マイ「艦これ」「みほちん」:序章(改3.4)<白い海> |
『ワタシモ、カエリタイ……』
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マイ「艦これ」(みほちん)
序章(改3.4):<白い海>
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白い海。大荒れの日本海。
そして激しい吹雪。容赦なく吹き付ける風と高い波。
もはや海上の視界はゼロに等しいが空を見上げれば多少は見通しが利く。
それでも、そこにあるのは重苦しく覆い被さる雲ばかり。
時折、風が弱まる。
吹雪の間から思い出したように差し込む幾筋の日光。
海面に揺れ動く水面(みなも)は、どす黒いが白波はキラキラと煌(きら)めく。
揺れる波間に、いくつかの影。
艤装を付けた少女たち、艦娘だ。
人と同じ大きさでありながら実際の艦船と同じ能力を持つ。帝国海軍の切り札である。
しかし、この天候で艦娘も陣形を維持することが困難だ。強風と吹雪で互いに接近することが難しい。
そんな艦娘たちの中央に居る旗艦。軽巡洋艦の艦娘だ。
茶髪で、やや長身の少女。
「冬の海が距離を取らせまいと意地悪しているかしら」
思わず呟く彼女。
「もし電探があっても、これじゃダメね」
確かに、この荒天では方向や距離感が直ぐに失われるだろう。僅かな判断ミスが艦同士の接触を招き最悪、遭難を誘発しかねない。
彼女は実戦経験も豊富だったが今日は経験の浅い艦娘を多く率いていた。
そのことに不満は抱かなかった。
(これも任務だから。ただ、あの参謀だけは……)
少し離れて並走していた駆逐艦が叫んだ。
「感あり!」
「ちっ」
と、内心舌打ちするも少女は冷静に発令する。
「回避行動!」
雑音に混じって無線の声が全体に伝わる。すぐさま全員が行動する。
数名の艦娘が回避した直後に水柱が立つ。
旗艦の少女は確認した。
「被害は?」
「ありません!」
「敵か」
少女は呟く。どうやら近い。
彼女は軽巡洋艦、特に重雷装艦に改装され本人も誇らしかった。
しかし、この天候では魚雷の照準はおろか発射すら困難だった。
今回は訓練も兼ねた6人の艦隊だ。だが途中から天候が急変した。
(もし小編制だったら回避しやすいのに)
ふと、そんなことも考えた。
「フッ、何を今さらね」
思わず呟く。何を悔いても始まらない。
彼女たちは何度か交戦を繰り返しつつ一人も脱落者を出さずに耐えてきた。それは彼女の経験の賜物と言えた。
誰も弱音を吐かず必死に航行を続けているが既に全員ボロボロだ。
暴風雪が弱まった一瞬、再び駆逐艦が叫んだ。
「右舷後方!」
旗艦が再び指示を出す。
「射てる子は攻撃! 狙わなくて良いから」
『はいっ』
後方の艦娘たちが一斉に半身を翻(ひるがえ)して魚雷を発射する。無照準の直接攻撃だ。
やや距離を置いて前方の艦娘たちも続けて一斉に魚雷を放つ。
旗艦の彼女は、その方法で佐世保沖で敵を沈めた経験があった。いざという時の為に、それを教え込んでいた。
だが残念ながら敵への影響は無かったようだ。
「甘くはないか」
舞鶴の海。この海域の敵は手練れだ。彼女はそれを痛感した。
そして攻撃したことで、こちらの位置を相手に知らせてしまった。すぐ敵の反撃を受け始める。
「回避、回避!」
再び行動する艦娘たち。叫び声と同時に彼女たちの周りには、いくつもの水柱が立つ。
艦娘たちは諦めない。必死で反撃を試みる。
だが明らかに実戦経験が乏しい。さらに、この大荒れの海上では攻撃どころではない。自らの体勢維持だけでも精一杯だ。
(厳しい)
指揮する彼女は、つい心中で弱音を吐く。
(条件が悪過ぎる)
不慣れな者に、この荒天は衝突や同士討ちの危険すらあった。一部の駆逐艦娘は不安そうに耳を澄ませ次の指示を待っている。
そのとき彼女たちの北方に黒い船団……敵本体が見えた。
(深海棲艦)
誰かが呟く。
彼らは、この荒天でも臆することなく次々と攻撃を繰り出している。その安定した攻撃振りは冬の海での実戦経験の多さを感じさせた。
(くっ)
旗艦の艦娘は焦った。
部下の艦娘たちには悪条件が重なっている。経験不足に加え装備も不十分だ。
その焦りが伝わったのか一人の駆逐艦が叫んだ。
「隊長!」
ハッとしたように旗艦の少女は笑顔を作った。
「まだ大丈夫!」
凍てつく吹雪の中で彼女は反省した。
(弱気になっちゃダメだ)
次の瞬間、敵の魚雷が二人の間近で爆発した。艦娘たちが叫ぶ。巨大な水柱で再び隊列が乱れていく。
少女は叫んだ。
「皆、無事?」
「大丈夫ですっ!」
だが部下の反応は弱々しかった。
(歯がゆい)
こんなに悔しいのは初めてだった。
そもそも、あの作戦参謀の下だから余計に焦るのだろうか?
