がされているエリアでも1度だけ侵入し、1度だけ脱出することができる”ってなもんだ。簡単に言えば、どこでも転移できる往復チケットってところか、回数限定のな。

こんな地味な形でも、一応“世界級アイテム(ワールドアイテム)”に分類されてるんだぜ?」

 

「ッ!? ワールドアイテム!?」

 

世界級アイテム(ワールドアイテム)、それは ユグドラシルに存在する全アイテムの中でも頂点に位置するアイテム群をいう。

その一つ一つがゲームバランスを崩壊させかねないほどの破格の効果を持つといわれている。

実の所、アインズ・ウール・ゴウンにも11個ものワールドアイテムが存在するが、そのどれもが凄まじい力を持っているのをモモンガは知っている。

その指輪の効果を聞くと、回数制限があり一撃離脱にしか使えなさそうではあるが、使い手次第では戦況を一転させることも可能な力を持っている。

現に今まで誰の侵入も許さなかったこのナザリック地下大墳墓、その玉座の間にこうも簡単に侵入されてしまったのだから。

 

ダンテにこちらへの危害を加える気があればプレイヤーがモモンガしかいない現状、自分のホームグラウンドとは言えども危なかっただろう。

たっち・みーと互角以上に張り合えるということはダンテのスキル構成はガチ戦闘向きということであり、沢山の呪文が使えるとは言えども(ガチ勢と比べて)戦闘向きのキャラではないこのモモンガでは圧倒的に不利なのだ。

おそらくレベルもモモンガと同様にカンストしていることだろうし、ダンテが久しぶりのログインで多少腕が落ちていることを考えてもまだ負ける可能性の方が高いかもしれない。

アイテムの使用時に予兆がなかったことを考えると隠密性にも優れているようだし、ダンテがその気ならば今この瞬間すでにアインズ・ウール・ゴウンが陥落してしまっていても不思議ではない。

そう考えると、モモンガの背中にヒヤリと冷たい汗が流れる。

……実際に流れることはないからイメージで、ではあるが。

 

「……どうやら、お気に召してもらえたようだな」

 

こちらの様子に満足したのか、くつくつと笑う。

 

「は、ははは。い、いやぁ、なんというか。貴方と敵対していなくてよかったって、心底思いましたよ」

 

そう言い乾いた声で笑うモモンガ。

お互いの異なる種類の笑いが玉座の間に木霊する。

 

「……っと、悪戯もうまくいったところで、ちょうど時間だな」

 

「え? ……あ、ほんとですね」

 

言われて視界の端に移る時計に目をやると、残り時間が1分を切っていた。

最後の最後、ダンテのせいで今までの思い出に想いを馳せることもできなかったが、それでも「こんな最後も、まぁ、いいか」と思うモモンガ。

ダンテが来てくれたことで、一人寂しくゲームを終了することもなくなったわけだし。

その点に関してはダンテに感謝してもいいかもしれない。

 

「……ありがとうございます、ダンテさん」

 

「……ま、いいってことよ」

 

そう言い肩を竦める。

そして、何を思ったのかダンテは背中に担いでいた大剣、リベリオンをモモンガに向けて構えてきた。

 

「え? だ、ダンテさん?」

 

「……魔王城の玉座の間で対峙する二人。いいシチュエーションじゃねぇか。

湿っぽいのも性に合わねぇし、最後くらいかっこよく決めてみねぇか?」

 

「……はは、いいですね」

 

そう言えば、ダンテは雰囲気というかシチュエーションに凝る人だったと思い出すモモンガ。

時間はないが、最後の最後に悪役ロールをするのも悪くない。

そう思い一度目を閉じて自分の中で最凶の悪の親玉、魔王のイメージを作り上げる。

そしてゆっくりと目を開き……。

 

「……よくぞここまで来たな、ダンテよ」

 

さっきのドッキリのお返しとばかりに、“漆黒の後光”と“絶望のオーラX”を併用して物々しい雰囲気を出し、威厳と迫力に満ちた態度を持って自分と対峙するダンテを迎える。

