ポケットモンスター トライメモリーズ 第37話 |
第37話:チャンピオン・ジンキ
四天王に教わった事を胸に秘め、翌日も修行をするクウヤ。
前回と同じメンバーで勝利を目指すことを決めてナーク、ピーカ、アーチの3匹に集中して鍛える。
みんな、次こそ勝つという気合に満ちていた。
「アーチ、かえんほうしゃ!」
「シィヤーモォ!」
「いいパワー!・・・・あっ!!」
その威力高いかえんほうしゃの炎・・・その矛先に人がいる。
あぶない、とその人に向かって叫ぼうとした・・・その時。
「ボーマンダ、ハイドロポンプ!」
「えっ!?」
その強大なかえんほうしゃをハイドロポンプで打ち消した。
「ボゥ」
「ふぅ・・・ありがとうな」
ボーマンダを撫でて礼を言う。
そのポケモントレーナーは長い髪を一つに結った、赤い切れ長の目をもった男だ。
どこか威厳のある顔つきの彼にクウヤは声をかける。
「だだ、大丈夫だったか!?」
「ん?」
「ごごご、ごめんっ!
オレ特訓してて狙いをミスってあんたの方に炎が飛んでいっちまったんだ!」
「シャー・・・」
男は少年とワカシャモをみるなり笑顔になる。
「へぇ〜〜、あの強烈な炎の正体は君だったのか。
なに、それくらいのこと気にする事はないよ!」
男は明るく、そして優しく笑う。
それにクウヤは安心した。
あんなに危険な事になったのに許してしまうなんて、悪い人どころかすごい良い人だと思ったクウヤは自分から名前を名乗った。
「オレはクウヤっていうんだ!あんたは?」
「俺はジンキ、まぁ君と同じポケモントレーナーだよ」
気が合ったのか二人はがっちり握手を交わす。
「あんたも、今旅の最中なのか?」
「ああ、でももう俺はジムを制覇する必要はないけどな」
「え、どういうこと?」
「ホウエンのジムは全部勝利しちゃったんだよ」
「えぇ〜〜〜!すっげぇ!」
ジンキが強いことを知りクウヤははしゃぐ。
「オレはまだ4個なんだ、一昨日トウカジムで負けちまってよ」
「トウカジムってことはセンリさんか・・・。
あの人は強いぞ」
「わかってる。」
彼の強さは実際に戦って思い知らされた。
センリだけではない、娘のラカイも強い。
「なぁジンキ?」
「なんだい?」
クウヤは気になっていたことをぶっちゃける。
「バッジ全部集まってるなら、なんでも今も旅してんの?」
「え、おかしいか?」
「おかしい」
ジンキは苦笑いしつつ坦々と語り始める。
「確かに俺は全てのジムを制覇したし様々な地方で修行を積んだんだ・・・・そして、自分の夢もかなえた。
でもな」
「でも?」
「面白いのは、全てを知ったと思っていたのにこの年齢になってもまだ面白い発見が、出来事があるんだ。
俺はそこに刺激を受けて新しい事を発見していく、そのためにもう一度故郷のこの地を旅立った・・・・
というわけだ」
「へぇ、そうなのか!」
「ああ。」
ジンキは側で控えているボーマンダに目を向けた。
「もっと多くのポケモンと、そのポケモン達と協力し共に戦っていくトレーナーをもっと見てみたい」
「・・・」
話を聞くうちにクウヤは旅の目的を考え直しここまでの旅を思い返していた。
リーグへ向かうため、強くなるため、世界を見るため?
「あ」
「どうしたんだい?」
「オレ・・・まだ夢を見つけてなかったぜ。
ただ強くなろうとしてて・・・いろいろ知らない世界を見ようと思ってて・・・リーグで戦おうと友達と約束してただけで夢とかそういうの、なーんも全然考えてなかった」
へへへ、と頭を掻きながら笑うクウヤ。
そんな彼を見てジンキはぽつぽつ語り始めた。
その表情は、懐かしそうで切なげだった。
「俺も君ぐらいの頃はそんなもんだったさ」
「え・・・あんたも?
でもさっき『夢が叶った』って・・・」
「叶ったさ。でもほんの6〜7年前の話だ。」
不意にジンキは寂しそうな顔を見せる。
「ずっと強くなるということしか頭になくて、がむしゃらにバトルをしまくっていた」
「・・・・・・・」
「・・・当たり前のことに気付いたからそれを夢にしようと思ったんだ・・・あいつの夢を俺が・・・・・・」
「えっ」
クウヤの反応にジンキは我に返る。
「い、いや、なんでもないさ!
とにかく今は旅を楽しめという事!」
「ふぅん?」
小さい彼の呟きは少年には聞こえなかった。
クウヤもその呟きは聞き取れなかったができなかったものは仕方ないということで深く追求はしなかった。
この本心を悟られまいと誤魔化すジンキの慌てた言動も無駄に終わった。
「さてと!
俺も仕事あるしもう行かないとな!
叶った夢の仕事がたまっちゃてるし」
「そっか」
「君は・・・」
「?」
威厳に溢れた顔でまっすぐクウヤを見つめ、ジンキは最後に言う。
「リーグで勝ち上がり、いずれ俺の元へ来い。
この国の頂点で待ってるぞ」
「!」
ボーマンダに乗ってそのまま飛び立ったジンキの姿をクウヤはただ見てるしかなかった。
「ジンキってもしかして・・・」
ボーマンダとともに空を飛んでいくジンキは先程であった少年を思いだしていた。
「クウヤくん・・・面白い子だ・・・希望を宿した良い目をしている・・・・。」
トウカの森をでた先で彼の姿を見たときからずっとそう思っていた。
ポケモンと心を通わせまっすぐ進むトレーナーも
ポケモンを戦いの道具のように扱うトレーナーも
絶対的な勝利だけをただ求めていくトレーナーも
今までずっとみてきていた。
中でもクウヤは一際目立って純粋だ。
「クウヤくんも、リクガも・・・そしてまだ会えていないがセンリさんの娘さんもきっと彼らと同じ光を持っているんだろうな」
脳裏をよぎるのは、年下だが尊敬をしている友人の姿。
「そう、あいつみたいな・・・」
ジンキはそのまま、次の町へとんでいってしまった。
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今回は、最近になってようやく私の中で設定が落ち着いた男が出ます | ||
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