Dear My Friends!第2期 第7話 めぐみと学歩のお話 |
(午後3時過ぎ インタネ共和国内 城塞都市クリアン 最高裁判所・会議室)
テル側3人の荷物搬入も終わり、一行は会議室のソファに座って紅茶を飲んでいました。これからの細かい旅の打ち合わせ等は、夕方〜夜になるはずのアペンド達の到着を待って行うとして、まず話さなければ行けないのが、やはり、『尾行している3人組』、の事でした。テルは雑談から始まりそうだった流れを止めて、めぐみさんにまずこの事を連絡する事にしました。
テル:えっと、すまん、楽しい雑談の前に、早急に伝えなければ行けない事を先にします
めぐみ:? どうしたんですか?
テル:単刀直入に言う。怪しい3人組にツケられている
めぐみ:! …根拠は?
イアは服の左胸に付けているバッジを自分で指さしました。
イア:その三人組が私たちの検査のお礼としてくれたバッジですが、付けた時点で消えないマーカーが付着してしまう仕掛けなのか、この信号を頼りに私たちをつけているようなのです
テル:しかもその三人組、イアの話では、イアがいた、ミクさんやルカさんのあっちの世界の物品と同じ形の検査機械を持っており、正直怪しさ1000%だそうです
イア:『私』にバッジをくれた事を考えても、目的は私でしょうね
リン:私も彼らを観察していて、そんな気がしました
テル:検査が終わって別れてから姿を見ていないので、現時点の確証は持てないが、相手も変装している可能性も高く、どこから来た人物かもわからないため、ここのゲート記録を見てもダメでしょうが、既にこのクリアンにいると考えてもおかしくないでしょう。すみませんが“警備”を厳しくしてもらいたいのだが…
めぐみ:いや、それは構わないのですが、なんでそんな簡単に“検査”なんてさせちゃったのですか?
テル:不覚でしたが、その検査自体、極簡単な事であり、特に実力行使する気配もなかったので、ついうっかりしました。街の前だったので、早く先に進みたかった事もあります
めぐみ:ふむ・・・・・むむ? 確かイアさん、“あっちの世界の物品から錬成された方”だそうですね?
イア:は、はい…
めぐみ:・・・・・・まさか、前のあの事件に関係している事ではないでしょうね?
テル:いや、それはないです。資料もなにもかも消去して、私もアペンドも情報は漏らしてない。獄中の二人はそもそもあの魔法陣の作り方を知りませんし、その線はないですね
めぐみ:・・・・・そうだな。これまで出てきた情報からでは、決めつける線が無さ過ぎる。ただ、その“あっちの世界の物品”にそっくりの物を使っていたのは、きな臭い。すぐに警備を強くしよう
そう言うとベルを鳴らして受付を呼び、警備人数と警備エリアを1ランク上にする事を告げたのでした。
めぐみ:これでいい。あなた達のここでの宿泊施設は我々も使っている所で警備が厳重なので大丈夫です
学歩:拙者も警備に入っているので、安心されよ。怪しい輩は一刀両断でござる
テル:わかりました
リン:ほっとしました
イア:有り難うございます
話は次に移ることになりました。
めぐみ:さて、イアさん、錬成されてそれほど日も経ってないと思いますが、さっきの件とルカ姫の件以外で、何か気になることはありましたか? ルカ姫が到着する前に、聞いておきたいのですが…
イア:いえ、特に。不思議なことですが、私の世界にあった便利な機械はないとしても、基本的な生活品などはあって、不便はしませんでした。でも今は、私があっちの世界の材料から錬成された事を自覚して、あの三人組みたいな危険な存在から身を守る事に徹します
めぐみ:そうですね。こちらも最善を尽くします。テル達も頼みましたよ?
テル:当然です
リン:私も頑張ります!
学歩:拙者にとっても当然の事でござるよ
イア:有り難うございます
めぐみ:えっと、それでテル、他に連絡事項は?
テル:先ほどの件が大きいだけで、あとは順調な旅だったよ。結界を張っていた事もあるがな
めぐみ:低級の魔物が出没するだけに、少し心配したが、大丈夫だったようですね。合同の連絡事項はアペンド達が到着してからですから、暫し雑談でもしましょうか。私と学歩も入って、ワイワイやりましょう
リン:有り難うございます!
そんなこんなで、中断気味だった雑談に戻り、今度こそ、ワイワイやっていたのでした。
(午後4時半過ぎ インタネ共和国内 城塞都市クリアン 最高裁判所・会議室)
ギギィ・・・
会議室の扉が開き、アペンドが顔を出しました。どうやらアペンドのパーティが到着したようでした。その刹那、部屋にいた5人に緊張が走りました!