“漆黒の後光”はともかく、本来ならば“絶望のオーラX”などを使えば大抵の相手は即死なのだが、ダンテはまるでそよ風にでも当たっているように心地よさそうな笑みを浮かべてこちらを見ていた。

 

「……魔の血を引く貴様が、魔の王たる私に牙を剥くとはな。どうだ? 今からでも私の配下に加わる気はないか? さすれば世界の半分を貴様にくれてやってもよいぞ?」

 

とある有名なゲームのボスの台詞を混ぜる。

それを面白いと思ったのか、ふっと笑うダンテ。

 

「……世界の半分ねぇ。魔王なんていう、悪の親玉にしてはお優しいことじゃねぇか。本来なら俺は貰えるもんはもらう主義だが、そいつはいらねぇな。

周りから媚び諂われる生活も悪い気はしないが、毎日そればっかりじゃ退屈だ。人生は刺激があるからこそ楽しい、だろ?」

 

それに、そう言うと全身から青白い魔力が炎のように勢いよく噴き出す。

 

「昔、親父が守ったこの世界を、みすみすお前にくれてやるのもいい気がしねぇからな!」

 

“魔力解放X”

自身の魔力を常時放出することで全ステータス、全耐性を向上させる“魔剣士”のスキル。

この状態だと、普通に殴ってもゴーストといった物理攻撃を無効とするスキルを常備しているモンスターにさえダメージを与えることができる。

ダンテの強大な魔力とモモンガの死のオーラがせめぎ合い、渦を巻く。

 

「……スパーダ、か。魔界最強の魔剣士と謳われながらも、魔界を裏切り人間界に組みした反逆者。貴様も父親と同じく、矮小なる人間共の味方をするつもりか?」

 

ダンテがデビルメイクライでの設定を口にしたことに乗ったのか、モモンガも話を合わせてくる。

かなり昔の作品なのだが、よくもまぁ知ってるものだと感心する。

魔王の演技もさることながらその知識深さには、ダンテは盛大な拍手でもって称賛の意を示したいと思えた。

だが、今はそんなことよりも今この瞬間を楽しむことを優先する。

オーディエンスの誰もいない、ダンテとモモンガによるこの最初で最後の即興劇を。

 

「人間だって捨てたもんじゃないぜ? まぁ、お前に言ってもわからねぇだろうがな。……さて、そろそろお喋りはお終いだ。 “C'mon!” かかって来な!」

 

モモンガ相手には意味のない挑発スキルを使いつつ、今まさに飛び掛からんとリベリオンを腰だめに構える。

 

「……ふっ。貴様のその選択、後悔させてやろう!」

 

モモンガはスタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを掲げ魔法の発動準備に取り掛かる。

いざこれから最終決戦が始まるという、そんな張りつめた空気がこの場を埋め尽くす。

 

その時、サービス終了までとうとう残り10秒を切ってしまった。

二人はその体勢のまま、時間が止まったかのように動かない。

 

「……さようなら、ダンテさん。また、いつかどこかで」

 

「……あぁ、さよならだ」

 

この最高にかっこいい一枚絵のような状態で終わることができるかと思いきや、最後の最後でロールを崩してしまうモモンガに、ダンテは苦笑しつつ返事を返す。

 

“また、いつかどこかで”

 

それが本当に来るのかはわからない。むしろ、そんなもの来ない可能性の方が高いだろう。

一度サービスが終了してしまえばこの姿はもう使えない。

せめて名前を同じにしようとも、有名どころの名前ならサービス開始当日から他のプレイヤーが使用して使えなくなってしまうということもある。

リアルでの知り合いで、一緒にゲームを始めるなら話は別だが、ダンテもモモンガもリアルでの関わりはない。

つまり今この時こそ、二人が一緒に遊ぶことができる最後の瞬間なのかもしれないのだ。

 

……それでも、同じこのゲームを楽しんだ者同士、最後を共に迎える者同士。

またいつかの再開を祈って、ゲームを終えたかった。

 