(いや、そんなことはない)
なぜか必死で否定する自分。だめだ今は戦闘中だ。集中せよ!
そのとき無線担当の駆逐艦が叫んだ。
「司令部より入電……撤退です!」
「遅い」
旗艦は複雑な表情を見せたが躊躇している暇はない。大きく頷いた彼女は離脱を指示。駆逐艦たちは慎重に反転を試みる。
しかし吹雪の間隙を縫って再び激しさを増した敵の砲撃と雷撃が部隊の撤退を阻む。そして数発の魚雷が彼女たちの周りで幾重もの巨大な水柱を作る。
歯を食いしばりながら必死で回避運動を続け直撃を避ける艦娘たち。
数発の魚雷に続いて誰かが叫んだ。
「注意! ……ミサイル?」
「!?」
次の瞬間、上空から行く筋もの光軸が彼女たちをかすめ、大きな水柱が上がる。
「!」
そのとき誰かの声にならない叫びが響き、部隊全体に動揺が走った。
「隊長!」
旗艦の艦娘が徐々に白い海へ沈んでいくのが見えた。
(狙われた!)
周りの駆逐艦は異変に気付き慌てた。
「誰か! 早くっ」
数名の駆逐艦が救援のため近づこうとするが敵の猛攻は激しさを増し近寄ることも出来ない。
状況を把握した敵も互いに合図をして残された艦娘たちに近づく。そして弄ぶかのごとく直撃弾を意図的に逸らして部隊を分断させ始めた。
弾幕の向こう側に分断された旗艦は留まることなく白い波間に沈み行く。
一瞬の晴れ間。風と吹雪が弱まる。
残された艦娘たちは波間に傷付いた隊長の姿を見た。その艤装からは火花が散り額から赤い筋が滴り落ちる。
誰かが叫ぶ。
『隊長!』
(深手を負ったな……これが轟沈か)
もはや自分も、どうすることも出来ない。体の各部が機能を停止し回路が分断されていく。
だが彼女の瞳には苦悶ではなく受容する安堵の表情が見えた。
(これで終わる)
それは痛みや悔しさよりも不思議な気持だ。
『隊長ぉ!』
部下たちの声が遠ざかる。
だが突然、彼女は我に返ったように大きく腕を空へ伸ばした。完全に水没する直前だった。
「……!」
他の艦娘の名前か、誰かの名前を叫んだようだった。
そして急に哀しい表情を見せた。
見守るしかない艦娘たちには隊長の情念のような……何か抑えられていたものが外れたようにも感じた。
しかし直ぐに大きな波が覆い被さり彼女の姿は消え去った。あっけない最期。そして灰色の天海が吹雪の中で空しく広がる。
残された駆逐艦たちは吹雪の向こうに幾つもの黒い群れを見た。それは彼女たちが初めて間近に相対する敵の本体。
しかし旗艦を失った艦隊に反撃する気力は失せていた。敵の高速艦は遠巻きにしながら徐々に退路を塞いでいく。
手出し出来ない少女たちは、ただ青ざめ互いに手を取り合ってジッとしているだけだ。
もう救われる道はないのか?