ガタンガタン
会議室へ、アペンド、レン、ルカ姫が順に入って来ました。
イア:・・・・あ、あのルカ姫、お疲れさまでした
ルカ姫:・・・・ありがと・・・・
ルカ姫はイアの方に顔を向けもせずに荷物を会議室の隅に置くと、テルとアペンドに受付に来るように合図し、3人は受付に移動したのでした。他のメンバーは解っていたこととはいえ、冷や汗をたらさずるをえない状況でした。しかし、大事にならずにすんだだけマシだと、ポジティブに考えたのでした。
イア:・・・・・あれ・・・・絶対怒っているよ・・・・・ね
(午後4時半頃 インタネ共和国内 城塞都市クリアン 最高裁判所受付)
ルカ姫:・・・・・・
テル:・・・・・・
アペンド:・・・・・・
ルカ姫:・・・つまり、私とイアが一緒にここまで来ないように、2つのパーティにわざわざ分けて、でもってここまで来てしまえば、なんとかなるだろう、そう考えた訳ね
アペンド:・・・解ってくれる?
ルカ姫:解るも何も、これから楽しい冒険が始まるんだから、解るしか方法が無いでしょ。ここがクリプトン城だったら、解らなかったかもしれないけどね
テル:策は成功だったか…
ルカ姫:でも、イアとは“距離”は置かせて貰うわ。通常の返事はするけど
テル:う、うむ、仕方ないだろうな。それくらいは
ルカ姫:よっしゃ! それでは説明を聞かないと行けないよね! 戻りましょうか!
ルカ姫は先に会議室に戻ってしまいました。受付に残ったテルとアペンドの二人は、顔を見合わせてしまったのでした。
テル:せ、成功だった…と思うことにしようか
アペンド:そだね
そして二人も会議室に戻ったのでした。
(午後5時過ぎ インタネ共和国内 城塞都市クリアン 最高裁判所付近の喫茶店)
テル達をつけてきたミズキ一行も、とりあえずギリギリ近づけて、どうとでもなる場所である“近くの喫茶店”に陣取って、様子を伺うことにしてました。だが、もう1つの理由は予期していたとおり、『肝心の場所の警備は急に固くなった』事でした。ですが、これは解っていたことなので、うろたえることなく対処できました。
ミズキ:さて、奴さん達はあそこに入ったわけだが、場所が場所だけに怪しく目立った尾行や侵入は、ほぼ不可能なわけなのよね
ゆうま:まったくだ。それでなくても最高裁で警備が固いのに、さらにあれだけ警備を増やされたら、そうそう簡単にはいかないな
りおん:店員さーん! チョコパフェ、おかわり!
ゆうま:ふぅ〜、おまえ、良く喰うな…
りおん:食べないと育たないのだ!
ミズキ:ふぅ。まぁ、それはそれとして、この時間からではどうにもならないわね。今日は近くの宿に陣取って、作戦でも考えましょう。夜襲をかけてもだめでしょうからね
ゆうま:そうだな、こっちのマシンで追尾はいくらでも出来るからな
りおん:店員さーん! チョコパf
ゴチン!
ゆうまのゲンコツが、りおんの頭に落ちたのでした。
ゆうま:おまえ、いい加減にしろっての!
りおん:いたた、でも、チョコパフェ…
ミズキ:りおんちゃ〜ん? そんなにおやつばかり食べてると、夕飯食べられなくなるわよ? 今日の夕飯はお肉を食べようと思ったんだけどなぁ〜
りおん:店員さん、ごめんなさい、なんでもないです。ミズキ〜、早速、宿いこ! 宿!
ゆうま:ほんっっっっとに、単純だな、お前…
こうして、今日の移動と尾行は、双方ともに終わったのでした。
(午後5時過ぎ インタネ共和国内 城塞都市クリアン 最高裁判所・会議室)
めぐみ側のメンツ全員が会議室に集まり、荷物の搬入なども終わったので、めぐみと学歩は会議室の黒板の前に移動して、今回の事を説明することにしました。
めぐみ:はい、静粛に。話がわからなくなる可能性があるので、まず結論から言います。私たちは数日後に出航する、私が船舶協会にお願いして出して貰うことになった、ヤマト国のサホロ港、つまり学歩の故郷に近い港への臨時便の船“ライブラリー・スター号”に乗船して、ヤマト国に向かいます
ルカ姫:ワクワクワクワク!
めぐみ:残念ながら、肝心の“アキバ”という場所の近くに停泊できる港がなく、少々距離は離れていますが、学歩の故郷の港で降りて、それから陸路を南下して、アキバを目指すことにしました。船舶協会からヤマト国の簡単な地図を貰えたので、私が事前に調べました
ルカ姫:その方が冒険みたいで楽しいじゃないですか! ワクワク!
めぐみ:あ、えっと、テルとアペンド?
テル:わかってます。あの通信室で、めぐみさんから聞いたことはルカ姫に全部伝えておきました。ご安心を
めぐみ:それはよかった。これで前に話したことは、簡単に触れることにしますね。結論はこう言うことです。学歩自身、サホロの近辺からあまり移動せずに、当時の臨時便に乗ってインタネ共和国のジェンド港に来てしまったので、彼からヤマト国のアキバの情報はほとんど入手できませんでした
学歩:申し訳無いでござる。こっちに武者修行に来る事で頭が一杯になって、自国の他所の事を自分でちゃんと調べるのをおろそかにしていたのでござる
学歩はペコリと頭を下げた。
イア:いえ、それはいいのですが、普通“武者修行”って自国を歩き回って、自己鍛錬にいそしむ物では?