 

23:59:55

 

 

23:59:56

 

 

23:59:57

 

 

23:59:58

 

 

23:59:59

 

 

……そして、時計のカウントがサービス終了時間である24時を迎える。

 

 

00:00:00

 

 

 

 

 

 

 

 

00:00:01

 

 

00:00:02

 

 

00:00:03

 

 

00:00:04

 

 

00:00:05

 

 

「……あれ?」

 

「……ん?」

 

声を出したのは同時だった。

 

「……おい、モモンガ。今何時だ?」

 

「え、えっと、0時……あ、今30秒になりました」

 

「……俺の方の時計が狂ってる、ってわけじゃなさそうだな」

 

終了時間の延長があったのかと、二人して頭を捻る。当たり前だが、さっきまでの最終決戦の雰囲気はもはや存在しない。

お互いが発動していたスキルを止め、いったい何が起こったのか思案する。

……そこで。

 

「モモンガ様、御下がりください!」

 

「へ?」

 

「あ?」

 

「この男は危険です! 私たちも援護いたします!」

 

どこか焦っている様子で、ダンテとモモンガの間に入ってきた一人の人物。

それは漆黒の翼をもつ妖艶な美女。

このナザリック地下大墳墓の階層守護者統括たる最上位NPC。

 

「……アル、ベド?」

 

「……こいつは一体、む?」

 

いきなり勝手に動き出したアルベドに、これは一体どういうことかと表情を歪める二人。

しかし、いきなり動き出したのはアルベドだけではなかった。

 

「……これはこれは」

 

ダンテを取り囲むように位置取り、隙を逃さないように注視してセバスやプレアデスたちが構えていた。

ダンテはいやに冷静な心持ちで周囲を見回す。

反対に、モモンガは少し戸惑っている様子だった。

 

「お、俺は何の指示もしてないぞ!?」

 

「ご命令に背き申し訳ございません。処罰は後程いくらでもお受けいたします!

ですが、かの至高の御方であろうともこの男は危険すぎます! ここで必ず始末しておかなければ、今後の計画に支障をきたします!」

 

「はぇ!? な、何を!? ……何の話をしている?」

 

……少し前まで驚き戸惑っていたモモンガだが、一転して冷静になりダンテと対峙していた時の魔王のような雰囲気を出していた。

 

「先ほどおっしゃっていたではありませんか。“世界の半分を”と。つまり、世界を征服されるおつもりなのですよね?」

 

「……」

 

それを聞いてモモンガはダンテにちらりと視線を向ける。

俺が知るかというように、ダンテは少し肩を竦めていた。

 

「モモンガ様! ご無事ですか!?」

 

どうしたものかと考え込んでいると、勢いよく玉座の間の扉が開かれる。

そこから現れたのはこのナザリック地下大墳墓、その各階層を守る守護者たちだった。

 

「私が先ほど“メッセージ/伝言”を送っておいたのです!」

 

と、どこか得意げに言い放つアルベド。

なるほど、確かに短いながらもこれだけの時間があれば彼らに“メッセージ/伝言”を送ることはできるだろう。

……しかし、問題なのはそのことではなく、NPCのはずの彼女が自分の意思で判断して動いていたという事実。

 

「……異常事態、発生か」

 

「みたいだな」

 

このような事態だというのに、二人はいやに冷静な態度をとっていた。

特にダンテに関しては、周囲からゲームのスキルとは違う“本物”の殺気を一身に浴びているというのに、そんなものどこ吹く風という様子。

そんな周りなど気にせず、顎に指を当てて考え事をしている様子。

そこで……。

 

「……くはっ! ははは、はぁっはははははははは!!!!!!!」

 

