Triangle Goddess! 第12話「孤高の戦い」
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 エルダーは、一人魔物の軍勢と戦っていました。

「ジーン、ゲルダ、ヴィアには見捨てられてしまったが……俺は、負けるわけにはいかない!」

 襲い掛かってくる魔物には、様々な種類がいました。

 鎌のような顎を持つ蜘蛛の魔物、シザースパイダーや、翼を持つ石像型の魔物、ガーゴイルなど……。

 中には、魔界からやって来た「悪魔」という存在も混ざっていました。

「悪魔もいるか! だが、俺は全て斬り伏せる!」

 他の兵士達も戦い、一般人達は全員避難しているとはいえ、戦わなければ町は破壊されてしまいます。

 そのため、エルダーは只管に魔物を剣で切り裂いていました。

「パルスブレイド!」

 剣から放たれた衝撃波が、魔物を一網打尽にしました。

 しかし、魔物の数は減る事はありません。

 むしろ、どんどん増えていくばかりです。

「……駄目だ、追い付かない! せめて、ジーン達がいれば……」

 しかし、三女神はエルダーの無謀な行動を見て、彼を見捨ててしまいました。

 そのため、今更言っても加勢はしないだろう、とエルダーは思い、

 三女神のところには行きませんでした。

 

 しかし、この選択が、後のエルダーの運命を大きく揺るがす事になるとは、

 まだ、気付いていませんでした……。

 

「どうやら、ここまで減らせたようだな」

 エルダーの活躍によって、魔物の数は減っていきました。

 兵士達の力もあったかもしれませんが、魔物は数時間前の5分の1に減少していました。

 残っている魔物は、エルダーにとっては雑魚でしかありませんでした。

「後は雑魚のみか……。さあ、来い!」

 エルダーが剣を掲げた、その時です。

 

「オォーーーーッホッホッホッホッホッホッホォーーーー!!」

「!?」

 突然、空から女性の高笑いが聞こえてきました。

「だ、誰だ!!」

 女性はふわりと、地上に降り立ちました。

 その女性は、長く美しい黒髪と、真紅の瞳を持っており、

 身体には非常に面積が少ない服を纏っていました。

 それだけならただの妖艶な女性に見えますが、その背にある蝙蝠のような翼と、

 頭に生えた鋭利な角から、女性が人間ではない事は明らかでした。

「お前は……淫魔か!」

「そうよぉ〜私はサキュバス、誘惑の淫魔よ。あなた、いい男ねぇ。誘惑したくなっちゃったわ」

「くっ! させん!」

 エルダーはぎりっと歯を食いしばり、剣を持つ手も強く握りしめました。

「お前を倒し、この町を守ってみせる!」

「できるものならやってみなさ〜い!」

 いつまでもふざけた態度を取るサキュバスに、流石のエルダーも苛々してきたようです。

 思わず斬りかかりそうになりましたが、理性がそれを抑えました。

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「さぁ! いっくわよぉ〜! ド・ゲイト・デ・テラ・ド・テネブ!」

 サキュバスが呪文を詠唱すると、闇の槍が飛んできました。

 エルダーはそれを剣で切り裂きました。

「せいやぁっ!」

 エルダーの剣技がサキュバスを攻撃し続けます。

 サキュバスは物理攻撃にはあまり強くないため、

 人間であるエルダーの攻撃でもそこそこのダメージを与えられます。

「うふふっ、私の必殺魔法、い・く・わ・よ! ド・ポプル・ド・ニイス・デ・ハンズ!」

 そう言うと、サキュバスは呪文を詠唱し、エルダーに向かってウィンクをしました。

 淫魔の十八番の魅了魔法、テンプテーションです。

「く……っ」

 それを受けたエルダーは眩暈を患いましたが、エルダーは振り払いました。

「あらぁ〜、あなた意外に強情なのね。しょうがない……ならば、こうしてやるわ!」

 サキュバスの身体から、闇の魔力が吹き荒れました。

 それは、彼女が本気を出した証なのです。

 

「本気を出してくるか! ならば、こちらも本気を出す!」

 エルダーは剣を構え直しました。

「あっはははははは、楽しいわねぇ。じゃあ、再開するわよー!」

 そう言い、サキュバスは闇の魔力をエルダーに放ちました。

 エルダーはそれを避け、剣で切り裂きました。

 

 しかし、サキュバスは魔法に特化しているとはいえ、れっきとした悪魔です。

 その身体能力は人間を上回っていました。

「ぐっ……」

「あらあら、反撃しないの?」

「反撃はするぞ……だが……!」

 状況は徐々に、サキュバス側に傾いていきました。

 エルダーは何とかサキュバスを倒すために、剣を持って彼女に突っ込んでいきました。

「いくぞ! インフィニット!!」

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 そしてエルダーがサキュバスの懐に潜り込み、疾風の刃でサキュバスを切り裂きました。

 まさに、肉を切らせて骨を断つ行為です。

 サキュバスは大ダメージを受けてしまいました。

「……わ、私にだって、淫魔としての誇りはあるんだからぁ!」

 そう言うと、サキュバスは右手に闇の魔力を溜めました。

「デ・ロタ・マ・ギ・ド・テネブ!!」

「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 そして、全力で放った闇の魔力が、エルダーを貫きました。

 

「ふふふ……楽しませてもらった、わ、よぉ……」

 そう言うと、サキュバスは塵となって消えました。

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「すまない……ジーン……ゲルダ……ヴィア……」

 強力な闇魔法を受けたエルダーの身体から、大量の血が流れ出しました。

 このままでは、エルダーは命を落としてしまいます。

 

「……人間が……神を守るなんて……逆、だよな……。でも……彼女達が無事なら……俺……は……」

 エルダーは三女神を守れた事への安堵を胸に、息を引き取ろうとしていました。

 

 その時です。

 天から、一人の女性が降臨しました。

 彼女は煌めく黄金の鎧を身に纏い、長く美しい金髪をなびかせ、聖なる槍を掲げていました。

「我が名は((戦乙女|ヴァルキリー))。オーディン様の命で、魂を選定するために降臨した」

 

「い、戦乙女だ……」

「戦乙女が、降臨された……!」

 人間もモンスターも、その人間離れした美しさに、思わずその動きを止めてしまいました。

 そう、この女性こそ、アールガルドの主神オーディンに仕える女神、ヴァルキリーです。

 アールガルドでいつか来る最終戦争「ラグナロク」に備え、

 戦死者の魂を「アインヘリアル」として選定します。

 また、不死者や悪魔など、負の陣営に属する魔物達を打ち倒す役目もあります。

 

 ヴァルキリーは呼吸を止めようとしているエルダーの前に現れ、問いました。

「お前はよく戦い抜いた。悪魔と戦い、これに勝利した。

 だが、お前も悪魔に攻撃され、死に瀕している。問おう……死してもなお、生きたいか?」

「……頼、む……」

 エルダーは、息も絶え絶えに小さな声を発しました。

 三女神に謝るために……ヴァルキリーの問いを、承諾しました。

 

「……承諾した。お前に新たな生を与えよう」

 ヴァルキリーがエルダーの身体から魂を抜き取ると、

 彼女は光の翼を生やし、エルダーの魂と共に神界に去っていきました。

説明
怒涛(?)の展開になっていきます。
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