学歩:ちゃんと調べなかったのでござるが、拙者の友人から、拙者の故郷より南には行かない方がいいと、厳重にとめられてしまったのでござる。なにやら“戦争状態”に近い状態になっているらしく、拙者の考えていた“剣術修行”など出来る状況ではないとか…
“ほとんど入手できなかった”どころではないのでした。
アペンド:ちょ! それ! もの凄く大事なことじゃないですか! めぐみさん!
めぐみ:これは後で伝えようと思った事ですが、“アキバが戦争状態”と言われたわけではないですから、『アキバの情報』、というカテゴリーとは違うと思ったので。ただ、私たちが陸路で移動するヤマト国の経路は、平穏な山道や平野、というわけではないかもしれない、そう思って置いた方がいいとは思いました。でも、どうもこれが原因で、サホロ以外の場所の港に直接行けないのだと思います
イアは少し冷や汗が垂れた。世界は違えど、“アキバ”と呼ばれている場所で、内戦が起こっているかも知れない、というのは心中穏やかではないのである。しかし、ルカ姫は、大冒険の1つとしか取ってくれてなかったのであります。
ルカ姫:ワクワク!
テル:いや、これはワクワクどころではない。本当に命がけになる可能性が高いぞ?
アペンド:めぐみさん、それでも、我が国の姫に来て欲しいと思ったのは、どういうことですか?
確かに不思議である。一国の姫を危険な場所に向かわせるのは、普通の所行では無いことは明らかです。
めぐみ:前の事件の調書を見る限り、ルカ姫だけが、唯一、ミクさんやルカさんの世界の“アキバ”を探訪してます。学歩とレンとアペンドもいたことにはなってますが、探訪はしてないですね?
レン:はい、戦闘になっただけです
学歩:拙者も闘っただけで、すぐに撤収したでござる
アペンド:確かに。出来るだけ、見せ物らしくし、痕跡を残さないようにしました
まさにあの闘いは、そのように行われていたわけでした。この3人はアキバの文化に接する事無く、戦闘に勝利して、さっさとミクとルカのアパートに帰ってしまったのでした。
めぐみ:それで正解ですが、今回のアキバ探索には、実際に向こうの世界のアキバを見た人が、見比べる必要があると思ったのです。今回は幸運にもアキバで生まれた素材で錬成されたイアさんがいてくれるので、かなり心強いですが、それでもルカ姫には“確認”の任を設けたいと思うんです
ルカ姫:まっっかせてくださーい! イアの出番はあーりません! たっぷり探訪致しますよ〜♪
イア:(…ふぅ)
アペンド:(こんな軽いノリで、本当に大丈夫かなぁ…)
しかし、こんな状況でも頭を垂れて考えていた人物がいたのでした。テルです。
テル:・・・・・・・・・めぐみさん、あなたの“本当の考え”は、それとは別にありますね? あなたの“今の時点での真意”を聞かせて下さい。別にアナタを怪しんでいるわけでは勿論ありませんが、もしかすると“私と同じ”なのかも知れませんから
めぐみ:・・・・・・・・・・巧く隠せませんでしたか・・・・・解りました。推測の域を超えませんが、これから私の“真意”を語ります。聞いても眉をしかめないように…
そうして、めぐみの驚愕の真意が語られるのでした。
(続く)
CAST
イア:IA-ARIA ON THE PLANETES-
ルカ姫:巡音ルカ
魔導師アペンド:初音ミクAppend
魔導師テル:氷山キヨテル
僧侶リン:鏡音リン
勇者レン:鏡音レン
異国の剣士 神威学歩:神威がくぽ
裁判官 勇気めぐみ:GUMI
ヤマト国からの旅人三人組
瑞樹(ミズキ):VY1
勇馬(ゆうま):VY2
兎眠りおん(りおん):兎眠りおん
その他:エキストラの皆さん
説明 | ||
※今回からの新シリーズは、前作「Dear My Friends! ルカの受難」の続編です。ナンバリング的には2期になります。 現在ピアプロで連載投稿中の最新シリーズとなっております。 ☆当方のピアプロユーザーネーム“enarin”名義で書いていました、ボーカロイド小説シリーズです。第16作目の第7話です。 ☆今回も1話分を短めにした、ファンタジーRPG風味の長編です。現在もピアプロに続きを連載投稿しており、完結しておりません。 ☆2期では、”イアさん”と”ルカ姫”のW主人公で行っていますが、シナリオによって、軸が変わっているところもありますので、そこら辺はご愛敬で…。 ☆今回はファンタジー以外にも、ちょっと違った要素も入れてます。 *** ☆今回は会議室でのお話、ルカ姫到着、旅の手引きまでです。 ☆ヤマト国、ちょっと危険な場所みたいですね。 ☆めぐみさんの“真意”とは、一体なんなのでしょうか? ☆ライブラリー・スター号=“Vocaloid3のライブラリー”から取りました。 |
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