唐突な高笑いに一体何事だとモモンガが目を向けると、ダンテは口角を吊り上げ腹を抱えんばかりの大仰な態度で笑っていた。

この異常事態の中、さもそれが面白いとでも思っているようなダンテの様子に、モモンガは少し呆気にとられてしまう。

しかしそれと同時に、自分だったら絶対狼狽えてオロオロしてるだろうなと、そんな状況でもないのにモモンガは堂々とした振る舞いのダンテに少しだけ尊敬の眼差しを向けていた。

ひとしきり笑った後、ダンテはどこか演戯掛かった態度で恭しく一礼をする。

 

「熱烈な歓迎痛み入る、ってか? 特に美女に美少女まで、俺に熱々の視線を送ってきやがる。 はっ、火傷しちまいそうだぜ!」

 

「えっと、ダンテさん?」

 

「悪いなモモンガ、せっかくの男同士のタイマンだってのに。こんなに外野がいちゃあ、ムードってもんがねぇ。 今日は御挨拶程度ってことで、このくらいでお暇させてもらうぜ?」

 

『とりあえずは、この場から退散させてもらうぜ? また後でメッセでも送ってくれや』

 

『え? は、はい! ダンテさん、お気をつけて!』

 

突然“メッセージ/伝言”が送られたことに驚くが、すぐにダンテに向けて返す。

と、ここでモモンガは咄嗟に“メッセージ/伝言”使っていたが、今までとは違いなぜか感覚で使うことができたことにこれも異常の一端なのかと考えた。

 

「逃がすものですか!」

 

“メッセージ/伝言”で会話をしているところのダンテに、アルベドが手をかざす。

それを合図とし、集まっていた守護者たちは一斉に攻撃を開始する。

飛んでくる炎、氷、雷と様々な属性の魔法を見てダンテは笑みを強めた。

 

「……ハッハァ!!! ぬるいぜ!!!」

 

勢いよくジャンプし、“エア・ハイク/空中歩行”を使い高速でその場から離れる。

瞬間、ダンテが先ほどまで立っていたところに魔法が着弾し大爆発を引き起こす。

その爆発により発生した多量の煙の中から二つの影が飛び出てきた。

 

「てりゃぁぁあああ!!!」

 

手に持つ鞭による鋭い一撃を放つのは、緑と青のオッドアイを持つまだ幼い外見のダークエルフ。第6階層の守護者、アウラ。

その幼い外見とは裏腹に、放たれる一振りは当たれば容易に人の肉など引き裂いてしまうだろう。

しかし、その鞭をあろうことか片手で掴み止めるダンテ。

 

「うそ!?」

 

「オオォォォォォォ!!!」

 

雄叫びを上げて向かってくるのは四本の腕にそれぞれ異なった得物を構える、昆虫を思わせる外見の白銀の蟲王。第5階層の守護者、コキュートス。

それぞれの腕に構えられた得物による一閃。

一つ一つが間違いなく必殺を誇るだろう威力。

 

「堕ちやがれ!」

 

「ッ!? グオォォォォ!!!」

 

「こいつはおまけだ!」

 

「えっ? う、うわぁぁ!!!」

 

しかし、たった一振り。

四つの得物が交差する一瞬を狙ったリベリオンによる上段からの一撃。

コキュートスの必殺の四撃がその力を発揮する前に強引に発動を止め、それだけに留まることなく地面まで叩き落とした。

ついでとばかりに、握っていた鞭を大きく振りかぶってその使用者ごと叩き落されたコキュートスめがけて投げつける。

そしてダンテはクルリと体を捻り、爆心地から離れた所に無事着地を果たす。

 

「ぶっ飛びな!」

 

「っ!」

 

すかさず懐から白と黒の二挺拳銃、エボニー&アイボリーを取り出して振り向きざまに連射。

放たれた魔力弾が着地を狙って迫っていた体格のいいサングラスをした執事服の竜人、セバス・チャンを迎撃する。

銃口を向けられた瞬間、セバス・チャンは咄嗟に腕を硬化させてガードする。

一発一発の威力でいえば、竜人としての耐久力に加えて硬化させたことで十分耐えられる威力だっただろう。

しかしその銃口から吐き出された量は、咄嗟に耐えられる許容を越えていた。

まさに嵐のようと形容するのがふさわしい魔力弾の数に押し負け、そのまま吹き飛ばされて壁に叩きつけられた。

 