なにも、
ワカらナイ……
冷たい白い海の中で旗艦の艦娘は手を伸ばしていた。
ナニモ、
ワカラナイ……
同じ単語を呟くように繰り返す。
海中なのに妙な響きと残響がある。
だが暗い水の中。白雪の如く揺れる水泡は何も答えてくれない。
海上では不気味な灯りを点滅させる群れが居た。
彼らは白い海に浮かぶ残された艦娘に徐々に近づく。
恐怖に震える少女たち。もう、正視出来ない。
そこで場面は暗転。
薄暗くなった日本海に少女たちの叫び声が響き渡る。
同時に金属が引きちぎられ擦り合うような音。
それは海中にも伝わってきた。
消え行く自我の中で旗艦だった彼女は呟いた。
アノコタチハ……ヨクヤッタ。
デモ、ワタシハ……
彼女は、よく作戦参謀と意見がぶつかったきを思い出した。
彼には遠慮すまいと思っていた。
それが彼女なりの責任感だった。
『やっぱり……反省すべきね』
薄れる意識の中、彼女は苦笑した。
フフフ……
(これは誰の声?)
彼女がそう思った瞬間だった。
むくむくと別の感情が沸き上がってきた。
押えがたい衝動だ。
ワタシモ、カエリタイ……
冷たい海の底へ沈みつつ手を伸ばす。
マタ……アイタイ。
その後、今回の舞鶴沖海戦の戦果が報告された。
<舞鶴沖:日本海海戦 戦果報告>
軽巡洋艦1:沈没
駆逐艦5:沈没
舞鶴鎮守府 艦隊6人を消失
以上
この戦いは、よくある敗北した戦闘の一つとして記され彼女たちの登録は抹消された。
また、この情報は後の艦娘の作戦資料として利用され終わったことだろう。
彼女の物語は、これで終わる。
誰もが、そう思う。
「大井っちの馬鹿……何で沈んじまったのさ」
彼女は遠くに見える山を見て呟いた。
すっかり日も落ち照明が灯る舞鶴鎮守府。
日中、強かった風も収まり舞鶴の海も凪いでいた。
その埠頭に立つ黒髪の艦娘。
「あんた最後まで参謀に黙って。それで良かったのかなぁ」
そんな彼女を陰から見守る一人の影。
「……」
彼女は背後の気配に気付いていた。
しかし気に留めない振りをして、その場を立ち去った。
その後ろ姿を見送ったのは、もう一人の参謀だ。
彼は黙って腕を組んでいた。
(今回の指揮を執った作戦参謀は解任されるな)
ジッと夜の海を見つめ考えていた。
階級からいえば次に作戦担当指揮官になるのは恐らく自分だ。
だか彼は、それを喜ぶでもなく淡々と受け止めた。
別に、それは目的では無かったから。
眼鏡を軽く押えつつ呟く。
「軍人に人間的感情は不要だ」
自分の中に湧く真逆の感情を押さえ込もうとしている。
それも分かっていた。
そんな矛盾した感情に『人間は不完全な生物だな』と思った。
少し風が出てきた。
彼は再び自分に言い聞かせるように呟く。
「艦娘と過度に交わると人は不幸になる」
そしてコートの襟を立てた。
「良い。これで一つの時代が終わる」
彼もまた埠頭を後にした。
舞鶴の艦娘たちの轟沈。
彼女の物語は、これで終わる。
誰もが、そう思う。
だが、ここから「みほちん」の物語は始まる。
以下魔除け
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禁止私自轉載、加工 天安門事件
Prohibida la reproduccion no autorizada.
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※これは「艦これ」の二次創作です。
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サイトも遅々と整備中〜(^_^;)
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最新情報はTwitter
https://twitter.com/46cko/
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PS:「みほちん」とは
「美保鎮守府:第一部」の略称です。
説明 | ||
某92年冬の日本海。北風と吹雪の中で海戦が行われていた。しかし情勢は一方的に不利だった。 |
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