「……ヒュー、イカしてるぜ!」

 

攻撃の第一波が止んだ時、ダンテは手に持った愛銃から感じた今までのゲーム的振動ではなく、“リアルな反動”に感動した。

しかし、いつまでも感動に浸っているわけにはいかない。

ここはダンテにとってアウェーなのだから。

 

「“トラベルゲート/旅の扉”発動! 場所は俺のギルド、“デビルメイクライ”!」

 

「させますか! “ディメンジョナルロック/次元封鎖”」

 

そう言うのはスーツを着こなしたインテリ風の悪魔。第7階層の守護者、デミウルゴス。

魔法が発動された瞬間、空間が完全に遮断される。

これにより、全ての転移魔法は意味をなさなくなった。

 

……しかし、ダンテが使用したのはただの転移魔法ではない。

 

「お集まりの皆様、今宵はこれにて失礼させてもらおう! また別の機会、満月の綺麗な夜にでも皆で舞踏会でも開こうじゃねぇか!」

 

ダンテは不敵な笑みを浮かべて、楽しげに声高々に言い放つ。

挑発スキルなど使ってないはずなのだが、その物言いが全体の怒りを逆なでしたようだった。

守護者たちは次の攻撃に向けて準備を始める。

 

『またな、モモンガ!』

 

『はい!』

 

そう最後に“メッセージ/伝言”を送ると、“トラベルゲート/旅の扉”の指輪は一際眩しい輝きを放つ。

守護者たちの攻撃が放たれダンテに命中するその瞬間、ダンテは不敵な笑みを浮かべたままこの場から姿を消した。

 

「そ、そんな!? ……くっ、逃げられてしまいましたか、口惜しい! しかし、奴も仮にも同じ悪魔の血を引いているというのに我らに、ひいては至高の御方に敵対するとは。まったくもって嘆かわしい!」

 

自身の使用した絶対と信用のある魔法が意味をなさなかったことに悔しそうに言うデミウルゴス。

彼は最上位悪魔という種族柄、半分とはいえ悪魔の血を引いており同胞ともいえるダンテが、至高の御方に牙を剥くという事態に他の守護者以上に憤りを感じていた。

……そもそもその考え自体が勘違いでしかないのだが、恐らくこれからも気付くことはないのだろう。

 

「……」

 

そんなデミウルゴスを横目に、モモンガはダンテがうまく逃げてくれたことに内心ほっとしていた。

 

(ダンテさん。きっと、また、会いましょうね)

 

何が起こっているのかまだよくわかっていない、そんな異常事態の中。

しかし、不謹慎にも再びダンテと出会えるだろうという予感に、少しだけ胸を躍らせた。

 

(今は皆を諌めるのが先か)

 

もしかしたらまだ遠くに入っていないかもしれない、そう言い追った方が良いのではと提案している守護者たちを見て、小さくため息をこぼす。

 

「……騒々しい。静かにせよ」

 

そして、モモンガは再び魔王ロールを始めた。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

「……っと。おぉ、無事戻って来れたか。ちゃんと発動してくれるかは賭けだったが、失敗しなくてよかったぜ」

 

転移して俺が次に見たのは俺のギルド“デビルメイクライ”の一階。

賭け事に関しては滅法弱い本来のダンテを思い出してそこまで似なくてよかったと、役目を終えて崩れ落ちていく“トラベルゲート/旅の扉”を見ながらホッと安堵した。

 

「さてと、どうしたもんかねぇ」

 

一騒ぎから抜け出して一人になったところで、この異常事態について思案する。

時間になってもサーバーダウンが起こらなかったこと。

NPCが自分の意思を持ち行動したこと。

そのNPCがゲームでのスキルとは違い、本物の殺気と思えるものを向けてきたこと。

そして。

 

「……この“匂い”」

 

視線を机の上、俺が出ていく前に置いておいた飲みかけのウィスキーに向ける。

時間が経ったせいか、入れていた氷はほとんど解けてしまっていた。

手に取って嗅いでみると、それからは確かにアルコールの“匂い”が感じられた。

 

「……ん」

 

意を決して口に含んでみる。

すると、氷が解けて薄くなってしまっていたが、口の中に広がったのは間違いなくウィスキーの味だった。

 

「……ふぅ」

 

グラスの中を一息で飲み干し、残っていた氷を噛み砕く。

喉の奥を通っていく冷たい感触の後、アルコールによる火照りが生まれた。

空のグラスを机の上に置くと、俺は椅子に座り机の上に足を乗せてそのまま目を閉じる。

 

「まぁ、なんとかなるだろ」

 

結論。ごちゃごちゃ考えるのも面倒だし、とりあえず成行きに任せることにした。

昔流行った二次創作の定番で異世界転移物ように異世界に転移したのだとしても、両親はすでに他界し兄妹も嫁もいない俺にとっては元の世界にそれほど未練もない。

むしろ今まで楽しんでいたゲームの世界に来ることができたのだとしたら、いろんな美酒や美食を味わうという夢も叶えることができるというわけで、願ったりかなったりというやつだ。

 

(とりあえず、本来のダンテみたいに便利屋でも開いてみるか)

 

ギルドの維持費ということで金貨や宝石といった全財産のほとんどを投資してしまったことで、先立つものもない状況。

リアルでは忙しすぎて碌に遊ぶ暇もなかったから働きすぎは遠慮したいが、少なくとも飯が食えるくらいは金が欲しいところだ。

なんにしろ、仕事の後でログインしたこともあり、さらにはこんな事態になっていろいろと疲れたことだし、全ては明日考えることとしよう。

そう思い、俺は睡魔に誘われてそのまま眠りに落ちていった。

 

 

 

〜Fin〜

 

-2ページ-

・設定

 

名前:ダンテ

性別:男

所属:デビルメイクライ

役職:ギルドマスター

レベル:100

種族レベル:

半人半魔lv15

クラスレベル:

魔剣士lv15、ガンスリンガーlv15、ウェポンマスターlv15、ワールドチャンピオンlv15、軽業師lv15、ガーディアンlv10

属性:中立(カルマ−20)

住居:???

趣味:珍しいor面白いアイテム収集(レア度関係なく)

 

・備考

昔放送されていたアニメ、デビルメイクライを見てからダンテに憧れ、ユグドラシルではダンテの外見を設定。

「ダンテだったらこうするかな」と、外見に合わせてダンテの行動を考えてロールしている。

主に使っている武器は魔剣リベリオンと魔銃エボニー&アイボリーだが、特に戦い方にこだわりがあるわけでもないため、その時々(気分であったり相手に合わせてであったり)で武器を入れ替えて闘い方を変えていく。

ゲームでまで他人と足並みそろえてというのは面倒に思うタイプで、一人でギルドを立ち上げてからユグドラシル終了まで、ダンテ以外にギルドメンバーを作ることはなかった。

とは言え、誰かと一緒にプレイするのが嫌いなわけでもなく、レイド戦やイベント時には他のプレイヤーと共闘して挑むこともあった。

リアルでの仕事が忙しくなって引退していたが登録自体は解除してなかったため、メールにユグドラシルが終了するという知らせが届いた。

それを切っ掛けに最後にもう一度くらいはとユグドラシルに戻ってきて、その結果、今回の事件に巻き込まれることに。

 

 

(人間関係)

・たっち・みー

世界大会の決勝で戦ったことがある仲。制限時間いっぱいまで決着がつかず、審査により僅差でたっち・みーに軍配が上がったという、これまでの世界大会で類を見ない結果となった。

一緒のギルドには入っていなかったが、一緒にイベントに参加したり競い合ったりと、付き合い自体は結構あった模様。

 

 

 

 

説明
今回はまた新しい短編ものになります。
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